« 1999年2月 | トップページ | 1999年5月 »

1999.03.27

【青竹踏】つめきり

99年@nifty FSTAGEに書いたレポートの再録です。

いまのところ、大お気に入りの「つめきり」の新作は、珍しく 一本もの、とのふれ込み。実際にはわりとオムニバスな作りになっていて、 煩わしくない感じが心地よいのです。が、誰にでも薦められる、というのとは ちょっと違う気もします。

ひとことで、つめきりの芝居を表現するなら、「girly」とでもいいましょうか。 この単語、「お嬢ちゃん」という意味の名詞と、ショーなどで、「ヌードなどを 呼び物にする」みたいな形容詞の意味があるようで、まさにこの二面性の 意味を持ち合わせる、という感じがするのです。

絵本とか人形とか役者とかやけに可愛らしいものと、セックスをあからさまに 喋る、という一見アンバランスな同居。かといって男の視点の「可愛くてエッチで」 というのとも微妙に違う視点。これ、ありそでなかなかない視点で、あたしに とってはとても新鮮だし、ところどころ、ひどく共感できるところがあったりして 不思議な感覚にとらわれます。

可愛いものと、色気のあることと。20歳を中心とする前後6、7年ぐらいの 年齢らしい、女性らしいといえばたしかにそう。恋愛とかセックスとか 扱ってる内容の割には、わりと語り口は淡白で、身を削ってるという感じ まではしません。このあたりの距離の取り方が、時代の気分という感じ もしますし、あたし的には心地いいのです。が、逆にこの距離ゆえに エンゲキの視点からすると、わりとヌルい感じはしますし、誰にでも薦められる かというとそんなことはない気がします。

劇団では珍しい「一本もの」とはいいながら、複数のものがたりが細かく 刻まれていて、ものがたりの筋を追うのはひどく苦労します。お互いに人物や 状況が微妙に重なったりはしているのだけど、オムニバスものだと言えば 信じてしまうぐらいのゆるやかなつながりに過ぎません。

オープニング、黒子なウサギたち(いや、白いのだけど)が出て来て椅子や 小道具を運び込み、登場人物たちをも運び込んでスタートする場面が印象的。 この手の可愛らしい演出は、意外に注目されているチラシのイラスト、あるいは 客席に入る階段下に投影されている可愛らしいロゴマークなど、さまざま なところに顔を出します。

笑わないお姫様と彼女に恋をした男の細切れのモノローグがとても好き。 相手の笑顔がないと、やっぱりレンアイって成立しないし、どうしても不安に なる。お互いに好きだということは十分にわかっているのに、それを何かで 確かめたくなる。だから男は「どれくらい好き?」って聞いてしまうし、 それに応えられなかった姫は、「セックスをすれば、安心感は得られる」 (相手に何か応えたくて必死で考えてのことなのだけど)なんてことを 提案して男を怒らせてしまう。男の気持ちを失ってしまいそうになったとき、 笑えない姫は、その逆の感情である「泣く」ことで男との感情の距離を はじめて実感する....考えすぎかしら。

二股をかけるカッコイイけど美少女ゲームが大好きな男と、カワイイ女子高生と カラダのいいオンナノコとのエピソードも好き。まちがいなく修羅場なのだけど、 不思議なぐらいからっとしている。

「何年ブスやってると思ってるの。私はあなたに可愛いと言って貰いたいから 一緒に居るし、あなたは私を抱きたいと思ってるから一緒に居る。これは レンアイなんて言えないよね」なんてタンカを切られると、もうどきっとします。

女優陣が不思議とこの世界にマッチしているのが好き、とか言ってしまうと すけべ親父のようですが、男優も含めてそれぞれに時折どきりとする色気が あったりするのは、実に不思議なものです。「むだフェロモン」とパンフに かかれている難波美恵さん(笑わないお姫様)が好き。声、雰囲気がとても。 村中雅子さんのちんちくりん(失礼)な若妻、田辺麻美さんの女子高生のような 22才、いのくちあきこさんのタンカ、足立道彦さんのどこまでも優しい視線、 小野瀬誠さんの微妙にずれたかっこよさ、などなどが実にいとおしいのです。

【ものがたり】

いくつかのものがたり。

絵本が好きな子供・カツユキ(萩原)の母親・ツナ(村中)はどうにも幼い 感じで、日頃の生活がまるでままごとのよう。ある日、子供は女の子 が良かったと思い詰めたツナは、人形にその気持ちを托して、いつしか 人形(勝部)と話までしてしまって、心を完全に奪われてしまう。 家族が壊れてしまうことを危惧した夫(福永)は、人形を持ち出して..

