2025.12.08

【芝居】「800〜1200度のカタルシス」げんこつ団

2025.10.30 19:30 [CoRich]

ナンセンス喜劇を標榜する女性ばかりの劇団・げんこつ団の新作。今回で55回公演なのだそう。130分。11月2日まで楽園。

高齢化が進みどこの葬儀場も満杯で火葬が追い付かなくなり、ついに一つの火葬場が老朽化して爆発してしまう。葬儀会社はフルオートメーションのカジュアルな火葬場を次々と建て需要に応えようとしている。爆発に巻き込まれて死んだ筈の職員や客もなぜか姿を現す。
一つの突拍子もない背景となる世界を共有しつつコントのような短いシーンをつなげていたかつてのスタイルから、突拍子のない背景はそのままだけれど、ここ数作は物語の要素が増えていると感じるワタシです。今作の前半では高齢化が強烈に進んだ結果どんどんカジュアルに火葬が行われる背景を。そこから母親を亡くしたけれど泣けず弔いたいと思う女が訪れてから紡がれる物語。

小学校から引きこもって40年、ほぼ何も読まず書いてもいないのに書いたらノーベル文学賞確実と言われ育つのです。ワタシの記憶が曖昧になっているけれど、洋菓子屋の娘がこの引きこもりなのか、あるいは母親が洋菓子屋の娘なのか、みたいな感じで曼荼羅やマトリョーシカのように(再帰的に)繰り返すのはなぜか、げんこつ団のフレイバーを存分に感じるワタシです。物語はさらにいろんな老人たちの歴史が積み重なるというよりは煙となり立ち上がります。

亡くなった母親が雇用機会均等法の第一世代というセリフがあった気がするんですが、ワタシはむしろその親側の世代(幅はあるけれど)。 ワタシたち(少し上の世代も含めて)、女性たちはそれまでとは社会の要請が変わって、自覚しているかはともかくとして田舎から出て(結果的に)自由になることを選べるようになったのだと思います。 (語られてないけれど一人で走りきったり、子を産んでも結果的には走りきることが出来たりなど、それぞれの人生にさまざまな分岐があるけれど) 物語は、あるいは子を産んで「諦めた」母親が、産んだ子どもが、その「母が亡くなったけれど泣けない」女の職業が作家と帰着する見事さ。

もちろん作家がどういう人物かはSNS越しのうっすらとした印象しかないけれど、ガーディアンガーデンフェスティバルのあの頃から、駅前劇場で恐らくは(当時の)プロジェクターを冷やすために冷房をガンガンにかけていた頃を勝手に一緒に歩んで来たワタシ、みたいに勝手に感じ入るんですが、ええ、もちろん全然的外れな気がしないでもありませんが。

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2025.12.05

【芝居】「妄想コピー / river」螺旋階段

2025.10.25 18:00 [CoRich]

小田原の劇団。国府津の海辺の会場・BLEND PARKで。60分、休憩15分、50分の構成で短編ふたつ。10月26日まで。

弁護士のオフィスに女が訪れて弁護士と見習いが応対する。 女は子どもの頃の話から、産んだ子どもを愛せずにいたけれど、土手に子どもを置いてきたことは意図したことではない。「river」
人気作の兄弟で書いている作家のオフィス、ヤクザが怒鳴り込んで来る。作家が密着して取材したことをそのままあからさまにわかる形で小説にして出版したことに怒っている。「妄想コピー」

「river」はコミカルな弁護士と見習いから始まってずっとふざけている序盤。関西や福岡の口調など、ふざけている会話に徐々に物語が編み込まれます。父親のせいで追われるように引っ越していた子どもの頃、離婚して母親と暮らしたけれど生活の苦しさゆえにいい思い出がなく、母親が亡くなってからは仕事をして自由になる時間も金もあって楽しかったのに、子どもが出来てからはそれが変わってしまうという物語の枠組み。

男性だけれど、女性の側の不安や不穏を解像度高く描き出せるのはこの作家の強みだと改めて感じます。これだけ語られ、こうなるしかなかったのだという母親が背負ってしまったのは、ぼおっとして残してきてしまった息子が川に落ちて亡くなってしまったという自責なのです。

