2021.04.14

【芝居】「アン」やみ・あがりシアター

2021.03.27 17:00 [CoRich]

役者のオーダーに沿う形で一人芝居を作り上げる「オーダーメイド」と題した企画公演。70分。3月28日まで王子スタジオ1。

増毛剤の発明で大金持ちとなった若い女。余命が一年ほど難病と妊娠が同時にわかる。生まれてくる女のために何もかも揃えておこうと考える、個人所有の島で暮らし、おもちゃ会社、学校、友達となる子供を持つ住人たちなどを揃えて何不自由なく暮らせるように整えていこうと考える。

いくつか縛りがあって、一人芝居、1時間ほど、役者の手による人形劇と紙芝居のシーンをそれぞれ入る、となっています。

海外ドラマ風に少し誇張した喋り、いわゆる第三の壁に向かっての語りをいれた体裁。妊娠を知り父親候補には逃げられても莫大な資産で子供のためにいろいろ揃える前半はコミカルに楽しく。時に子供が思うように育たなかったりして悩む未来を描く中盤は彼女にはやってこない未来で、しかしその想いはより深く描かれます。資産を全て秘書に奪い取られてしまってからの展開。かつての幼なじみに引き取られるのはどこか安堵する気持ちもあるけれど、ところどころで顔を見せる赤毛なアンの姿は、あれ、もしかしてこれは孤児院に引き取られる、あのおさげ髪の「アン」の物語にゆるやかに繋がる別の世界線の物語なのか、という不穏さを感じるワタシです。

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2021.04.05

【芝居】「岬のマヨイガ」いわてアートサポートセンター・宮古市民文化会館

2021.3.20 18:00 [CoRich]

岩手の作家、柏葉幸子による児童文学をserial number(ex.風琴工房)の詩森ろばが脚本・演出。宮古、盛岡、二戸、久慈の岩手を巡演して東京芸術劇場・シアターウェスト。3月21日まで。130分。amazonでは試し読みで序盤や背景が読めたりします。

事故で両親を失い声を発せられなくなった少女、夫の暴力から逃げてきた女、老人ホームに入ろうと遠野からやってきた老女。その日、大きな地震が起こり、避難所で出逢う。老女が家族だと機転を利かせ、三人で岬にある古民家で暮らすことにする。地震の影響は封じ込められていた魔物を呼び起こしたことに気付いた老女は、遠野から河童を呼び寄せ、調べることにする。

元々は子供向けに書かれた物語で、他人どうしの3世代の女性たちが被災をきっかけに肩寄せ合い暮らすようになる中、河童たちと出会い、土地に封じ込められていた魔物が出現する中、対決するのです。魔物は直接人を傷つけるというよりは人々の心に忍び寄り、不安と恐怖を煽るのだということも、河童たちの描かれ方もファンタジー。もちろんきちんと物語は物語として描かれるのだけれど、リズムや河童の異形のありかたが、それを支える一人の手による生演奏と相まって一種の祭りをみているような感覚になるのです。

ワタシが観た回は、序盤の地震が語られるシーンで劇場が揺れ、照明も長い時間の揺れ。物語とリンクする巡り合わせを感じるのです。

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2021.03.13

【芝居】「帰還不能点」チョコレートケーキ

2021.2.20 18:00 [CoRich]

チョコレートケーキの新作は、実在した「総力戦研究所」(wikipedia)を支点に引き返せなくなったのはどこの地点(=帰還不能点/POR)を思索する125分。2月28日まで東京芸術劇場 シアターイースト、そのあと兵庫。

戦後すぐ、居酒屋で久しぶりに集う人々。「総力戦研究所」に所属していた人々はそれぞれの道を歩んでいる。若手が集められ緻密なデータと議論によって戦局がどうなるかを試算するための試みで、敗戦はきちんと予測出来ていたがそれが取り上げられることはなかった。興に乗るうち、あのときの議論をもういちど繰り返し、時に芝居じみたロールプレイ、ときに冷静な視点を交えながらどこでならあの戦争を止められたかを思索する。

