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1996.11.22

【芝居】「Believe」惑星ピスタチオ

※NiftyServe FSTAGEに書いたものの再録です。

【みたままおもったまま】!!!ねたばれ あります!!! ものすごくもりだくさんのものがたり、奇麗なシーン。2時間という枠の中に これだけのものをつめこんだのは驚異的ですらあります。 あくまでも今までの彼らのやりかたの延長線上のもの。その意味では続けて見ている 観客には新鮮さが足りないかも知れません。が、その完成度は高く、オススメです。

腹筋善之介さんの魅力が目いっぱいです。本当に凄い、ということを再認識。 「一人芝居」を見逃してしまったのがほんとうに悔やまれます。未見ながら、白血球 ライダーのネタも面白かったし、タイムボカンとかね。(^^) そこに至る「走るシーン」の奇麗なこと。多分破壊ランナーかしらん。

パワーマイムと呼ばれる彼らのやり方は、一つ間違えるとひどくチープなものに なりかねない危うさを内包しているという気がします。情景をすべて言葉で表現 してしまうこととか、手を「ひと」に見立てた遠景の手法とか。サンモール級の 劇場ならば丁度いい感じですが、アプルやゼロでは少し苦しい気もします。 芝居の前半でなそんなこと、ずーっと考えていたのですが、物語が進むにつれて そんなこと、どうでも良くなっちゃうぐらい、楽しくなってきたのです。 彼らはそんな疑問、正面から正々堂々と突破してきました。

カメラワーク手法と呼んでいる(それにしても彼らの芝居には専門用語多いこと) やりかたのひとつに「観客の視点は固定したままに役者の方をぐるっと回す」 のがあって、このあたりの完成度が見ていて気持ちがいいぐらいにキマります。

SF、しかもSTAR TREKに強く傾倒している彼ららしく、「歴史を変えてしまうこと」 のパラドックスにずいぶんとこだわりが見えます。物語としてのおもしろさ、しかも 日本史なんかあんまり知らなくても楽しめるように作りつつも、筋を通す所は きっちり通すというあたりに、好感が持てます。 歴史に弄ばれる人々、その外側から歴史の動きを見ている人々(宣教師たち)という 見方、あるいは音楽の使い方にもSTAR TREKっぽさ、感じます。

織田信長を演じた保村大和さんの一種クセのある顔が、印象的。道糞法師を演じた 福岡ゆみこさんは、いままでとはどこか違った雰囲気。こどもこどもしてた雰囲気とは 一変して、声量が明らかにパワーアップしています。うまくなったなぁ、という 感じがします。明智光秀を演じた佐々木蔵之介さんも舞台のリズムを生み出すのに 貢献しています。

【補足】
かわひらの並んだ時刻ではすでに予定した当日券は売り切れ。整理番号を渡され、 キャンセルや招待の空き、あるいは通路席を出しています。通路でも値段は同じ です。かわひらの観た回では、通路には約6,7名。残りは座席を手に入れました。 事前の電話問い合わせ、キャンセル待ちの説明とも的確で気持ちのいいものでした。 各日公演は一回ずつですし、休演日もありますので、ご注意。

アンケートの書式、前売り情報の出し方など、制作力がとても強くなってきている のがわかります。ネビュラの直前予約もあります。

【ものがたり】
戦国武将割拠の世。天下統一をほぼ手中にしたかに見えた織田信長。とある岡の 上に突然現れた不思議なハコを調べるうち、散乱した書物の中からある本を 手に入れる。「チャート式日本史」と書かれたその本から、すこしずつ歴史の 歯車が回り出す。

【観劇データ】
1996.11.22 19:00 - 21:00 補助H-15(中央上手側, 当日18:40購入,キャンセル待ちNo14)
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●惑星ピスタチオ「Believe」
1996.9.26 - 10.2 東京 新宿スペースゼロ
1996.10.23 - 11.10 大阪 近鉄小劇場
1996.11.15 - 12.9 東京 新宿シアターサンモール
劇団連絡先 オフィス・ピスタチオ
作・演出 西田シャトナー
出演 保村大和 腹筋善之助 平和堂ミラノ 遠坂百合子 福岡ゆみこ いちいりえ 吉久直志 末満健一 宇田尚純

