2020.02.13

【芝居】「それは秘密です」チャリT企画

2020.1.29 14:00 [CoRich]

2014年初演作をパワーアップして再演。 100分。座・高円寺。

2014年のあのときは、国の防衛の形を決めるという大義名分が少なくともあって、それを実現するために多少の無理も押し切りたい政府。それは 機密の保護を謳いつつ、内実は都合の悪いことを隠したい権力の都合を支えるものになるからだということ。そんな怖さを持つ特定秘密保護法成立の危うさを描いた物語でした。国会もまだ一応議論らしきものは出来ていて、その上でそんな危なっかしい法案を通したい国の怖さが際立っていたのです。

再演の物語はあまりかわりません。逮捕理由を告げずに尋問という不自然さもそのままです。保護法の危うさもそのままだけれど、大幅に劣化したのは大義名分すらどこへやら、無理を通すというところだけが精鋭化しズタボロにされた言論の府の変わり果てた姿。あのころよりも遥かにどうでもいいことを国が守ろうとするようになった5年半、私たちは何やってたんだ、と絶望的な気持ちになるのです。

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2020.02.10

【芝居】「どんとゆけ」渡辺源四郎商店

2020.1.26 13:00 [CoRich]

死刑執行員制度という架空の制度と死刑囚との結婚を繰り返す女をめぐる、三演となる劇団のマスターピース( 1, 2)。 78分。

物語はホラー風味に少しばかりの荒唐無稽さを併せ持つ物語。再演を重ねるうちに役者が入れ替わりレパートリー・シアターのような風合いを持つようになってきています。とりわけ獄中結婚の女を初演・再演と演じた工藤由佳子から、青森中央高校OG・小川ひかるの客演に代わったことは印象を大きく変えています。年齢が若くなったことで情念のようなものは薄れたかわりに、若いみそらでこういうことになってしまったホラー感が強まったと感じるワタシです。他にも刑務官を演じた三上陽永も実力派の客演で物語をコミカルに彩るリズムを作り出すバランスの変化を感じます。再演に続き被害者の父を演じた田中耕一も年齢を重ねたある種の軽さがあって、とりわけ津軽独特のトランプゲーム・ゴニンカン (wikipedia)のシーンが変わらずとてもいい。 一方で、被害者の妻を演じた木村知子や死刑囚を演じた工藤和嵯など劇団の若い世代がキャストになっていて、次の世代の座組を印象に残すのです。

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【イベント】「消失点」(月いちリーディング 2020/1)劇作家協会

2020.1.25 17:00 [CoRich]

月いちリーディング、JACROWの2015年上演作のブラッシュアップ。座高円寺けいこ場、本編120分+ディスカッション60分ほど。

子供を置き去りにして亡くした母子家庭の母親、取り調べにあたる刑事もまた息子との二人暮らし子育てに悩み時にネグレクトにならないかという悩みという構造の物語。上演では少しコミカルさを纏っていた気もするのですが、リーディングでは陰鬱さが勝るようで、とりわけ裸足で就学時健診を受けようとする子供の姿が見えるようで、より抑圧的な物語に感じる私です。

5年経っても「ちゃんと」という言葉に追い詰められる親の(とりわけ母親の)扱いは何も変わらないことが厳しい。ディスカッションの中で語られたのは作家自身が子育てをする中で書かれた戯曲だということ。娘を遺棄して目張りまでしてしまうのは確かに残忍だけれど、自分の視野がどんどん狭まっていき、そこに収束してしまうかもしれないという恐れを作家自身が感じていたということの深刻さが、この残忍な「手口」に表出するようなのです。

ブラッシュアップは、 回想シーンの多さが指摘され、作家自身が今ならもっと上手に出来る、という宣言の前向きさ、いろいろなバリエーションの上演も期待するワタシなのです。

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2020.02.06

【芝居】「だけど涙が出ちゃう」渡辺源四郎商店

2020.1.23 19:30 [CoRich]

