2017.12.15

【芝居】「スカイスクレイパー」あひるなんちゃら関村個人企画

2017.12.10 14:00 [CoRich]

あひるなんちゃらの関村俊介による個人企画、70分の爆笑編。

漫才師の男女、合わせたネタとはまったく別の宇宙エレベーターをしたり、頭の中でこっそりUNOしてたりするボケ担当の女。

大事な舞台なのにいままで一度も話したこともない宇宙エレベーターの話を持ち出す女。練習した漫才はいまいちだったとはいえ、せっかくのチャンスをフイにする危険を冒してまで(というよりその自覚なく)宇宙エレベータへのこだわりを切々と語り、会話がかみ合わないと思ったら頭の中で別のことをしたりと、ずれる会話。このシリーズの二人芝居にぼんやり共通に現れる宇宙や宇宙飛行士の話が薄くつながっていくのも楽しい。 空を擦るぐらいの高い建物=スカイスクレーパーというタイトル、それほどに高いところで漫才してみたいんだよ、とちょっといい話っぽくしても、宇宙エレベータがあと何年なんだろうと先の見えないのが「宇宙の話をしよう、果てしないから」な気持ち。

ともかくボケる女を演じた鈴木朝代が実に可愛らしく、表情一つかえずにぼけるのが楽しい。つっこみまくる堀靖明はその役割がよくあっているけれど、怒りキャラというよりは時々女性に優しかったりへなっとするのがちょっとカワイイ。

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【芝居】「熱狂」チョコレートケーキ

2017.12.9 14:00 [CoRich]

劇団の人気作らしいのですが、ワタシは初見です。19日までシアターウエスト。125分。

ミュンヘン一揆を起こすが失敗し禁固刑を受けたヒトラーは、今度はクーデターではなく合法な方法で権力を握ろうと考える。ナチ党としての国政選挙を重ね、大統領戦には敗北するも国会では第一党にまで登りつめ、首相指名、さらには独裁を手にする。

第一次大戦後、小さな党からあっという間に合法的な選挙で独裁を手にするまでの軌跡、語り部となる世話係の視点から、周囲の幹部たちを時に恫喝し、時に演説によって人々を巻き込み服従させていくさまを描きます。 自分の周りの幹部たちも、従順だが凡庸な者、優秀だが思想に差がみられるもの、あるいは友としての立場を重視するものなどさまざまに。実際の会話と云うよりはぎゅっと圧縮し、ごく近い人々がヒトラーに魅せられ巻き取られていくさまを細やかに描くことで、舞台では描かれない一般の人々の「熱狂」が生まれていく様を描きます。

名前ぐらいは聞いたことはあっても、何度か出てくる「指導者原理」も「ミュンヘン一揆」も知らなかったぐらい、この手の史実にとことん疎いアタシです。ヒトラーに対して友人という立場を取る者、ナチ党には社会主義を取り入れることが必要だと考える者、美しい国の完成に向けて高度な完成度をもった宣伝をつくりだす者、上流階級出身で国の英雄という立場を存分に生かす者。ナチ党の理想と、それぞれの思惑と。ヒトラーというある種特別な存在に対して心酔するのか、あるいは表面的な従順さの裏に別の思惑が存在するのか、さまざまな人々との密室での会話だけで紡ぐのです。おそらくは史実に忠実な流れをぎゅっと圧縮したつくりなので、このあたりに詳しい人にとっては評価は分かれるところかも知れません。

若者たちの強い支持を受けて、彼の考える「美しい国」は作れるし、「取り戻す」ための犠牲は仕方ないし、それはたいした問題ではないと考える人物。良識はあったはずなのに止められない人々。特殊な出来事ではなく、普通の人々がその狂気を支持してしまうということが、だんだん自分の身近に迫りつつあるな、と感じる昨今は身に染みるのです。

終幕、セピア色のような写真、これは過去のことだけれど、しかし、またあるかもしれない怖さを印象づけるのです。

ヒトラーを演じた西尾友樹は力強い声、人を取り込んでいく人垂らしという人物を高いテンションで演じきるのです。上流階級出身の英雄を演じた中田顕史郎は気持ちを隠しつつ抜け目ない男の説得力。突撃隊を率いる男を演じた大原研二は少々がさつな荒くれ者の役はめずらしい気がしますが、情に厚い感じもふくめて印象に残ります。

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2017.12.11

【芝居】「たまご祭」味わい堂々

2017.12.3 18:00 [CoRich]

