2024.03.01

【芝居】「syndicated」theater 045 sydicate

2024.2.10 18:00 [CoRich]

横浜を拠点に活動する theater 045 syndicateが、世人/dasman、鳥を探すの二団体を招聘して集まり(シンジケイティッド)、短編を連続上演する企画公演。2月11日まで神奈川県立青少年センタースタジオHIKARI。120分ほど。

実験のために呼ばれた男。連れてこられた目隠しの男に問題を出し、不正解なら流される電流は増えて行く。監視の隙に二人は知り合いだとわかるが、その後の実験も続く。「アイヒマン・テスト」(世人/dasman)
亡くなった男の妻と娘たち3人、男の弟。家族は温かいが、「黒い水」と名付けられた悪意でミタされる世界を救うために戦っている。末っ子アオは夢で家族に冷たくされる悪夢をみる。「夜の戦いの種族」(鳥を探す)
金に困った同級生3人と、困ってはいないが友情のために加わった計4人の男たちが強盗を計画し、実行の日。それぞれに準備して集まっている。一人はその気満々だが、一人は払うはずだった慰謝料を払わなくて良くなり、一人は工場が売れて金の目処はついた。遅れてきた男は足を骨折しているのに、決行する気合いに溢れている。「Puppy Day Afternoon」(theater 045 syndicate)

ナチスのホロコーストに関与した人物をタイトルに掲げる「アイヒマン〜」。クイズの不正解でボタンを押す男と、それによって電圧がかかり苦しむ男という実験される二人と、それを観察もしくは監視する一人という三人芝居。序盤ではボタンを押すことを躊躇する男。中盤で監視の男が中座する間に知り合いとわかり、ボタンを押している男が負い目を持つ立場だということが明かされます。が、再開された実験、ボタンを押す男はむしろ躊躇無く罰を与えるようになる流れ。実験の後、監視する男はボタンを押していた男からスマートウオッチ風のものを外し、男は嬉々として出て行くけれど、罰を与えられていた男が企んだ実験だったという終幕。明確には示されないけれど、報酬の前に倫理が敗北する絶望と読むワタシです。
正直にいえば、前半が少々長くて、後半はダイナミックに面白いのでもっとキュッと短い尺で見たい気がします。

「夜の戦いの〜」は、ズレる会話の家庭の話かと思うけれど、ちょっと不穏な雰囲気ではじまります。黒い水という悪意が満ちる世界と戦う、恐らくは劣勢なレジスタンス的な家族だけを描きます。何かの重大な仕事をしている家族だけれど、末っ子だけはその戦いに参加していないのは、もちろん家族の思いやりなのです。が、中盤で末っ子は家族たちに冷たくされる悪夢を見るのです。
家族たちと、末っ子の思いのすれ違い。優しさを疎外と感じることのコンパクトに描きます。正直にいえば、物語に対して少々登場人物が多い感じではあるのですが、とはいえ、登場人物を減らすべきなの、物語の密度を上げるか、思いあぐねるのです。

わりとシリアステイストの二作のあとに、狡猾な感じすらある「Puppy〜」は笑い多めで楽しい。 金が無いから強盗でもしないとならなかったオジサンたちと、男気で協力しようとするオジサンの元同級生な男たち四人芝居。銃を手入れしてたり準備万端なのに、それまでの前提だった筈の金が必要ということもなくなって、一人まだ金が必要で頑張ろうという男に、男気だけ威勢のいい男が使い物にならない。さまざまに、ままならない他人を眺めて笑う観客のアタシです。
終盤、強盗を中止しようと金を貸すという申し出に、友達から借金をしないと応じる男、そこに「友達を強盗犯にはしない」という幕切れ(ネタバレゴメン)、同級生というより仲間たちの信じられる距離感がとても心地よいのです。

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2024.02.26

【芝居】「オセロー」滋企画

2024.2.4 14:00 [CoRich]

シェイクスピアの「オセロー」、オセローと妻デズデモーナを強くフィーチャーした物語として描く115分。アゴラ劇場。

軍人オセローがそれを嫌う旗手イアーゴの企みにかかり、妻デズデモーナの貞操を疑い殺してしまう。

役者はたった5人。、デズデモーナと騙すイアーゴという裏表を伊東沙保が一人で演じる圧巻。とりわけ、イアーゴの悪い表情が凄い。佐藤滋主役・オセローをきっちりと。役を兼ねて演じた義父は人の良さを役者のキャラクタ全開で。