以下ほぼ全編ネタバレになってて申し訳ないけれど、この終盤からの急転直下が面白いのです。

ここからそのまま終わらない急転直下、弁護士事務所だと思っていたこの場所は三途の川の横、子どもも母親も向こう側に渡していいかどうかというのが彼らの仕事だと明かされます。ここから亡くなっている側の息子の目撃証言やこの母親の父親も母親も向こう側に居るのだということが救いに感じるワタシです。

「妄想コピー」は兄弟の作家に怒鳴り込む(モデルとした)ヤクザ、という三人の男たちの会話劇。自分のリアルを描いてほしいというヤクザ側のエゴとと作家の間の駆け引きのバランスオブパワーの物語。刑事になれそうだという雰囲気やフィリピンパブの女性、あるいは世界も宇宙も救うというどんどん広がるのです。

終盤で大きく動く物語。三人居るはずなのに、実は作家は兄弟じゃなく一人、もしかしたらヤクザも存在しなくて、一人の作家の頭の中で動かしている、たった一人の部屋に見える気がするワタシです。

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2025.11.23

【芝居】「白貝」やみ・あがりシアター

2025.10.12 17:00 [CoRich]

やみ・あがりシアターの新作。130分。九劇。10月19日まで。

不登校だったり恋人ができることも働いたこともない女は、登山にだけはでかけていて、いくつもの山を登り、山の中であれば人とも愛想良く会話が出来るし、行動ができるが、それでも人の顔を覚えられない。
ある日、天候が悪化し避難小屋に避難した女は、芸能プロダクションの社長である女と出会うが、天候が回復し下山したのは人の顔の覚えられない女だけだけで、社長は死亡が確認されるが、何があったかについては一切語らなかった。 芸能プロダクションの社長が登山したのは事務所を訴える所属タレントについての会見の前日だった。亡くなった息子や、その所属タレント、利害関係を持つ人々は、何があったかを聞きだそうと唯一事実を知る女を追って、山道で声を掛け、手がかりを掴もうとする。

等高線上に線が引かれ、山ならぬ谷のように中心が一番低く、囲んだ客席に向かって高くなっていく構造で、二箇所の出捌け口があるので、観客の目の前を人々がすれ違い、追いかけ、会話する場をスピーディに描きながら謎が謎をよぶミステリー風。謎解きも、人を想う気持ちもキチンと描き、そこで終わりかと思えばもう一段の謎解きなのは巧い。

顔を覚えられない女を演じた加藤睦望は真面目な造型で明るく会話するのと喋らないのとをスムーズに行き来する説得力。その息子で芸能事務所を継げるかどうかが心配すぎる男を演じた森下亮は空気が読めずに明確にコメディリリーフで楽しい。所属タレントを演じた、さんなぎはそれでも何かを追いかけたい気持ちを駆動したいい造型で「整形はしたけれど脚は私の脚だ」というセリフに見事に結実。探偵を演じた青木絵璃もちょっと抜けた感じに見えてもキチンと探偵な頼もしさも。亡くなった社長と親しいと言い張る男を演じた河村慎也はやたらに山で食べたり飲んだりな感じだけれど、山男っぽさみたいな見え方の説得力。

ワタシは登山はしないけれど、イマドキらしく救助のためのGPS端末ココヘリがきっちり登場してるのもきちんと取材している感じでポイント高い。

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2025.11.16

【芝居】「LAST BLUES」泡沫虹色おじサンズ

2025.10.12 16:30 [CoRich]

大町の一人劇団だそうです。今作はオジサン二人の50分。上土シネマ。

日付が変わり閉店間近のバー。顔見知りらしい一人の客が訪れる。長く会っていなかったマスターの父親らしい。 ビールを酌み交わし父親は機嫌がいいが、マスターは打ち解けられない。仕事ばかりで家庭を顧みなかった父親を許せていない。 マスターも今は結婚し、小さな子どもがいる。店の片隅にギターがあるのを父親は見つける。

