« 1998年2月 | トップページ | 1998年4月 »

1998.03.15

【芝居】「東京ノート」青年団(1998・東京)

SUBJ:R/【東京ノート】青年団

【みたままおもったまま】
奥行きがあるロビー、明るくてどことなく無機質で。ホテルとも違う、美術館という 感じがします。珍しい美術品の企画展だというのに、混雑もなくて、のんびりと 時間が流れ、好きなだけ喋って、休んで、また気が向いたら展示を観て廻って。 実はとても贅沢な時間。しかし、その間に挟み込まれた情報はとても多く、実際 のところ、全てを受け取れているかといわれると、自信がなかったりします。

独身の長女は、常に小さなカメラを持ち歩いて、ことあるごとに場面を切り取って 残そうとします。現実そのままではなくて、その一部、見たいものだけを。 学芸員が説明する「カメラ・オブスキュラ」も、やはり場面を切り取るのもの、 なのだそう。そこまでは芝居を観ながら漠然と考えていたのですが、それが更に 「戦争の一部だけを切り取って」という枠組みになっているというRを読んで、 それに気付いたのですが。すごい。

もっとも、観客だって人の人生、この小さな空間を通して切り取って観ている わけですから、その意味じゃ共犯者、なのかしらん。(よくわかんないけど)

なんてこと、つらつら考えなくても、切り取って見られる、それぞれに葛藤 したり、混沌としたりする人々を眺めているだけでも、実際のところ 面白いと思いますが。たとえば家庭教師と教え子とか。

山村崇子さんの演じる次男の妻が、「来年はもう逢えないかもしれない」と 長女に話す場面、そのあと食事会の途中で抜け出して来てまた長女と話す 場面が好きです。山村さん、「マッチ売りの少女たち」のエキセントリック さとのギャップ凄いびっくり。

学生の一人を演じた月村さんは、久しぶりに舞台で出会えてかわひらは幸せです。

出て来る若い女性たちがいずれも同じ様な感じになってしまうというのが、弱点 といえば弱点という気もします。それは見た目の感じ、という意味なのですが。 それは意図的、という感じがしないでもありません。

観客が慣れて来たのか、演出が変わって来たのか、はたまた劇場のハコのせい なのか、数年前に初めてかわひらが観た青年団の、キリキリとした緊張感とは 何かが変化してきているような気もします。客席全体がリラックスしている 感じというか何と言うか。初演の「東京ノート」はどうだったのでしょう。

【ものがたり】
美術館のロビー。レストランで食事会をするために集まる兄弟たち、レポートの ために見学にやってくる学生、デートのカップル、相続した絵を寄贈しようとする ひと、など、さまざま。遠い地では戦争があって、美術品が避難措置で日本に来たり そこかしこに戦争の影響が見え隠れはするものの、実際のところ、あまり深刻では なかったり....

【観劇データ】
1998.3.15 15:00 - 17:20 前3列上手(当日券163番, 14:10購入)

---

●青年団第34回公演「東京ノート」
1998.1.26 - 1.27 名古屋 愛知県芸術劇場小ホール
1998.3.7 - 3.8 宮城 仙南芸術文化センターえずこホール
1998.3.13 - 3.24 東京 下北沢 ザ・スズナリ
98.4 利賀スタジオ 98.5 弘前・スタジオデネガ 盛岡・中三AUNホール
98.6 伊丹AI HALL

作・演出 平田オリザ
出演 足立誠 安部聡子 松田弘子 小河原康二 山村崇子 和田江理子    小林智 平田陽子 辻美奈子 松井周 坂本和彦 志賀廣太郎 山内健司 天明留理子 秋山建一 木崎友紀子 永井秀樹   山田秀香 月村丹生 角舘玲奈 兵藤公美 田村みずほ 川隅奈保子

| | コメント (0) | トラックバック (0)

1998.03.14

【芝居】「BRIDGE」発砲DASH

1998.3.22 19:00

【みたままおもったまま】
TEAM発砲・B・ZINとランニングシアター・ダッシュの合同公演なる今作は、ダッシュを 主宰する大塚雅史さんの手による作・演出の佳作に仕上がりました。荒削りだとか、 荒唐無稽といわば言え。かわひらは結構お気に入り、の一作なのでした。

ダッシュの公演でも感じますが、大塚さんの戯曲は、中年とか老人とか、若い盛りを 過ぎてしまって、自分の先行きが見えてしまった男の視点を感じます。が、それは 疲れてしまった男を単に癒す、というやりかたではありません。かといって、 過ぎ去りし栄光を単に懐かしむでもありません。

あのころの熱気、気合い、あるいは無鉄砲さを「そのまま」思い出して、引っ張り 出して、無鉄砲に走るというもの。子供が未来を夢想するかのように、オジサン だって、無邪気に夢想する楽しさというか、パワーと言うか。