副官、侍女、娼婦をはじめ幾つかの役、現代の雰囲気に近い役を演じた三人の役者、中川友香・永井茉梨奈・佐藤友のバラエティが少人数の座組を支えて力強いのです。

細かなセリフはもちろん現代的に再構成されているのでしょうが、物語は戯曲に忠実だと演出家は言います

オセローという物語をそう沢山見ていなくて忘れがちワタシ、序盤ではどこか混乱するけれど、オセローと妻の強すぎるほどの愛情に収斂してく終盤はシンプルで深く印象に残ります。オセローが妻についてモノローグで語るシーンの圧巻。更に二人が歌謡曲に合わせて踊るように周り、口づけを交わし、を繰り返す終幕はどこか演歌的な泥臭さを感じさせながらも美しい。

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2024.02.21

【芝居】「トーキョー奇譚 ~感覚強化産業Vol.2~」Sun-mallstudio P

2024.1.20 14:00 [CoRich]

第一回目が1988年という企画「感覚操作産業」(未見)の第二弾。3団体の企画公演。120分。1月21日までサンモールスタジオ。

ゴミ箱に隠れ集い世間についての議論を交わす女二人。イケメン市長が進める開発計画は風向きがかわり追求を恐れた市長は命を絶ったと思われるが「星降る夜に〜オルタナティブ」(ガマ発動期)
半人前の鬼の女は児童養護施設で暮らす少女と山で出会う。人間を絶望させる課題を課された鬼の女を見守る虫売りは少女に三匹の蟲を渡す。少女は成長し、無職だが新種を探すために山に来た四十歳の独身男と蟲を探し続けている「あの角を曲がりたい女」(TheStoneAgeブライアント)
月着陸した日本人宇宙飛行士たちは月面でかぐや姫を名乗る女と出会う。観測できていなかった小惑星が接近し地球に激突する危機が迫っているが、宇宙飛行士たちには月の一部を破壊し小惑星の軌道を変えるミッションが与えられる「どうする?!かぐや姫」(離風霊船)

「星降る〜」は2009年初演(未見)の初演から秘密結社と刑事の性別を入れ替えたオルタナティブ版という体裁。再開発でヤバい市長と外資系企業の結託の現場へ向かう刑事は捜査だけど、秘密結社はカーチェイスしたりしつつちょいと物見遊山な感じ。果たしてその場で4人は出会い、実は市長は生きていて。正直おおきな話があるというよりは二組の人間たちがそれぞれの目的と任務はこなしつつ、実は時間を潰しているのだと読み解くワタシです。日替わりのゲストも楽しい。

「あの角〜」は事前のチラシでは少女と虫売りを軸として、進むべき道を教える蟲というあらすじなのだけれど、今作は迷ってる鬼の存在も大きく感じるワタシです。児童養護施設で暮らす少女に与えられた蟲、そのおかげかどうか正しく成長した少女。あきらかにダメな雰囲気の無職の四十男との恋心は蟲としては避けさせようとしてるはずだけど、蟲を捨て自分の意思を貫く少女、まさに人が成長して最初は生き抜くためにガイドが必要だけれど、成長したなら怖くても自分で選び取るようにならねばという物語の骨子が強いのです。
鬼を演じたさんなぎが強い印象、ダメ男を演じた熊野善啓は優しく、しかし生き方が下手な造形の人物を好演。

「どうする〜」は月面着陸した宇宙飛行士(SLIMおめでとう、の時事ネタな台詞も楽しい)たち、無茶振りな小惑星回避のためのミッション、三人のうち二人はサイボーグでそのミッションを阻止して人類を滅ぼそうとしている、一人だけの人間は大金持ちの人間というのも、なんかありそうな話。
関西弁の合衆国大統領を演じた岩嵜六大、ニュースキャスターを演じた伊東由美子、あるいは二人の朝ナマな軽妙もたのしく印象的。開幕イキナリ、壁を使って無重力の演出は強い印象を残します。

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2024.02.10

【芝居】「アンネの日」serial number

2024.1.14 14:00 [CoRich]