総力戦研究所という実在した組織と彼らが出した敗戦という結論が取り上げられなかったことを骨組みにしてはいますが、それ以外の部分はほぼ創作なのだろうと思います。そのうちの一人が戦後再婚した妻が営む居酒屋を舞台にしながら、その夫は広島を見て、予測出来なかった原爆に呆然として亡くなりというあたりはセンチメンタルに過ぎる気はしますが、研究所の人々に限らず、多くの人の中にはそういう人も居ただろうという想いを描くことと、いわゆる戦局の史実を重ね合わせながら描くという試みは面白く感じるワタシです。

時に内閣の様子、あるいはヒトラーという人に魅せられてしまう人、戦争に巻き込まれて酷いことになるかもしれないことと、自分の権力を維持することのどちらを選び取るかという政治家たち、しかも外交交渉がそう上手でもなく巧くいかないという厳しい視点は現在までの地続きに感じるのです。

戦後の居酒屋で興に乗った人々は、当時陸海軍、総理、文部、大蔵、外務、内務といった役割をロールプレイします。居酒屋と云う場所のある種の楽しさだけれど、その中で真剣に考えたことは数年経っても同じようにできるというのは作家が、この人々は真剣に考えたのだろうという敬意がきちんと感じられるのです。史実の枠組み、そのときの「エライ人々」の動かした歴史という前半と、それに巻き込まれた「普通の人々」を対比して描くことの構造の面白さなのです。

幹事の男を演じた岡本 篤がとても良いのです。亡くなった男のことを本当に考え続け、そしてこの場を作り上げたMCという役割でもあって。やさぐれている外務官僚を演じた村上誠基も時折見せる鋭い表情はほぼ最後列のワタシにもはっきり。陸軍の男を演じた粟野史浩は声が多きくがさつな感じだけれど、きちんと繊細な面も描き出すのです。

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2021.03.01

【芝居】「リーディングトライアルNo.1」ベイサイド実験室2021

2021.2.20 14:00 [CoRich]

ワタシ的に、2021年の最初の劇場観劇です。

ネオゼネレイター・プロジェクトの大西一郎が企画する実験室的公演。演目は日替わりのようです。28日までベイサイドスタジオ。2時間のアナウンスでしたが、初日は休憩ありの155分。

  1. 「なりきり自己紹介」(前半)他のメンバーが書いた架空の人物の言葉を読み上げ、その人物になりきって受け答え
  2. 「着納め」(作・清滝美保) 女と使用人。もう紫は自分に合わない、老いたかという女。
  3. 「かんしゃく玉」(作・岸田國士, 青空文庫)
  4. 「厩火事」(古典落語)
  5. 「なりきり自己紹介」(後半)
  6. 「眠れない停電の夜に」(作・尾道幸治) 横浜の大停電の夜、ラジオパーソナリティが語りかける記憶が定かでないぼんやりとした話。横浜までは記憶があるけれど。
  7. 「麵麭屋文六の思案」(作・岸田國士, 青空文庫)
短編のリーディングを役者をさまざまに組みあわせた企画。知っている戯曲も演出家がちょっとコメントしたりして背景が見えたりして楽しい。

「なりきり自己紹介」は、他の役者が書いてきた人物のセリフを読み上げたあと、その役になりきって質問に受け答えするというもの。彼らがワークショップ的に使っている手法のようですが、役者の人となり、あるいは書いた役者の考え方のベクトルが見えるようで楽しい。

「着納め」は、女が着物が年齢に合わなくなってきたと寂しく思う気持ちを発端に、過去の華やかな日々を経て今は(おそらく)地味な男を伴侶としたけれど、男の少し優しい言葉を聴いて愚痴の言い納め、着物の着納めに至る気持ちの変化を描きます。繊細で解像度が高くて沁みてくるよう。

岸田國士は著作権が切れてよく上演されるようになった、という演出家のコメントでの「かんしゃく玉」。夫の友人たちが目をかけるのは妻ばかりという構図、男こそ働いてなんぼが当たり前の時代ゆえだけれど、かんしゃく玉を投げつけるという突飛さがなんかとても瑞々しく、どこか微笑ましさもあって何度観ても楽しい一本。