ええ、もちろんそんなことは現実なんかじゃ、多分ありえないこと。かわひらだって 毎日に追われちゃってます。だからこそ、芝居なんだからこそ、こんなすっきり後味 で、元気な芝居を、心が欲してしまうんじゃないかと思うのです。もっとも、 芝居荒唐無稽、デフォルメにデフォルメを重ねたものですから、こんなの考え 過ぎかもしれませんが。

なんて、ちょっと年寄りな視点とはいえ、役者たちは本当に若いのです。四角く 囲まれた舞台を、それこそ縦横無尽に走り、飛び、転げ回るのです。パフォーマンス 系の、いわゆる「カッコヨサ」とは無縁で、泥臭く、奇麗に揃っている訳でもない のですが。

とはいえ、イキオイだけではうまくいかないこともあって、リングのような舞台 で科白をきちんと四方の観客に届けきれていないのも事実。そもそもこんな舞台 にした方がよかったのかどうかとさえ思ったりもします。

役者がどのように選ばれたのか、かわひらには知るよしもありませんが、 たとえばダッシュの佐久間さん、たとえば発砲の川津さんなど、居ない事によって その存在が大きくなってしまうのも、ああ、ナイモノネダリ。

とかなんとか言いながら、出ている役者に魅力がないということでは決してなくて、 大庭さんの若々しさ、きださんの斜めに構えた魅力、ちょこちょこと良く動く 武藤さんの間の良さ、高市さんのステロタイプすぎる嫌われ役、前田さんの オーバーデフォルメな動き(それがまた良く似合う)なんてのも、楽しんだりして。

これは決してキャラメルの味でも、発砲のカラーでもなく、まぎれもなくダッシュの ホン、なのです。そして、かわひらはけっこうお気に入り、なんだけどなぁ。

【ものがたり】
日々の生活、会社にも家庭にも嫌気がさして、抜けだそうと決心した40過ぎの男。 始発電車に乗るために暗いうちに家を抜け出した男の脳裏に蘇る、大学時代の 思い出。監獄のように完全警備された合宿所。地獄のように理不尽なしごき、体罰。 そんな毎日から抜け出すために、合宿所からの脱出を企てた時の...

【観劇データ】
1998.3.22 19:00 - 21:00 Aブロック7列12番 (フェスティバル通し券)

続きを読む "【芝居】「BRIDGE」発砲DASH"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【芝居】「休むに似たり」自転車キンクリートSTORE

1998.3.14 14:00

自転車キンクリートの人を初めて見たのはテレビの深夜番組でした。 歌川・飯島・鈴木の3人がうだうだと何げない会話をするというもので、実は 結構楽しみでした。

【みたままおもったまま】
この物語で、机を囲む4人の女性の会話をみて、そんなことを思い出しました。 柳岡さんと久松さんの二人が物語の中心だとはいえ、周縁を固める女友達3人の 話がしっかりと物語を支えます。33にもなって結婚してないヤツらの、どーする つもりなんだかね、なはなし、というのはチラシにある文句ですが、女4人の ムダ話が、実に楽しいのです。どっか身につまされるような感じもします。

去年の今ごろみた、「引張凧」という池田・柳岡のユニットの芝居の、こたつを 囲むシーンに、どこかその原型があるような気がします。

いちど「して」しまったあとだからなのか、かけひきが要らなくてラクというのは もしかしたらあるのかなぁ、とは思います。もちろん両方がそんな気持ちになれる なんてのは、ほんとうは奇蹟的な偶然という気もしますし、望んでもなかなか なれるもんじゃないかもしれないんだけど、そんなことが出来るなら、 ちょっとうらやましい気もします。

「した」「しない」にかかわらず、男と女で、友達同士というのを続けていくのは 絶妙な、バランス・オブ・パワーだと思うのです。久松が劇中で喋る台詞、 「女性を口説くってのは礼儀だしなぁ」っていうのも、(実際にするかどうかは 別にして)それはそれで正しいとうなずいてしまいますので、 なおさら、そのバランスは難しい。

が、物語の中でも、柳岡と久松のバランスは微妙です。想う気持ちは両方に あるのも本当だし、たとえば久松が6番目の女に対して抱いている感情も 決して嘘じゃないと思います。でも、そういうのってあんまり許されないのよね。 じっさいのところ。(柳岡の弟、というのがその視点ですよね)

役者は魅力的です。柳岡香里さんは今まで、突出した印象の ない役者でしたが、実に魅力的。久松信美さんのしっかりと相手を見つめる ところが素敵。かと思えば、女友達のバカ話の絶妙な掛け合いのリズムの良さ も絶妙で、その雰囲気を作り出す歌川椎子さんが凄い。

なんてこと言いながら、いい歳して、一人で暮らしてもないんだから、あたしは 彼女たちのレベルにも達してないんだから、どーすつつもりなんだかね、ですが。 ともかく、オススメの芝居、なのです。

