【芝居】「月と牛の耳」弘前劇場
2001.6.9 S
弘前劇場の新作は、2人の作家の一人、役者でもある畑澤さんの一本。 通常の公演に比べて少しばかり突飛な設定。でも、前作に比べると、 弘前テイストが強い、と感じます。
かつては空手の大きな流派をもっていた父。記憶障害の難病で入院しているが、 そこに長女が結婚相手をつれてやってくる。 が、その光景はもう何年も続けられていて。父親にとっては、桜が満開な ある日、長女が結婚相手を連れてくるあの日で止まったまま、同じ日を繰り返して 過ごしているのだった。
父親は6年もの間結婚は認められず、じつはもう結婚してしまって いたり、高校生だった次女だってもう高校生を貫き通すのもつらくて。 父親は明日にでも道場に戻る気だが、すでに道場は人手にわたっていて、 長男は公務員、次男は海外に修行にでていて。父親のあの日をくりかえす、 年に一度、子供たちが集まって。
父親の存在が巨大で、がんこで強力に君臨していて。当の本人はそのままの つもりだし、周囲もそれを認めさせようなんてことはしないのだけど、 しかし、確実に時間は流れているし、その日を永遠に繰り返すなんてことは できないわけで。いよいよ、その毎年の「行事」をあきらめるか、という この日、格闘家として父親に結婚を申し込む男。
徐々にあかされる家族の現在。観客は、最初、父親の「生きている」 6年前のあの日の状態から物語に入ります。ものがたりが進むにつれ、 それは彼の記憶の中にしかない世界なんだとわかっていきます。 この視点の推移こそが、この芝居を見ている観客を不思議な 感覚に誘うのだと思います。このあたり、実に鮮やかで印象に 残るのです。
【観劇データ】 2001.6.9 19:00 - 20:40
●弘前劇場公演2001「月と牛の耳」
2001.5.25 青森市男女共同参画プラザAV多機能ホール
2001.6.1 - 6.3 弘前 スタジオ・デネガ
2001.6.8 - 6.10 東京 ザ・スズナリ
作・演出 畑澤聖悟
出演 福士賢治 後藤伸也 藤本一喜 佐藤誠 山田竜大 杉原文子 森内美由紀 佐藤てるみ 佐藤潤平 長谷川等 畑澤聖悟 濱野有希
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