2005.9.18 14:00/19:30
11年目のKAKUTAは「星の一年」と題した3つの公演を予定。その最初。田舎の駅を舞台にしたロマンチックなような、そうでもないような話。ダブルキャストで19日までシアタートラム。両キャストの違いは、場所の設定、方言程度。キャストそのものの差が一番大きいのですが。
客もあまりいない田舎の小さな駅、新任の駅員の配属と居なくなる駅員。100年に一度の大流星群にあわせて特別列車が出たりしているが、その会場は隣の少し大きな町で、この駅には、多分とまらない。待ち合い室を埋めるのは、行く当てなく居続ける女、誰かを待つわけあり風の女、隣町のイベントに出ないと云うコーラスのグループ、骨壺を胸にずっと居る男と、近所の人々。
初演は明石スタジオ。舞台の大きさはいったい何倍なのやら。とにかくどたばたと動き回る人物たち、いれかわりたちかわり、いくつかの話の並行も一本にまとまることなく進みます。明石スタジオの規模ではそれが勢いやパワーに転化していたと思うのですが、トラムの舞台においては、少々厳しく働いてしまったようです。複数の流れがややこしさを生んでしまっているようです。混乱が混乱のまま終幕してしまうベガ、終盤で一気にねじ伏せるように場面を作るデネブ。どちらも規模と声の大きさ、演技のスケールを掴みかねている印象があります。
とはいえ、この規模の劇場にどれだけの時間で上り詰めてきたか、若いカンパニーであることを考えれば、求められている水準をはるかにクリアしているとはいえます。ベガサイドは全体に若い感じのするKAKUTA俳優陣に客演を迎えた感じ。もともとは「あてて書かれた」印象のあるいくつかの役を別の役者に振っているわけで、かえって力が分散してしまったような印象になるのももったいない。割り振りの問題はデネブにもありますが、ところどころを押さえている感じを受けます。
とはいえ、口当たりがよくて少しやさしい感じ、誰が見ても楽しめるというタイプの舞台。芝居に求めるものはひとそれぞれでしょうが、軽演劇的な方向を見据えた彼らは、着実に地固めをしているのです。
台詞を追っていくとおかしなことは山ほどあります。国鉄からの26歳が居るのに、携帯やサイトの話。東北の話だと思うのに、「したっけ」という言葉。(東北でも、したっけ、という言葉を使うところはあるのだそうです。ご指摘感謝。それどころか、茨城、房総などでもあるのだそうです。)が、作家の意図はそんなことはどうでもいいのだと思います。リアリティなのではなくて、どこでもない、しかしフォークロアな場所を、田舎の駅の待合室に求めたのだと思います。結果、かなりごった煮なのですが。
本来、軸となるのは売店の女、無断宿泊した女、弁当を持ってくる女の、地元の同窓3人の女性と、その3人の姿を一日見続けている若い駅員なのだと思います。初演は、このトライアングルを劇団の女優たちで固めているのが安心感だったのですが、今回は客演だったりシャッフルしてしまったためにバランスが微妙になっている気はします。が、それでも軸は変わりません。この3人、売店の女から見るとあまり話したことさえない同窓生、この距離感の微妙さが実に巧いのです。
中盤、おにぎりを詰まらせた女の台詞「背中、たたいていて」が印象的。それに応える男、一回目と二回めの差が絶妙。終盤に居座った女の姿が、さっぱりとしたベガと、女の子でありつづけるデネブの差が興味深いのです。
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