【芝居】「満天の夜」KAKUTA
2006.2.24 19:30
リーディング企画二本立てのもう一本。こちらの方が大人向きのロマンチックな短編を5本。どちらか一つならば、こちらを。90分。26日まで、スターホール。プラネタリウムだと思って油断すると、椅子に座れるのは30人弱。床に座らせた客席も多いので、ブーツや厚着を避けて。
短編の物語を、アルケミストの歌でつなぎます。全体としては恋愛モード全開で選択したように、いろんな視点の、しかし異性が好きな気持ちにあふれる4本と、全体を貫く1本。
あまりに疲れた日常に見つけた奇跡の一瞬を、分かち合いたい気持ち「一番星」(田口ランディ-「その夜、ぼくは奇跡を祈った」,amazon )。日常からすっと立ち上がりたいのだけれどそうもいかないランディ作の鬱屈にすこし涙。こういうの好きなんです。
男の子が毎日来る、女の視点で「星の光は昔の光」(川上弘美-「神様」,amazon)。 幼い男を見つめる女の実は情欲に近いねっとりとした視線に感じられてならない川上節。
原宿の裏道で一瞬すれ違った彼女は「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子と出会うことについて」(村上春樹-「カンガルー日和」,amazon)。 コミカルに演出されている、男の子視点の村上春樹は見やすくスタイリッシュで面白い。
結婚間近の女、公園で見つけた背中の過去「いつか、ずっと昔」(江國香織-「つめたいよるに」,amazon)。 少し夢想する、自分はどこから来たのだろうというような話を江國香織が書いているとは。コミカルに見えて、いやいやどうして深い。コメディと言わず、真剣な気持ちとして描く好感。
星空の下、姉妹の会話(谷川俊太郎-「二十億年の孤独」,amazon)。谷川俊太郎の全体を貫く姉妹の話は、終盤たった一つのことばで、全てを理解させなければいけないのだけれど、ちゃんと反応する客席。ガー泣きですよ、あたし。
こういう女の子節大好きなあたしとしては、すべてがアタリ。強い作家の物語をアソートしたのはさすがに強い。昼に比べると、プラネタリウムの星空を多用して、空気を作り出します。規模に比べて多い観客。前売りは完売しており、床に座布団席が大半を占めます。プラネタリウムには真ん中には大きな投影機ですから、当日パンフで触れているように、死角も多いのです。オペ卓を背にして左側の椅子席がベストだろうと思うのですが席は少ないです。物語に大きな影響はないのだけど、見えないと気になるのが観客ってものなので。でも、あの高さの舞台を作っただけでも、観客の視点があるのだなあと思います。
もうひとつ、一応三歳以下の子供を入れないようにアナウンスをしていますが、こちら「満天」に関していえば、小学生でもちょっと厳しいかなぁと思ったりします。このあたりは子供それぞれなのだろうけど、リスクは高いように思います。もっとも、通路際の座席に誘導し、フォローできるような場所に座らせているのは制作の対応としては正しいものだといえます。あたしは子供がいないから、厳しいこと云っちゃうのかなぁ。うーん。
KAKUTAKAKUTAとアルケミストとスターホール「満天の夜」
2006.2.23 - 2.26 町田 スターホール
構成・演出 桑原裕子
読本 田口ランディ「一番星」"その夜、ぼくは奇跡を祈った"(大和出版)
川上弘美「星の光は昔の光」"神様"(中央公論新社)
村上春樹「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」"カンガルー日和"(講談社)
江國香織「いつか、ずっと昔」"つめたいよるに"(新潮社)
出演 成清正紀 若狭勝也 原扶貴子 大枝佳織 松田昌樹 佐藤滋 野澤爽子 高山奈央子 横山真二 馬場恒行 桑原裕子
三谷智子 水野美穂(東京パフェ) 田仲祐希
こんやしょうたろう(アルケミスト・Vocal) 井尻慶太(アルケミスト・Piano)
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コメント
きゃ~!村上春樹の100%~をリーディングしたんですね!!
実は去年のバースディパーティ、最初はこの本をリーディングしようと思ってたのです。
あ~見に行きたかったなぁ。残念!!
投稿: ヨウ | 2006.02.25 14:26
ヨウさん、コメントありがとございます。
村上春樹がこういうコミカルさのある作品書いてるって知らなかったので、面白かったです。横濱のもそうでしたが、リーディングとはいいながら、芝居っぽい出来になってるものが最近増えていて、これもそんな感じでした。
投稿: かわひ_ | 2006.02.26 23:52