2021.12.03

【芝居】「廻る礎」JACROW

2021.11.6 19:00 [CoRich]

吉田茂の評伝劇。120分。11月11日まで座・高円寺1。当日パンフや用語解説集を公式サイトでPDF公開しています。 吉田茂は外交官から選挙に挑む。総裁と目されていた鳩山一郎の公職追放で首相の座に着く。憲法発布からサンフランシスコ平和条約、さらに総辞職までの日々

田中角栄三部作( 1, 2, 3, 4, 5) とゆるやかに繋がる(狩野和馬、林竜三、佐藤貴也、土橋建太が同じ役で出演)ようにその前の時代、間違いなく戦後日本を形作ったものの一つとしての吉田茂を描きます。ぼんやりとは知っているけれどワタシの生まれる前の時代、戦時中から戦後にかけての時代、外交、憲法、天皇のありかたなど、さまざまの「礎」がここを起点してるんだなぁと感じるワタシです。その上でいわゆる安保を受け入れ、押しつけ憲法という自民党のありようもココが起点になるのだなぁと思ったりするのです。

吉田茂と体型とはちょっと違う雰囲気の谷仲恵輔はある種のダンディさをきっちり、ワタシにとっては彼の新しい造型。松谷天光光を演じた 江口逢や山口シヅエを演じた駒塚由衣は結果として社会運動に繋がる女性参政権の萌芽を同じ舞台に乗せることで時代をきちんと描く一翼を担います。

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2021.11.29

【芝居】「水深ゼロメートルから」SPOTTED PRODUCTIONS

2021.11.3 19:00 [CoRich]

2019年に四国地区高等学校演劇研究大会で最優秀となった徳島市立高等学校の戯曲。2020年の高校演劇全国大会に推薦されるもコロナ禍で映像配信のために映像化( https://note.com/sanpobito/n/n68afc3c050bc YouTube) された作品を「高校演劇舞台化プロジェクト」として上演。 徳島県高等学校演劇協議会から、 戯曲のダウンロードも可能です。11月7日まで「劇」小劇場。

夏休みのプール。プールの授業を受けなかった補習として炎天下プール清掃をする二人の女子高生。グランドでは野球部が練習をしている。 水泳部でずっと早かったエースは、幼馴染の野球部エースに初めて競泳で負けてしまい水泳をやめたくなっている。先輩が心配して訪ねてくるが、彼女自身はもう水泳をしていない。

夏の日のある一日。4人の若い女性と1人の女性教師たち。水泳で男子に負けたことの悔しさに折り合いがつかない1人、化粧もして「一軍」で可愛くなることで女としての道で生きていこうとしている1人と、子供の頃から馴染んできた男踊りが成長し女踊りに変えさせられることを受け入れられない1人。もう1人の水泳部の先輩は頑張ろうとはいっても、「女であること」を受け入れ半ば諦めていることもあるし、女性教師もまた理不尽だとは思っているけれど規則で縛る側の立場で、いわば社会を体現しています。

化粧もして「一軍」と思われているクラスメートはルッキズムもそういうものとして受け入れ、「女として」の一歩二歩。可愛くなることも努力だということ。一方で生理なのに手続きをしなかったからとプールの授業を受けさせられ、それを強要した女性教師をどうしても受け入れられないこと。子供の頃からずっと踊っている阿波踊りの男踊りをなぜ女踊りに変えなければならないかと思うこと。男女をあまり強く区別することないこどもの頃から、成長すると、身体の機能、体力も、あるいはジェンダーとしてさまざまに「女であること」を強要されていくようになる女子高生たちの年代。「彼女たち」が経験してきたであろう様々なことがぎゅっと濃縮され詰め込まれた時間、 もちろん男性であるワタシに本当のところは理解できないのかもしれないけれど、彼女たちと同じ視線で見続ける1時間強は、その断片が身体に染みていくような感覚があって、理不尽さを浴びているように感じるワタシです。

