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2006.09.23

【芝居】「38℃」パラドックス定数

2006.9.22 19:00

現実の事件を枠組みにしながら逞しい想像力を働かせながら現場を描くパラドックス定数の新作。三人の医師と男たちの緊迫する会話が凄い90分、オススメ。24日まで、渋谷スペースEDGE。

いろんな仕掛けをしてあって、実はネタバレしないで書くのはほぼ無理だったりもします。まあ、出来る範囲で。以下ネタバレ可能性あり、です。

椅子の並べられた白い部屋。薬害についての公開講座を始める大学病院の助教授。参加者から投げかけられた質問は、やがて一つの意志を持つ。8人の死亡者を出したと論文発表されたために大きな損失を出した製薬会社の研究者と営業。論文の中身に疑問を持ったが門前払いを喰らい、非常手段に訴えたのだった...

パラドックス定数の基本フォーマットは男ばかり、笑いの少ないキリキリとした会話の積み重ねの芝居。見た目にカッコイイ感じのモノが多かった反面、全体的に照明が暗いという弱点も持っていました。今作は今までにないぐらいに照明の明るさ。病院を舞台にした芝居らしく、壁もほぼ白く、照明も明るいままでの芝居。更に白衣と黒い背広という人物の構図は、物語の全容が未だ見えていない序盤で、白×黒という対立の構図を誰にでもわかりやすく見せていて、世界を作り上げるまでの観客のテンションを維持するのに役立っています。

どうみてもテロリストのグループだと思われる3人と3人の医師の行き詰まるパワーゲーム。ほんの些細な一言でシーソーのように行きつ戻りつする会話は、緊迫感に充ちていて、本作ではこのパワーゲームこそが面白い部分だという気がします。

史実を発端にしながらも、物語は思いもよらぬ方向に舵を切っていくのもパラ定らしさ。そういう妄想に近い想像力のたくましさが面白いのです。おそらくベースとなったであろう小説 (amazon)はありますが、多分これも枠組みだけが同じで、中身は全く違うモノだろうと想像します。

史実の部分と創作の部分は分けられていませんから、どうしても家に戻ってからグーグルやらアマゾンやらを検索かけまくってしまうというのもこの芝居の特性。そういえば地下鉄の話を描いた「大正八年永田町」 のときも、あれこれ調べてしまったのは、あたしでした。

序盤はともかく、実は笑うところはほとんどない芝居の筈なのです。観客が慣れてきたからか、所々で笑う観客。アタシも含めてですが。そういえば青年団も同じような感じだったなぁと思ったりもして。

パラドックス定数「38℃」
2006.9.22 - 9.24 SPACE EDGE
作・演出 野木萌葱
出演 植村宏司 杉田健治 西原誠吾 井内勇希 大塚秀記 小野ゆたか
中田顕史郎

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コメント

初見でしたが、私は笑いどころ満載な気がしました。
100分とコンパクトにまとまった長さもよし。
ウエルメイドなストーリーなんだけど、まだまだ良くできると
思う。ネタバレ感想は25日以降ですな。

投稿: くろせ | 2006.09.23 08:44

くろせさん、

パラ定、初体験を楽しんでいただいたようで何よりでしたー。
どうも続いてみてると、ウエルメイドって感じは受けなかったのですが、たしかにそういう見方も出来そうですね。

投稿: かわひ_ | 2006.09.28 00:32

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パラドックス定数『38℃』を9月23日マチネに観ました。『5seconds』(2004年11月)、『大正八年 永田町』(05年11月)に続いて3度目です。 男優だけの閉ざされた空間での会話劇、舞台に登場したら二度と楽屋に戻らない演出など、個性的な作品世界をつくり上げるのに成功しており、首都圏の小劇場ファンのあいだで話題になっている存在です。実在の事件をモチーフにした物語は社会派と呼ぶにふさわしく、「wonderland」が指摘しているように話が都合よく運びすぎるきらいはありますが(面白いがゲーム的)... [続きを読む]

受信: 2006.10.05 11:25

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