【芝居】「トントコトン」studio salt
2006.05.18 19:30
横浜の劇団・ソルト、劇団として初の外部演出を迎え、座付き作家の新作を。100分ほど、21日まで相鉄本多劇場。前売り完売日もあるようですのでご注意を。
古い一軒屋に暮らすいい年した三人の兄弟。長男は仕事をやめたばかりで毎日がぼんやりな日曜日、二男はボクシング目指してるが本気なのかどうなのか。三男は借金を抱えているしクスリで気持ちがダウンしたり高揚したり激しい。寝たきりの母親が居るようだが、兄弟だれも面倒を見ずに、長男の嫁が介護の日々。暮らしてはいるけれど全てのベクトルがバラバラの家族。ある日祖母の部屋への落雷があって...
最初のかみ合わない感や停滞する感じは、物語の行き先がよくわからなくて少しばかりの不安を感じさせますが物語の必要さゆえ。 チラシにもある大きな豚足を始め、消えものの多さとこだわりは半端ではないのも彼らの持ち味。食べるということと生きていくことに対する作家の強い想いを見せます。
(ネタバレがあります)
登場人物の強い意志で次を切り開くのではなくて、たまたまうまくいく、という感じは否めません。それが悪いわけではないのだけど。都合の良いファンタジーのような出来事があるし、あれだけ何もしなくても暮らしてはいけるってのはどういうことだと思ったりはします。あそこまで肉親見られない兄弟はどうなんだって「頭では」思うのです。が、作家や演出の「想い」とそれを誠実に物語として運ぼうとする役者。
兄弟達に起きた幸せは、掘り起こしたものではなくて、そういう雰囲気になって再スタートが切れるようになった家族の姿。終幕の風景は頭と変わらないようだけど実は「日曜日」で三男が働き始めていることを予感させるところがあったりして、バラバラの家族が少しだけ前に進んでいけることを予感させる結末。
三兄弟がはしゃぐ姿は、おそらく子どもの頃に見ていた母親の視点、つまり過去の「良かったころ」の回想。ばらばらになっていた兄弟は庭の真ん中で、あの頃の「気持ち」に戻るのです。これだけでも十分素敵なシーンなのだけど、更に最初縁側の「こちら側」にいた妻は、最後には縁側の向こうがわに行くことで、このシーンを過去からあっさりと現在に重ね合わせ、家族の未来を感じさせます。
三幕目のあとに戸棚の上にのせるモノが重要な意味を持つのだけど、ちょっとわかりにくいのが勿体ない。少し傾けて見せるだけでいいと思うのだけど。その直前に庭を横切る女のシーンは美しく印象的。三男は飛び道具的な扱いの序盤ですが、くるくると変わる表情と声のテンションの落差が舞台のリズムを作ってる気がします。
studio salt第五回公演 「トントコトン」
2006.5.17 - 5.21 相鉄本多劇場
作 椎名泉水 演出 大西一郎
出演 高村圭 (メーカーズカンパニー) 麻生0児 増田知也 松本・F・光生 木下智巳 高野ユウジ東享司 間辺あや
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