【芝居】「雨と夢のあとに」キャラメルボックス
2006.7.30 14:00
柳美里の原作(amazon) を成井豊・真柴あずきでドラマ化 ( amazon) した小説の舞台版。深夜55分枠10話にわたる物語をぎゅっと120分に凝縮の濃さはたいしたものなのです。8月20日までサンシャイン劇場、そのあと大阪シアターBRAVA!。キャラメルとしては少々高額なチケット代があってか、まだ平日を中心に残ステージがあるようですが、オススメ、なのです。
父親と二人暮らしをしている小学生の少女。珍しい蝶の収集を趣味としている父親は台湾への採集旅行の最中、転落事故で死んでしまう。娘への気持ちが断ち切れず、幽霊となって現れる ...
死んだものが、近しい人のところに現れ、想いが伝わっていくという物語の枠組みは、小説やドラマでは最近よく見かけるような気もします。今作が圧倒的な力を持っているのは、作家・柳美里の壮絶な実体験 (amazon) に裏打ちされた「想い」が物語に投影されているから、なのではないかと思うのです。原作は未読、ドラマはさっと流して見ているのであたしの思いこみかもしれませんが。 ドラマにするときにはすくなくとも毎話で盛り上げる必要があるわけで、それを舞台化することで次々とさまざまなことが起こる、という濃密さにつながっているような気もします。それが単なるダイジェストになっていないところが、脚本が原作をきちんと血肉にしているのだと思うのです。
なんてことをつらつら考えたりはしながらも、あたしのツボにはまる、いわば「泣きトラップ」(いえ、いい意味で)満載なのです。人の生き死にそのものはもちろん強いドラマを持つわけですが、幽霊という猶予期間をあたえることで「想いが伝わること、伝わらないこと」を克明に描けるフォーマットの強みに、キャラメルボックスという劇団の演出や役者という特性が実によくあっているのだと思うのです。
前半こそ、泣きにハマるものかと思っているのだけど、気がつくと「ダー泣き」の状態なあたし。もうどこがきっかけのスイッチになったかすらよくわかりませんが。
観覧車の場面は枠と暗さだけで一瞬にして場面が変わる魔術で、このシンプルな美しさは特筆に値します。天才子役、といわれる福田麻由子は他の役者と対等に張り合える確かな存在感と瑞々しさ。父親を演じた岡田達也は年齢を重ねた確かさがあって魅力的です。久松信美と楠見薫の客演陣は周囲で支える役なのだけど、この一風変わった明るさが、ともすれば沈みがちな話に笑いによる緩急をつけていて印象的です。
今作においては、出てくる地名や場所の名前が実名なのもちょっと珍しい。スイートベイジルSTB139、なんてところにシンクロするあたしです。
演劇集団キャラメルボックス 「雨と夢のあとに」
2006.7.20 - 8.20 サンシャイン劇場
2006.8.24 - 8.31 シアターBRAVA!
原作 柳美里「雨と夢のあとに」((amazon)) 脚本・演出 成井豊+真柴あずき 出演 福田麻由子 岡田達也 岡内美喜子 岡田さつき 久松信美 楠見薫 畑中智行 三浦剛 青山千洋 大木初枝 篠田剛 小多田直樹 小林千恵
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