2024.04.09

【芝居】「そろそろダンス。」キルハトッテ

2024.3.16 18:00 [CoRich]

佐藤佐吉演劇祭は観たことない劇団ばかり、ここも初見です。90分ほど。3月17日まで王子小劇場。

アイドルの卒業コンサート前、卒業のスピーチを練習している。楽屋に友人夫婦や、なぜか子供の頃の友だちがランドセル背負ってきている。こうならなかった自分を体験したりする。

アイドルの自室もしくは楽屋のような雰囲気のピンクの部屋。 アイドルの自分を起点に、友達や子供のころの友達が出てくる序盤からしてファンタジーなのです。 何かの選択によって人生が枝分かれしていく「可能性」をたくさん夢想するのは若い(かどうか知らないけれど)作家が見えている世界。 大学の友人が自分の母になったり、友人の夫が小学校の頃の友達と結婚するようになったり、あるいはアイドルになることではなく恋人を選びアイドルになる未来だったり、アイドルにはなりたくて事務所に入ったけれど金だけ取られて引きこもった未来だったり。後者の物語は陰鬱な感じだけれど、扉を開いて外に出てくという卒業、もしくは未来への意気揚々な希望をきっちりな終幕なのです。

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2024.04.06

【芝居】「諜報員」パラドックス定数

2024.3.9 18:00 [CoRich]

パラドックス定数の新作。ゾルゲ事件に関係したとして突然軟禁された4人の男たちを描く120分。3月17日、東京芸術劇場シアターイースト。

二段ベッドがふたつ、囲むように通路状に。ゾルゲが特高に逮捕された日、協力者とされた人々を拘束した警察の取り調べ。史実として協力者として出てくる尾崎、宮城といった人々ではなく、その更に外側の、実は事件との関連が薄い(しかも一人は「おとり」だ)人々と、特高よりは情報がすくない警察を舞台に描きます。マクロ視点では史実の枠組みながらも、組織の軋轢やそれぞれの背景で味付けしながら、実にミクロな会話なのはパラ定節。

四人の「協力者」は諜報活動に関わっている内閣調査室勤務、ゾルゲと会ったことはあっても諜報活動にはおそらく関与していない医師、協力者と面識がある新聞記者、そして牧師として潜入捜査していた警察官といった具合な立場のグラデーションが観客にも登場人物たちにも徐々に明かされます。 取り調べをする警察の二人はもうすこし俯瞰的に事件は見えているけれど、核心となるゾルゲの身柄もおそらく情報の数々も特高に先を越されていて実はあまりわかっていないというのが絶妙。

つまりは、ゾルゲ事件のことを知っていたら外伝的に楽しむことはできるけれど、知らなかったとしても、その「わからなさ」のままで楽しむのも有りかなぁとおもったりするのです。人々の疑心暗鬼なソリッドな、しかし時にコミカルでもあったりする会話で。

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2024.04.02

【芝居】「口(しかく)」エンニュイ

2024.3.9 18:00 [CoRich]

王子小劇場の佐藤佐吉演劇祭の一本。ワタシは初見です。見慣れている観劇巧者の感想を読みながら記憶を掘り起こすほぼ一ヶ月前(溜まりすぎ)。137分は正直少々長いけれど。王子スタジオ1、3月10日まで。

オフィス、喋らない社員たち、苛ついて怒りがちな課長とか。出社しないまま一週間とか。あるいは不安を言葉にしてネットに発してしまう人。 web会議のようにそれぞれのスマホで映像みせながら話をしたり、呪われないために相手の名前を錆びた釘で書きたいけれど名前を知らないとか。大量に生み出され大量に死んでいく言霊、chatGPTに生成させる日記。俳優が偽物と疑われスタッフも交えて議論したり。