女性用ナプキンの開発を巡る女性たちを描いた 詩森ろばの風琴工房時代に初演したものの再演。1月21日までスズナリ。

物語の幹となるのは、ノンケミカル・オーガニックなナプキンの物語を、生理そのものやナプキンの機能を解説するスタイルなのだけれど、それぞれの女性たちのそれぞれのこれまでの生理にまつわるエピソードを紡ぎ語りあげるところこそが作家が描きたいことだと思うワタシです。素直に祝われる環境もあれば、なんか不本意だったり恥ずかしかったり、性自認が女性ではあっても身体が男性であることで生理そのものがなかったりなど、接し方や感じ方もみなそれぞれにあることを描きます。

あろうことか、初演時よりも男女平等ランキング(ジェンダーギャップ)が下がっていたりして、生理どころか女性を取り巻く環境がまったく変わっていなくて、物語が描くありかたも変わっていないのは、再演がみられる嬉しさはあれど、そりゃどうなんだという話だったりもするのです。

開発職と企画職が一つの製品の完成に向かって、コストや実現性での衝突はあっても理想の製品を作りたいという一点に向かって社内プロジェクトとして突き進むわけで、理想的にすぎる関係性は青臭く感じないわけではないけれど、仕事の軋轢を描く話ではないので、大きな問題ではありません。

ケミカルなものを粘膜から吸収するかもしれないという恐怖感は説得力があるし、農作物が種子と農薬がセットで売られるようになっていることの危惧など、作家の主張を強く感じますが、理想を追うあまり一歩間違えば陰謀論になりかねないギリギリを攻める感じの絶妙のバランス。

女性たち、次の世代へつなぐことという視線が色濃く。とりわけ終幕近くで閉経を迎えた女が若い女たちへ「後輩への視線」で語ることが、作家の視線を感じるワタシです。

性同一性障害の役を演じるのが初演では女性(彼女の性自認がどうであるかは知る由もないし知る必要もないけれど)、今作では性自認が女性である男性になっています。役の属性と同じ属性を持つ役者が演じるべきだという流れの一つとも思うけれど、物語では「生理を憧れる」立場として描いていても、トークショーでは俳優自身の考えは異なり、あくまで役として演じているという言葉が引き出せたりして、健全を感じるワタシです。トークショーでは作演の演出スタイルが変化して戯曲理解に時間をかけるようになったということも語られました。

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2024.02.04

2023年は90本でした。

年が変わって早くも一ヶ月も経ってしまって、やっとこさ2023年の感想を書き終えました。2024年の1月も2本しか観てないと、なかなかにスローペースになっています。大量に観ていないとわからない風景というのもやっぱりあって、どうしても過去にみた劇団・役者中心のセレクトになってしまいがち。歳を取ったということかもしれません。

土日午前のジムの時間が繰り下がって余裕を持ってマチネに行けないと思い込んで断念してたりするんですが、品川駅で京浜東北線北行から山手線外回りの乗り換えが飛躍的に時間短縮されていたり、いまさら東急・副都心線直通の速達列車なら実は結構はやいルートがあったりと新発見も。とはいえ、そこそこのペースで、持続可能に楽しんで行きたいなと思います。

今年もよろしくお願いします。(遅い)

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【芝居】「ジル・ド・レ~吾輩は娼館の蚤である~」Ukiyo Hotel Project

2023.12.31 14:00 [CoRich]

ウキヨホテルプロジェクトの新作、新作ミュージカルのトライアウト上演として。パリの娼館を舞台に、ノミのサーカスを脱走した蚤のスターと面倒を見ている女をめぐる本格的なミュージカル。ラゾーナ川崎プラザソルで、大晦日の楽日・昼公演に。102分。一部が動画公開(YouTube)されています。

1918年、長く戦争の続くパリ。 ノミのサーカスにはスターをはじめたくさんのノミが居る。面倒を見ている女、団長の扱いが酷くある日大量のノミに喰われ皮膚が醜くなってしまう。大量のノミを解き放ち女もスターのノミと逃げだし、娼館に潜り込み、醜い見た目ながら男たちをトリコにして人気の娼婦となる。
ある日、客として訪れた医学生は彼女の虜になり、彼女の肌の治療をする。二人は恋仲になるが、医学生は戦場に赴くことになる。女は戦争を鼓舞するための「特別な写真」のモデルとなる。医学生との手紙は絶えてしまう。ノミは一計を案じる。