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2021.11.27

【芝居】「フタマツヅキ」iaku

2021.11.3 13:00 [CoRich]

iakuの新作。11月7日までシアタートラム。120分

開店休業状態の還暦近い落語家。近所のギャラリーの管理人はしているが、仕事らしい仕事はしていないが、若い頃からずっと妻が働き支えてきた。親らしいことをしてくれない父親を嫌う息子もアルバイトから介護の仕事に就くことを決めているが、同じバイト先の幼馴染が寄せる好意への反応は鈍い。
男が務めるギャラリーはかつて小さな劇場でお笑いライブが行われていて、男はそこに出演する芸人だった。劇場を閉じたあと、オーナーは父から受け継いだ劇場を閉めギャラリーとしていたが、ほだされて男を管理人として寝泊まりも許している。ある日、男のもとに、元の仲間から介護施設での慰問落語の話が持ち込まれる。
雑居ビルの屋上で所在なさげな女に声をかけたのは、ビルの中の小さな劇場でお笑いライブに出演していた芸人だった。ライブに誘われ、女は通うようになる。

柳家小三治という噺家が亡くなり、その「初天神」をテレビで観た翌日の観劇に因縁を感じずには居られないワタシです。マクラが特徴的だというのもどこか繋がっていたり。本編ではマクラばかりが巧くて噺はほとんど出来ないという設定なのは違いますが。

いちおう噺家ではあってもモノにはならず、芸人時代に出ていた小さな劇場が閉館して劇場主の娘がオーナーとなり開いたギャラリーに半ば温情で管理人としての職を得るどころか寝泊まりしてしまう日々。かつての夢を追い続けるとか、まだ心の中に残っている熱意といえば聞こえはいいけれど、諦めて次に行くことも出来ず積極性の欠片もなく、若い頃のものの残り火が消えていくに任せる男と妻、息子を軸に進みます。男と妻が出逢ったお笑いライブの過去と行き来しながら進む物語を回る舞台で効果的に、実はスピーディに場面を切替えながら実に見やすいのです。

もう芸人として立つ舞台はないと半ば諦めていた男に持ち込まれた慰問落語、表向きはたいした興味がないようにいいながらそれなりに気負って挑み、マクラは何とかなっても本編に入ろうとしたところでしくじって舞台を逃げてしまうシーン。それなりの年齢を重ねた男を主役に据えた物語なのに作家は逃げてしまう情けなさという造型をもってほろ苦く、容赦が無いのです。しかし息子と二人で演じる「初天神」はこれから先がいい方向に変化する予感を感じさせます。

落語家を演じたモロ師岡は年齢を重ねた男のほろ苦さと、でもどこか軽薄さも併せ持った芸人という造型のリアリティ。息子を演じた杉田雷麟 は純粋な若者を眩しく。妻を演じた清水直子は夫と息子の険悪とも言える関係の中で家族を維持しようという強い意志をしっかりと。息子の幼なじみを演じた鈴木こころ、ギャラリーオーナーを演じたザンヨウコは息子と男への淡い恋心と口に出せない気持ちと、しかし軽口を叩く関係性という相似形、この二人の女性の直接の関係はないのだけど不思議と物語のバランスをとっていて。弟弟子を演じた平塚直隆は、芸人ではあってもちゃんと営業して生きていく術を持っている地に足を着いた感じが、二人の芸人の立ち位置のコントラストを表すよう。若い頃の夫婦を演じた長橋遼也、橋爪未萠里は初々しさから恋人、生活を共にしていくという時間のグラデーション。若い頃にはちゃんと時間が進んでいた二人というのは確かに若い役者がやることによる説得力。 

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2021.11.25

【芝居】「すこたん!」serial number

2021.10.31 14:00 [CoRich]

11月7日までザ・ポケット。 120分。

雑誌を通じて出会ったゲイ男性のカップル。デートしたりする日々の中、ニューヨークで行われたパレードに参加し、性的少数者たちが豊かな暮らしを享受している高校を見学に行き、衝撃を受ける。
カヌー好き、家族が居てカヌーの後に隣り合ってソロキャンプをする日々のふたり。
家庭教師をしている男、固い会社で他人には言えない。その教え子の男子高校生に惹かれるし、気付かれる。
大学生になってシェアハウスで暮らす二人。自分はゲイではないと思っている男と、ゲイを自覚している男。
人を家に上げない男、ある日公演で男を「拾う」。

同性愛のありかたについての講演を当事者カップルが行うところをスタート点にする「すこたん企画」 (1, 2, 3, 4) をはじめたゲイのカップルを主軸に、そこに寄せられたゲイカップルの物語を点描しながら物語を進めます。舞台中央に大木という感じ、人々が暮らしてきた時間と広がりを表すようないわば樹形図となりずっとそこにあり続けます。

