【芝居】「5seconds」パラドックス定数
2004.11.2 20:00
王子小劇場職員が、自分の目で選んだラインナップ「佐藤佐吉演劇祭」の初っぱな、パラドックス定数の「5seconds」。 羽田沖墜落事故(1982)の機長と弁護士の接見を4シーンで見せる濃密な二人芝居。約70分。 月曜火曜のみの変則上演で16日まで(11/8・9・15・16)、王子小劇場。
本当にシンプルな舞台なのです。奇しくも上映の始まった映画「笑の大学」に似た、二人の男が机を挟んで向かい合うフォーマットは一緒。二人の気持ちが近づいたり、離れたりを繰り返すのもかなり似ていると感じます。もちろん片方は「笑い」であり片方は「接見」ですから、物語はまったく違います。これっぽちも笑いのない、が、飽きさせずに一気に見せる力作なのです。
あたしは事故をリアルタイムで見ていたとはいえ、その後にどのような経過をたどったかは、実はあまり知りません。、CVRがひたすらボイスレコーダーからの「事実」だけで芝居を作ろうとしたのに比べると、作家や役者の仕事がしめる部分は多いのだろうと思います。でも、CVRでは泣いたけど、こっちはなんか深くため息をつく感じ。もちろんどちらもすごいのですが。
劇中現れる弁護士は、弁護団の中での「もっとも下っ端」。最初のシーンで、機長の言動が完全にキチガイのそれだと思われたのだけど、一瞬の正気や真実を見つけます。会社という組織がどうやって個人を切り捨てていくか、その過程とともに、弁護団という組織の中での弁護士の位置がだぶります。どうやって、組織に抗っていくかという「ひと」の芝居なのだと思います。もちろん機長は理性的とはいえ完全な健康ではなく、意識の浮き沈みが見えますから一筋縄ではいかないのですが。最後の10分、「空白の5秒」の間に、いったい、どう考え「何をしたのか」ということが示される圧巻。ええ、それが真実なのかどうか、あたしはわかりませんが。
席はあまり埋まっているとはいえません。もったいない。二人の向かい合いなのに、囲み舞台、しかも側面には席がありませんので、二人の表情を同時に見ることができないのがもどかしいのです。どうしたらいいんだろう。もっと高い場所から囲むようにするのか、あるいは側面からだけ見せるようにするのがいいのか..よくわかりませんが。
パラドックス定数「5seconds」
2004.11.1-11.2, 11.8-11.9, 11.15-11.16 王子小劇場
作・演出 野木萌葱
出演 植村宏司 十枝大介
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