落語から「厩火事」。犬も食わない夫婦げんか、しかし妻は夫のことをちゃんと思っていて、男の方はといえば、という古典。不満をまくしたてる妻と辟易する仲人の会話のリズムが楽しい。

「眠れない停電の夜に」はラジオパーソナリティが出逢った不思議な体験が放送に乗っての出来事。東横線、横浜を過ぎてぼんやりする、というあたりがポイントになる時代の流れを下敷きにした物語。停電が起きてラジオDJが妙なテンションになってるという体裁だけど、前半の行方が見えない時間がもうちょっとスピードアップすると嬉しいワタシです。

「麵麭屋文六の思案」これも岸田國士。ケラリーノサンドロヴィッチの上演は観てるはずなんだけどすっかり忘れてるワタシです。思い通りにならない息子や娘を抱えた父親。丁寧な会話を紡ぐ物語とみせかけて、豪快にひっくり返す楽しさ。

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2021.02.10

2020年は43本でした。

12月の芝居の感想を2月までかかって書いてます。それほど、日常から芝居が抜けてしまった日々です。

ここ数年減り続けてましたが、2020年に劇場で観たのはわずか二桁、平均すると週一本にも満たずに終わりました。年が明けても、実はまだ劇場で観てません。まあ、ぼちぼちと思いますが、正直、観たことの無い劇団はさまざまな対策が推し量れないので今しばらくは伺えない感じ。観たことのある劇団、劇場を選んで行こうかな、と。

配信で拝見したのは19本でした。感想はほとんど書けてないのでタイトルだけ。

  1. 4/12「ラグランジュ・ブランチ」あひるなんちゃら
  2. 4/14「彼の地」KAKUTA
  3. 4/19「未開の劇場オンライン」
  4. 5/2「親しき中にも恋せよ淑女」
  5. 5/8「12人の優しい日本人」
  6. 5/10「駈込み訴え」スタジオソルト
  7. 5/31「ロマンランタン」日本のラジオ
  8. 6/6「笑いの太字」おおわだのむら
  9. 6/6「12人のおかしな大阪人」
  10. 7/18「シーナさん、吉田戯曲賞ノミネートされたってよ」スタジオソルト
  11. 9/4「量子力学」あひるなんちゃら
  12. 9/6「IN HER TWENTIES 2020」TOKYO PLAYERS COLLECTION
  13. 9/12「家じまい」月イチリーディング
  14. 9/26「あういろいろ」桃唄309, だるめしあん (2プログラム)
  15. 10/10「ストロング」月いtリーディング
  16. 11/7「ゆくゆく」月いちリーディング
  17. 12/12「最後に歩く道」TOKYOハンバーグ
  18. 12/26「2メートル』スタジオソルト
いわゆるZoom演劇、舞台を撮影してのライブ配信、あるいは録画しての配信などさまざま。Zoom演劇の制約の中でも部屋ではなく街の中に出ていった「シーナさん〜」は巧みで印象的でした。

映画は6本。ワタシにしてはこれでも多くて。

  1. 1/6 「ロングショット」
  2. 1/19「さよならテレビ」
  3. 8/1 「君はなぜ総理大臣になれないのか」(配信)
  4. 8/30「ブックマート」
  5. 9/21 「テネット」
  6. 10/1「GENERAL MAGIC」(配信)

おもいのほかテレビやnetflixのドラマは熱心に観ました(これでも)。「コブラ会」(netflix)、「MIU404」「半沢直樹」(TBS)、「コタキ兄弟と四苦八苦」(テレ東)

まあ、ぼちぼち劇場通いも再開します。

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2021.02.09

【芝居】「gaku-GAY-kai 2020 贋作・十二夜」フライングステージ

2020.12.29 18:30 [CoRich]

年末恒例のイベント。第一部「贋作・十二夜」と第二部のバラエティ溢れるショー。全体で150分。休憩10分。感染防止を徹底するよう、人数を絞り、きっちり時間をコントロール。舞台もごくシンプルに。さすがに客席もぎっちりにはならず。年末の風物詩にしているワタシです。動画も無料公開されています。