90年代からの二人の歩みは、人目に付かないよう隠れてくらす性癖だと思われていた時代(デートの時に必ず車で出かけ店に入るのを躊躇する、というのは象徴的)から自己肯定を獲得する日本のゲイコミュニティの歩みを見ているよう。これが現実に基づくものなのだということは、ワタシの知らないところでこう生きてきた人々がいる、ということを改めて知る機会になるのです。知らないことといえば、プライドパレードのもととなったストーンウオールの反乱(Wikipedia)であったり、学校に於ける講演という活動で投げつけられる心ない言葉であったりも同様で心に刻まれるのです。

周囲を彩る物語の数々。家族が居るけれどゲイであることをカミングアウトできない男とゆるやかに繋がるカヌー仲間という大人な雰囲気のゆったりとした感じ、かと思えば年齢差の家庭教師と高校生は惹かれ合うのに拒絶する大人の誠実さ。大学生の二人は異性愛者だと思っている男の側が人物を理解しながら受け入れることは出来ず、あるいは恐れすら抱いてしまうところからの幸せな着地。拾われた男と拾った男はどこか傷つけ合うように、しかし離れがたい二人の辛さ。

時に傷つけることはあっても、思い合う二人があたりまえに暮らせるようになることの尊さが溢れる物語。ワタシは当事者ではないけれど、そうあってほしいということを改めて感じるのです。

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2021.11.18

【芝居】「RAFTでDADADA」タテヨコ企画

2021.10.30 19:00 [CoRich]

休憩10分を挟み100分。RAFT。31日まで 久々の飲み会、混んでいる中、二次会に後輩が見つけてきた店は居酒屋の横並びのカウンター席。気まずいなかぎこちなく話をするが、劇団のリーダは何か言い出せないことがずっとある。「愛してるよ、ビール!」(作・演出 岡本苑夏(ソラカメ))
2020年病院に訪れた患者はかつて婚約していた男だったが、全ての記憶を亡くしていた。大学生の時に出逢った男は地球の回る音を聞くために地面に耳を付けていた。一緒に暮らすことになったが女が働くようになっても仕事らしい仕事もせず、浮気が元で男は消える。女は幾つかの恋を経て失恋で訪れた海岸で男に再会し、穏やかに暮らし婚約したが震災をテレビで見た男はボランティアに行くといい再び消える。女も被災地を訪れる中、男が訪れていたことを知る。「地球が回る~ひとの思い出話ほどつまらないものはない~」(作 青木柳葉魚、横田修 演出 青木柳葉魚)

客席は劇場の一番奥、道路に向かう感じで配置。

「ビール〜」は売れてるという感じではなくても続いている劇団、アルバイトで厳しい日々をすごしていても、作演を兼ねるリーダに皆がついていっていて盤石なチームに思えたけれど、その彼女が経済的に立ち行かなくなって芝居を辞める(休む)ことを話したいけれど話せない前半。 二次会を探す人々の大声の感じやあるいは役者たちという役の誇張した大声の面白さで始まり、ぎこちなさとか物語が進まない感じはあるけれど、終わって振り返ってみれば、言い出せないリーダーの心象で見えてる時間の流れという感じがしたりもします。

切り出してからの後半、彼女を拠り所としている古株から若手まで全員が全力で引き留める。流されるように乾杯、仲間たちの熱さとも言えるけど、良くも悪くもタコツボ感にも見えたりします。リーダがこのあとどうしたか、戻ることになるのか、離れるのかは語られないけれど、何かが人々の分岐点を切り取ったごく短いスケッチ、自分にもあそこがそうだったなぁと思ったり思わなかったり。

リーダを演じた舘智子は皆が慕う人物造型の説得力。中堅を演じた市橋朝子、西山竜一、久行志乃ぶはそれぞれの関係性だったり互いをダメとか手堅いとかわかってるグルーブな雰囲気。若手を演じた田中彩優希、ミレナは理不尽なことに耐えて、しかしリーダーを慕う圧倒的な気持ちをしっかり。

「地球〜」はとても久しぶりに会った元カレが記憶喪失で、その思い出をいくつかリフレインする体裁で進みます。ところどころですれ違い、足跡を感じ、正面に向き合ったと思ったら相手は記憶がないという悲劇といえば悲劇。全体にコミカルに描きつつ、ほろ苦い年齢を重ねた大人の物語なのです。