カッコイイ男・ツバサ(小野瀬)は、かわいい女・今日(田辺)と、カラダの いい女・ナナ(いのくち)の二股をかけている。今日の友達たち(岸田・相馬) はそのことに気づいているが、ついつい言いそびれている。 ナナはツバサに「かわいい」と言葉をかけてもらうことが大好きで まるで動物か何かのようにはしゃぎ回る。が、ある日3人が鉢合わせして 修羅場になるかとおもいきや...今日は不思議と淡々としているし、 自分に惚れてると思ってたナナはこんなのは恋愛じゃないとわかっていて 割り切ってるし...

笑わないお姫様(難波)。笑わせた者が夫となることになっている。が、 お姫様には彼氏・堀口(足立)が居る。堀口はいつも姫のことを大切に 思っていて、姫も堀口の事が好きで。でも、姫は笑うことができない。 気持ちは分かっているのだけど、堀口はその気持ちを確かめずには 居られなくて...

続きを読む "【青竹踏】つめきり"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

1999.03.06

【芝居】「パ・ド・ドゥ」サードステージ

1999.3.6 14:00 - 15:50 M5

【みたままおもったまま】!!!ねたばれあり!!!

サードステージによる、小さな空間・小人数の新作プロデュース公演シリーズ "Show Case"の4作目。じてキンの飯島早苗さんの戯曲を、京晋佑さん、池津祥子 さんという顔合わせで。弁護士と被告、元夫婦という関係のわりにはキリキリ 感に欠けてしまう嫌いはあるものの、役者の二人がお好きなら、きっと 楽しめる一本。

日本にはないのだという(パンフによれば)、仕切りのない、格子のはまった接見室。 恋人の男をベランダから突き落とした疑いのかけられた被告の女性が呼び出したのは 元夫の弁護士。弁護してほしいとはいいながらも、どういうわけか弁護士に隠し事 をしている女。みえすいた嘘ばかり、そもそも彼女が殺してないという主張だって 怪しいと、当の弁護士さえも信じる事ができなくなってしまうほどの。

男は、彼女の気持ちを理解し、彼女を助けるためには、女と今の男が 愛し合っていると示さなくてはならない。それゆえに、男の苦悩は深い、はず なのです。

どう考えてもちょっとわかりにくいし、自分の感情の置き場に困ると言うか。 弁護士の彼の立場はよくわかるのに比べ、女の言ってる事は正直、訳のわからな いところがあって、気持ちを受け入れにくい。実は、とてもシンプルに彼のこと が好き、その気持ちをどう表現していいか、どうやって伝えたらいいかわからない 女。そもそも彼に再会するために殺人を犯したとさえ示唆されて。想いの深さ の凄さは感じるのだけど、それが狂気というほどにはキリキリしてて欲しいなぁ なんて、勝手に思うのだけど。池津さんだからこそ、その狂気似合うと思うの だけれど。京さん、かっこいい。

【ものがたり】
恋人をマンションのベランダから突き落とした殺人未遂容疑で拘置されている 草子(池津)。かつての夫である弁護士・憲治(京)に弁護を依頼する。 接見室で会う二人。女はやってないといい、昔のことはいろいろあるけど男は 女を信じて弁護を引き受ける。が、公判初日、男の知らないさまざまな事実が 出てきて、どう考えても女は有罪。あろうことか証拠の指輪まで...

【観劇データ】
1999.3.6 14:00 - 15:50 M5

●サードステージ Show Case 第4話「パ・ド・ドゥ」
1999.3.4 - 3.15 東京 中野 ザ・ポケット
1999.3.20 - 3.21 大阪 上本町 近鉄小劇場
作 飯島早苗  演出 板垣恭一
出演 京晋佑 池津祥子

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 1999年2月 | トップページ | 1999年5月 »