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1997.10.30

【芝居】「ラフカット'97」

1997.10.30 19:00

NiftyServe ステージフォーラムへの書き込みの採録です。

3年目を迎えるラフカットは、この季節の楽しみなイベントなのです。 さまざまな色の短編を、オーディションで選ばれた役者たちが演ずる、 まるで幕の内弁当のような楽しさ。普段だったら見ないような色の 作品もまぜこぜで見られるというか。

【みたままおもったまま】!!!!ねたばれあり!!!!

去年の反動かどうか、今年は明るめに笑いを取る方向にシフトしているように 見えます。好みはあると思うものの、平均的なレベルは高く、一本が短いこと とあいまって、かなりお徳な感じがします。強くオススメ。

4本の作品なのですが、アタシの好みで言うと、好きな方から、 日曜日→776→洞海湾→サンライズ でしょうか。ただし、3、4位は迷うところ。

●「サンライズサンセット」 作 橋口亮輔   演出 鈴木裕美 (約50分)
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出演 青木豪 内田健介 岸健太郎 末吉俊規 山中聡 川崎桜
 小松田昭子 千葉綾乃 杉山文雄 中野英樹 新田由加里 藤本喜久子

ものがたり
小さな映画プロダクション、明日にクランクインを控えては いるものの、目先の資金にさえ困っているのが実情。プロデューサに 台本を預けた男(内田健介)が事務所を訪れてくる。三々五々集まった スタッフや出演者たちの中に、男の昔の女(藤本喜久子)が...

感想
最初ってのはつらいものです。舞台の雰囲気を作るのに時間が取れない ままに芝居が終わってしまう可能性もあるわけで。そのハンデの中では 健闘しているとは思います。が、やはり人物があまりに多く、時間も 長めで散漫な印象を受けます。

借金まみれになったプロデューサーは感じている閉塞感とは裏腹に ひたすら明るく、高いテンション。が、終盤で見せる、キレた感じでの 「だってそれが現実だもの、しょうがないじゃん」という台詞は刺さり ます。

衣装係を演じた新田由加里さんは関西弁のいいテンションとタイミング が素敵で、きっちりと押さえている感じがします。キャラメルボックス をお辞めになった小松田昭子さんは今までに見たことのない、テンション が高くてブリブリな役。パンクな女性を演じた川崎桜さんは、パンフで 見ると、とてもそんな感じには見えないすごさ。

●「776」 作・演出 堤泰之(約30分)
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出演 後閑靖彦 松井基展 吉田ばんせい 桑原裕子 保坂恵麻

ものがたり
パチンコ屋の駐輪場、休憩時間に抜けだして来て男友達(後閑靖彦) と話しているアルバイト店員の女の子(桑原裕子)。男友達は彼女の 誕生日のプレゼントにCDをパチンコで取って待ち合わせに行こうとする が、鍵が開かない。テレクラの待ち合わせらしい男(松井基展)や、 女(保坂恵麻)。毎日のように通ってくる営業らしい男(吉田ばんせい)。 つながらなかった筈の接点が...

感想
去年の堤作品からはうってかわっての、楽しめる作品。 ほぼでずっぱりの桑原裕子さんあってこその芝居、という気がします。 この手の自然な(と、アタシには思える)若者というのをやらせると 彼女は抜群に巧くて、ハマり役だと言ってもいいと思います。

彼女以外も実にいい感じでそれぞれにカラーがあります。老人福祉 の仕事をしているのにテレクラに電話しちゃう(このあたりが既に 偏見なわけですが)女性の役を演じた保坂恵麻さんの清楚でまっすぐ な感じ。情けないオトコノコを演じる後閑靖彦さんも、居そうな感じ で実にいい感じなのです。

   

タイトルの「776」は、「77」と来たリーチ目が最後で少しだけ 外れてしまった感じなのかしらん。若い二人やテレクラの二人など、 微妙にズレている感覚が楽しくて、ピッタリなタイトルです。

●「日曜日はうっとうしい」  作 飯島早苗  演出 鈴木裕美 (約40分)
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出演 市川英実 加藤裕 川本一郎 佐藤二朗 井上美穂 打越由華 生方和代

ものがたり
結婚何年目かの夫婦。夫(佐藤二朗)の浮気に気づいた妻 (生方和代)が離婚届を取り出して迫る。そこに夫の会社の同僚 (川本一郎)が、披露宴の媒酌人を頼みにやってくる...

感想
いわゆる「じてキン」テイストなのでしょうか。少しなさけない男と しっかりとした女性。きちんと話しをすること、夫婦を作り上げる ということに真剣向き合う妻の視点と、それからイチヌケてしまう夫の 視点と。視点というか感覚のズレというか、このあたりがいい感じ なのです。

ラスト直前で夫がテンションの高い長台詞を喋って、それで全てが 収まるようにみえて、みんなを返したあとに妻がそれをひっくり 返すあたりは圧巻でした。こういうの好きだわ。

妻を演じた生方和代さんも、その夫を演じた佐藤二朗さんもいい テンションの役者さんん、ガス屋を演じた市川英美の不思議な暗さと もう一人のガス屋を演じた加藤裕さんのズレた明るさが絶妙。

●「洞海湾」 作 松尾スズキ  演出 堤泰之
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出演 山崎和如 荒川良友 岩波クグル 井上唯我 金子あい 植田裕一    河田裕美 高田智之 杉村智子 野呂彰夫

ものがたり
隣に風俗の店がつながっているような、地方の寂れたバー。 土地のチンピラと警官が義理の兄弟だったりする閉塞なさびれた町。 東京にのテレビで活躍する妹の姿を見るのが数少ない楽しみ。 彼らの麻薬に手を出してしまった若いカップルが締めあげられ、 ドラム缶にコンクリ詰めにして沈められそうになった時に...

感想
今回の4作品の中では異色な感じがします。前回ならば、こういう テイストも違和感なく観られたのでしょうが、すくなくともアタシの 観た回では客席が引いているのがわかります。

とはいえ、グレードは高いものだと思うのです。閉塞感という意味では 1本目も同じなのですが、雰囲気のまったく違うものに仕上がっています。 警官さえも堕落仕切っているこの世界で、殆ど全員が死んでしまうラスト。 ええ、まったく救いがないといえばそうなんですが、息も絶え絶えなのに テレビをわざわざつけて見入る二人の姿は、都会に出て活躍する妹のこと だけが自慢で、心の支えにしている兄妹の姿が刺さります。

【観劇データ】
1997.10.30 19:00 - 21:50 P列9番(当日券 18:15)
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●全労済・スペースゼロ提携公演「ラフカット’97」
1997.10.29 - 11.2 東京 新宿 全労済ホール・スペースゼロ
全指 前当共¥3200 / 製作 プラチナ・ペーパーズ(03-5600-6211)

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