入口側のスペースと劇場側のスペースをスピーディーに切替えながら使う小屋の使いこなし。モニタを字幕のように使い、終幕はスクリーンに海の風景を写して広がりを感じさせるのです。

現在の二人を演じる舘智子、園田シンジは年齢を重ねた大人の二人の刻まれたものがある説得力。 回想の二人を演じる内田めぐみ、中根道治は互いに困らせられたり、決して互いに似ているわけではないのだけれど、最小限の役者で構成された舞台は時間軸に並ぶ二人が思いのほか判りやすいのです。

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2021.11.16

【芝居】「トリツカレ男」ナッポスユナイテッド(NAPPOS UNITED)

2021.10.16 18:00 [CoRich]

2007年2012年 にキャラメルボックスで上演された人気作、多くのキャラメルボックスの俳優と客演を迎えナッポスユナイテッドで再演。 120分。10月24日までこくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ

演出が同じ、役者も役どころは変わったりするもののキャラメルボックスの役者が多数でていて、レパートリーの中でも突出して祝祭感に溢れファンタジー風味の物語。小さくなった劇場だけれど舞台から溢れる世界には変わりがないのです。ラストシーンの唐突な違和感も変わらないけれど、今作では風船売りの婚約者の死という瞳の奥の「くすみ」に至るシーンを濃密に感じるワタシです。自分が歳を取ったということかもしれません。

トリツカレる男を演じた野田裕貴は予想しなかったキャスティングだけどやや病的なほど取り憑かれる人物を好演。初演再演でこの役を演じた畑中智行は狂言回しとも言えるハツカネズミでファンタジーの世界をコミカルに支えます。ザ・小劇場な面々が同じ世界に居るのもワタシには楽しく、姉を演じた百花亜希の肝っ玉感、ギャングのボスを演じた久保貫太郎の圧倒的なコミカルさ、レストランオーナーを演じた幸田尚子の凛とした美しい人物感、ウエイターを演じた森下亮のどこか優しく見つめる視線も楽しく。

小劇場、といえば一時期はあれだけ通ったスペース・ゼロもずいぶん久々、と思ったけどラフカット2015だからそんな大昔でもなかったようです。ワイドスパンでいい劇場なんだけどなぁ。又通えるようなラインナップが出てくるといいなと思ったり。

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2021.11.14

【芝居】「そして、死んでくれ」M2

2021.10.16 15:00 [CoRich]

二・二六事件の将校たちの物語。100分。10月17日までラゾーナ川崎プラザソル

国の問題を政治の腐敗と捉えた青年将校たちは満州に派兵される前に昭和維新、尊皇斬奸、天皇親政を実現し、政治腐敗と農村困窮が解決すると考えていたが、叛乱軍として鎮圧される。

いくつもの映画やドラマで描かれる二・二六事件、そのただ中にいた青年将校たちの視点で描きます。 自分たちは恵まれている立場であることを自覚していて、農村からの兵士たちがいう農村の困窮、ひいては人々の暮らしが立ちゆかなくなりつつある原因を政治腐敗に求め、それを正すだけの力と立場が自分たちにあり、決起することは正義だと信じて止まない人々。彼らの中にもグラデーションはあって、決起に慎重だったり、気のはやる急進派のぶつかりあい、あるいは決起の中でも、とどめを刺さなかったある種の甘さや後悔、あるいは負傷し病院で成り行きを座してみているだけの無念さ。歴史に描かれるとおり、将校達は投降するのだけれど、これほどのことをしでかしてしまったがために家族たちをも巻き込んでいて、あるいは「死んでくれ」と手紙を受け取ること、そして自害をする何人か。

もちろん彼らが生きていた時代を直に知ることは出来ないし、ある種のエリートである彼らの矜恃は時には自害をも選ぶほどの強さを実感することはできないのだけれど、それを現在に引き寄せてエリートに正義や矜恃はあるのか、と思ったり思わなかったり。

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2021.11.07

【芝居】「暫しのおやすみ」競泳水着

2021.10.2 19:00 [CoRich]

劇団競泳水着の新作。105分。10月10日まで駅前劇場。

売れているアイドルは週刊誌の不倫報道でバッシングを受け姉夫婦の家に身を寄せる。このときに新人だった女優も10年が経って売れていたが、敏腕マネージャーが新人を連れて独立することを聞かされていなかったことにショックを受ける。

