【芝居】「ニセS高原・蜻蛉玉」
2005.9.19 19:30
平田オリザの戯曲を、4人の演出家が競作する企画。紅一点の作戦は、視点をひっくりかえすことで、じつはほとんどを書き換える、という方向のよう。あたしはこれ、好きです。27日まで、アゴラ劇場。
サナトリウムのような療養施設。静かに死を待つ人々。外から友人や恋人たちが訪ねてはくるのだけれども、明らかに流れる時間が異なる。というS高原の基本のパターンは踏襲。蜻蛉玉はすべての役の男女を入れ替える、という方法をとりました。
結果、なかなか訪ねてこない恋人は、大悪党のように描かれ、テニスをする面会人の男はこの上なくいい人になり、新しい入院患者はあきらかに妙な人になります。恋人の別れの予感は、当初からあからさまに描かれていますが、きっと彼女たちの視点では、あたしたちのやり口が、あのように見えているのだと思ったりします。あるいは、外車に乗って登場する彼の、こちらの都合など考えてくれない、しかし悪意のない突っ走りに戸惑うのも、彼女たちの視点なのだろうと思います。
方法としては古典的な思いつきですし、物語としてはバランスを崩しすぎてめためたになってる気もします。が、あくまで静かに耐える男たちとは違う視点の持ち方は、物語そのものを変えてしまっていると思うのです。
設定は富山あたりらしいのです。医者たちの大らかな感じが、もとのS高原とは明らかに違うのですが、全体として陰鬱になりがちな流れの中では、安心してみられる緩急になっていると思うのです。
終幕のシーンは明らかに異なります。静かに流れる時間が続いていくのか続かないかを表明しないオリジナルに比べると、行く人と残る人を明白に分けているのです。わかりやすくはなっていますが、これが成功しているのかどうかは、難しい気もするのです。
ニセS高原から「ニセS高原・蜻蛉玉」
2005.8.28 - 9/27 アゴラ劇場
原作 平田オリザ 演出 島林愛 出演 井上幸太郎 打田智春(蜻蛉玉) 大竹直(青年団) 北村延子(蜻蛉玉) 小松留美 佐藤恵(蜻蛉玉) 島田曜蔵(青年団) 島田桃依 鈴木智香子(青年団) 主浜はるみ 夏目慎也(東京デスロック) 西山竜一(無機王) 日比大介(THE SHAMPOO HAT) 望月志津子(五反田団) 安村典久 鷲尾英彰
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「三ノ輪の三姉妹」かるがも団地(2024.10.10)
- 【芝居】「ハッピーターン」劇団チリ(2024.09.29)
- 【芝居】「昼だけど前夜祭」劇団チリ(2024.09.16)
- 【芝居】「朝日のような夕日をつれて 2024」サードステージ(2024.09.08)
- 【芝居】「雑種 小夜の月」あやめ十八番(2024.09.01)
コメント