2006.6.17 19:00
ピスタチオとのアナザーフェイス公演として初演されたキャラメルボックス初の本格時代劇(未見)、劇団での再演を経ての三演目は、劇団初劇団では珍しい外部演出、新劇からの客演も招いて。彼ら自身もパンフレットに書いているとおり、リメイク作品で味わいが全く新しく。少し長めの135分。7月2日までサンシャイン劇場、そのあとに神戸。
幕末、新撰組から逃げ出してきた二人組は志士に間違われ、かくまわれた蔵は菓子屋の裏。岩国藩に近く、どこか朴訥とした藩士たちが出入りしている。桂小五郎がやってきて、正体がばれるかと思った二人だったが、意外にも彼は二人をホンモノだ、と言い切り。
キャラメルボックスの通常公演のように、ダンスやスピード感がグルーブを作ることはありません。全体に静かに淡々と。ところどころ笑いはありますが、これも爆笑につながるものはそうもありません。特に前半はまどろっこしいぐらいに話が進まないのです。場所がひとつに固定され、まったく動かないというのも大きいし、時間の長さもあるかも知れません。
前説が無言だったり、縦書きばかりだったり、ことさら違いを意識的に強調しているのは、やり過ぎな感じもしますが。
物語は確かに成井+真柴による「俺志士」の骨格。しかし、演出は音楽も人物の描写もすべてが、あきらかにM.O.P.の色だという気がするのです。当日パンフレットで云われるとおり、これは別もの、リメイクであり、キャラメルボックスという劇団の(私が思う)特色は演出によるものだということがよくわかります。
スライドギターをベースにした音楽は、(場面は動かないけど)ロードムービー的だし、屋根の上で寝転がるという場面、外見はだらしなくてのんびりおっとりしてるけど、芯は強くてという主役描写など、マキノ節な解釈と演出なのです。かえで、という女の描写にしても、美咲という男勝りのお姫様の描写にしても、単に互いを「想う気持ち」以上に「男と女」という文脈での愛情や色気を感じさせるというのも特色のあるところ。成井演出では、注意深くそぎ落としているところであり、強く印象づけられます。
初演・再演に比べて、場面を変えたために、物語を裏側から見たようなバックステージものと観ることもできます。ところどころに破綻を来しそうになるところも、ぬい、こまという二人 、現実味を少々薄めたキャラクタを導入することで乗り切っています。
前半で止まってしまいそうになる観客の思考にテンションを与え、要所要所で緩急をつけるなど、坂口理恵という女優の力(まあ、役のキャラということもあるのですが)を圧倒的に感じます。温井摩耶は色気を感じさせる役が実に良くて、片肌の場面はともかく、終幕の不器用さもどこか魅力。實川貴美子の突っ走り具合は美咲というキャラクタによくあい、渡邊安理の間延びキャラも、確かに見た目の雰囲気には合っています。
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