信頼していたスタッフに裏切られたと感じること、不倫報道のバッシングという違いはあれど「暫しのおやすみ」を通り抜けた二人を軸に描きます。自分自身が商品で所属する事務所が変わっていくという芸能界固有の話ではあるのだけれど、描かれるのは女優たちだけではありません。もう少し上の世代の女性という形で描かれるマネージャーや、女優の姉夫婦も女優たちと同じように(別の軸の)挫折と経験をするのです。マネージャーは子供を授からないことの反動で育成に入れあげ(そう感じたワタシ、個人の感想に過ぎないのだけど、作家の意図はちょっと聞きたい気はする)、離婚して仕事に生きる日々で新たに見出した才能で独立を考えたり。あるいは女優の姉夫婦は子供を作ることに積極的にならなかったがためにすれ違う日々から、妊娠し関係が変化したり。まるでショーケースのように、仕事と生活を選び取る人々のさまざまが並ぶのです。

10年を超える時間軸をわりとあっさり描く物語、若い女性の顔の判別が怪しくなりつつあるワタシには少々ついていきづらいところがあったりもするのだけど、あくまでデフォルメしたりはせずに自然体で洗練されたテレビドラマのような雰囲気のパッケージは確かに敷居は低いのだろうと思うのです。若い女性ばかりになりがちなのは、まあこの作家というか劇団のカラーというご愛嬌。 引きこもっているという役なのに圧巻の存在感の鮎川桃果はプライベートをのぞき見るようで楽しく、この座組、唯一きちんとワタシが個体認識できる(情けない)川村紗也はこのポジションを造型できるようになった時間の流れを感じて。スタイリストを演じた今治ゆかは軽妙な語り口で時に語り部、あるいは狂言回しだったりもして舞台のリズムを刻むのです。天才新人女優を演じた竹田百花、ちょっと面倒くさい雰囲気も含めてイマドキの新人という説得力。

ワタシから観ればみんな「若い女性」という一括りになってしまうそれほど広い年代ではない人々、こうやって書き出して見るとその歳で求められ人々に受け入れられる「女優という商品」のグラデーションを高い解像度で細やかに描き出そうという作家のある種の執念が滲むような一本なのです。

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2021.11.04

【芝居】「ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~」theater 045 syndicate

2021.10.2 14:00 [CoRich]

theater 045 syndeicateの傑作キャラクタ、死者の思いを聞き習いを受け継ぎ背負いさまよう男の物語( 1, 2)の続編。10/3まで、なんと大舞台、KAAT・大スタジオ。

気候が変わり砂嵐吹きすさぶ日本。賞金稼ぎに追われ続けるヤタロウは地元・横浜に戻ろうとする。新たな市長が高所得者の住む第三地区だけに砂嵐を防ぐために立てた壁のあおりで亡き妻の墓はなくなっていることを知る。市長はさらに犯罪者を滅ぼす寄生虫を市民に埋め込もうとしている。
市長はかつて病気の娘を励ますためのピストル競技でヤタロウに八百長を申し入れ断れられたことを逆恨みしている。ヤタロウはその時の金メダルを妻の指輪にしたいと思っている。
三姉妹の占い師はヤタロウの死期を占い、市長とは赤い靴の少女が歩き不良少女にならない限り負けないと告げる。

マッドマックス風の荒廃した世界を舞台に、人の思いを背負ってしまう主人公、戻るべき故郷としての横浜など、いかにも男子が好きそうな要素を詰め込んで語ります。キメキメのオープニング、ケロリンの洗面器をつかった裸芸。

かと思えば表向き相槌を打つことぐらいしかできない市長という造型はほんの少し前に替わった横浜市長をそこに暮らす私が未だに払拭できない雰囲気が重なって面白いのです。三姉妹の占い師、条件付きで絶対勝てるというのは「マクベス」のあれ、まさかこの物語にコレが入るとは思わなかったので不意打ちを食らう私です。

終盤、亡くなってしまった若い二人の漫才師を引き受けるヤタロウ、付き合わされる相棒。死人と葬儀屋の漫才を繰り返すうちに、すっとへたり込み、しかし話しかけ続ける相棒。まさかこれでオシマイには、まあならないという終幕にグッと来てしまうワタシはだいぶ歳をとった、ということかと思ったり。