劇団10周年記念公演として。 5日までスタジオ空洞。70分。上演回変わりのゲスト、日曜夜は笹野鈴々音。

誰がトイレで流さなかったのか、互いを疑う稽古場の三人。
製缶工場で働く工場長のところへ社長の娘が業績不振の工場を閉鎖するために交渉に訪れる。
ミュージカルの子役を選ぶオーディション。騒がしい子供たちの中で一人本気の応募者だが、実は33歳の大人が年齢を偽って背水の陣。
婚約を報告するために友達二人が集まった。本人は幸せいっぱいだが、相手に会ってもいないしボンヤリしている。友人たちは警戒警報を発令して。 それぞれの女が捕まり留置場で再会する。三人はかつて高校の演劇部だった。10年前に一度集まって劇団を作ることを言い出せなかった人生が現状になっている。あのとき三人がぼんやり感じていた劇団を作っていたら。

劇団の10年に呼応して、10年前に劇団を結成しなかったらそれぞれの女たちがどんな生活をしていたか三人別々にを並行世界のように描きます。

製缶工場の工場長となった女の話は、工場を理不尽から守る守る正義の人かと思っていたら、実は社長の愛人だったりして、終盤に至り一人工場の中で幻想のまま生きているという少しホラー風味の仕上げ。工場長を演じた浅野千鶴はまじめにまっすぐで思い入れが強すぎる女を好演。社長の娘を演じた宮本奈津美はクールビューティでかっこよく。

ミュージカルの子役オーディションに意識高く背水の陣で挑む女の話、背丈が小さい、子供っぽく見えるという岸野聡子の特性がこの無理筋な話に説得力を持たせます。大人偽ってでもかじりつきたい気持ちをしっかり。この回のゲストだけ、という子役の妹を演じた笹野鈴々音もまたこのわちゃわちゃした子役オーディションの雰囲気を作り上げます。

結婚の報告を友人にする女の話は、一度も会ってないとか雲行き怪しく友達が警報を発令して問いつめる流れが楽しい。ジェーン・スーの本にあるような独身女友達の海賊のよう。がんばって貯めたにしてもかなりの大金というのが少々信じがたいけれど、それだけ仕事ができてもなにか魔が差してこうなってしまうかもしれないということには説得力がある仕上げ。クールに見えるのに肝心なところが抜けてる女を演じた宮本奈津美が、可愛らしく、不思議ちゃんの片鱗も楽しい。

それぞれのいけてない人生を留置場に集約する吹っ飛び方は少々独特ではあるけれど、芝居の道を選び取っていなかったらこうなっていたかも、なもしもの世界の楽しさ。なるほど10周年楽しめる一本なのです。

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2017.12.10

【芝居】「ゴールデンバット」うさぎストライプ

2017.12.2 18:00 [CoRich]

うさぎストライプ名義、菊池佳南の一人芝居。大人になれない、と銘打って。70分。石巻から、★まで春風舎。 亀山浩史の「セブンスター」との交互上演。

うさぎ、昭和歌謡、喪服とコンセプトを変えてきた地下アイドル。マネージャーとの恋仲が噂されながら壊れてからのトークショー。 そのとき、マネージャだった男がみかけた池袋パルコ前でビールケースに上がって歌う女の姿。今の自分はそのパクリという自覚もありつつ、あるライブで客席の奥から側から声をかけてくる女は、会ってなかったけどきっとパルコ前の彼女で、逆にずっとライブに来るようになり、受付に預けられたカセットテープには唄と、何をいってるかよくわからないMCには生い立ちが吹き込まれていた。

街頭で歳を重ねた女がビールケースに乗って歌っていた昭和歌謡というコンセプトをパクった地下アイドル。マネージャと別れて喪服アイドルとしての活動を初めてからあの時のことを語る、という幾重にも重ねるという体裁。正直に云えば、一人芝居にしては少々凝りすぎな感はあるし、いくつかの昭和歌謡で尺を稼いでいるというのはいいのか悪いのか。もちろん女優が割と上手く昭和歌謡というのはもちろん嬉しいオヤジなアタシです。

ビールケースの女は宮城生まれ。東京には何かがあると信じて疑わない幼い頃にやっとの思いで妹を連れて行く許しを親から貰って原宿・竹下通りを何往復もしてしかしスカウトはされず、オリンピック記念硬貨を買ったり、妹は太って引きこもっても自分は東京に出たい一心で大学進学を成し遂げてチャラチャラとサークルの男に恋をして流しのように酒場を回ったりして何も成し遂げられないまま東京でくすぶり続けてビールケースで歌うまでの何十年。

