【芝居】「パーフェクトキッチン」リュカ.
2005.11.23 19:30
スタイリッシュな会話の芝居を得意とするリュカ.初の再演。二回の小さな公演でサイドストーリーを積みかさね、満をじして。27日まで、渋谷ギャラリールデコ3。
大人になった四人兄弟。兄の二周忌、法事の日。仕事が忙しくて行けないイラストレーターの姉、法事を仕切った弟は密かに心悩ませ、妹は実家を飛び出し転がりこむ。
それぞれ勝手に行きてる兄弟、法事の場ではなくその日の朝晩の部屋での会話の積みかさねるうち、そこにはないのに、目に浮かぶ幼い日の風景。あの日があるから、密接ではない現在でも気持ちが通じるのです。
役者が絶妙にぴったりとはまり、劇団の宝とでも言えるような、バランスのよい仕上がり。静かでノイズらしいノイズのない透明に透き通ったような会話のかたちは、ともすれば引っかかりのないものになりがちなのですが、しっかりと踏ん張るちからがあるのです。物語は全体に見ると繊細で力強さには欠けるところがあります、ちょっとしたことで壊れてしまいそうな、ささいな会話の積み重ねなのです。が、語られた結果できた空気は、とても愛おしいものなのです。
役者は軸となる看板・境宏子のコメディエンヌぶりだったりお姉さんキャラだったりの表情がころころと楽しい、なかなか会えない夫を思う物憂げな表情が逸品。もう一つの軸となる看板・池田ヒロユキのつぶやくような声や、あるいは、キッチンについての一人語りは、そこにあるかのような説得力を持っています。
ルデコ3の天井は上階の足音や何かを転がす音など、騒音の面では相当に不利なのは否めません。静かだったり、時間の流れを意識的に早めるいくつかのシーンでは問題が特に大きかったのは残念なのですが。
7月公演(緋色の屋根)では、水沢シオリと秋川ヨウヘイの披露宴の待合いを舞台にした何気ない会話から浮き出す、子供の頃住んでた家に馳せる想いを描き、10月公演(本の庭、暮れの丘)ではその二年後、秋川ヨウヘイは死んでしまって半年、イラストレータの姉の周りの人々という描き方で人の繋がり。本作は時間軸としてはその二年後にあたり、死んでしまった人のことを忘れて次のステップへと歩み出す弟の姿というシリーズになっているように思います。かつて子供の頃に住んでいたところの追憶と、今この瞬間に失ったものの想いとその折り合いをさまざまに変奏しながら描いてると思うのです。
リュカ.第8回公演「パーフェクトキッチン」
2005.11.23 - 11.27 ギャラリー ルデコ3
作・演出 渡邊一功
出演 池田ヒロユキ 境宏子 増戸香織 宇和川士朗 渡辺詩子 鈴木浩司 竹下カオリ(tsumazuki no ishi) 中田顕史郎
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