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1998.05.03

【芝居】「きゅうりの花」MONO

1998.5.3 18:00

※NIFTYServe FSTAGEに書いたものの再録です

【みたままおもったまま】
東京での公演は95年の一回きり、最近は土田英生さんの手による「遠州の葬儀屋」 がM.O.P.が上演したのが記憶に新しい劇団。京都を拠点にするMONOの作品は 春の利賀フェスティバルにゲストとして迎えられての上演。

新喜劇ということばがぴったりくるような舞台なのです。笑いもほろりもあって その意味では古臭いといえるかもしれません。が、笑いのツボはたとえば かわひらにはぴったりとあいますし、ほろりとするところは形はちがえども かわひらぐらいの世代にはそれなりに迫るものです。今から思えば、「遠州の〜」 は、まさにこのテイストの芝居でして、つまりMONOのカラーだったのだな と思ったのでした。

笑いを作り出すのは、いわゆるギャグではありません。役者の呼吸というか間が 主で、それはまさに劇団というシステムで成立しているものだと思うのです。 妙な動きの踊りなど、ベタな笑いもあるにはあるのですが、それとても動き そのものの可笑しさではなくて、動きが揃うこと、あるいは少しずれることの おかしさなのです。

が、彼らの芝居は笑いだけに留まりません。たとえば、よそから嫁いできた 妻が教えるペン習字教室に一瞬流れる「ヨソモノ」という不穏な空気とか、 舞台に一人残った男が飾ってある陶器を振り上げる瞬間とか、ラストシーン で庭の方を見つめる男たちの視点とか。それぞれにキュンとする瞬間が ある、不思議な舞台なのです。(なんか恥ずかしいぞ。この感想)

東京にありそうで意外にないタイプの劇団なのです。目指してる方向が似ている 劇団はありそうに思いますが、判りやすさ、笑い、ほろりを絶妙のバランスで 成立させているというのは一朝一夕にはつくりだせないものだと思います。 実は結構こういうの、好き、なんですが。東京に来ることがあれば、オススメ。

【ものがたり】
過疎の町。サークル活動のための文化施設の一室。週に一回の陶芸教室やら ペン習字教室やら。そこに集まる30代の人々。隣村が脚光を浴びたのに 刺激されて、一念発起、活性化をすべく知恵を絞る。 町に嫁にやってきたひと、ずっとこの町に居る人など、それぞれに それぞれの想いが交錯しあって...

【観劇データ】
1998.5.3 18:00 - 前2列目中央

●MONO「きゅうりの花」
1998.5.3 - 5.4 富山県 利賀村 利賀山房
作・演出 土田英生
出演 水沼健 一色正春 尾形宣久 金替康博 土田英生 西野千雅子 増田記子

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1998.05.01

【芝居】「東京ノート」青年団(1998・利賀)

【みたままおもったまま】
合掌造りの民家を改造したと言う劇場。今のかわひらの生活からすれば、それ 自身がもう非日常な演劇的な空間なのです。わくわくする楽しさ、劇場に入る だけで得られるそんな空間は、利賀であるということと、旅行であることで 舞いあがっているというか。

無気質な感じだったスズナリに比べると、ほの暗い雰囲気とか、蛙の鳴き声 など、人間の匂いがする空間である分、美術館という感じからは遠くなって しまうのです。

もちろん会話劇としてのこの舞台がそれに影響を受けるなんてことはない ぐらいに、青年団の芝居はみかけよりずっと強固です。その強固さを感じ とれたこと、利賀のひとつの収穫だったと思うのです。 さまざまな劇場で演じられることの多い青年団の作品だからこそ、劇場や セットの雰囲気だけに依存することがなくて、演じられる劇場に自然に とけこんでいくのでしょう。

利賀山房という劇場は、確かに雰囲気はあるものの、200人近い観客を 入れるとなると、死角が多くなってしまうのが悲しい劇場です。能舞台を 模したとされる劇場で、舞台両側の客席側に柱があるため、この死角に入って しまうと、ほんとに悲しいことになります。

松田弘子さん演ずる長女、少々野暮ったくて、一見のほほんとしながらも 包み込む優しさが印象的。山村崇子さん演ずる次男の嫁、との二人での ラストシーンは力強く、心に残ります。(東京と同じ感想だな)

門さんが#4411で仰ってた、「天明瑠璃子(女子大生の元の家庭教師の 現愛人)と辻美奈子(絵を寄付する人)があまりに魅力的すぎて舞台の バランスが崩れて」というのは、確かにその危うさがありますね。そういう 目でみてしまったから、という気もしますが。出てくるだけで魅力的 というのは女優の魅力なはずなのですが...(でもそれを消して欲しくないし)

【ものがたり】
美術館のロビー。レストランで食事会をするために集まる兄弟たち、レポートの ために見学にやってくる学生、デートのカップル、相続した絵を寄贈しようとする ひと、など、さまざま。遠い地では戦争があって、美術品が避難措置で日本に来たり そこかしこに戦争の影響が見え隠れはするものの、実際のところ、あまり深刻では なかったり....

【観劇データ】
1998.5.1 18:00 - 20:20 後ろ寄り下手側(整理番号124, 当日17:30購入)

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●青年団第34回公演「東京ノート」
1998.1.26 - 1.27 名古屋 愛知県芸術劇場小ホール
1998.3.7 - 3.8 宮城 仙南芸術文化センターえずこホール
1998.3.13 - 3.24 東京 下北沢 ザ・スズナリ
98.4 利賀スタジオ 98.5 弘前・スタジオデネガ 盛岡・中三AUNホール
98.6 伊丹AI HALL
作・演出 平田オリザ
出演 足立誠 安部聡子 松田弘子 小河原康二 山村崇子 和田江理子    小林智 平田陽子 辻美奈子 松井周 坂本和彦 志賀廣太郎 山内健司 天明留理子 秋山建一 木崎友紀子 永井秀樹   山田秀香 月村丹生 角舘玲奈 兵藤公美 田村みずほ 川隅奈保子

(来館者たち) 安田まり子 望月志津子 佐藤弥栄 岩田奈保子 高橋縁    神原直美 端田新菜 藤木卓 島田曜蔵 太田宏 成川知也 小林洋平    佐藤一貴 松田昌樹 小林加奈子 斎藤和華子 町田知子 能島瑞穂    程山麻里子

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