一人芝居でこの歳を重ねたビールケースの女と若い地下アイドルをわりと継ぎ目なく行き来して進める物語。くすぶっていた女が地下アイドルを目にして刺激を受けてオーディションを再び受けて歩き出す、という物語は年齢を重ねても前に進むきっかけはあるのだ、という力強いメッセージなのです。 演じた菊池佳南はこの前ここで観た芝居でもアイドル役だった気がするけれど、やけに似合うのがご愛敬。宮城の言葉で喋るいくつかのシーンの自然さは出身地ゆえか。

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2017.12.07

【芝居】「光合成クラブ・Ⅱ --- 男のいない女たち」菅間馬鈴薯堂

2017.12.2 15:00 [CoRich]

80分。3日までワンズスタジオ。

東京タワーの見える公園。夜の10時。独り者の女たちが集まり酒を酌み交わし、雑談したり歌ったりしている。ホームレスが通りかかったり、ティッシュ配りを練習する若い女や葬式帰りの男が混じったりする。

80分の間に17の短いシーン。もっとも、全体としては夜の公園の連続した時間を描いていてあまり独立した感じはありません。月に一度、夜な夜な公園で安い焼酎を酌み交わす女たち。 酒が進むうちに語られるのは、生活のこと。野菜が高かったり、家賃が値上げされたり、男に縁がなかったりと、厳しい生活を愚痴るような話題なのだけれど、語り口は後腐れ無く実にドライ。作家の持ち味なのです。

当日パンフによれば、何本かに一度書いてしまう「わけのわからない」ものと作家は謙遜するけれど、町の片隅に片寄せあう夜半の風景は確かバラバラとも云えるけれど、市井の人々をみつめる作家の視線はどこまでも優しいのです。

ごく短いシチュエーションの数分の会話劇の断片はどの作家にもストックはありそうです。今作があらかじめ書き貯められたものかは知りませんが。「東京タワーが見える公園」という世界に閉じこめられそうなものを選んで、芝居に仕立てるというのは、ある意味、老練な作家だからできることなのかもしれません。今作に関して云えば、現実の場所を想像させて、若くはない女子たちが集いそうで、ホームレスも通りがかるかもしれない、静かな場所という想像力で設定された場所と、そこに集いそうな人々(もちろん、登場人物と役者のどちらが先に決まった要素かはワタシは知る由もありませんが)を、短い会話劇でつなげていく、しかも時にそれはミュージカルのようでもあるのです。

ティッシュ配りのバイトの練習、家賃の値上げを大家に手紙を書いて交渉する、もんじゃ屋に通う女が同じ常連と初めて会話を交わす一瞬、古い日記の発見、この集いを去るけど言い出せない、亡くした友人を弔った後に気になっていたこの集いに混じる、その間にホームレスが歌ったり、はとバス風のいろんな外国語などのバラエティを。なるほど盛りだくさん。しかし濃すぎず後味すっきりの不思議。

年上の女を演じた稲川三代子はダンスもキッチリでちゃんと安定感。去る女を演じた舘智子は思いの外(失礼)美しくちゃんと歳を重ねた説得力の存在。トラック運転手を演じたシゲキマナミの元気さ、小説を書く植木屋を演じた加古まなみは静かに秘めた雰囲気、若い女を演じた目黒ひかるは元気というコントラスト、踊る男を演じた村田与志行、これだけの大声が出るんだと今さらながら思ったり、年上のホームレスを演じた植吉のヨレヨレ感も楽しく、もう一人のホームレスを演じた加藤和彦は偽外国語の圧巻、タモリの四カ国語麻雀を思い出すアタシです。葬式帰りの男を演じた西山竜一は圧倒的に格好良く、なるほど女子たちが色めき立つという説得力。

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2017.12.05

【芝居】「パン屋爆発」FunIQ

2017.12.1 19:30 [CoRich]

