【芝居】「大正八年永田町」パラドックス定数
200511121900
去年末の佐藤佐吉エントリなパラドックス定数の9公演目。13日夕方まで王子小劇場。
国会議事堂の建築意匠を一般公募しながら「一等なのだけど不採用」で、変更後の設計者の名前が残っていないことや、「当初ドーム状だった屋根が世界に類を見ない角錐状になった」というような史実を軸に、東京の地下を張り巡らせる謎の地下施設があり、丸ノ内線着工(S26)の遙か前の戦前から何かがあったのでは、という推測をもとに、戦前のきなくさい雰囲気の中での議事堂と地下鉄を作った男たちのシゴトと翻弄を描くのです。
東京地下に戦前からあるといわれる謎の地下施設と地下鉄の路線、軍を結びつけた、いわゆる都市伝説というのは数々あれど、地下ゆえに真実が実は誰にもわからない点で、それ自体はあたし結構好きなのです。有名なのは、このあたりのホン(シリーズで数々出てますが、最初に出たこれが一番気合い入ってる。プロとは思えないぐらい読みにくいことこの上ないですが。)でしょうか。クレジットこそありませんが、本作の物語の着想は、ここから出ている気がします。物語の主眼は、その妄想の中での男たち、にあるわけで、背景として使っているにすぎませんが。
舞台は薄暗く、役者はメガネ男子(いつのまに出来た、こんな言葉)+スーツ。云われているほど照明が暗いという印象は受けませんでしたが、役者の区別が付きづらいというのは事実です。出来るだけ前席を確保すべし。スーツでかっこいい骨のある男たちの芝居という印象は確かにあって、意外にありそうでないポジション。
確かにアタシは地下鉄とか電車とか建築物とか、秘密の地下施設とかいう想像めいた話が好きなので、もうワクワクの話。でも、普通の人にとってはどうなのかなぁ、とも思うのです。終演後に永田町近辺の地下鉄路線図を見て想像をたくましくするのも楽しい。
図面が引ける天才、バランスをとる人、政治力「だけ」で生きる男。何が正しいかではなくて、どういう意志があるか、といういうことが歴史を決めていくというあたり、あたしも同感。いえ、そんなおおげさな話ではなくても、普段の生活のちょっとしたことでも。設計技師になり損なった男の嫉妬にも似た感情も、この歳になってみると身につまされる感じも。実力がないことを自覚して、静かに身を引いていった男の姿ってのを、想像するのです。
パラドックス定数第九項「大正八年 永田町」
2005.11.9 - 11.13 王子小劇場
作・演出 野木萌葱
出演 植村宏司 十枝大介 杉田健治 西原誠吾 舞場壊人 井内勇希 千葉伸吾 大塚秀樹 小野ゆたか
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コメント
昨日はどおも。飲み会であまりお話できず残念でした。KANA@七人の恋人です。
普通のヒトですが、すごくおもしろく緊張しつつ拝見してました。私としては、皇居の下は深ーく掘りますよというセリフに反応。でも実際は皇居の下って何も通ってないですよね。(勘違いでなければ。)あそこにあの緑の空間があるのはよいけど、交通の邪魔だなといつも思ってしまうので。
どこまで史実に基づいているのかわからないけど、あの不思議なデザインにあんな経緯があったとは。
役者さんたちのいかにも普段背広を着慣れてない感じがまたリアルでよかったです。
投稿: KANA | 2005.11.13 14:31
KANAさん、コメントありがとございます。
楽しめていただけたようで、何よりです。って、あたしが礼云うことでもないですが。
皇居の下の話は確かに、今、私たちが使える地下鉄ではないですよねぇ。でも、たとえば半蔵門線の永田町から大井町にまっすぐトンネル堀りたいよなぁ、普通って感じは、しますよね。東京駅から皇居一帯には巨大な軍事的な地下施設があるって話はまことしやかに都市伝説としてはあって、そんな噂を聞きかじってたりすると、現実はどうであれ、芝居は結構楽しめました。
投稿: かわひ_ | 2005.11.13 23:50