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2006.01.21

【芝居】「タイタス・アンドロニカス」山の手事情社

2006.1.20 19:30

山の手事情社が3作を交互上演する"Yamanote Fair"の中の一本。05年9月にスイス・ドイツで山の手事情社が初演したシェイクスピア作品の日本初演。残りは22日、吉祥寺シアター。(夜に追加公演あり)。2月にはNHKでの放映も予定。(をを、ハイビジョン撮影だ)

ゴート族の女王とその愛人アーロンを中心とした陰謀により度重なる身内への悲惨な仕打ちを受けるうち、国家に忠実だったローマの将軍・タイタスアンドロニカス復讐にのめりこんでいく。

日本初演とはされていますが、99年に上演された「印象・タイタスアンドロニカス」が原型にはあるようで(あたしは未見です)、劇団webにあるアーカイブを見ると、衣装や装置のそこかしこに名残があります。今回は海外向けに作ったモノということもあり、衣装や所作にどこか日本的な強調が見られたりはしますが、大きな問題となるものではないと云う気もします。

当日パンフには「テロリストの誕生過程」を結果的に描いている本作に興味があるという趣旨が述べられています。テロリストというよりは、何がそこまで人間を暴力の応酬に駆り立てるのかということを描いているのだと感じました。

加害者と被害者を交互にロールプレイし、閉塞したループの中でまるで発振(ハウリング)するかのように、互いの応酬を繰り返しながら「恨みの拡大再生産」を繰り返していく二者(タイタス側と、タモーラ側)が明確に描かれています。何カ所かで描かれる、粘土をたたき付ける演出は、印象的です。

特に印象的なのは、二回目の粘土のシーン。周囲の役者たちは「平和」を題材にしたいくつかの歌を口ずさみながら、弛緩した状態なのだけど、中央では「恨みの粘土」はくりかえしたたき付けられています。表面的には平和に見えたとしても、恨みが醸造されていることをこんなにもシンプルなシーンで明確に印象づけます。

大久保のラヴィニアは、演出上のいくつかの工夫があることもあり、前半物語の陰惨さを一手に引き受けて印象的。もっとも、後半は彼女自身もループの中に取り込まれるのですが。タモーラを演じた倉品、アーロンを演じた山本はこのループの起点ともなるべき悪役をしっかりと。タイタスを演じた三村の凄みも印象的です。

山の手事情社Yamanote Fair 2005「タイタス・アンドロニカス」
2006.1.13 - 1.22 吉祥寺シアター(「ぴん」「牡丹灯籠」と交互上演)
原作 W.シェイクスピア   構成・演出 安田雅弘
出演 山田宏平 名久井守 倉品淳子 山本芳郎 川村岳 岩淵吉能  太田真理子 野々下孝
三村聡 浦弘毅 斉木和洋 鴫島隆文 大久保美智子 水寄真弓

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