数ヶ月をかけたFunIQの連続公演のラスト。年末らしい賑やかな90分。3日まで梟門。

東京から引っ越してきた夫婦が開いたパン屋は圧倒的な人気店になっている。常連客の頼みで貸し切りのクリスマスパーティを開くことになった。隣町で知り合った女を招待し、最高のパンをごちそうしたいのだという。普段は食パン専業だが、気合いをいれて、数日をかけてシュトレンを仕込んでいる。
果たしてその女はやってきたが、姉がついてきている。隣町はこの町を見下していて、仲が悪く、この姉妹は隣町の町長の娘だった。 近所にはもう一軒昔からのパン屋があるが人気がなくなっている。近所に住み込んだ旅の画家はこの町のシロアリに魅せられている。パン屋の職人はかつて東京の人気店で厳しい修行に耐えてきた過去を持っている。

ストイックなパン職人に秘められた過去。一人の男の恋心と、それを応援する友人たち、田舎町と隣町の確執による妨害。寂れたパン屋やらシロアリに魅せられた画家、さらには「バカと味の素」なる旨いけれど馬鹿になる調味料なる飛び道具も数多く、賑やかに進みます。 正直に言えば物語の歩みは早々に着地していて、ドリフよろしく大騒ぎのようなわちゃわちゃ感になだれ込む、という感じ。 終盤の物語の幹になるのは、パン職人とその妻の間のまっすぐな愛情をめぐる物語で、それは ビデオドラッグのような華やかだけれど少々危うい多幸感と現実の厳しさの落差を交互に示して、振り幅のある描き方。確かに賑やかではあって、連続公演の最後のお祭り感はあるけれど、ここまでの公演で積み上げてきたある種の緻密さには欠ける感じではあります。そもそもそういう物語ではない、というだけのことですが。

前園あかりはヤンキー風味な美容師、ちょっとバカっぷるっぽいところも可愛らしい。妻を演じた金沢涼恵は優しく太陽のような存在、終盤のあのワチャワチャの中でも輝き続ける説得力。 辻貴大はチャラくヤンキー気質な男はちょっと珍しい。日比野線は地味な男かと思いきや踊ったり弾けたりとこちらも珍しい。連続公演を走りきった二人、振り幅の広さは間違いなく彼らのちからなのです。

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2017.12.04

【芝居】「ちょっと、まってください」ナイロン100℃

2017.11.25 18:00 [CoRich]

12月3日まで本多劇場。そのあと、三重、兵庫、広島、福岡、新潟。 休憩込み3時間15分。

金持ちの家族が毎日同じような話をして退屈を持て余して暮らしている。内実は借金がふくらみ続けているがそれを知っているのは妻と使用人だけだ。
その家の庭に乞食の家族が住み着く。乞食の娘は金持ちの家の息子と結婚するのだというが、声すらかけていない。屋敷に入り込むことには成功したものの、お目当ての息子にはフられ、代わりに屋敷の主人に見初められれて兄ともども家に入る。金持ちの妻は捨てられ、乞食に身をやつしている。

ペテン師の語りという体裁で、金持ちと貧乏人が入れ替わる話。 娘を預かったという脅迫電話なのに本人が居て仕立て屋との間違い電話かと思えばその家には娘なんか居ないうえに、この町に仕立て屋なんかいない、といった感じの細かなナンセンスを幾重にも積み重ねて紡ぐ物語。 乞食の娘がこの金持ちの息子と結婚するといっても、会ったことすらない、けれどそれを不思議とも思わず突き進むことで大きく進む物語。 全体の雰囲気は何かの含蓄があるような気もするけれど、するりとそんな解釈をすり抜けるよう。 日本の不条理劇の第一人者、別役実へのオマージュと銘打ち、実に丁寧に、ごくまじめに、食い違ってみたり存在するべきものが存在していなかったりといった物語をきちんと語るのです。

きちんと作り込まれたセットや端々で使われるプロジェクションマッピング、役者たちもみな達者。こんなにも詰め込まれた不可思議でとりとめない話の世界に取り込まれ、浮遊するような感じすら抱くのに、3時間を超える上演時間、不思議と見入ってしまうのは間違いなくこのまじめに作り込まれた緻密さゆえの、一つの世界がそこにあるからだと感じるのです。かと思えば、狂犬病で物語がかき回されて一気にバカバカしくなってみたり。

電柱とか受付といった別役アイコンがそこかしこに。それほど深く知るわけではないあたしですが、それでも気づくのだから、知っていればもっといろいろと原型が見え隠れしたりして楽しそう。

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2017.12.01

【芝居】「もう少しだけましな理由。」クラゲズ

2017.11.24 [CoRich]

