【芝居】「ヨコハマ・マイス YOKOHAMA MICE」神奈川県演劇連盟
2025.3.23 14:00 [CoRich]
神奈川県演劇連盟の加盟団体による2024年の合同公演。115分。3月23日まで神奈川県立青少年センター・紅葉坂ホール。合同公演とはいえ、800席超の大きな劇場。
路地裏に暮らすネズミたち。地元の赤ネズミたちが暮らす横浜で、新興勢力の黒ネズミたちが根岸の競馬場を拠点に縄張りを奪いつつあった。突然現れた黒富士という大きなカラスが伊勢佐木町を根城にネズミたちに襲いかかる。
赤ネズミの家族たちは平和に暮らしていたが、怪我をして入院していた祖母・ホワイトを黒ネズミたちが襲う。希少種であるホワイトを黒富士に献上して取り入ろうとしている。
家族たちのように暮らす赤ネズミと新興勢力の黒ネズミの抗争と、絶対ヒールなカラス・黒富士をめぐる物語。黒富士に対抗するなかでネズミたちが団結し、暮らしを取り戻すまでを描きます。演出家が言うようにシンプルで泥臭く活気のある物語を多彩な劇団からの役者たちがダンスや歌を交えて演じます。 昭和の家族のような、というとあまりに雑な括りだけれど、どこか粗暴だけれど暖かい物語を大きな舞台でパワフルにときにノスタルジックに上演できるのは、合同公演というバラエティ豊かな役者たちによるところも大きいのです。 さすがにこの規模の劇場となると、声量がある程度必要なのだけれど、台詞が聞き取りづらい役者が混じってしまうのは惜しいところ。しかし物語のシンプルさゆえ、それが大きな問題とはならないし、赤、黒、要となるホワイトといった色遣い、あの広さの劇場を走り回るパワフルなアクションなど、回転舞台に装置を乗せて場面を切り替えるカッコよさ、ラスボス感のすごい黒富士の迫力など見た目に楽しい仕掛けが沢山できっちりエンタメにしあがっています。
家族たちと新興勢力の抗争、黒富士という大きな敵との対決という構図を解決するのは、ネズミたちの団結で、序盤からずっと存在感のある魔法の絵筆や永遠の命を実現するホワイトの存在というファンタジーは未来を描いたり、物語を駆動したりはしても、対決の解決という物語の構図の解決にあまり絡んでないのはもったいない気もしますが、それぐらいに物語もキャラクターも盛りだくさん。二時間弱をきっちり走り切るのはみごと。
希少種のネズミ・ホワイトを演じた環ゆらは腰を痛めて歩けないという設定で動きが少ないのにこの圧倒的な存在感。赤ネズミの母親を演じた仲満響香の肝っ玉母さん感の包容力。父親を演じた小山利英の人情厚くしかし粗忽な人なつっこさ、ドリフのようなドタバタに体をはる身体能力。祖父・ウオッシュを演じたなっきーの大物感。医者を演じた野比隆彦の人の良さに加えて若くはないのにあの広い舞台を走り回るパワー。ギターを背負った隻眼の流れ者を演じた江花実里はほんとに唐十郎か任侠映画かと、立ち姿もカッコよくて見惚れてしまうのです。
最近のコメント