初見のワタシにはなかなかの歯応えの一本。要素はそれぞれに面白かったりするのです。たとえば、開場中の劇場に流れているリアルタイムのNHKラジオ(震災の何とかだった気がする)、それぞれのスマホでweb会議的に会話したり、プロジェクターで映した映像が吊るしてある紙に映し出していたり。言葉を失う病と大量に生み出される言葉という対比だったり。ある芸能人のスキャンダルを台詞に折り込んでみたり。

なるほど、作家の頭の中のぐるぐるを未分化(劇中に出てくるネオテニーということかしら)なまま提示されたものを自分の頭の中で再構成して組み立てて受け取って観る芝居なんだ、と気付いた時にはわりと時遅し、置いて行かれたと感じるワタシです。 物語というよりは手法の断片の面白さとも思いつつ。それならつまり、観劇巧者たちの感想を補助線として見直したら判るようになるかもと思うけれど、記憶力が追い付かない(泣)。

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2024.03.28

【芝居】「スネーク・オイル」不条理コントユニットMELT

2024.3.9 14:00 [CoRich]

「いんちき」を意味するスネークオイルと名付けられた2022年設立のコントユニット。初見です。120分。王子小劇場で3月10日まで。

  • 魂の存在が科学的に証明され、前世もわかるようになっている。
  • サングラスの男女が王様ゲームをすると始まる、さまざまな物語。
  • あらゆる賢者たちの転生だという教祖のもとに信者が集まっているところに前世鑑定センターの職員が現れ、ウミケムシやジャンボタニシが前世だと告げる。
  • テロで殺された女が安置されている部屋に来た夫は、妻の浮気が理由で引き取りを拒む。そのとき、妻が起き上がる。魂は死んでいないのだという。同居を続ける夫妻だが夫が出張から戻ると家には異臭が漂い妻は腐り始めている。
  • ファミレスの配膳ロボットが客に粗相をする。人間の責任者はおらず、客はロボットに誠意を見せろと責め立てるが、やがて謝罪の感情が芽生えてしまう。
  • さまざまの不謹慎を排除した結果、食料は流しそうめんだけが配給されている。
  • 追い詰められた独裁者は負けて辱めをうけるぐらいなら自決を選ぼうとするが、毒を飲もうにも水がなく、現れた敵の銃弾は切れている。妻と自決しようとするが妻にはその気はなく、愛人が現れるが独裁者にそのつもりはない。
  • そうめんの配給で飲食業は成立しなくなり、客のいないファミレスに配膳ロボット。死んでいる女が現れ、互いに小指を外し入れ替えて心が通う。いろいろ入れ替えたら、身体が全て入れ替わってしまう。
  • 公園で植物を育てる管理人、警察が現れ、前世は教祖で自爆テロを教唆したとして逮捕するが罪を犯した意識はもちろんない。
  • 配膳ロボットに入れ替わってしまった妻は同居する夫にロボットの身体にならないかと提案する。人類がやがて滅ぶと判っちゃったので不安なのだ。
  • 前世が教祖だった男を殺し敵を討とうとする夫。しかし生まれ変わった男は同じ魂なのか、だったら配膳ロボットに入れ替わった妻はほんとうに妻なのか。警察に逮捕された夫を迎える妻はポンコツに壊れつつ、感情が表れる。
  • 逮捕された夫妻、肉とごはんを食べる。代用でもないし魂が入れ替わったわけでもない、のか。
魂や前世の存在が科学的に実証されたというワンアイディアを展開するオムニバスコント。「シティーボーイズ」のスタイリッシュと、「げんこつ団」の荒唐無稽設定のワンアイディアで紡ぐ両方の併せ持つよう。ラストのしんみり夫婦の会話なんかペーソス溢れる感じでもあって楽しむワタシです。いや、なかなか盛りだくさんなのに飽きないしスムーズだし、なんか芝居を観たなという満腹感が得られるのは対した物だと思うのです。

夫を演じた伊藤圭太、妻を演じた江益凛の絶妙な距離感、夫婦の会話という雰囲気を解像度高く演じるちから。そこにからむ配膳ロボットを演じた守屋百子との絡みも楽しい。 

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2024.03.24

【芝居】「死して尚、生きてナオ」二進数

2024.3.2 18:00 [CoRich]

