「あくびと風の威力」芝居屋坂道ストア
東京初進出、という「芝居屋坂道ストア」。女優だけの劇団、 繊細なものがたり、と聞いては観ないわけにはいきません。なんとか もぐりこんでの観劇。
2005年、10年ぶりの同窓会前夜。寝付けないなおのところに、当時の 友達が、続々と集まってきて。 終わって振り返ってみれば、しっかりした輪郭。が、観ている最中は あれこれ飛び回る時間と場所に戸惑いも。それをしっかり見せない、 うつろな感じというのも、たしかに捨てがたい。でも、あれれと思うのね。
持ち出してきたワインを口にしたあの時、急に仲間が増えたあのとき、 進路指導のあとのとき、あとからあれやこれやと想い出される時間の重さ。 その瞬間は、単なる日常の一こまだったのに、それは明日につながらない、 断層になってしまう。
テレビに次々と、まるで模様のように流れていく、おびただしい人々の 名前。(書いてるだけで涙でてくるぞ、このシーン)体験したわけでは ないから、それはかわひらの追体験などでは決してないのだけど、 このシーンに、かわひらの気持ちは揺さぶられるのです。
何年かして現れた彼女たちは、音大はどうした、なんてことを言いながら も、普通に生きて、普通に日常を送ることのかけがえのなさを静かに 語るのです。生きていくことは、そりゃつらいこともあるけど、 あの時で止まってしまうのと、その後が続くというのでは、まったく 違うわけで。
大幅な改訂を加えているという今回。どこがどう変わったのか、かわひらは 知るよしもありません。が、宇田尚純さんのパワーに多くを負っているところが あって、彼以外では考えられないぐらいにハマっている感じがします。 反面、その部分は物語とは乖離していて、ちょっと違和感を感じないことも ないのです。が、確かに「強烈な記憶」という意味では間違いないわけで、 効果的ではあります。
いくつかの不満は残るものの、ありそうで意外にない、 この繊細さが、かわひらは大好きです。もっと見続けていたいとさえ 思います。今回の東京公演は、大盛況ながらも、予想以上の観客数に 対する対処という点で課題を残したと感じますが、それを彼女たちは きっと解決して、10月にはやってきてくれると信じているのですが。
【観劇データ】
2001.2.17 19:10 - 21:15 最前列下手側
●芝居屋坂道ストア 商品第13号「あくびと風の威力」
http://homepage2.nifty.com/sakamichistore/
2001.2.9 - 2.12 神戸 アートビレッジセンター
2001.2.16 - 2.18 東京 下北沢 OFF OFFシアター
作・演出 角ひろみ
出演 岡知美 大木なつ美 大西美穂 森井陽子 角ひろみ
本多真理 日名子知佐 荒木由香 宇田尚純(客演)
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