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1998.03.08

R/【源八橋西詰】遊気舎プロデュース

【みたままおもったまま】
感じる雰囲気はずいぶん違うものの、確かに「人間風車」(98年12月)の発端という感じがします。どこか蟠りを感じつつも、悪魔に心を売るかのようにあまり誉められたもんじゃない仕事に手を出してしまう人々の物語。

遊気舎で主役級の3人を揃え、二人芝居のオムニバス、3本の物語が、源八橋西詰の交差点で一瞬交差するという構成の巧さは、ブルーズの流れる全編、あるいはラストシーンであっさりひっくり返してみせるFakeと併せて、 小劇場らしい、しかし寂寥感のある舞台に仕上がっています。3人の役者はそれぞれに二役ですが、どれもがまったく異なる役柄。どれもが比較的極端なもので、荒唐無稽といえないこともないのですが、程よく抑えられ、絶妙のバランスを持っています。

卑怯な童話作家を演じる久保田浩さんは、一見いい人そうなのだけど 冷静に狡賢いイヤな奴。もう一役の「静かにキチガイ」な伊藤の役は、 素敵ですらあります。 「キチガイ屋」を演じる山本忠さんは、確かな安定感で詐病師を演じますが、 もう一役の神経質そうな座長の役のものすごいこと。 「子供」と「女優」という十八番の二役を演じる楠見薫さんは、何の不安も ないのです。

とはいえ、これだけのレベルであっても、やはりアンバランスはあって、 女優の話がいくぶん弱いという気がします。「悪魔に魂を売る」ってほど のことじゃないような気がして。もちろん、贅沢な話ではあるのですが。

【補足】
白黒写真で雰囲気のある有料のパンフには戯曲も収録されていて、 これで1000円ならお買得かも。

【ものがたり】
源八橋の近く、交差点に立ち、何かを待つ3人。 どこか心にひっかかりを感じながらも、罪を犯した奴をキチガイに仕立てて 無罪にする詐病師・角(山本)。シリアスな青春芝居に燃えていたのに座長の きまぐれでお笑い系で頭角を表してしまった女優・沢田(楠見)。 合作していた相棒を失い、どうにも書けなくなってしまった童話作家・ 平井(久保田)。
3人はそれぞれに、心のどこか、わだかまりを感じつつ、あまり誉められた もんじゃない仕事に向う。そんな3人の姿が見える、交差点。

【観劇データ】
1998.3.8 17:00 - 18:40 桟敷席後方、やや上手寄り
---- ●遊気舎プロデュース<小劇場プレミアム公演) 「源八橋西詰」
1998.2.18 - 2.24 大阪 扇町ミュージアムスクエア
1998.3.3 - 3.8 東京 下北沢 駅前劇場
作・演出 後藤ひろひと
出演 久保田浩 山本忠 楠見薫

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