初見の劇団です。120分ほど。3月3日まで王子小劇場。

小中高、それなりに人気者だった。足が早かったり、パソコン部作って頭がよくて、バンドもやって。大学に入った頃、同姓同名の俳優が売れはじめたけど、新歓コンパで「残念な方」と言われてしまう。
小学校の頃の同級生は教師になって同居している。中学校の同級生は保険会社で働いてるが絶望的にダサくて、マッチングアプリ漬けになってる。高校の同級生はワルな感じだったけど精神科医になって心配してくれている。社会人になってイマイチくすぶってる男は、「残念じゃないほうの」俳優と出会い、炎上しがちな日々から逃げたい俳優から代わりに死んでくれないかと言われる。

子供の時は神童とよばれ明るい未来しかないのに、大人になってみれば普通の人どころか、なんか居るんだかいないんだかわからないようなぼんやりした毎日。それぞれの同級生たちはいろいろだけれど、なんか追い越されているような感じがしているという感覚。多かれ少なかれ誰でも子供の頃と大人になって属性が変わるというか、子供に思い描いていた自分の未来とは違う自分になっていて、そこを鬱々とする気持ちがベースになっている物語。

正直にいえば、それぞれの同級生たちの物語をキチンと描こうとしたり、わりとキーポイントになりそうな売れた俳優の存在感がどこか希薄で現実味がなかったりして、どこに焦点を当てて観ていたらいいかわからなくなるところは勿体ない感じ。良く考えたら現実と非現実、幻想が入り乱れるようで、過去はともかく、現在そんな人々がそんな暮らしをしているか怪しい雰囲気、内省してるだけの可能性もあったりするのです。

ほぼ女性や恋愛が出てこないし、いわゆるホモソーシャルはほんの少し、といって同性愛でもない内省的な物語を少人数の男性俳優だけで作り上げるのはけっこう青臭く、陰鬱になりがちだけれど、それで2時間を押し切る胆力、なかなかたいしたものだと思うのです。

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2024.03.21

【芝居】「走れ!弥次喜多」神奈川県演劇連盟

2024.3.2 14:00 [CoRich]

神奈川県演劇連盟(TAK)の参加劇団による合同公演、盛り沢山なエンタメ全振り。神奈川県立青少年センターの紅葉坂ホール。120分

神奈川宿にたどり着いた若い男二人、弥次と喜多。金はなく自暴自棄だったりするが仲良く楽しく旅をしている。ふとしたことで瓦版の記事を書き戯作者になりたい一九と出会う。
地獄では世間で流行るお血脈の印で亡者が地獄に来なくなり深刻な問題になり閻魔は石川五右衛門に奪取を命じる。
宿を取り仕切る出井鬼州(デイオニス)王は暴君で、瓦版を書いた一九を見せしめに磔にするが、弥次喜多の二人はそれを助けたいとデイオニス王に申し出て、3日のうちに小田原宿で次郎長一家が持っていると思われるお血脈の印を手に入れてくるように言う。

演劇連盟らしく横浜(神奈川宿)と小田原宿を舞台に、 弥次喜多や十返舎一九、清水の次郎長一家といった登場人物を組み合わせ、走れメロスを物語の幹に据えて、数々の落語(お血脈(=ブラッドライン、なるほど)の印、初天神、死神、抜け雀、置泥、ぐらい?)や八百屋お七や地獄太夫などさまざまな小ネタやエッセンスを塗した大作。自分でも何を言ってるかわからないけど、これ全部が無理なく2時間ほどにギュッと濃密で疾走感のあるエンタメなのです。

