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1999.04.24

R/【FORKER】遊気舎

【みたままおもったまま】!!!ねたばれ あり!!!
遊気舎の中ではわりと「文芸路線」寄りではあるのだけど、気楽に楽しめ、 ちょっとだけ怖いおすすめの一本。キャラクタ芝居を「遊気舎らしい」という ならこれはちょっと違うのだけど、そういうのだけじゃないのよ、という 声が聞こえるような聞こえないような。

舞台はシンプルで何もなく、舞台中央に光の環が投影されているだけ。 フォークダンスの環であり、芝居はほとんどその環を中心に行われます。

大阪では舞台を囲むように客席が配置されていたとのこと。ならば 大阪では客席と舞台が一体になるような感じでしたでしょうし、ラスト シーンはさぞかし美しかったことでしょう。その意味ではちょっと口惜しい。 福岡の舞台は東京よりむしろ大阪に近い形のようで、それもちょっと口惜しい。

本多は通常の「ガクブチのある」舞台ですから、それほどの一体感はなく、 かわひらの当日券席からではむしろ遠いという印象。が、ラストに踊っている ところで、役者たちが、まさに舞台に「溶け込んでしまう」という印象は とにかく美しく、印象に残ります。

そう、この芝居でかわひらの気持ちに残ったのは、見事なものがたりでもなく、 手慣れた役者たちでもなく、何ヶ所かのシーンの美しさ。ラストは言うに及ばず、 処刑シーンとフォークダンスが重なりあう後半のシーン、目もくらまん ばかりの派手派手なフォーカーの登場シーン、空那に松岡が面会して 名前の由来を聞くシーン、ミキ婆とのダンス対決なシーンなど、光が 美しいのが印象的。

女優を中心に据えたものがたりは、普段の遊気舎では影にかくれがちな 女優達の個性を引き出しています。キャラクタ芝居でない魔瑠さん、 笑いのほとんどない楠見さん、きまじめ委員長な小川十紀子さん、 威勢のいい中平みほさん、体弱い工藤まきさんなど、それぞれの表情が のぞけて楽しい。

が、一方で強力な男優たちも、普段はわりと脇にまわりがちな役者たちを それぞれに見せ場があるというのが、遊気舎らしくないといえばらしくない けど、続けて観てるかわひらにはちょっと嬉しかったりもします。

女脱獄囚の手記という形を借りながら進むものがたりは、収束されたかのように 見えて、現実世界とのつながりを余韻として残す。遊気舎では 手慣れたパターンとはいえ、きっちりとまとめていくのは見事。

M.C.ヒロヒトってのもちょっとかっこよくてかわひらは好き。本公演でここまで 役者ってのは久しぶりな気もします。 魔瑠さんに老女役、しかもここ数作でのハマり役「ミキ」がなく、落ち着いた いい役。その意味ではうべんさんも出てないし、遊気舎の「キャラクタ」を 期待すると肩透かしをくらうかもしれません。客演・福田転球さんは 出てくるだけで客席の温度が上がる。すごい。

休日は通常のざせきがほぼ埋まる、というような状態で、当日券狙いの かわひらはいちばん後ろの席。平日ならもうすこし良い席がねらえるはず。 ならば、ぜひ。

【ものがたり】
死刑囚・終身刑囚のための、更正プログラムのひとつにフォークダンスを取り 入れている女囚刑務所。先生・松岡(山本)のつくりだす、のんびりとした雰囲気の もと、囚人たちも楽しく過ごしていた。
そこにやってきたひとりの女囚・空那(楠見)は鋭い眼つき、孤独な世界に 入り込み決してとけこもうとはしなかったが、老女囚・ミキ(魔瑠)が見せた ダンスをきっかけにとけこんでいく。

いっぽう、ダンスバトル大会・フォーカーを企画し、フォークダンス集団・ フォークウォーリアーズを率いるマイキー(後藤)は、大会をもりあげるために 死刑囚たちのフォークダンスチームを出場させようと画策し、刑務所長・黒崎 (岡田)に交渉する。フォークウォーリアーズのメンバー・倉田(西田)には 気がかりなことがあった。自分が犯した殺人の罪からは逃れたものの、殺した 娼婦の姉こそが、その刑務所に服役中の空那だったからだ。

女囚たちのフォーカー出場は認められ、スティール・キャッツという名前も 決まり、練習に余念がなかったある日、メンバーの一人・辻森(小川)の死刑執行 が早まり、死んでしまう。その日以来、松岡も姿をみせなくなり、メンバーは 落ち込んだ日々を送っていたが、性別不明の死刑囚・ピーター・ガン(福田)が メンバーに加わり、彼女たちは活気を取り戻す。

フォーカーの幕が切っておとされた。なんとしても優勝を逃したくない フォーク・ウォーリアーズはさまざまな妨害工作をするが、スティール・キャッツ は優勝への階段をのぼりはじめる....

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●遊気舎 Vol.26「FOLKER」
1999.4.4 - 4.11 大阪 近鉄アート館
1999.4.22 - 4.29 東京 下北沢 本多劇場
1999.5.2 福岡 大野城まどかぴあ大ホール
作・演出 後藤ひろひと
出演 楠見薫 山本忠 福田転球(転球劇場) 久保田浩 西田政彦 谷省吾    魔瑠 信平エステベス PJAG40人.. 魔人ハンターミツルギ 中平みほ 小川十紀子    工藤まき まついきよし バカボン 峯素子 岡田美子 史野サロウ 篠垣雅男 田中香奈 二宮いづみ 藤田佳苗 後藤ひろひと(piper) エル・ニンジャ 
(コロス/東京) 阿久津勝哉 石野紀子 いせゆみこ 伊藤たまみ 大原康子   小野ひでゆき 斉藤麻英子 中根美好 ババヒロアキ 日向新 平井ゆり子    ますだころ 松下清永 森野久美子 山下聡美

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