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2006.03.05

【芝居】「ここでキスして。」シベリア少女鉄道

2006.3.5 14:00

作りあげた世界を終盤、ひっくり返すようなメタ世界に変えてしまう手法で人気のシベリア少女鉄道 の新作。90分。紀伊國屋サザンシアターでの公演は終了。じつはなかなか面白かったのです。

(ネタバレあり)

地方の小さな温泉旅館。結婚を控えた有力者の息子と父親が泊まっていて、いつになく緊張感。しか し息子にはかつて別れた恋人が居て忘れられない。この夜運命の再開をした彼女はこの旅館で働く新 米の仲居だった。旅館の主人や有力者にバレないように二人を逃がそうと応援する旅館の従業員たち …

というストーリーを成立させるように登場人物になって演じるらしいゲームの世界。有力者と仲居役 に扮した二人はコンピュータが制御する他の登場人物たちに話をあわせ、物語に矛盾を生じさせないよう にしながら、決められた結末に向かってストーリを運んでいく。が、突然システムが不調になり、 コンピュータ制御する登場人物たちが向いている方向を間違ったままストーリを展開してしまう…

あたしが前回みたのは去年の5月でした。初めてのサザン、あまりにも酷い出来に落胆し、あたしはその次の公演(2005.10 「スラムダンク」)を見ていませんでしたが、評判は悪くないので、見てみることに。観客は満員。芝居を普段見ないような観客が多いのと、特にアイドル芝居でもないのに20-30代の男性が多いのが特徴的。果たして、場内は大爆笑だし、仕上がりもかなり高いレベルだったと思います。前半は三谷幸喜かと思うようなシチュエーションコメディとしてもちゃんと成立してるし、後半のねたもそれなりにレベル高い。しかし、こちらが大ねたを期待してるというのもありますが、破壊力という点では、少々弱く感じてしまうという人がいるのもわかります。

シベリア少女鉄道のほとんどの作品は、前半で物語を作っておき、後半にその外側(メタ)な世界を提示して、その世界にはまりこんでいることを示している、というパターンのものです。3つの別個の芝居が最後にハイジになったり、4面で行われた芝居が実はダンスダンスレボリューションの方向にあってたり。この、メタ部分を作るときに 既存の有名なストーリーやゲーム、ビデオクリップなどを使うことが多く、それを知っている観客にとっては破壊的な面白さを提示することができます。反面、たとえばウタダのビデオクリップやストリートファイターというゲームを知識程度にしか知らないと、面白さはそれなりになってしまいます。これがシベ少の強みでもあり弱点でもあったわけです。どうしても観客の年代や経験したコンテンツに依存してしまうのです。

VRという作品で見せたのは、ERというドラマの外側に架空のオンラインゲームのプレイヤーを投影してみせたやりかた。このときは外側の世界を映像でつくっていて、ちょっと不満が残りました。今作はこの流れの先にあるのだと思います。つまり、既存の何かのコンテンツをメタ世界として使うのではなく、架空のゲーム(が、どこかにありそうな)を設定し、その世界をちゃんと構築してみせるといういやり方なのだろうと思います。今作においても、やはりゲームというコンテンツに頼るってのは弱点になりえますが、今の時代の感じをつかんでいるならゲームシステムは容易に理解できますから、観客の幅はずっと広がるように思います。大きなことを言えば、このアイディアの延長線なら外国にだって映画にだってできるかもしれません。(いいすぎか)

一番最初に上手側にロボット犬の玩具が出てきて、壁に当たったりして進めなくなってるのだけど、ある意味ねたばれを最初にもってくる。まあ、味付け程度ですが。前半の芝居(内側の世界)がどんどん巧くなってきてて、このまま単なるシットコムにしてパルコ劇場かうめだ花月(今のあるのか知りませんが)あたりでやってても不思議はない感じもします。オチ路線に汲々とするというのがいいことなのかの分水嶺だと思うんですが、今作に限っていえば、シベ少的なオチが、あたしは結構面白かったのです。

先行するレビュー、「小劇場系」では、エヴァンゲリオンとの関連での解釈を展開。あたしはまったくエヴァを見てないので、(あたしはファーストガンダムから数年しかわからない...)こういう解釈にはなりませんでしたが、それでも十分面白かったなぁ。

シベリア少女鉄道vol.15「ここでキスして。」
2006.3.1 - 3.5 紀伊國屋サザンシアター
作・演出 土屋亮一
出演 前畑陽平 藤原幹雄 横溝茂雄 吉田友則 篠塚茜 出来恵美 内田慈

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コメント

>というストーリーを成立させるように登場人物になって演じるらしいゲームの世界
そうなんですね。そう思ってもう一度思い出してみると、かなり納得できる。自分の理解力の無さに自分でビックリします。

投稿: ドラ | 2006.03.06 08:01

ドラさん、コメントありがとございます。

ええとですね、ネタとしては、エヴァンゲリオンで正解のようです。でも、あたしは全く観てないのでさっぱりです。音楽すらわかりません。エヴァの世界に、こういう、人間が苦労してキカイの暴走のつじつま合わせ、ということが描かれているのならば、そのパロディとなる本作は更に凄いなぁと思うのですが。

投稿: かわひ_ | 2006.03.06 22:50

>人間が苦労してキカイの暴走のつじつま合わせ エヴァは正にその事を描いている作品です。異論のある方もいると思いますけど。エヴァは基本的に「制御不能」なキカイですから。

投稿: ドラ | 2006.03.07 10:48

ドラさん、コメントありがとございます。

暴走のつじつま合わせ、ということが一致してるのですね。あたしの思ってたよりも、高度に作られているということですね。うあ。
ご教授、ありがとうございました。

投稿: かわひ_ | 2006.03.09 01:06

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