交互上演している「どんとゆけ」で死刑囚との結婚を続ける女が高校生の頃の前日譚となる構成の新作。80分。青森のあと、アゴラで26日まで。そのあと香川。

犯罪の被害者が死刑囚の死刑執行を行う制度もとつれてこられたのはがん治療の名医と呼ばれた男で、乳がんの女の安楽死に加担したとして死刑が確定した。執行員として呼ばれたのは女の夫で、妻のことが忘れられず死刑囚が許せない。女の妹は死刑囚の医師を追うように青森にやってきていて、姉が乳がんと知り治療のため紹介した。

「どんとゆけ」では死刑執行員制度という現代の仇討ともいう少々トリッキーな制度を描き、死刑囚とばかり結婚する女というややホラーのテイストと、その制度の中のドタバタした感じを描きました。

前日譚となる今作はおなじトリッキーな設定のもと、尊厳死をめぐる人々に三角関係や不倫を絡ませて、より情欲を感じさせる物語になっていて、少々テイストは異なります。設定を遊んでいる感のある「どんとゆけ」に比べ、そのプラットホームの上で、ガン患者を自宅で介護している中で愛情ゆえの、尊厳死で、それが家族の意にそぐわなかったという不幸。社会派的な視点はたとえば女性の検事が少ないことなど他の視点も入ってくるのです。

犬が死んだことを表現するシーンがあるのだけれど、意図的にミスリードを誘うような感じで、妻を亡くしたことを嘆き悲しんだ過去の夫の姿を見せるよう。回想シーンといえばそうなのだけど、時空を飛ばさず重ね合わせるのはスムーズで巧い。

このシリーズでホラーテイストを醸し出す「獄中結婚マニアの女」は今作では高校生。その後の彼女がどうしてそうなったかを具体的に描いてはいないけれど、死刑執行のその場に居合わせた強烈な体験が愛する人が目の前で殺されることに執着してしまうようになったという描き方にも見えるのです。

妻の死を悼む夫を演じた畑澤聖悟は、これだけ長いセリフの役は久々。時に軽薄にも見えるけれど、頑固さも娘や妻への愛情も併せ持った説得力のある造型。医師を演じた各務立基はごく静かでおだやかな人物を細やかに作り出します。

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2020.02.05

【芝居】「Science Fiction's」スクランブル

2020.1.22 19:45 [CoRich]

80分、STスポット。

ハーブカフェ、店長は目の下にクマをつくり時折奇声をあげている、常連の男はその先輩で最近ちょっと魔法が使えるようになって嬉しい。バイトの男は片腕を鎖で巻きそれを放てばなんでもできると言っている。新人バイトの女を追ってきた男は容赦なく、力が強い。ホームレスの男が出入りしている。そこに騎士が刀を振り回し突然現れる。

なるほど、ゾンビ、タイムトラベルやAI的ロボット、宇宙人、何百年も愛を待つ魔女、何かを秘めた男など、SFっぽい登場人物たち。それなのに場所はハーブカフェで、困ったアルバイトや疲れた店長など日常な感じ。SFという前提で突っ込むことはなく、目の前で困ったことを解決しようと頑張り、日常を過ごそうとしています。

バレバレでバラバラにみえる要素なのだけれど、徐々にその背景、たとえば未来から逃げてきたロボットと追うロボット、宇宙人といった要素が物語の中で徐々に示される構造が面白い。かなり無理筋なファンタジー世界の騎士すらも、800年愛を待ち続けている女と恋に落ちるという素敵な話。物語が私達の地続きの何かとか声高に何かを訴えるというわけではないけれど、要素と構造で「遊ぶ」感じで、なるほど、劇団が掲げる「最高の暇つぶし」なるモットーををきちんと体現する魅力なのです。

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2020.01.30

【芝居】「シンベリン」OKAMI企画

2020.1.19 18:00 [CoRich]

