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2006.08.10

【芝居】「サヨナラとさようならをする(潮騒編)」play unit-fullfull

2006.8.9 19:30

ヒロセエリの戯曲を、本人と、ナイロン100℃の大山鎬則が演出の2バージョン公演。本作は「潮騒編」と題されたヒロセエリ演出版。交互上演で16日まで、OFFOFFシアター。127分ぐらい。

潮騒が聞こえる洞窟をコモンハウスに寝泊まりする人々。夫婦や姉妹や男たち。大雨の日に飛びこんで来た美しい女は記憶を無くしていて…

ホラーっぽいスパイスはありますが、基本的には分かりあえない部分がどこまでも残るさまざまな男女の話。妻に相談なく会社を辞める男や、執拗に過保護な兄妹や、憧れる気持ちの暴走やら。2バージョンあるのは、演出家の性別の差もあって、男性目線・女性目線ということのようですが、たぶんこっちしか見られない..

コモンハウスというのが、アタシには耳慣れず、ここがどういう場所なのかがしばらくつかみづらく。独立した居住エリアのほかに、数家族が共有するスペースを持つ形態の居住空間なのだとか。見ていればおおよそはわかりますが。でも、アタシの感覚としては、長期逗留しながら共同生活を営む人々、湯治場をイマ風にした感じ。が腑に落ちます。外の世界とは少し距離があって、「閉じた空間で暮らしている人々」を描きたかったのだろうと思います。

いくつもの男女の関係が示されますが、どれも「男の勝手で女のキャラクタを決め、無理に押し込もうとする」ということと、「それが嫌だと思う女」(当然ですね..)との齟齬や、「変わろうとする時の軋轢」が変奏しながら描かれるのです。 「キャラクタ」まではいかなくても、日常のほんの些細なことの違いが、違ったまま、相談されないままになっていることが女性の側にとって耐えられないことだという風景もいくつかあって、これも「頭では理解できる」んですよね、あたしも。はい。なかなかうまくいかないものです...(泣)

初日時点では、この幾重にも重なる関係が、どちらかというと全部フラットな感じに見えてしまい全体に少々長いと感じました。ひとつひとつの関係や、考えていることを反芻すると、作家の闇の部分が感じられて奥行きが見えてくる気もするのですが、もう少しシンプルに整理されていたほうがありがたい気も。

ほぼ主役といってもいいM.O.P.からの客演・勝平ともこが演じる「失踪していた妻」は臆病さと奔放さのコントラストが鮮やかで魅惑的。特に奔放の側がとてもいいのだけど、終盤近くにならないとみられないのが勿体ない(というか、あたしが見たいだけですね)。従業員を演じた遠藤友美賀のポジションは本作においてはほぼ唯一のコミカルさを持つ役で、全体に沈みがちなテンションを支えます。

play unit-fullfull 「サヨナラとさようならをする」(潮騒編)
2006.8.9 - 8.16 OFF OFFシアター
作・演出 ヒロセエリ
出演 広瀬喜実子 前里瑛一 遠藤友美賀
犬飼若浩 冨塚智(ONEOR8) 小山待子 芳賀晶(カノン工務店) 小松君和(神様プロデュース) 石黒圭一郎(劇団コーヒー牛乳)
勝平ともこ(劇団M.O.P.)

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