まさかのノミが主人公のミュージカル。とはいえそれ一人の役者が演じます。棒の先に付けたLEDでノミを表すという手法で、大量のノミが飛び回るシーンはボール状のワイヤーのLEDの点灯などで斬新なのです。物語も一年しか生きられないノミが娼婦と医学生の恋を見守り、手助けするという物語を、第一次世界大戦という時代に重ね合わせて重厚な側面も持たせるのです。

ノミのサーカス、というのもwikipediaに項が立っていて、実際にこの時代に存在した物なのだそう。大きさからは考えられないぐらいの力があったり高く飛んだり、あるいは大量のノミが血を吸い尽くすことで人を殺せるなんてことの「小さなからだでパワフル」な存在が恋とファンタジーとダイナミックさを併せ持つステージを作り出すのです。とりわけ、封筒に忍び込んで戦地の医学生の元へ、なんてのは凄いアイディアだと思うのです。

箱の中にいれ続けていると、その高さまでしか飛べなくなるということ、それを超えて飛び上がる「スター」の存在が素晴らしく、困難を突破し想いを遂げる物語に きっちりバンドを入れて生演奏に加えてオリジナル曲の様々。小劇場といえるラゾーナ川崎プラザソルでこの圧巻なうえに、これはまだトライアウトで発展を続けるということで気合いの凄さ。実はそれほどミュージカルにピンとこないワタシだけれど、今後の作品を期待してしまうのです。

たった9人のキャスト陣も実にパワフルで、ヒロインを演じた青野紗穂の力強さ、団長やカフェオーナといった癖のある人物を一手に背負う小西のりゆき、とりわけノミという前代未聞の役を繊細さとパワフルをもって演じきった岡本悠紀は印象に残ります。

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2024.01.27

【芝居】「gaku-GAY-kai 2023 贋作・お気に召すまま」フライングステージ

2023.12.30 14:00 [CoRich]

年末恒例の二部構成。12月29日まで新宿スターフィールド(旧タイニイアリス)。第一部は劇団公式YouTubeで配信

(第一部)
フレデリックは追放した兄の地位を奪ったが兄の女装の娘ロザリンドは手許に置き、自分の女装の娘シーリアとともに育てている。 オーランドーは父の遺産を受け継いだ長兄に過酷に扱われているが、レスリング大会で優勝し、ロザリンドに出会い互いに惹かれる。 ロザリンドは突然追放され、男装してシーリアと道化を連れて追放された父がいる御苑の森に向かう。オーランドーも兄の元を離れ行き着いた御苑の森でロザリンドの父に助けられるが、男装しているロザリンドには気付かない。 オーランドーは森で兄を助け、シーリアと結婚を決める。フレデリックも兄を討つために森に入るが、改心する。 「贋作・お気に召すまま」

(第二部)
ピンクのランドセルを買いたい男の子「ピンク」(ドラァグクィーン ストーリータイム/関根信一, YouTube)
「幸せの王子」(水月モニカのクイアリーディング)
ファミコンを買った友だちの家へ(佐藤達のかみしばい ぼくの話をきいてください)
(ジオラママンボガールズの諸行無常) いよいよ明菜は動き出す(中森夏奈子のスパンコール・チャイナイト vol.15)
追いかけたり、魔法使いだったり(今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ/エスムラルダ)

実は初見の「お気に召すまま」(waybackmachine)、若者たちが結婚に向かうシェイクスピアの喜劇。抗いがたい運命から未来を切り開く若者たちが眩しい。gaku-GAY-kai版はそれを巧みに新宿を舞台にして、森を御苑になどの工夫と、ジェンダーを入れ替えたり捻ったりというのがこの年末イベントの基本フォーマットなのです。結果的に「女装の娘が男装して逃げる」みたいな何をやってるか判らないことも起こるけれど、これもまたよし。

ショー形式の第二部、もりだくさん。29日が休みなら夜の回に行きたいところだけれど出勤で拝見できなかったアイハラミホ。2024年は、を日曜日だから行けるか!
主催・関根信一(twitter)のリーディング「ピンク」と題して。男児がピンク色のランドセルが欲しいというど、親たちはそれを覆そうと四苦八苦。だけれど、欲しいもの楽しい物を身の回りにおくことの重要が優しく描かれます。
恒例「幸せの王子」。
こちらも恒例、佐藤達(twitter)「かみしばい」ファミコンやりたさの大冒険、怒られたり、優しくされたりしてほんわり温かくなる物語。
白いパジャマで現れる二人、歌にあわせて無表情でフリをするというシンプルなルールなんだけど、どんどん楽しくなっちゃう不思議。ぽいぽい、なんて口癖になってしまう。
明菜ちゃん風の「中森夏奈子(twitter)のスパンコール・チャイナイト」、ここでしか会えない彼女に。しかし2023年はホンモノの方に動きがあった(YouTube)なんて話も。でも明菜の曲を歌ったりしない絶妙。
エスムラルダ(twitter, YouTube)こちらも曲に合わせてのフリで笑わせるショー形式で盛り上がり、そしてエスムラルダでマンボ(YouTube)!。