「贋作・十二夜」は、 靖国通り沿いの砂浜にたどり着いたりと新宿近辺という舞台設定は最近の傾向。もともと男装などジェンダーの入れ替わりがある物語で、それをゲイの役者が女性を演じ、さらに男装をしたりという「捻れ」が楽しく機能しています。男装した妹を演じたモイラと、その主人が恋い焦がれる女を演じたエスムラルダが初めて出逢うシーンがとてもいいのです。主人の心を伝えるために「演じる」や役者が役を「演じる」をメタに重ね合わせるのはおそらく原作からある力。

第二部は、コールアンドレスポンスを封印。

  1. 「アイハラミホ。の驚愕!ダイナマイトパワフル歌謡パフォーマンスしょー」勢いのいい祝祭感あふれるオープニング。
  2. 「佐藤 達のかみしばい 僕の話をきいてください」自転車の鍵を拾ってあげられない昨今、森の熊さんはおいかけて、がほっこりした絵柄にマッチするいつもの。
  3. 「水月モニカのクイアリーディング」幸福の女装、と題して。日本のバス停という場所は変えてるけれど、オスカー・ワイルドのあれ。
  4. 「ドラァグクィーン ストーリータイム」(関根信一)絵本「ねこのジョン
  5. 「小夜子なりきりショウ リヴァイタル:ディーズィエム」(モイラ) 第一部とはうってかわっての和装で長髪も美しく。
  6. 「ジオラママンボガールズ オンステージ」空調服で膨らむ宇宙人を背負う新たな趣向が楽しい。
  7. 「中森夏奈子のスパンコール・チャイナイト vol.12」まさかのあの事件に踏み込み、死体になったワタシ、の歌を。
  8. 「今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ」(エスムラルダ)いくつかの出し物をして、いつもの最後の曲「エスムラルダでマンボ」、観客の歓声を封じ、心の中の、あるいは手のひらを前に向けて前後に振るような、コールアンドレスポンス。

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2021.01.11

【芝居】「今はやることじゃない」箱庭円舞曲

2020.12.29 14:00 [CoRich]

箱庭円舞曲、作演を兼ねる主宰の育休明け、劇団旗揚げ20周年と題しての久々の公演。80分。12月30日まで駅前劇場。

妻が入院したあと夫がひとりで切り盛りするラーメン屋。同じ味の筈なのに客が入らなくなって久しい。娘は思春期の頃から家のラーメンが嫌いになって素っ気ない。回りはマンション建設のために立ち退きが相次いでいて、持ち家のこの店にも不動産業者が訪れている。
ある日、担当者が口にしたラーメンにひどく感動し、口コミサイトなどを総動員して客足が戻ってくる。

作家自身もマニアックに好きな、まさにラーメン屋にまつわる物語。客が付いている店は必ずしも美味しいラーメンが理由とは限らないという視点から客あたりのいいおかみさんの存在だったり、流行の味付けであったり、あるいは口コミサイト総動員で作られた情報により押し寄せる一元客だったり。加えて、真面目にスープをとることをやめ、無化調どころか化学調味料とスープ缶詰だけで作り上げた味でも変わらない客であったり。さらには居抜きで、しかし味は全く受け継がないでリニューアルする娘など多面的な切り口で「ラーメン屋」という存在を描き出します。「ラーメンは情報を食べてる」というのはどこかの漫画の台詞ですが、そんな現状も織り込むような軽快な語り口も楽しい。

「ラーメン屋」を描いている本作だけれど、劇団の周年公演というタイミングで、劇団員だけによる上演という形態から、それはもしかしたら「劇団」というものさまざまな在り方や観客とのありかたを写し絵として描くよう。

ラーメン屋のカウンターをわざわざ内側を客席にむけて置き、大量の什器を仕込んで描く舞台が印象的。作家のラーメンへの想いの深さか、あるいは内側で考え続けている様々なことが凝縮しているかなんてことを思いつつ。

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2021.01.10

【芝居】「オレステスとピュラデス」KAAT神奈川芸術劇場

2020.12.6 15:00 [CoRich]

