【芝居】「砂漠の音階」風琴工房
2006.4.7 19:30
先週に伺った稽古場、北大の科学者・中谷宇吉郎をモデルにした風琴工房の新作。彼らの芝居の中では、普通に見やすく「いい話」、金曜夜はほぼ客席が埋まっていました。12日までザ・スズナリ。
稽古場で拝見したものは、完成のレベルになっていたのだとわかります。終幕近くの音(生音だ)や、窓の向こうに見える趣向など、美術や音響が入ってグレードアップ、わかりやすくストレートな話と相まって、楽しめる95分に仕上がっています。
予約が遅かったのもあって、最後列近くで見た印象では、声量など、役者から発せられる「音」のバランスが綱渡りな印象もあります。センセイがあまり早口で滑るように喋ること、逓信からの研究者の声の小ささ、はしゃぐ声のバランスが違和感を感じる前半。後半になれば、それが役者や役のキャラクタなのだとわかるのですが。
理系(でも工学ですが)、という立場で生きてきたあたしにとってはすこし面はゆいように感じるほど暖かい視点。牧歌的というのは背景の時代によるものにせよ、どこか傍観し支える力の視点を感じるのです。秘書や妻の芝居の上では脇の位置ですが、その視座から、研究室の一日を見据えている感じがします。作家が女性ということがあるのかもしれません。「法王庁の避妊法」でも同じような感覚にとらわれたことがあります。どこかで繋がる感覚なのです。
虚勢を張りながらも夢やぶれて帰国した昔の友人のシーン、華やかさの裏に居る研究者のシーン、この二つが好きです。こういう「立場」にアタシは涙するのです。研究者を演じた岩崎裕司、ともすれば滑り、走りがちになる芝居を絶妙に制御する確かな力が圧倒的。妻を演じた松岡洋子の役柄は「昔の日本女性」なのでしょうが、ぬれ潤った声質と相まって魅力的です。若手の元気さが芝居を活気づけます。
風琴工房 「砂漠の音階」
2006.4.5 - 4.12 ザ・スズナリ
作・演出 詩森ろば
出演 杉山文雄(グリング) 岩崎裕司 増田理(バズノーツ) 宮崎新之助
松岡洋子 宮嶋美子 笹野鈴々音 浅倉洋介(以上 風琴工房)
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