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2024.01.20

【芝居】「天使の群像」鵺的

2023.12.24 14:00 [CoRich]

鵺的の新作は学校の現場を巡る物語。150分。12月29日までザ・スズナリ。

勤めていた会社が倒産し、代理教員として高校に勤めることになった女。学校は嫌いだったが背に腹は代えられない。 担任を持ったクラスは男子生徒が不登校になっていて、その責任を感じた担任も休職していた。 学校にはスクールカウンセラーがいるが相談しているのは教師ばかり、教師のコンプライアンス教育には取り組んでいるものの、ベテラン教師たちは内心それを受け入れていない。

学校が好きではなかったが会社の倒産で致し方なく働き始めた学校で出逢った人々。表だった校内暴力もないしイジメも描かれないけれど、ちょっとしたきっかけで起こった不登校の男、学級委員だけど嘘をついていてうまく立ち回る女、口は悪いけれどフラットで鋭い視線で大人たちをみている女などの、大きな混乱がないように見える生徒たちの間での繊細な関係やその変化。

もう一つの軸は教師たちの物語で、同い年の女性たち(代理教員、養護教諭、スクールカウンセラー)は自分たちの尊厳と安全が脅かされる職場の存在。教師たちの間でコンプライアンスのお題目は広まってはいるけれど、教頭を始めとした年嵩の男たちは戸惑うというよりやや不満だったり年齢によってグラデーション、味方であるはずの女性の校長はちょっと及び腰で、女性たちの不安は解消されない上に、巧く立ち回る学級委員は不登校の生徒に半ば嵌められて不登校の男子生徒の父親の怒号を浴びたりするのです。

代理教員が帰宅すると同居しているかにみえる女は小学校時代の担任で、それは後になって知ったあの時の校長からのパワハラで姿を消して行方が判らなくなっていることが明かされます。

ジェンダーとパワーの不均衡とハラスメントで生きる二つの世代を交互に織り交ぜ、時代が進んでも変わらないことの絶望と、さまざまな手口で巧妙になっていく怖さを描く作家、どんだけ不穏な物語が好きなんだと思ってしまうワタシです。人は姿を消したいときには自由に消していいし、騒ぎにならないようにしれっと戻ってもいい、という台詞は追い詰められた人々へ逃げていいという福音とワタシは感じるけれど、どうだろう。

代理教員こと臨時的任用教員を演じた堤千穂はずっとフラットに人々をみている感じで、この学校に後から来たからこそ見えること、とりわけ口は悪い女子生徒(野花紅葉)を信用する気持ちをしっかり。休職してしまった元の担任を演じた小西耕一はこの物語のなかでほぼ唯一、大人の男性だけど希望にみえる細やかさ。スクールロイヤーを演じた渡辺詩子、久々に拝見したけれど、(おもにマスコミ対策とはいえ)理知的な専門職という安定感。口の巧い学級委員を演じた小町実乃梨は、そつなく見えて、実はわりとヒールなのだという恐ろしさ。カントリーマームを配りがちな教師を演じた森田ガンツのアップデートされない感じはもしかしたらワタシもどこかあるんじゃないかとハッとする説得力。不登校の生徒の親を演じた寺十吾は最強のボスキャラだけれど彼なりの理屈があるという造形できちんと描かれた人間をしっかりと。章学教時代の担任を演じたハマカワフミエは、消え入りそうな雰囲気は確かにこの世のものではないかもしれないという説得力があるのです。

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2024.01.14

【芝居】「EXPO APOFES 2nd」銀色天井秋田企画

2023.12.23 18:00 [CoRich]