杉原邦生演出のギリシャ悲劇シリーズ、瀬戸山美咲の台本での上演。12月13日までKAAT神奈川芸術劇場、大劇場。130分。

母殺しの男(オレステス)は復讐の女神たちの呪いから解放されようと、神託に従い従兄弟(ピュラデス)、救われる場所へ人々を率いて遠くタウリケへ向かう旅に出る。
従兄弟の父親に旅の金の無心をし、奴隷船の男色の船主から逃げ、泳ぎ着いた島で出逢った盗賊や少女、ギリシア軍に滅ぼされた村で復興に人生を捧げるギリシア人との出会いなどの旅を経て。

ギリシャの物語に隙間を見つけて、作家が想像した物語を紛れ込ませる趣向。ずっと旅をする人々に次々と出逢う人々を大鶴義丹、趣里という二人の役者でというのも面白い。奥行きもタッパもある巨大な劇場空間を自在に使い、遠近感、高さにビックリする感じなど、二階席から観ても楽しそうなのです。

作家が紛れ込ませた物語は、戦争のあと酷い目にあったり残された人々を目撃する旅というテーマに思います。戦争では敵を殺すことが正義だったけれど、終幕では、初めて生きている「人」を殺してしまったと実感する(殺された少女は神がどこかに飛ばしたというのも救いの物語かも知れません)成長の物語なのです。

時にラップ、時に歌い上げる音楽も印象的。個人的にはTCアルプの武居卓がきっちり謳い上げのを観て嬉しくなったりもするのですw。

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2020.12.30

【芝居】「みてみぬふり」北口改札

2020.12.5 19:00 [CoRich]

劇団としての第1回公演。劇団スクランブル・坪井俊樹作演。スタジオ空洞で12月6日まで。70分。

先輩の男、後輩で社会人になったばかりの女二人。コロナ禍で時々LINE通話をするようになった。女の一人は彼氏がいるが喧嘩していてしばらくあっていない。もうひとりの女は男に気があるが、言い出せない。ある日、彼氏持ちの女は無職となった男から食事に誘われ、そのままずるずると男が家に居着いて仕事を探すでもなく。
しかし彼氏と別れないことを責められ電話をした女は仲直りし、居着いていた男は追いだされる。追いだされた男はもうひとりの女と会い、家に居着いてしまう。

ヒモ体質のダメ男が二人の女性を渡り歩き、しかし結局二人から惚れられているというなんだか青年漫画みたいな話。恋愛体質で寂しく男を断れない女と、好意を持っている女。全く同じような繰り返しだったり、結局惚れて手放したくない気持ちだったり、三人でいいじゃんという感じだったりとどうしようもない人間のコミカルな切り口を並べて見せるコメディなのだろうと思います。ワタシはそこに愛おしさを感じられなくて、いわば浅はかな人々を描く滑稽さには乗り切れないのです。

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2020.12.29

【芝居】「プライベートジョーク」パラドックス定数

2020.12.5 15:00 [CoRich]

2007年初演作の再演。120分。12月13日まで東京芸術劇場シアターイースト。

初演では名前が示されていた5人の学生たちは、ジャンルと頭文字だけの表記に。スペインの学生寮を舞台に、来訪する少し上の成功している人々と、これから名が売れていく学生たちの交流という形と、戦争が忍びよる時代を背景にファンタジーとして描きます。

それぞれの名前を少しは知っていても、同じぐらいの時代の人々であるという認識がなかったり、時代での立ち位置もそんなに知らなかったりするワタシです。借景となる時代や人物の現実の背景を知っていれば、もっと解像度高く感じ取れるのかもしれないけれど、それに囚われなくてもいいとも思うのです。若い世代から名の売れた人々をみつめ、自分も昇っていこうとする気持ちだったり、あるいは年齢を重ねて若い世代を少しばかり懐かしく思う気持ちだったりという細やかに描かれる人物たちを観ていて目が離せないワタシなのです。

登場する人々はみな天才と言われるような時代に名を残した人々だけれど、まったくジャンル違いの人々を集めることで、どの分野でも起こりうるような抽象度の高い、あるいはふんだんな暗喩を纏う会話は軽快で快いほどの会話の「音」を生み出します。反面、何を描いている物語かはとらえづらくなる感もあって、ワタシはむしろ造形された人物像(歴史上の人物という意味でなく)を面白く感じられるところにフックするのです。

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