【芝居】「東京ノート」青年団(1998・東京)
SUBJ:R/【東京ノート】青年団
【みたままおもったまま】
奥行きがあるロビー、明るくてどことなく無機質で。ホテルとも違う、美術館という
感じがします。珍しい美術品の企画展だというのに、混雑もなくて、のんびりと
時間が流れ、好きなだけ喋って、休んで、また気が向いたら展示を観て廻って。
実はとても贅沢な時間。しかし、その間に挟み込まれた情報はとても多く、実際
のところ、全てを受け取れているかといわれると、自信がなかったりします。
独身の長女は、常に小さなカメラを持ち歩いて、ことあるごとに場面を切り取って 残そうとします。現実そのままではなくて、その一部、見たいものだけを。 学芸員が説明する「カメラ・オブスキュラ」も、やはり場面を切り取るのもの、 なのだそう。そこまでは芝居を観ながら漠然と考えていたのですが、それが更に 「戦争の一部だけを切り取って」という枠組みになっているというRを読んで、 それに気付いたのですが。すごい。
もっとも、観客だって人の人生、この小さな空間を通して切り取って観ている わけですから、その意味じゃ共犯者、なのかしらん。(よくわかんないけど)
なんてこと、つらつら考えなくても、切り取って見られる、それぞれに葛藤 したり、混沌としたりする人々を眺めているだけでも、実際のところ 面白いと思いますが。たとえば家庭教師と教え子とか。
山村崇子さんの演じる次男の妻が、「来年はもう逢えないかもしれない」と 長女に話す場面、そのあと食事会の途中で抜け出して来てまた長女と話す 場面が好きです。山村さん、「マッチ売りの少女たち」のエキセントリック さとのギャップ凄いびっくり。
学生の一人を演じた月村さんは、久しぶりに舞台で出会えてかわひらは幸せです。
出て来る若い女性たちがいずれも同じ様な感じになってしまうというのが、弱点 といえば弱点という気もします。それは見た目の感じ、という意味なのですが。 それは意図的、という感じがしないでもありません。
観客が慣れて来たのか、演出が変わって来たのか、はたまた劇場のハコのせい なのか、数年前に初めてかわひらが観た青年団の、キリキリとした緊張感とは 何かが変化してきているような気もします。客席全体がリラックスしている 感じというか何と言うか。初演の「東京ノート」はどうだったのでしょう。
【ものがたり】
美術館のロビー。レストランで食事会をするために集まる兄弟たち、レポートの
ために見学にやってくる学生、デートのカップル、相続した絵を寄贈しようとする
ひと、など、さまざま。遠い地では戦争があって、美術品が避難措置で日本に来たり
そこかしこに戦争の影響が見え隠れはするものの、実際のところ、あまり深刻では
なかったり....
【観劇データ】
1998.3.15 15:00 - 17:20 前3列上手(当日券163番, 14:10購入)
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●青年団第34回公演「東京ノート」
1998.1.26 - 1.27 名古屋 愛知県芸術劇場小ホール
1998.3.7 - 3.8 宮城 仙南芸術文化センターえずこホール
1998.3.13 - 3.24 東京 下北沢 ザ・スズナリ
98.4 利賀スタジオ 98.5 弘前・スタジオデネガ 盛岡・中三AUNホール
98.6 伊丹AI HALL
作・演出 平田オリザ
出演 足立誠 安部聡子 松田弘子 小河原康二 山村崇子 和田江理子
小林智 平田陽子 辻美奈子 松井周 坂本和彦 志賀廣太郎
山内健司 天明留理子 秋山建一 木崎友紀子 永井秀樹
山田秀香 月村丹生 角舘玲奈 兵藤公美 田村みずほ 川隅奈保子
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