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1996.11.13

R/【北限の猿】青年団

96年初演(演劇感想文リンク) にNIFTYServeに書いた記事の再録です。

結構寒い一日でした。実はこの日、休みでして、一気に二本観ちゃおうと思った のですが、同じ演目で二公演の日。残念。また行くことにしましょう。

..で、空いた夜を、当日券の山の手事情社にしたのですが..残念。キャンセル なんか、ほとんどでなかったのね。ま、お知らせによれば前売り完売だったので。

【みたまま、おもったまま】
二本立て公演。もう一本の方から見るのがおすすめとのことでしたが、見られるうち にということで、オススメに逆らって、こちらから見ることにしました。

会話の進み方は確かに青年団。しかしながら、「エンタテイメント作品」の名に ふさわしいぐらい、笑いも多くて、多少にぎやかな芝居。「静かな演劇」と評される 通常の公演よりも、日常に近いような気はします。静かな青年団しか知らないかわひら には、多少の違和感はありましたが、面白かったです。おすすめ。

研究室の様子は、まねきねこさんのreveiwを読む限りは、「カガクするココロ」と ほぼ同じ。ピンクのテーブル、落ち着いた市松模様の床、アクリルの壁、木目の ロッカー、ゲーム、ゴリラの縫いぐるみ。

ある瞬間、緊張感の糸がピーンと張る感じがします。青年団の芝居を観づつけて しまうのは、この緊張感のドキドキを感じたいから。和田江理子さん演じる 大学生・吉川が「アフリカ行っちゃうんですか」と叫ぶように話すシーンや、ポテト チップをむさぼり食うシーン(止めてたのに夜食にポテトチップ買ってしまったアタシ) その雰囲気を察して平田陽子さん演じる大学院生・清水が「許しちゃ駄目よ」 というあたりが、とても好きです。

快楽のためのセックスの話とか、ホワイトボードに書いたベストテンリストの 誤解が伝播してく話とかも好きです。北へ進む猿、妊婦の話、将来なし・過去 あるのみな話とか、微妙なバランスでゆるやかにつながっている脚本の緻密さに、 ほんとうにビックリします。オセロするゴリラも大好き。

もしかしたら、研究室は10年前と、人こそ替わりすれ、その中で話される こととか、考えてることは大してかわらないのかも。ヒトは遺伝子の乗物かも しれないけど、この研究室もまた、「研究者の考えること」という遺伝子の 乗物かもしれません。

二本併せたキャストの総数はいつもよりは格段に多いといえます。で、いままでは 印象に残っていなかった人が印象的な役だったりして、収穫は多い感じでした。 上に挙げた和田江理子さんは、とても素敵な印象。「南へ」のウエイトレス役だった のですが、なぜか印象に残っていませんでした。永井秀樹さんの印象もなぜか 薄かったのですが、今作ではとても印象に残りました。

もちろん、いつも印象的な役者たちもまた素敵です。出番は少ないのに、明らかに 舞台の空気を変える山内健司さんや、声が印象的な志磨真美さん。志賀廣太郎さんや 松田弘子さんも、いつもより生き生きした感じさえ受けます。

【補足】
残念ながら、下手側からでは、芝居の中で少し使われるホワイトボードを見ることが できません。これからの方は上手寄りをオススメ。ま、見えなくても、芝居そのもの には影響しないように作られてはいますが。

【ものがたり】
サルを進化させようとするプロジェクトが進行する大学の研究室。実験中の学部 学生とか、暇な事務員とか、研究室OBとか、もちろん研究者たちもいれかわり、 たちかわり。

【観劇データ】
1996.11.13 16:00 - 17:20 後2列目下手寄り(当日券, 15:15購入) 客席ほぼ定員

●青年団全国二本立公演「北限の猿」
1996.11.8 - 11.25 東京 駒場アゴラ劇場(03-3487-2743)
→10.10-10.13 伊丹AI HALL(0727-82-2000) 12/11 小倉 スミックス ESTA(093-583-3850) 12.15 飯塚 イイヅカコスモスコモン(0948-21-0505) 12.18 大牟田文化会館(0944-55-3131) 12.21-22 岡山 アイプラザホール(086-234-5877) 以降 水戸、浜松、静岡、名古屋 を予定
劇団連絡先 青年団 03-3469-9107
作・演出 平田オリザ
出演 山内健司 小林智 原田雅代 志磨真美 永井秀樹 大木透 成田睦美 平田陽子 小河原康二 和田江理子 山田秀香 志賀廣太郎 松田弘子 天明留理子 角館玲奈

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