カウンターを挟んで父と息子の人情話の一本。仕掛けはシンプルだけれど、家庭を顧みなかった父親とロックスターになると家を出た息子の久々の二人きりの再会。 ロックスターの夢を諦め結婚して子どもが出来て親となった息子が父親に寄り添えるようになっているかもしれない、という二人の距離感の絶妙。 物語としてみればわりと自由人だった父親と、夢を諦めた息子がわかり合えるようになるのは少々強引な気がしないでもないのだけれど、 親子だった時間が確実にあって、その流れが現在のここにも流れていることをきちんと感じさせる強い説得力。若くはない二人の役者は、ふざけてみたり心をぶつけてみたりと間合いが絶妙で 年齢を重ねたゆえに醸し出されるものが確かにそこにあるのです。

弾き語りを売りにするだけあって、ギターも効果的なのです。

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【芝居】「わんちゃん〜One more chance〜」音光舞

2025.10.12 14:00 [CoRich]

チラシはずっと目にしていたのに、拝見する機会が無く、初めて拝見する地元劇団。「ねこまい」と読むのだそうです。 穂村一彦作の60分。劇団名とは裏腹に犬の物語。11月にも同じタイトルで単独公演のようです。

妹が可愛がっていた犬が死んだ。心配する兄は金に物を言わせて霊媒師を呼び、助手と共にやってくる。犬の霊を降ろしてほしいと言われ戸惑う霊媒師だが、そもそもがインチキだ。 が、その助手には犬の霊が見えてしまう。

いわゆるドタバタコメディ的な物語、そこには犬が隠した銃を探す男など不穏な要素をいれたりしつつ、ドキドキさせたりほっこりさせたり。 キャラクタをわりと大げさに振り切って造型しているおかげで、人物を追いかけるのが容易で見やすいのは美点です。 反面、同性愛の扱いはやや古い感じで雑な扱いに感じられるワタシです。恐らくは新作ではないと思うのだけど、これは何時書かれた戯曲なんだろう。

助手を演じた福澤加奈子が性別を軽々と超える雰囲気で印象的。

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2025.11.07

【芝居】100億光年の記憶〜まじめや古道具店奇譚~」幻想劇場◎経帷子

2025.10.12 10:00 [CoRich]

まつもと演劇祭常連の地元劇団。アングラ風味少なめなのは珍しい気がします。60分。上土劇場。

妻を亡くした古道具屋の主人。一ヶ月休んで店を再開する。 学校に行かない少年、ヤクザに繋がりがある店から逃げてきたソープ嬢、地上げを目論むヤクザ、店主に色目を使うヤクザの妻、怪しげなものを持ち込む常連客、道具屋の師匠などが訪れ心配したり、色目を使われたり、借金はあるし売れない物を仕入れてしまうし。妻は心配で四十九日までは見守っていようと思う。

妻を亡くした男が次の一歩を踏み出し始める物語。序盤で売れないと思ってたラジオには縁があってとか、玉手箱のような文箱の中にもお宝だ、みたいなファンタジーもありますが、それで大儲けとはならないのは作家の誠実さを現すよう。次に手渡すのが仕事、みたいな感じ方もワタシたちの世代に響きます。

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【芝居】「堕落した夢はしばらく見ない」Cannibal (ex. 空想≠カニバル)

2025.10.11 19:30 [CoRich]

長野市の劇団で継続的にまつもと演劇祭に出ているカニバル。信濃ギャラリーはもう、もう一つのホームといってもいい60分。

南の島の研究施設に新人二人が赴任してくる。資料の整理を依頼されるが、特定の分野の資料が見当たらないことに気付く。敷地内には使われていない旧館があり、そこでは昔の記憶らしいものを感じる。広い森には大きな獣が居るようだが確認されていない。台風が近づいてくる。

膨大な音と派手な照明をベースに、そう広くはない信濃ギャラリーをクラブのように使って語られる物語は謎解きであったり、自然への畏怖であったり、AIとの対話であったりと多岐にわたります。リズムに乗ったセリフに大量の情報をポップに詰め込んで語られるのは、それだけ語りたいことが濃密にある作家の想いだと思うのです。

A4二枚に渡る膨大な謝辞とセルフライナーノーツには「自覚的に厨二病」と自虐的だったりするけれど、紙に印刷されたあらすじや謝辞にも作家の想いが溢れます。物語で語られる 近代生態学の父、チャールズエルトンの、「相応しい食べ物を十分にみつける最重要課題」(麻布大学いのちの博物館) なんてことを調べられたりするのも、楽しみだったりします。

