【芝居】「キング・オブ・心中」マンション・マンション
2006.4.1 19:30
女優・横畠愛希子の率いる「舞台美術先行」型演劇ユニット、マンション・マンションの2回目公演。奔放な愛に生きる女の話は、つかこうへい風味のバカ芝居に結実するテンポよい90分。3日までOFFOFFシアター。
脱サラしてカレー屋を始めるために店舗を下見に来た夫婦。夫はどこか人当たりもよくないが、妻は社交的。が、妻には、惚れっぽくて夫以外の男をふとしたきっかけでモノにしてしまいたくなるという性癖が。そんな店のバイト募集にやってきた30男は、フリーターとは言っているがろくに仕事をしたこともない癖に口ばかり達者で...
マンガかコントのような「奔放な愛」の妻とその情夫、わがままなバイト君と彼女、遠慮のない近所、誠実だけどちょっと危ない後輩。いろんなやつらが物語を運びます。何が起こっても不思議じゃないぐらいの飛びっぷり。少し癖はありそうだけど実はいちばんマトモな夫を物語に置いたことで、周囲の飛びっぷりを最後まで笑えるようにしているのです。人物の置き場所で、きちんと中心を決めて笑わせるという作家の戦略がかいま見えます。
役者を格好良く見せるための「見栄」を切らせたり、舞台に張り出しを作って送風装置とともに役者を印象的に見せたり。怒鳴るような芝居だったり、下ネタばかりの台詞だったりもしつつもそれがちゃんと格好良くなってるところが凄いなぁと思うのです。だいぶ雰囲気は異なるのだけど、熱海殺人事件などのいわゆる「つか芝居」の突然変異種のような気がしてなりません。
なんせどこに行っても、一人でもかなりのレベルの看板を背負えるだけの役者が勢揃い。この役者をそろえられるというのは、主宰の力なのでしょう。バカ芝居そのものをこれだけの役者が突き詰めると、安心して楽しめるのです。テンションとデフォルメが凄い高木珠里を筆頭に、くたびれた中年スケベオヤジのキャラをやらせたら右に出るモノがいない今林久弥のダサかっこよさ。めんどくさいバイト君を演じた瓜生和成もはまります。主宰・横畠愛希子が幸薄そうな感じというのもちょっとツボなのですが、あたしゃ彼女見たくて通ってるところもあるので、弾けキャラも見たい気はします。
こういう、イキオイで見せる芝居というのは、演じる側が立ち止まってしまった瞬間に客席にかかっていた魔法は解けてしまうのです。だから90分のあいだを疾走するというのは正解なんだろうとも思います。笑いっぱなしの90分は至福なのでした。
先行レビュー>直行直帰で云われている「キャラクタがすばらしくたっていて『いちいち』爆笑」(中括弧はアタシ)に同意。「劇的なるもの」を見せてくれた一本でした。
マンション・マンション 「キング・オブ・心中」
2006.3.30 - 4.3 OFF OFFシアター
作・演出 福原充則(ピチチ5)
出演 今林久弥(双数姉妹) 瓜生和成(東京タンバリン) 高木珠里(劇団宝船/ドーナツもぐもぐクラブ) 富岡晃一郎 根上彩(青年団) 三浦竜一 草野イニ(ロリータ男爵) 山本了(同居人) 横畠愛希子
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コメント
リンクありがとうございます。
そうですね、いわれてみれば、つかテイストかも!
それにしても高木さんは最高でしたねぇ。あ、いえ、別に好きとかじゃないですから。いえ、そういう意味じゃありません。いやあああ!来ないでえええ!(笑)
投稿: 直 | 2006.04.03 01:45
直さん、コメントありがとございます。
高木さん、はっちゃけてましたねー。もともとかなりはっちゃける役者さんではあるのですが。
投稿: かわひ_ | 2006.04.04 01:06
つか芝居というか福原流現代歌舞伎ですね。
見得は切るし、題材は男と女の愛憎、そして心中。
幽霊、カラクリ、屋台崩しの大技まで。
役者はもうお腹いっぱいな感じで楽しかったですね。
投稿: きいちゃん | 2006.04.05 15:13
きいちゃん、コメントありがとございます。
ああ、なるほど歌舞伎ってのは言い得て妙かもしれないですねぇ。
投稿: かわひ_ | 2006.04.12 01:44