市民劇団を含めて多くの役者をもってしても、2FのHIKARIよりはるかに大きい1Fホール(客席812)の土曜昼でさえ埋まりはしないけれど、物語(神奈川県西部を含めた(=小田原))も演出も、きっちりエンタメとして大きな劇場で楽しめるという仕上がりを間違いなく、きっちりと濃密に作り上げるのです。さらには平賀源内のエレキテルならぬキコエテルなるスマホ的なものを皆が持ち、twitter的なSNS(抜け雀を組み合わせるのも見事)があって、「普通の人々の悪意」の怖さみたいなものまでてんこ盛り。小ネタ的なことも楽しくて、たとえば瓦版の版元はツタヤだけどTポイントカードをぶら下げてたり(広い劇場なのにピンポイント過ぎる)

弥次喜多の二人を演じたジョニー、佐藤晴伽の掛け合いの口調、あるいは後半の疾走感。十返舎一九を演じた片倉郁のイノセントな感じ。出井鬼州王を演じた今井勝法は威厳というより邪悪が勝つ造形。女優ばかりで次郎長一家の面白さで、次郎長を演じた川西玉枝の懐の深い感じや石松を演じた川井眞理子の弾ける感じ。閻魔大魔王を演じつつ演出も兼ねた中山朋文を頼もしく思うのです。

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2024.03.18

【芝居】「ファンタスティックベイビーズ」guizillen

2024.2.23 19:30 [CoRich]

2019年の佐藤辰海演劇祭は拝見したものの、劇団としてはワタシは初見。4年ぶりの本公演。盛りだくさんに休憩無しの150分。王子小劇場で2月26日まで。

ネグレクトのの母に対抗するための姉弟は正義が暴走する。居酒屋バイトの男は外国人のバイトにすらバカにされぞんざいに扱われた妻は正義の暴走で交通事故で亡くなってしまい、子供と向き合う会話をはじめる。ホームレスの男が高校生カップルの男が女に告白する勇気を魔法のようにに授け、しかし失恋する。アシタカもチチタカも村を出てあちこちに女を作るし、Youtuberと一生を伴にするつもりだった。いじめられていた城島くんは成長してジョーカーとなり人を陥れたりする。トーヨコで暮らす女と、彼女が気になる予備校生と。元トーヨコ暮らしという60歳の男はやけに親身で。

いくつも点描される物語の数々は痛みを抱える現在の私たちから地続き。長い上演時間だけれどなんか見続けてしまう魅力というか。ヒーローショーをいい歳になっても繰り返す姉弟の暴走にしても、妻を亡くして何もかも無気力になってしまう男にしても、トーヨコを巡るカップルの発作的な結末も、巧く生きられない伝説の男のしょうもなさがSNSで晒されることも、一つ一つの物語はかなり分厚く描かれて見応えがあるのだけれど、これだけの物量が並んでしまうと、沢山のできごとがそこにごちゃっと有る感じでワタシの中に整理が付かない感じ。ファンタスティックベイビーズと名乗る白ブリーフの男たちが何かの足がかりになって物語をまとめ上げるんじゃないかと勝手に想像したワタシ、どこかもやっとした気持ちが残るのです。終幕近く、4年ぶりの現実は糞で嘘ばかりの芝居だとか、熊が幼い物語を生み出したことを謝ったりと、物語の無力を感じてるのかなと思ったり。

ヒーローな姉弟を演じた米田ひかりの暴走と佐々木タケシの抑えた感じの対比が鮮やか。トーヨコの女を演じた我修院達子の巧く生きられなさと予備校生を演じた亀井陵市の木訥。妻を亡くした男を演じた安東信助の静かな絶望と、泣き止まない子供を電動自転車に乗せて走るたった一人のシーンは凄い。いや、この役者がホントに好きだってだけなんだけど、たぶん。

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2024.03.13

【芝居】「MY NAME IS I LOVE YOU」ザジ・ズー

2024.2.23 16:30 [CoRich]

快快(faifai)となる前の「小指値」時代の2005年作(快快での上演も)を若い劇団が上演。そういえば当時の出演者の姿を見かけました。2週間を2チームで上演。ワタシは2月25日まで上演されたAチームを。翌週3月3日までがBチーム。60分、王子スタジオ1。