安東桂吾と太田善也によるユニット、旗揚げ公演。 26日までワンズスタジオ。休憩10分込みで115分。

一軒家に住む姉を妹夫婦をが訪ねる。姉と連絡が取れなくなって一週間が経っている。姉は作家と結婚しているが、作家は一度はヒットを出したものの、そのあとが続かず稼げていない。
しかし妻は起き上がりお茶を淹れたりしている。性格は別人のようだし頭のニット帽には血がついている。その帽子は池袋のサンシャイン通りで神々しく見えた知らない男から貰い、半年以内に殺されると予言されたのだという。
片言の男が上がり込む。作家の妻と月に一度は会いつづけているという。

二組の夫婦と一人の男を巡る物語を根幹に。夫婦の間の記憶違い、その勘違いを正せるとか正せないとか、相手が浮気しているかもという疑心暗鬼の物語を纏います。 一度はヒットしても稼げなくなっている男とそれを支えている女。女が不満をもっているかどうかは明確には語られない気がしますが、それは内に秘めた、ということは伝わる役者の力。女性の視線で世界を描くのが得意な作家ですが、どちらかというと男の視座から、女性を不可思議な存在であったり、きっちり正しい存在であったり、あるいは押されるような強さを持つ者、という畏敬すら感じるように描かれた物語だと思うのです。 男の側のある種の理想というか、現実の女性に対しては、その裏返しな恐怖心というか。

殺してしまった男と殺された女。そう簡単には覆らないはずの生死があっさり乗り越えられること、それによって性格がまったく替わってしまうこと。堪え忍ぶように物静かだった女の内側にはこんなあけすけな性格が秘められているかもしれないというのも巧い語り口。云えなかったことを云う存在もまた、不可思議なことなのです。

心配して訪れる妹夫婦だけれど、こちらもこちらで問題を抱えています。妻の記憶違いは親戚だけれど、夫はバツイチ再婚なのに前の妻との浮気のシーンを妻と勘違いしていて。本を読んでるとか、という問答も、ちょっと弱みというか、男のダメ加減を描きます。

作家を兼ねる太田善也は片言の怪しい外国人を演じさせたら逸品なのを久々に観られて嬉しいアタシです。 妹の夫を演じた安東桂吾は後ろめたいことは隠しつつ、ちゃんとしたように見える男をしっかりと造型。 売れない作家を演じた坂口候一は激昂の怖さ、静かな会話とのギャップというか振れ幅が圧倒的なのです。 姉を演じた市橋朝子は、物静かでしかし暗い感じと、あまりにもあけすけなキャラクタの落差、 妹を演じた武田優子は美しいけれど、負けん気の強さというキャラクタがすてき。 この姉妹二人の会話、いじめられたなど話す二人のシーンが実にいいのです。

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2017.11.29

【芝居】「骨と肉」JACROW

2017.11.19 19:00 [CoRich]

家具販売店、大塚家具を巡る父娘のお家騒動の実話に着想した120分。 20日まで雑遊。

コンシェルジェ方式を取り入れ高級路線で規模を拡大してきた日本一の家具販売会社。ここ数年低廉な家具で拡大する他社との競争に低迷している中、創業者社長は不祥事の責任を取る形で会長に退き長女を後継者としてきた。カジュアルな路線への変更を図り、透明性のために社外取締役を導入するなどの改革をおこなってきたが、売上の低迷は続いている。
一度は社外にでた長男が専務として戻り、会長となった父親は、ある日クーデターを仕掛けて、長女を社長から解任してしまう。

囲みの客席。 タイトルの骨肉(の争い)を象徴するかのように、中央のテーブルは白く周囲の椅子は赤くコントラスト鮮やか。取締役会の会議テーブルから二つの家のリビングテーブルまでテーブルと椅子の位置すらほとんど変えることなく人の入れ替えだけで実にスムーズ。時にそこに居ない人物やスポットを浴びせる人物を外周の隅に置くことで、カットを切り替えるかのような効果も(時折ファッションショーのようなポージングも楽しい)。