10周年を迎える「一人芝居のフェス」APOFES の連携企画として、EXPOと銘打ったセレクト4本。12月24日まで、APOCシアター。

何もかもがポンコツな男。同棲相手も呆れ気味だが、その失敗を呼ぶ力が改造人間として注目を浴びる「ぽんこつ2」(出演/ 脚本/ 演出 うんこ太郎 )
ナマハゲが伝える昔の話。美しいけれど口下手な男のかわりに愛の言葉を伝える男「なまはげシラノ」(出演/ 脚本/ 演出 進藤則夫 )
町中にタンスを引いて毎日訪れる男は胸に質札をつけている「ヨコハマ箪笥事情」
認知症の母を殺した薬剤師の告白。酒飲みの夫と苦労して工場を切り盛りし学がないからと娘だけは大学に行かせて。「如水」(出演 おぐりまさこ 脚本/ 演出 関戸哲也)

劇場がそこそこ遠くてコマ数をやたらに喰うのであまり足を運んでないAPOFESなのだけれど、この劇場が一人芝居をふゅーちゃーした演劇祭をやっていることは10年で定着した感があります。よりすぐり、というタイトルを付けた4本。

「ポンコツ」はパワフルでひたすらポンコツな男のひとり語り。一生懸命だけどやることなすことポンコツという序盤、正直にいえば痛々しさと紙一重なのと、わりと一本調子になりがちでちょっと飽きてしまう感もあり、ズボンが裂けるという大ネタもわりと早々に裂けて見えてしまうのももったいない。後半、その失敗を呼ぶ力が改造人間として着目を浴びてからの活躍がもっと見たかった気も。

「なまはげ〜」はタイトルはずっと耳にしていたし、あちこちでの上演の噂も知っていたし、「帰ってきたゑびす」の進藤則夫を拝見するのもずいぶんと久々ですが、初見のワタシです。なるほど「シラノ・ド・ベルジュラック」の骨組みはそのままに、簡単にはわからない言葉も交え前編秋田弁で語るのはいいアイディアで、淀みなく、濃密な30分。ふらりと訪れた男が客に挨拶して始めて、終わって去っていくというスタイルも応用が効くうまいフォーマットです。クリスが息絶えるのは道路工事の落盤というのも今っぽく切ない。

ワタシにとっては3度目( 1, 2) となる「〜箪笥事情」。役者もそのまま、芝居自体もほとんど変わっていないと思います。大爆笑でほろりとする濃密な一編であることにはかわりはないのだけれど、グレた息子が女性を「まわして」みたり、「監禁」してみたりというのが、正直、もう軽い笑いには本当にならなくなっているということも感じてびっくりします。前に拝見した2018年時点だってもちろんそうだったはずなのに、ワタシが、あるいはワタシたちが変化したということだとは思いつつ、この芝居が時代に沿ってアップデートするのかあるいは、つか芝居よろしく、その時代のものだったと演じ続けるのかは絶妙に難しいなぁと思うワタシです。

「如水」娘の語りという体裁を取りながら、恋して結婚して苦労してきた一人の老女の人生を緩急取り混ぜて描きます。認知症の母の若い頃と現在をスイッチして点描し、あの頃の記憶が老いてどう見えているか、わからなくなっている不安という認知症の特性を踏まえた物語になっているのも巧くて、なるほど繰り返し上演されてきているという筋力のようなものを感じるのです。

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2024.01.08

【芝居】「十二月八日」青☆組

2023.12.17 14:00 [CoRich]

久々だと思ったら、2019年以来、4年ぶりだといいます。太宰治の同名作(青空文庫)を膨らませた85分。アトリエ春風舎。

太平洋戦争開戦の日の主婦が書いた日記、という体裁の物語が原作で、ワタシの印象は、これから生活を切り詰めても戦争に貢献しようという世間の高揚という雰囲気と、今のところはこれまでと変わらない暮らしを取り混ぜて描きます。今作は多くの部分は台詞も含め多く引きながら、登場人物を増やし、原作ではあまり感じられない、戦争には批判的な人の存在、戦争で失ったものがある人の存在を「目撃」した体裁で描いて、実際のところ、違う印象になっています。それは原作が書かれた時代と、その後の戦争の酷さを知っている現在から書いたもの、それぞれの作家の立ち位置などで変わるもので、意味があると思うワタシです。

終盤にある、娘を連れて銭湯に行くシーン、原作では日々の生活や守るべき家族の美しさを描いているのだけれど、今作では未来があるはずのこども、という印象を強く受けるワタシです。そのあと、男たちが倒れているというシーンとのコントラストで明確に作家の立ち位置が見えるのです。

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