120分。青少年センターHIKARI。

初見ですが、父子の思いのすれ違い、恋人同士のスレ違いと勘違い、悪巧みや裏切り、老人の頑固さなど、シェイクスピアのさまざまな物語に含まれる要素がいっぱいに詰め込まれた感じで、なるほどシェイクスピア晩年の作品らしい集大成な感じなのです。 どうするのかと不安に思うほどばらまかれたピースは終幕近くで少々強引とも思えるほど、一気に解決に向かいます。なるほど、「渋滞を起こすほどのハッピーエンド」という言葉がぴったりに。

ごく短く編集されたものは観たことがありますが、がっつりフルサイズ120分では初見です。おそらく物語はわりと忠実で、それほど大きな改変をしているわけではなさそうなのですが、緩急の付け方含めとても見やすく軽快で、広い観客にリーチ出来る一本になっているのです。

王女を演じた御法川わちこ、か弱い姫と男装の少年で踏ん張る感じの力強さ。従者を演じた佐々木覚の シンベリン王を演じた今井勝法のザ・老害な絶対権力感も混乱の火だねらしく、説得力があります。物語そのものにそれほど重要なわけではないけれど、戦争を描くシーンの緊迫感。それは兵士たちの足音で醸し出される不穏さがとても印象的。

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2020.01.25

【芝居】「会社の人事」若葉町ウォーフ

2020.1.13 19:00 [CoRich]

中桐雅夫による同名の詩集モチーフにした90分。20日まで。若葉町ウォーフとしての初めての制作のようです。

退職の日、大岡川沿いのバー。不倫の果に子会社に送られた人、ついていった人、あるいは事件に巻き込まれて亡くなった社員と家族のこと。災害にあったこと、カルトな犯人のこと。
人事がAIによってなされた時代、スタッフは自我更生プログラムを受け、AIの助言によって人事の判断を行うようになっている。

昭和から平成を歩んできたおじさんたち3人、これから先にこうなるかもしれないという時代を生きる若者たち3人という構成で「人事」を幹に紡がれる物語。おじさんたちの物語が主軸ではあって、昭和の時代から会社であったさまざま、ある種の権力闘争だったり、あるいは不倫のけじめとして別会社への転籍だったり、そこでもきちんと仕事を積み重ねたり。オウムのサリン事件、あるいは幼女の殺人、大きな地震、その時代の中で、しかし会社員として過ごした日々がきちんとあって。

未来の物語は、人事という人間が行ってきた仕事を誰がに担うのか、スタッフはAIがマッチングしたギフテッドな天才たちだが自我を更生するように求められ、それは中立性のことだったり。血が通わないようになっていくと観ているワタシは感じるけれど、どちらが正しいかはよくわからないのだけれど。

それほど強調されるわけではないけれど、退職を迎える男と同じ時代の二人は既にこの世に居ない人々で、男は一人バーで思い出しているよう。遠くになりにけり、な昭和・平成の時代の会社員のありかた。詩集にはこんなのがあるそうで→「いくばくかの夢もあったのに、いつも飲み屋じゃ会社の人事の話ばかり。」なるほど、そんな時代。

退職する男を演じた龍昇、必ずしも人を引っ張る人ではない、ごく普通の市井の会社人という雰囲気がたっぷり。少し若い人事の男を演じた大西一郎は、序盤で別の社員のモノマネ風の長いセリフを始め、役者としてここまでがっつり台詞がある役はワタシは初めて拝見して、確かな力を存分に。

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2020.01.20

【芝居】「イケてるともだちX」なかないで、毒きのこちゃん

2020.1.11 19:30 [CoRich]

125分、スズナリ。

三人姉妹と父親が一緒に住んでいる。母親は亡くなっていて、姉妹と父親の間はぎこちなく、特に長女は嫌悪している。次女は結婚し子供を設けたが、離婚している。三女は高校生で、女子ばかりのオカルト研究部に入っている。
ある日、家の物置で初老の男が裸で居るところをみつけた父親は、意気投合し一緒に住まわせることにする。オカルト研究部には転校生の男子が入部してきて、みんな心を奪われて挙動不審にすらなる。

