R/【トランス】パルコP
「いろんな形態で上演されることを意図して」書かれた戯曲だというのは どこで読んだ話でしたっけ。3人だけの登場人物、シンプルな舞台構成 は、いろいろなキャスト、いろいろな舞台で演じられることを、まさに 「待っている」という気がします。評判になった大きな舞台では3演目に あたりますが、シアターガイドなどを見ていると、年に2、3本は小さな 劇場で演じられています。ほんとはいろんなの観たいとおもうのです。
4月から名前のかわった、「東京グローブ座(旧・パナソニック・グローブ座)」 での、はじめての観劇。
【みたままおもったまま】
決して緻密とはいえない舞台なのです。キリキリ感のある戯曲にくらべると
なんとゆったりとした感じなのか、と思います。が、それは決して悪いこと
ではなくて、「トランス」という戯曲のさまざまなバリエーションの一つ、
という意味で、この試みには賛成なのです。
どうしても思い入れの強い人が多い鴻上戯曲なのです。初演の時の強力な 布陣を思えば(見てないのだけど..)、それ以降の評価が厳しくなるのは いたしかたないところ、という気はします。事実、かわひらが見た再演 で感じた、キリキリとした感じは、この舞台では感じなかったので、 そんな意味では、「よくない」と感じるのでしょう。
が、かわひらは意外にこの舞台が好きなのです。 なぜか、ユルい感じの、いいや、ゆったりとした感じの舞台なのです。 演出の鈴木裕美さんは、もっとカッチリとした演出をする人かと思いこんで いましたから、意外な感じがします。 声が出なくなるほどの衝撃を受けた再演のそれとは、また違った面のトランスを 同じ戯曲から作り出した、と思うのです。
参三を演じた内野さんは、舞台を楽しんでいる、という感じ。(ふたりっ子、 好きだったのだ)かわひらの座った席は最も上手側の周縁席なのですが、 その後ろから現れた彼、やっぱりどきどきしましたもの。役としてオイシイ のは事実。それはそれとして、魅力的な参三なのです。
雅人を演じた三宅さんは、肩の力が抜けて、実に自然体の感じがします。 他の誰とも違う、素の雅人の姿。天皇な雅人の姿は、なぜか見慣れた感じ のする安心感。
礼子を演じる奥山さんは、確かに、見劣りがするのは事実なのです。 バラエティ番組での彼女は、たくさんいるタレントの一人に過ぎません。 が、しかし、なのです。 期待してなかったというのもあるかもしれません。舞台の上で時折、 とてもいい表情をしたりするのです。舞台向きの大柄な顔立ち(誉め言葉なのだ) とか、声の質も、意外なほど特質があって、魅力的なのです。 なんてのは、贔屓にすぎるかしら。 もしかしたら化けるんじゃないかと思ったりして。
とはいえ、チケット、もう少し安いあたりがいいなぁ。(ぼそ)
【ものがたり】
精神科医・礼子(奥山)、フリーライター・雅人(三宅)、ゲイバーのダンサー
・参三(内野)。自分を見失ってしまうことを自覚した雅人。彼が病気の治療に
精神科を訪れたことがきっかけに三人が再会する。理不尽な校則に反発して、
年齢も学年もバラバラな三人は、高校時代、屋上に偶然集った親友なのだ。
雅人の病気は悪化し、入院する。参三はそれに付き添って看護をすることに
なる。3人は、高校卒業以来、初めて顔を揃えることになって....
【観劇データ】
1998.4.26 14:00 - J列9番
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●パルコ・プロデュース「トランス」(トランス98)
1998.4.16 - 4.27 東京 新大久保 東京グローブ座
4.30 - 5.1 名古屋市民会館中ホール/5.5 - 5.10 大阪 近鉄小劇場
5.22 - 5.23 メルパルクホール福岡/5.29 仙台 電力ホール
5.31 札幌 道新ホール
作 鴻上尚史 演出 鈴木裕美
出演 内野聖陽 奥山佳恵 三宅弘城
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