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2021.10.25

【芝居】「或る、ノライヌ」KAKUTA

2021.9.25 17:00 [CoRich]

KAKUTA、15年振りの劇団員のみでの上演という新作。160分(休憩込み)。愛知県で初日を迎え、東京・すみだパークシアター倉で10/5まで。その後配信(も終わってしまいました。感想遅くて恐縮至極)

探偵を辞めた女は住んでいるマンションを引き払い探偵事務所だった部屋に寝泊まりしている。その雑居ビルに妻が居る恋人の家で飼われていた犬が繋がれているのを見つける。メモには預かって欲しいことだけが書いてあり行方がわからない。会社にも出ておらず、自宅にも戻っていない。
女の兄は2014年の大晦日の夜、新宿の街中で会社の不正を大声で叫びながらで全裸で暴れていて、妹である女が引き取ることになる。同じ大晦日の同じ雑踏で血まみれの男は同郷の女と久しぶりに出会う。
行方不明の男は札幌に居るらしい事を突き止め、女は犬と元の助手、兄と共に車で北へ向かう。

元探偵の女の不倫の恋人と、北海道から上京した男が都会で再会した同郷の女、行方の解らなくなった二人を別々に探し札幌へ向かう流れを軸に、出会い、別れる人々を描きながら、独りであること、あるいは人と暮らすようになることを点描しながら、時に哲学的なことを言ったりする犬たちを併走させて物語を進めます。

雑居ビルのある街角という場所の雰囲気を説明する台詞ではなく、音やあるきまわわる人々、漏れ聞こえる会話という膨大な手間をかけて描く序盤。時間は長くなりがちで、そのわりに物語に寄与する情報がそれほど多くなるわけではないけれど、映像ならワンカットで示せるけれど、演劇でこう描くという決心。あとから考えるとコロナ禍の今から見れば懐かしささえ感じる風景が立ち上がるのです。

長めの上演時間なのに、観ているときに油断すると置いてきぼりを喰らうような濃密さが同居する物語で、軸となる人物はもちろんあるけれど、むしろ海外の連続ドラマのように何人もの人々それぞれの人生を丁寧に描く作風である最近の作家です。折り込まれるのは会社の不正の告発、時間が経ってもあまり変わらない被災地、カルト集団に囚われた肉親を救い出そうという人、あるいはそれを見守り支える人々。声高に最新の話題というわけではなくて、何時の時代でもあり、現在もあることをきちんと背景に敷き詰めるのです。

いくつかのシーンがとても良いのです。札幌から上京する二人が大晦日の東京で再会し弁当を作って貰う関係になったりしたところから、映画、クラブとデートをしていく一連の流れはそこだけでミュージカルのようでうっとりするぐらいにワクワクするのです。あるいはクルマで北海道に向かうロードムービー風から海岸で出逢うトラックドライバーの女の一連の流れ。あるいは民泊した家の家族の温かさ、夫を亡くし言葉を失った妻を気遣う人々、森の中で迷子になり不安に苛まれる犬など。もっとも、この見応えのあるシーンを山ほど入れた結果、上演時間の長さや油断するとどこに物語が向かうか解りづらくなる、ということもあるのだけど。

物語の着地点、ワタシは「奇跡は起こらない」と感じたのです。いわゆるハッピーエンドではないけれど、戻るべき所に戻ったり、収まるところに「填まって」っていったり。札幌まで探しに来た二人は当初の目的は達せられなかったけど、次のステップにすすんでいったり。象徴的なのはカルトから救われた筈の妹は自分の意思で戻ってしまうこと。放浪していた犬は「ママ」の元へ戻るとか。正しい道なんかなんかなくて、なるようになるしかなくて、何かが起こり変化する人々を、きちんと丁寧に描くのです。

被災地で拾われた犬を演じた谷恭輔がいわゆる「子供の視点」で物語を眺めるイノセントさを可愛らしく。元探偵の女を演じた桑原裕子は周囲が見えず目的にひた走る珍しい役。北海道から出てきた男を演じた森崎健康は挫折から幸福を何スイングもする翻弄されてもきちんと歩む人物をきちんと造型。元探偵助手を演じた細村雄志は中盤までの物語を牽引する重要なアンカーとなるポジションをしっかり。

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