物語にはさらにMIBよろしく黒スーツにサングラスの男たち、あるいは離婚した父親とドライブでぎこちない一日を過ごす幼い姉弟が描かれます。言葉にしなければ分かり合えずめんどくさいなぁというセリフが時折挟まったりして、おそらくは宇宙人の話だったりするのだろうなということはわかるのだけれど、三姉妹と父親と裸の男、次女の夫と子供二人、三女の高校のサークル仲間と転校生、MIBの男三人とウーバーイーツの男、という四つの場面が細かく行き来しながら進む物語。ET的な物語なのだろうと思いつつも、あまりに場面が分散したまま進むために、正直にいえば、これがどう収束していくのか少々不安にはなるのです。

終盤でするすると収束していくのは見事で、地球の危機らしい話はトラックに轢かれるという一瞬で解決し、父娘の物語はうまくいったようないかないような、しかし前向きな感じにはなり、女子高生の(うちの一人)の恋は成就し、小劇場としては見事なSFX(ではないか)で拍手すら起こるハッピーエンドは、手作り感いっぱいだけどエンタメしようという心意気がいい。

裸で現れる男を演じた森田ガンツ(いつの間にか劇団員に...)の登場の絶妙さ、そのあとの半笑いのおじさんなたたずまいがいい。瓜生和成もそのおじさんの領域の緩さの向こう側に抱えて言えない物が渦巻く深さ。幼い息子を演じた植田祥平の怪演のインパクト、方向は違うけど、女子高生を演じた大場靖子のインパクトもちょっと凄いけど、ラストの感動もちょっといい。

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2020.01.15

【芝居】「十二人の怒れる男 -Twelve Angry Men-」feblabo

2020.1.11 15:00 [CoRich]

120分。20日までシアターミラクル。

父親を殺したとされた少年の殺人事件の裁判、結審し集まった十二人の陪審員たち。誰もが少年を有罪と考えていたが、合理的な疑問があり、明確に有罪と言えないとして、一人だけが無罪を主張する。

議論をめぐる会話劇の金字塔で、さまざまなバリエーションが作られている一本の物語。おもいのほか、がっつりと作り上げられています。

物語の面白さはきちんと。現在の日本に翻案するというわけでもなく、わりとそのままの時代に。二人の証人が本当に正しいことを言っているのかの疑いの可能性。本当に15秒で少年を目撃できるかとか、20メートル先から本当に犯行の現場を見ることができたのか。「疑わしきは罰せず」の原則という「理想」がびっくりするほどストイックに作られた物語だということを改めて感じるのは、今の私たちが法相が「司法の場で無罪を証明すべき」と間違ったことを平気で発言する世界に生きているからかもしれません。

若い頃に見たよりも、息子に裏切られたあまり、少年を有罪にしようとするマッチョイズムの男であったり、スラムに住む人々に対してあからさまな差別を隠さない男など、(陪審員が男ばかり、という時代の古さはもちろんあるけれど)その時のアメリカの世相と社会を描いているのだということを改めて感じて、手に汗握るパワーゲームと云うよりは、良くも悪くもいろんな人が居る「社会」の縮図を描いていることに驚くのです。 無罪と最初に表明する男(8号)を演じた坂本七秋はずっと緊張感のテンションを、しかし静かに。野球に行きたい男(7号)を演じた金田一央紀は全体に緊張感ある中で緩ませるような役柄で、余裕を見せる安定感。息子との関係で強いマッチョイズムに生きる男を演じた神野剛志や、スラムに対する偏見を隠さない差別的な男を演じた長野耕士が終盤で描く焦りをヒリヒリと感じさせるのです。

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2019年は143本でした。

順調に減り続けております。今まで観ている劇団が多く、新たに拝見するようになった劇団は本当に少なくなっていると思います。去年も書きましたが、歳取るとはこういうことか、と。

2013年から210→224→212→193→190→155→143、となっています。ことしもよろしくお願いいたします。

2019観劇リストここには、いわゆる演劇の演目ではなく劇作家大会の講演やワークショップを含んで居ますので、本数は少々異なります。

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