愛とセックスへの対価と渋谷という場所、未来から来た大学生の女と生身が怖くてダッチワイフを選んだ男の物語。正直あのときの記憶も怪しいのだけれど、場所や題材はチェルフィッチュ「三月の5日間」にも近くてそれが2004年初演だと思うと、なるほど20年前の風景な感じではあるなあと思ったりします。

台詞の殆どを一人の役者が行う言動分離も小指値と同じだけれど、チラシのキャスト数がAチームだけでも相当に多くて実はAチームの中でも複数のバージョンが存在しているのではないかと思ったりしますし、誰が何をやってるやら観客は知り合いでも無い限り知る術がないのは、とても若い劇団という感じではあります。快快のクレジットこそあれど、脚本のクレジットは別人、ということはテキストに手を入れてるのかなぁと思ったり。

こういうものを、ワタシはまだ面白がれているだろうかと、自分の老いを感じたりしつつ。

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2024.03.04

【芝居】「きょうのの○○は」ムシラセ

2024.2.18 16:00 [CoRich]

ムシラセミニ、と題して短編集。60分。千穐楽は追加料金でお茶会付きだけどなぜか人見知り発動なワタシだけどたのしい。

執拗に風呂に入れられようとしている男は自治会長と呼ばれている。誰もがアイドルになれる特殊な入浴剤で国民総アイドルの国策を拒否している「今日のお風呂は」
スーパーのバックヤード。社員が試食販売バイトに説教している筈なのだが、肉が米から作られたこの時代、本当の肉の味を知っているのは自分だけだと言い張るバイトの女「今日のお肉は」
百均バイトの面接に来た女は年齢を偽ってでもどうしてもこの店で働きたいのだという「今日の百均は」

「〜お風呂」はマンガアニメを作れる一握りをのぞく総ての国民をアイドルにしてクールジャパンなコンテンツにするという沈みゆく国の無茶苦茶な起死回生策。謎の入浴剤で骨格まで変わってアイドルになることを強いられるSFだけれどどうしてもアイドルになりたくない男。なにか怖いと言う感覚はとても私たちの感覚に近いし、みんながやることになってるのだから示しが付かないという女の主張も、実は私たちの感覚に近い鬩ぎ合い。還暦アイドルだという女が実は反権力で入浴剤を無効化する粉末があると説得するが。幕切れ、男の「あっ」の一言が巧い。アイドルになりたくない男を演じた堀靖明の理屈をこねて拒否するキャラクタはこの役者の真骨頂。

「〜お肉」は牛が絶滅危惧種で、(いま流行の大豆ではなく)米から作られるという未来の話。本当の肉の味など誰も知らないという時代に、祖母が隠し持った百年前の冷凍牛タンを持ち歩き、本当の肉の味を知ってるのだという女。後半で、人間は仕事をアンドロイドに奪われていて、実はこの社員も生きる意味を聞かれハングアップしたりしてアンドロイドなのだと明かされる、肉の味もわからなかったり。肉と人間という二重に本物と偽物の対比が面白い。ハングアップしたらコールセンターが呼び出されるくだりがコミカルで楽しい。識別番号がある首筋を自分で触る女もまた自分がアンドロイドかもしれないとおもうのは、なんかリアリティ。まあ、識別番号を読んだのだから、物語に従えば人間なのだけど。

ジャンケンで勝った俳優と、菊池美里の二人芝居という趣向の「〜百均」。千穐楽は堀靖明。面接する責任者と、還暦アイドルと嘯きどうしてもここで働きたいのだという純粋な気持ち。6本百円の植物用の栄養剤を飲もうとしてた女と止めた恩だというのも馬鹿馬鹿しいけど、還暦だからという雑だけど説得力のある。店への思いをキャンドゥのCMソングを歌い上げて伝えるけれどダイソーというオチも楽しい。 駄々っ子のように寝技掛けまくる還暦アイドルを演じた菊池美里が妙な説得力で圧巻の存在感。巻き込まれ困るという役を演じたらピカイチな堀靖明との二人芝居の贅沢。