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2025.11.05

【芝居】「町営プール」イチニノ

2025.10.11 18:30 [CoRich]

六年ぶりの松本だという茨城からの劇団、イチニノ。元々は枝分かれする物語を観客に選ばせるマルチエンディングという体裁の上演のようですが、三つの選択肢の全てを順に上演して60分にするという特別バージョンだそう。上土劇場。

なくなるバス停に集う三人。小学生の頃に夏休みに通った町営プールにほど近い。喋れない一人を含めた四人で通っていたけれど、小学生のころのある年にプールの廃止がきまってからの久しぶり。

ほぼ喋れない女子が困っているところを助けて仲良くなった女子、それをキッカケにしたかどうかは判らないけれど、夏休みのプールに通うようになった四人。小学生らしくふざけてばかりでいるけれど、夏休み毎日通ううち仲良くなったり距離を置いたり、芽生える恋心だったり、それを言い出せないことだったりを描きます。そこには女子同士の告白で断られたり、ちょっとピリッとする展開も交えます。

終幕に至り、一人が実は亡くなっていることが示されます。が喪服姿の三人のところには最後のバスがやってくること、そこから三人がここに思いを残しながらも、それぞれの道を進むように見える終幕は、少し切なくて、しかししっかりと。

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【芝居】「結婚の報告」中野劇団 (#まつもと演劇祭)

2025.10.11 16:00 [CoRich]

京都からの中野劇団。元は短編で2025年には映画化もされた人気作に映画版の設定を加えた55分。上土劇場。ワタシは初見です。

酒場での知り合いの男ふたり。久しぶりに会う。一人は友人の母親と結婚することになったが、友人じたいにはまだ話せていないので今日ここで話すつもりだったが、やってきた友人は相手が誰かを当てるといって言い出せない。もう一人も再婚を決めていて、その結婚式で元の妻にスピーチさせたいのだといい、そのために元妻を呼び出している。

たった四人が都合良すぎるほどに狭い世界で繋がっている、まさにコントの設定だけれど、笑いを途切れさせないつるべ打ちで満員の客席を一気に巻き込み、それをほぼ一時間沸かせ続けるのです。

友だちの母親と恋仲になってしまったバツの悪さと、結婚と聞いて相手が誰か当てる気満々で盛り上がる友だち(つまり結婚相手の息子)との対比が前半をコミカルに牽引します。そこに重なるのは再婚するのに、わざわざ元妻に純粋の好意だけで結婚式のスピーチをさせようとする男と、戸惑う元妻の対比で、微笑ましいけれど意味の分からないことを言い出しているイノセントな怖さ。

持っている情報の差異に勘違いを多重に組みあわせるのは、この手のコメディの王道だけれど、知らなかった情報が伝わるのを同じ場所に四人居るのに二人だけで瞬時に伝わらせるのにLINEを使うのは巧くて、スピード感の向上に寄与します。

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2025.10.25

【芝居】「星空のジュリエット07」ゆきんこ劇場 (#まつもと演劇祭)

2025.10.11 14:30 [CoRich]

小上がりのある劇場で、幻想的だったりする55分。

老婆たちがあつまっている。どうもジュリエット(たち)らしい。そこへイタリアから戻ってきた女。

いわゆるロミジュリをベースにしながら、時に2025年の老婆たち、時にどこかの軍隊の会話を挟みながら進みます。ロミオを想い続けるジュリエット(たち)。英語でパロディシアターであると挟みつつ、ロミジュリのあらすじを日本語でも説明したりと、インスタレーションな印象の一本。正直に云えば、分析的に観ようとするとなかなか一筋縄ではいかない感じです。衣装など見た目はアングラ演劇的なものだけれど、芝居の印象はずいぶんポップ。そういうコラージュに身を預けるのもまた心地いい。

台詞を書いてある紙皿を演出家が舞台に向かって飛ばして、役者がそれを拾って読むというのは、ちょっと楽しい。観客にも投げさせたりして、一体になるのです。

白状すると、土曜昼の回を見る前に缶ビール開けたりしてしまい、心地よく寝てしまったあたしです。組み換えて日曜の昼も観られてよかったと安堵するのですw。

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