【芝居】「大部屋女優・浜子」危婦人
2006.5.28 15:00
苦節50年目にして初座長公演となる大部屋女優・浜子の周りの人々を描く。ここまで突き詰めればアタシは満足です。サンモールスタジオの公演は終了。
大部屋出身で泣かず飛ばずだったが、50年目にして、木更津のご当地ソング、「落花生チャチャ」が大ヒットした蘭浜子。初の座長公演の初日を迎える楽屋。バタバタとするなか、共演の売れっ子女優に恨みを持つ女の企てが…
物語の骨格をなすのは、中堅女優とその隠し子と育ての母にまつわる三角の話。正直な話、それ単独ではそう大した話ではありません。
話を面白くしているのはこの骨格を含む世界全体を華やかにコミカルに、どこかチープに描くことに力点を置いたことと、さまざまにステロタイプな女優たち(下積み長い、実力派、若くて可愛い、スタイル抜群、女優は挫折したけど職人肌のスタッフたち、女優の卵たち)を並べてみせることで、人々に深みを持たせることに成功したからではないかと思うのです。
タイトルロールにある浜子は、その話には本質的にはあまり絡みません。が、ザンヨウコが演じる浜子がつくるこの世界が物語を幾重にも深みのあるものにしてると思うのです。彼女の突き抜け感と、それを「演じてる」感の残ってるところが、本作では巧く回っています。また巧いんだ、これが。 女優って感じのキキコロモ、パワフル衣装さんヤビマーヤ、アイドル女優萩原もみぢなど、まわりの固めぐあいも隙なく。
バックステージものはとかく、作家に近い世界ゆえに逆に安っぽくなりがちですが、大部屋女優という、あるのかないのか分からないようなフィクションを遊び心一杯に作りこんだ結果、相対的な視点を取れたのだと思うのです。
文化女子大の卒業生ユニットとして結成され、衣装に強みがある彼女たちらしく、それぞれの衣装、早変わりの女優衣装に至るまで丁寧に作られていて、観ているだけで楽しいのです。 音だけ聞こえてくる舞台ではハイジだったり冬ソナだったり、衣装替えのために入ってくる浜子が奇っ怪な民族衣装のオンパレードどんな芝居なんだ、これ。(^^)最後の小林幸子ばりの衣装もちょっといいし、「落花生チャチャ」CD化も希望。
初日楽屋にやってくる有名人、という設定の日替わりゲスト、千秋楽はエッヘ。石原裕次郎と渡哲也の扮装でいきなりバズーカ(中身はクラッカー)をぶっぱなしたら、照明に紙テープがひっかかるという事態に。裏方が脚立まで出して外す羽目になりましたが、確かに盛り上がって。ここから普通の芝居に戻した力もたいしたもの。
危婦人 「 大部屋女優 浜子 〜至福のランデブー〜」
2006.5.19 - 5.28 サンモールスタジオ
作・演出 スギタクミ
出演 ザンヨウコ マジナオコ キキコロモ ヤビマーヤ ハルテロコ サコワイト 加藤弘子 吉澤香織 萩原もみぢ(劇団上田) 加藤良子(少年社中) 小松ぴろ子(開店花火) 川野牧(無双劇場) 吉岡亜佐美
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