たたき上げで会社を大きくしてきた、泥臭くて勘に頼ったかのような社長と、理詰めで会社を護ろうとする長女の対決。終幕こそ勝敗明確にしないものの、全体の描き方の雰囲気は、社長側には人情派ではあっても経営という点では考えの浅そうな造型の人物を配し、長女側にはスマートで理知的に造型した人物を配することで、少しばかりのバイアスはあって、理詰めで押し切ろうとしても暖簾に腕押しだったり空回りだったり、あるいはいろいろな無茶振りということを含めて笑い処が多くつくられています。ヒトゴトのお家騒動は蜜の味とはいえ、深刻で後味の悪い「骨肉の争い」になりがちな題材をエンタテインメントにつくりあげ、会話劇にもかかわらずリラックスしながらも集中して観ていられるように仕上げているのは、このコミカルな味付けによるところが大きいと思うのです。もっとも、上演回によって客席の反応も随分ことなるようで、ワタシの観た回は笑いが多かったという話も耳にしますので、その客席の雰囲気というのも大きな要素なのかもしれませんが。

お家騒動的な要素はこれでもかと詰め込まれていて、たとえば長男の妻が在日ゆえに結婚に反対された会社を飛び出したのに男子の孫が生まれればそれで戻れるとか、三女の夫のちょっと弱い立場の立ち振る舞いなどの見応え。

実際の大塚家具では創業の地で再起動した父親の会社の方が成功している現在のようです。もっとも、それは負債や雇用といったしがらみを切り捨てて優良客を引っ張ってきたからだろうとも思うあたしです。今作はどちらかといえばジャンヌダルクに例えて描かれている長女の側にバイアスがある気がしますが、デフォルメしつつそれぞれの人物が見えてくる楽しさ。終幕近くに挟まれる、長女が社長を引き受けた頃の回想、今は骨肉の争いとなった関係でも、それがかつて幸せな時間を共有していたこともあった、というシーンを挟むことでもう戻れないほどに離れてしまった二人の距離が強調されるようで効果的。

高いヒールを履き、小さな身体にもかかわらず大声で声を張り続けて長女を演じた川田希は劇中でも喩えられるジャンヌダルクが時に重なり凛々しくカッコイイ。三女の夫を演じた小平伸一郎は入り婿的な立場の微妙な立場の立ち振る舞いの絶妙さと、それでも正しいことを表明するということの難しさとその格好良さをリアルに。 会長を演じた谷仲恵輔は人情派でかつ叩き上げの頑固な昭和の男をきっちりと造型。 昼行灯のような社外取締役を演じた霧島ロックのふらふらした感じがまた、じつにいい味わいにもなっています。

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2017.11.27

【芝居】「三人義理姉妹」年年有魚

2017.11.19 14:30 [CoRich]

年年有魚の10周年にして活動休止公演★。 19日まで駅前劇場。90分。

大きな家。長男は無職のまま妻は看護師として働いている。 次男は父の地盤を引き継ぎ立候補するが、その土地・モスクガワに自身は行ったことはない。家にはスピーチライターや秘書が出入りする。 長女は副校長だが、次男の娘を教えている教師が突然家を訪れる。
狭い家の中では浮気っぽいことも起こるし、スクープ写真をねらわれているものもいる。

長女、長男、次男と三兄弟の住む大きな一軒家にその恋人や配偶者たちが住む家。三人(義理)姉妹というタイトル通り、そこかしこにチェーホフ「三人姉妹」の要素を交えつつ、いまどきの日本らしい要素もふんだんに盛り込んで描きます。

活動休止前の最終公演とはいえ、淡々と紡がれる物語。特に役者たちへの感傷というわけでもなく、 次男の立候補、長女の部下との恋心、無職の長男の浮気など、どうしてここにいるのかというほどにバラバラの指向だけれど、大きな家だからここに三つの家族が同居しているということに何の疑問も感じず、出て行くという発想すら浮かばない感じはなるほど少しばかり浮き世から離れた感覚なのです。政治家としてのスキャンダルはあっても誰も経済的には困窮していなくて余裕のある生活の中でそれぞれの悩みは抱えているけれど、じっさいのところ、わりと淡々としているように感じられます。ワタシには勝手に劇団が終わるとしても淡々と過ごす彼らの姿に重なって見えたりするのは気のせいか。

長女を演じたトツカユミコは歳を重ねた恋心、バカップルともいえるけれどちょっと可愛らしくもあって。 長男の妻を演じた山本珠乃は自立した女らしく力強さを全面に造型。 長男を演じた根津茂尚のクズっぽさはむしろ異質な存在で印象的。 人ならぬ何者かを演じた辻川幸代のコミカルも楽しく。ちょっと謎めいた次男の娘を演じた西澤香夏は幼さをきっちりと演じきります。スピーチトレーナーを演じた廣川真菜美はやけに色っぽく、惑わせる存在の説得力。

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