【芝居】「怪人21面相」パラドックス定数
2006.5.12 19:00
日本の事件や出来事、男の現場を緻密に描くパラドックス定数の十項め。今年は3本の公演で精力的な公演が続きます。その一本目。劇場型犯罪、という言葉が知られたグリコ森永事件と三億円事件、いくつかの出来事を作家の想像(あるいは妄想)力で自由に編んでいく120分。オススメです。14日まで渋谷space EDGE。
倉庫か工場のようなコンクリ床にパイプ椅子と机とタイプライタ。男4人。誘拐した社長を解放したあとから、犯人の4人たちの犯罪の現場。会社役員・新聞記者・暴力団員・公安刑事。仕事の現場で面白くない人々が何かのきっかけで薄く繋がり、あの手この手が面白いように進んでいき。が、距離のバランスが微妙に揺れ続けた一年後には。
よく知られた戦後の事件を核に。ほかのいくつかの事件を編み込んで緻密に進む芝居。約一年にわたる五場が実にきりきりと進みます。台本だけでも多分凄く面白くて、作家のレパートリーは年嵩の行った役者や若者など、いろんな役者で見たいという気にします。
どこまでが事実なのか、どこからが想像なのかはわかりません。中盤で明かされる「ひとの背景」は扱うのは難しい題材ですが、その事実だけを犯罪の原因にしないことは、終盤明らかにされます。難しい題材だけに、どこに迷走してしまうかとどきどきしてしまいましたが、作家はそれをずっと上回る物語に仕上げています。
今までの芝居に比べると、どこか余裕のあるような男たちを描いているのがいいのです。クスリと笑うところを数カ所入れていて、語りだけで平板にならないようにしているのです。照明の効果が絶妙です。窓の外の明るさを作ること、階段の向こうにできた影も多分きちんと作り込まれたものなのだろうと思います。
パラドックス定数第十項 「怪人21面相」
2006.5.12 - 5.14 space EDGE
作・演出 野木萌葱
出演 植村宏司 十枝大介 杉田健治 小野ゆたか
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