【芝居】「鳩」メタリック農家
2004.10.24 18:00
4回目の公演を迎える「メタリック農家」の新作。全作とはうってかわって、血糊飛び散る、おどろおどろしい(ところもある)舞台の雰囲気。あたし個人としちゃ思うところはあるけれど、しっかりと見せる一本です。24日まで空間リバティ
14歳のときの性的サディズムの犯罪を起こした男、名前が報道されることなく7年後。つぶれかけの結婚式場で働く彼と結婚すると決めた一人の女性が、その過去を知り、周りの人もそれを知り、興味本位の報道陣が押しかけ...
現実のシーンと夢想のシーン、時間の前後を組み合わせて実はけっこう凝ったシーン展開。転換もスムーズだしおもしろいのだけど、現実と夢想がわかりにくいのがちょっととまどいます。たとえば、報道陣が押し寄せてきてフラッシュ→テープレコーダー→血まみれの惨殺→入院というシーン展開のうち、惨殺だけが夢想のようなのですが、あんまりそう思えないのです。友人によれば入院のシーンにだけ紗がかかってるってのも理由でしょう。確かに。
だから、実はあの男、現在においては何もしていない、ということなのに、ぼーっと見ていると、「一度精神的に病んだものは治らない」という前提で話を書いているように見えてしまうのが、しばらくずーっとひっかかっていました。が、世間の偏見としては、もちろんあるものとして。いい悪い、事実・嘘というのとは違って好みの問題ですが。
ただ、二人が結婚衣装を着て、チャペルに居るシーン。二人は結ばれるかのように見えるけど、女も、その偏見の呪縛からは逃れられず、「ごめん」と言うのです。愛ある二人を引き裂くのは、現代では家柄ではなくて、病や偏見なのだ、ということを言いたいのだとわかってからは、わりとスムーズに見られました。終幕の血まみれの鳩にほおずりするシーンにしても、それでも愛しているんだ、ってことですものね。
葛木英さんのかわいらしさ、前作(なんせかぶり物だ)とはうってかわってすごい。チャペルのシーン、千秋楽では突然の涙を、それでも押さえ込んで。岩田裕耳さんの落ち着いた雰囲気はばたばたした厨房のシーンをしっかりと支える。古市海見子さんの強烈なキャラクタはすごい。
メタリック農家2004年10月の公演「鳩」(pigeon)
2004.10.22 - 10.24 しもきた空間リバティ
作・演出 葛木英
出演 中島徹 葛木英 岩田裕耳 永山盛平 横島裕 古市海見子 大川祐佳里 伊藤一将 坂元美佐登 萱嶋尚史 岩佐麻利恵
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コメント
「血糊飛び散る、おどろおどろしい舞台」と書くと、見てない人にはアングラかと誤解される
虞があるよ。ぜんぜんそんなこたぁなくて、エンターテインメントですがね。
現実ではなかったのは、タカちゃんが仲間を皆殺しにするシーンと、タカちゃんとツルベェの
結婚式のシーンですね、あとから思えば。でも、ツルベェの悪夢であった惨殺シーンの直後に、
紗幕のかかった入院シーン(現実)が来るので、どちらが現実なのか一瞬戸惑う、という
ことでしょ。でもまぁ、冷静に振り返るとちゃんと理解できるんで、いいんじゃないですか。
「一度精神的に病んだものは治らない」ってのは感じなかったけどなぁ、終始。
そう思っているように振る舞う人物(家元)は登場するけど。タカちゃん役、中島さんの
芝居からも、狂気は感じなかったよ。殺鼠剤のくだりでも、きわめて冷静に笑えない冗談を
言ってたから、もう完全に更正してるように見えましたけど。彼よりは、カネのために
仲間を週刊誌に売った“那須”のほうが、よほど悪人に見えました。
だから、どっちかって言うと「いちど前科がついたら、世間はもう認めなおしてはくれない」
って言い方のほうが近いかな。
しっかし、中島さん、二枚目ですなぁ。
「どこからが異常か決めたのは、神様じゃない」とか「どうして彼女は僕に謝っているの
ですか」とかいう台詞(うろ憶えなんで正確じゃないけど)が気障にならない。
あきら女王はウェディングドレスが眼福でございました。タカちゃんに「肉まんみたい」と
言われ、俯いた笑顔がすばらすぃー。そして何より、この若さでこういう破綻のない物語を
書けてしまうところが、大したもんだと思いますな。
投稿: おくむら | 2004.10.25 17:41
コメントありがとうございます。
確かにそこまでおどろおどろしくなかったかもしれないです。言われてみれば、「治らない」という視点じゃなかったと思うのだけど、でも見てる最中はずーっと、「なんかこんな描き方やだなぁ」と思いながら見てたんだよなぁ。なんでだろ。
投稿: かわひ_ | 2004.10.29 01:43