【芝居】「僕の腕枕、君の蟹ばさみ」無機王
20060.5.14 19:30
今、元気なブゲイ系で固く確かな愛情の話。王子という場所についてもオマージュな感じで。終盤10分が圧巻で巧い。90分、14日夜まで王子小劇場。ご覧になるなら上手よりのセンターがどちらかというとオススメです。
のどかな田舎の町、親戚を頼って転校してきた姉弟。どこか頑なでうち解けない姉だった。寺の階段の前、高校生たちや寺の坊主や娘たちが行き交い、待ち合わせ、話をして喧嘩をしたあのころ。そんな町を訪ねてきた一組の男女、思い出をたどるようにひとつひとつの場所を訪ね歩いていってたどりついた先は..
決してすごく若い役者たちというわけではないのだけど、垢抜けない高校生の制服がはまる役者たち。前半でののどかできっと青空なんだろうなと思わせる空気感がいいのだけど、あわせてそこかしこにかいま見える粗暴さも巧く取り込んでいます。 不幸な少女の、芝居ではよくあるような話を丁寧に積み上げていくのだけど、終盤10分で、積み上げてきた人物たちを一気に物語に解き放って、一気に世界を見せる鮮やかさが凄い。しかし、この想いは芝居の見かけに反して屈折ぐあいもただ者ではありません。 この一点を観客が受け入れられるかどうかに全てはかかっていて、もし評価が分かれるなら終着点をどう見たか、だろうという気もします。あたしは好きなのですが。
セットはシンプルだけど上品な抽象舞台。具象でやってきたという彼らには珍しいのだけど、二つの話を並行して動かし、町のあちらこちらの風景を取り込む今作においては効果的。
東京からは少し離れた地方だという設定のようですが、いくつか出てくる地名(単独では東京に限った地名ではないのだけど)がまとまると中央線沿線を想起させてしまうのは少し勿体ない気もします。たとえば国分寺、と言い切らなくても物語は十分成立しているわけで。
祭りを楽しみにしている「きっこ」という不思議でしかし魅力的な役があって、これも物語に直接絡まないように見えます。王子という場所を考えると「キツネ」を想起させるところも。高校生という不安定な時期の「色気づき」を最初に見せる魅惑がいいのです。高校生の少女を演じた中島佳子は愛嬌のない役どころははまり役なのだけど、それだけに感情を見せるシーンの瞬発力が素敵。
無機王第9回公演 「僕の腕枕、君の蟹ばさみ。」
2006.5.11 - 5.14 王子小劇場
作・演出:渡辺純一郎
出演 中島佳子 西松希 西山竜一 山田佑美 山﨑康代
大塚秀記(つよしとひでき(trf)) 高橋康則(マーク義理人情) 内山ちひろ(インパラプレパラート) 大矢場智之(インパラプレパラート) 趙徳安(アンテナ)
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