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2024.03.01

【芝居】「syndicated」theater 045 sydicate

2024.2.10 18:00 [CoRich]

横浜を拠点に活動する theater 045 syndicateが、世人/dasman、鳥を探すの二団体を招聘して集まり(シンジケイティッド)、短編を連続上演する企画公演。2月11日まで神奈川県立青少年センタースタジオHIKARI。120分ほど。

実験のために呼ばれた男。連れてこられた目隠しの男に問題を出し、不正解なら流される電流は増えて行く。監視の隙に二人は知り合いだとわかるが、その後の実験も続く。「アイヒマン・テスト」(世人/dasman)
亡くなった男の妻と娘たち3人、男の弟。家族は温かいが、「黒い水」と名付けられた悪意でミタされる世界を救うために戦っている。末っ子アオは夢で家族に冷たくされる悪夢をみる。「夜の戦いの種族」(鳥を探す)
金に困った同級生3人と、困ってはいないが友情のために加わった計4人の男たちが強盗を計画し、実行の日。それぞれに準備して集まっている。一人はその気満々だが、一人は払うはずだった慰謝料を払わなくて良くなり、一人は工場が売れて金の目処はついた。遅れてきた男は足を骨折しているのに、決行する気合いに溢れている。「Puppy Day Afternoon」(theater 045 syndicate)

ナチスのホロコーストに関与した人物をタイトルに掲げる「アイヒマン〜」。クイズの不正解でボタンを押す男と、それによって電圧がかかり苦しむ男という実験される二人と、それを観察もしくは監視する一人という三人芝居。序盤ではボタンを押すことを躊躇する男。中盤で監視の男が中座する間に知り合いとわかり、ボタンを押している男が負い目を持つ立場だということが明かされます。が、再開された実験、ボタンを押す男はむしろ躊躇無く罰を与えるようになる流れ。実験の後、監視する男はボタンを押していた男からスマートウオッチ風のものを外し、男は嬉々として出て行くけれど、罰を与えられていた男が企んだ実験だったという終幕。明確には示されないけれど、報酬の前に倫理が敗北する絶望と読むワタシです。
正直にいえば、前半が少々長くて、後半はダイナミックに面白いのでもっとキュッと短い尺で見たい気がします。

「夜の戦いの〜」は、ズレる会話の家庭の話かと思うけれど、ちょっと不穏な雰囲気ではじまります。黒い水という悪意が満ちる世界と戦う、恐らくは劣勢なレジスタンス的な家族だけを描きます。何かの重大な仕事をしている家族だけれど、末っ子だけはその戦いに参加していないのは、もちろん家族の思いやりなのです。が、中盤で末っ子は家族たちに冷たくされる悪夢を見るのです。
家族たちと、末っ子の思いのすれ違い。優しさを疎外と感じることのコンパクトに描きます。正直にいえば、物語に対して少々登場人物が多い感じではあるのですが、とはいえ、登場人物を減らすべきなの、物語の密度を上げるか、思いあぐねるのです。

わりとシリアステイストの二作のあとに、狡猾な感じすらある「Puppy〜」は笑い多めで楽しい。 金が無いから強盗でもしないとならなかったオジサンたちと、男気で協力しようとするオジサンの元同級生な男たち四人芝居。銃を手入れしてたり準備万端なのに、それまでの前提だった筈の金が必要ということもなくなって、一人まだ金が必要で頑張ろうという男に、男気だけ威勢のいい男が使い物にならない。さまざまに、ままならない他人を眺めて笑う観客のアタシです。
終盤、強盗を中止しようと金を貸すという申し出に、友達から借金をしないと応じる男、そこに「友達を強盗犯にはしない」という幕切れ(ネタバレゴメン)、同級生というより仲間たちの信じられる距離感がとても心地よいのです。

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