【補足】
追加公演を重ねて、今の千秋楽は29日19:00の回まで。それでも公演直前の電話予約 は全て売り切れとのこと。最前列ベンチなどを使って当日券は出ているようですが、 まずご確認を。

柳橋りんさんは、ラスト近くで少しだけ顔を見せますが、クレジットにない ところを見ると、ゲスト扱いかも。他のじてキン役者の名前もところどころに 仕込んでありますから、日替わりでできる、という感じかしら。

【ものがたり】
高校生の同級生の結婚式の余興を頼まれた4人の女が。居酒屋で集まったものの、 ずるずると柳岡(役名=役者名)のちらかり放題の部屋にやってくる。

33にもなって一人もんの4人、仕事も楽しいし、それぞれに男が居たりもするの だけど、それでも、いざ結婚には踏み切れない。とはいえ、それぞれの恋の話とか。

そこに電話。柳岡と歌川の大学時代の友人の男(久松)から、ビデオを貸して欲しい と部屋を訪ねてくるが、結局派手に飲み会になって、ザコ寝で朝を迎える5人。 皆が帰った後、久松が柳岡に頼みがあるという。部屋が使えなくなってしまった ので、1週間だけ泊めて欲しいという。一旦は断るものの、高熱を出して倒れて しまう久松を結局泊めてしまう...

【観劇データ】
1998.3.14 14:00 - 16:15 通路席F(当日券12:50並び, 当日券20枚強)

●自転車キンクリーツSTORE「休むに似たり」
1998.3.11 - 3.29 東京 新宿THATER/TOPS (03-33350-9696)
構成・演出 鈴木裕美  脚本 飯島早苗
出演 柳岡香里 歌川椎子 池田貴美子 藤本喜久子(無名塾)
  佐藤二朗(劇団ちからわざ) 久松信美  柳橋りん

| | コメント (0) | トラックバック (0)

1998.03.08

R/【源八橋西詰】遊気舎プロデュース

【みたままおもったまま】
感じる雰囲気はずいぶん違うものの、確かに「人間風車」(98年12月)の発端という感じがします。どこか蟠りを感じつつも、悪魔に心を売るかのようにあまり誉められたもんじゃない仕事に手を出してしまう人々の物語。

遊気舎で主役級の3人を揃え、二人芝居のオムニバス、3本の物語が、源八橋西詰の交差点で一瞬交差するという構成の巧さは、ブルーズの流れる全編、あるいはラストシーンであっさりひっくり返してみせるFakeと併せて、 小劇場らしい、しかし寂寥感のある舞台に仕上がっています。3人の役者はそれぞれに二役ですが、どれもがまったく異なる役柄。どれもが比較的極端なもので、荒唐無稽といえないこともないのですが、程よく抑えられ、絶妙のバランスを持っています。

卑怯な童話作家を演じる久保田浩さんは、一見いい人そうなのだけど 冷静に狡賢いイヤな奴。もう一役の「静かにキチガイ」な伊藤の役は、 素敵ですらあります。 「キチガイ屋」を演じる山本忠さんは、確かな安定感で詐病師を演じますが、 もう一役の神経質そうな座長の役のものすごいこと。 「子供」と「女優」という十八番の二役を演じる楠見薫さんは、何の不安も ないのです。

とはいえ、これだけのレベルであっても、やはりアンバランスはあって、 女優の話がいくぶん弱いという気がします。「悪魔に魂を売る」ってほど のことじゃないような気がして。もちろん、贅沢な話ではあるのですが。

【補足】
白黒写真で雰囲気のある有料のパンフには戯曲も収録されていて、 これで1000円ならお買得かも。

【ものがたり】
源八橋の近く、交差点に立ち、何かを待つ3人。 どこか心にひっかかりを感じながらも、罪を犯した奴をキチガイに仕立てて 無罪にする詐病師・角(山本)。シリアスな青春芝居に燃えていたのに座長の きまぐれでお笑い系で頭角を表してしまった女優・沢田(楠見)。 合作していた相棒を失い、どうにも書けなくなってしまった童話作家・ 平井(久保田)。
3人はそれぞれに、心のどこか、わだかまりを感じつつ、あまり誉められた もんじゃない仕事に向う。そんな3人の姿が見える、交差点。

【観劇データ】
1998.3.8 17:00 - 18:40 桟敷席後方、やや上手寄り
---- ●遊気舎プロデュース<小劇場プレミアム公演) 「源八橋西詰」
1998.2.18 - 2.24 大阪 扇町ミュージアムスクエア
1998.3.3 - 3.8 東京 下北沢 駅前劇場
作・演出 後藤ひろひと
出演 久保田浩 山本忠 楠見薫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 1998年2月 | トップページ | 1998年4月 »