【青竹踏】つめきり
99年@nifty FSTAGEに書いたレポートの再録です。
いまのところ、大お気に入りの「つめきり」の新作は、珍しく 一本もの、とのふれ込み。実際にはわりとオムニバスな作りになっていて、 煩わしくない感じが心地よいのです。が、誰にでも薦められる、というのとは ちょっと違う気もします。
ひとことで、つめきりの芝居を表現するなら、「girly」とでもいいましょうか。 この単語、「お嬢ちゃん」という意味の名詞と、ショーなどで、「ヌードなどを 呼び物にする」みたいな形容詞の意味があるようで、まさにこの二面性の 意味を持ち合わせる、という感じがするのです。
絵本とか人形とか役者とかやけに可愛らしいものと、セックスをあからさまに 喋る、という一見アンバランスな同居。かといって男の視点の「可愛くてエッチで」 というのとも微妙に違う視点。これ、ありそでなかなかない視点で、あたしに とってはとても新鮮だし、ところどころ、ひどく共感できるところがあったりして 不思議な感覚にとらわれます。
可愛いものと、色気のあることと。20歳を中心とする前後6、7年ぐらいの 年齢らしい、女性らしいといえばたしかにそう。恋愛とかセックスとか 扱ってる内容の割には、わりと語り口は淡白で、身を削ってるという感じ まではしません。このあたりの距離の取り方が、時代の気分という感じ もしますし、あたし的には心地いいのです。が、逆にこの距離ゆえに エンゲキの視点からすると、わりとヌルい感じはしますし、誰にでも薦められる かというとそんなことはない気がします。
劇団では珍しい「一本もの」とはいいながら、複数のものがたりが細かく 刻まれていて、ものがたりの筋を追うのはひどく苦労します。お互いに人物や 状況が微妙に重なったりはしているのだけど、オムニバスものだと言えば 信じてしまうぐらいのゆるやかなつながりに過ぎません。
オープニング、黒子なウサギたち(いや、白いのだけど)が出て来て椅子や 小道具を運び込み、登場人物たちをも運び込んでスタートする場面が印象的。 この手の可愛らしい演出は、意外に注目されているチラシのイラスト、あるいは 客席に入る階段下に投影されている可愛らしいロゴマークなど、さまざま なところに顔を出します。
笑わないお姫様と彼女に恋をした男の細切れのモノローグがとても好き。 相手の笑顔がないと、やっぱりレンアイって成立しないし、どうしても不安に なる。お互いに好きだということは十分にわかっているのに、それを何かで 確かめたくなる。だから男は「どれくらい好き?」って聞いてしまうし、 それに応えられなかった姫は、「セックスをすれば、安心感は得られる」 (相手に何か応えたくて必死で考えてのことなのだけど)なんてことを 提案して男を怒らせてしまう。男の気持ちを失ってしまいそうになったとき、 笑えない姫は、その逆の感情である「泣く」ことで男との感情の距離を はじめて実感する....考えすぎかしら。
二股をかけるカッコイイけど美少女ゲームが大好きな男と、カワイイ女子高生と カラダのいいオンナノコとのエピソードも好き。まちがいなく修羅場なのだけど、 不思議なぐらいからっとしている。
「何年ブスやってると思ってるの。私はあなたに可愛いと言って貰いたいから 一緒に居るし、あなたは私を抱きたいと思ってるから一緒に居る。これは レンアイなんて言えないよね」なんてタンカを切られると、もうどきっとします。
女優陣が不思議とこの世界にマッチしているのが好き、とか言ってしまうと すけべ親父のようですが、男優も含めてそれぞれに時折どきりとする色気が あったりするのは、実に不思議なものです。「むだフェロモン」とパンフに かかれている難波美恵さん(笑わないお姫様)が好き。声、雰囲気がとても。 村中雅子さんのちんちくりん(失礼)な若妻、田辺麻美さんの女子高生のような 22才、いのくちあきこさんのタンカ、足立道彦さんのどこまでも優しい視線、 小野瀬誠さんの微妙にずれたかっこよさ、などなどが実にいとおしいのです。
【ものがたり】
いくつかのものがたり。
絵本が好きな子供・カツユキ(萩原)の母親・ツナ(村中)はどうにも幼い 感じで、日頃の生活がまるでままごとのよう。ある日、子供は女の子 が良かったと思い詰めたツナは、人形にその気持ちを托して、いつしか 人形(勝部)と話までしてしまって、心を完全に奪われてしまう。 家族が壊れてしまうことを危惧した夫(福永)は、人形を持ち出して..
カッコイイ男・ツバサ(小野瀬)は、かわいい女・今日(田辺)と、カラダの いい女・ナナ(いのくち)の二股をかけている。今日の友達たち(岸田・相馬) はそのことに気づいているが、ついつい言いそびれている。 ナナはツバサに「かわいい」と言葉をかけてもらうことが大好きで まるで動物か何かのようにはしゃぎ回る。が、ある日3人が鉢合わせして 修羅場になるかとおもいきや...今日は不思議と淡々としているし、 自分に惚れてると思ってたナナはこんなのは恋愛じゃないとわかっていて 割り切ってるし...
笑わないお姫様(難波)。笑わせた者が夫となることになっている。が、 お姫様には彼氏・堀口(足立)が居る。堀口はいつも姫のことを大切に 思っていて、姫も堀口の事が好きで。でも、姫は笑うことができない。 気持ちは分かっているのだけど、堀口はその気持ちを確かめずには 居られなくて...
1999.3.27 15:00 - 16:45 前4列下手(当日券28番, 14:30購入)
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●つめきりいつつめ公演「青竹踏(アオダケフム)」
1999.3.24 - 3.28 東京 新井薬師前 ウエストエンドスタジオ
作・演出 三谷麻里子
出演 いのくちあきこ 小野瀬誠 足立道彦 村中雅子 難波美恵 山下真由子 田辺麻美 福永光宏 萩原孝之 青木玲奈 相馬佐江子 岸田朋子 勝部陽子 日向真
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