2019.10.10

【芝居】「願いいろいろ(A)」桃唄309

2019.9.28 19:30 [CoRich]

カフェ形式で飲食も提供しつつの80分。RAFT。ワタシは(A)バージョンのみ。

女優二人、歌とダンスと三味線で「荻窪姉妹の『願歌』」
横浜港で大道芸をみていたら、棒を投げてと頼まれる。頼まれると断れない「佐藤達のかみしばい」
開業予定のグランピングのモニタ募集に来た女二人は会社を辞めたばかり。案内するのは突然頼まれたらしい外部のフリーランスweb制作者。設備どころかプレハブ小屋しかなく、テントは外国語マニュアルでわからず、携帯は入らず大雨も降り道が崩れ「ざ・きゃんぷ41」

「荻窪姉妹」は女優・西山水木の歌とダンス、山口智恵の三味線からなる民謡風デュオ。洋楽カバーや琉球風の音階にチューニングしたり、ジェストダンスを交えたり。公演タイトルの「願い」がさまざまに歌われて濃密な一本。

「~かみしばい」は新作。頼まれると断れないという性格、棒を投げるだけなのに真っ直ぐ投げる練習をしておけば良かったと頭の中がぐるぐる。しかしそれが奇跡的にうまくいったりする、ほんの短い時間の頭の中の時間の流れを引き延ばす、まるで巨人の星の投球シーンのよう。成功の瞬間思わず拍手してしまうワタシw。

「きゃんぷ」は女三人、お洒落なグランピング施設の建設前の見学、みながいろいろ酷い目にあうけれど、それをたった二畳の場所で。連絡取れず、助けも来ず、食糧が尽き掛けて。結局は助かるのだけれど、カフェやりたいとか、そのwebページ作りたいとか、やりたいことで自然と親友となるように盛り上がりる、ちょっとだけ前向きな話。

なかなか3パターン全部というわけにも行かない私の昨今、しかしビール片手にしかしどこかのんびりした気持ちで眺める芝居の楽しさはまた格別でもあって、また折りを見て通うのです。

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【芝居】「ミクスチュア」贅沢貧乏

2019.9.27 19:30 [CoRich]

100分。芸劇での「芸劇eyes & eyes plus 2019」の一本。

性欲がわかない男、男が怖いけれど心を許して抱きしめたい女、男女二人で暮らしている。清掃員の仕事で入っている地域センターでは週一度のヨガのレッスンに近くの大学院生やフリーター、主婦が通っている。インストラクターは居らず、声と音楽に合わせてそれぞれにしている。廻りは住宅地だが野生の動物が出没している。

行政サービスとしてのヨガを堂々と享受している台が院生や主婦といった人々、それを支えているのは生活するために働く清掃員。同居する二人は異性だがいわゆるカラダの関係は無くてそれはいいバランスなのに、突然尋ねてきた姉はいわゆる男女の関係だと誤解する息苦しさがあったりと、「生活」を細やかに描きます。対して、ヨガに通う人々の生活の場面はほぼ描かれず、暇つぶしや友達との会話のための日々。格差ともいえますが、サービスの現場と享受する人を少しばかりの悪意と優しさを持って描く舞台。

作家が用意したもう一つの仕掛けは地域センターに紛れ込む野生の生物。一般人が追い詰められるぐらいの猿な感じ。遠くにあれば可愛いし市街地に出たと聞いても他人事だけれど、目の前に現れると何か危害を加えるというわけではないのに、囲んだり果ては殺してしまう、殺してしまったのにその後始末は「清掃」の仕事だとしてしまうこと。自然や野生との境界線に暮らしているのに、そういう身勝手な人々に距離を置いたような作家の視線。その身勝手な人々に割かれるセリフの上での時間は結構長いのだけれど。清掃員の二人とヨガの人々という、表面化しないある種の対立構造を野生生物を登場させることによって、より強化してみせるのです。

正直に云えば、芸劇eyesやTPAMなどの、行政から資金をふんだんに入れた「意識高そうなアート」な演目は歳をとったからかちょい苦手なワタシです。今作は、身の回り5mでもなく、かといってあまりに俯瞰した括弧に括られたアートでもなく、地に足を付けた作家の視線は確かなのです。

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2019.10.09

【芝居】「病室」普通

2019.9.27 14:00 [CoRich]

全編茨木弁によるセリフで125分。空洞。

父親が倒れたと聞き実家に戻る娘。四人の相部屋病室には同年代の男たちが入院している。父親は歩行と発声の麻痺、他には車椅子だったり、ガンだったり、わりと若い男だったり。それぞれに家族が来たりしている。

作家の故郷、茨城の言葉で全編が演じられます。となれば思い出すのは「にんじんボーン」 (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7) で、コミカルでときにバイオレンスな理不尽さが独特の雰囲気を持っていました。今作はもっと体温の低い会話劇で、入院し「弱った」男たちの風景は年齢ゆえの繰り言や物分りの悪さや弱気があってずいぶん雰囲気が異なります。が、回想シーンでは妻や子どもたちを振り回し、怒りをぶつける理不尽な元気だった頃の男たち。なるほど10年前に観ていた理不尽なバイオレンスの感覚。もう少しリアルに描くとこうなるのか、とも思うのです。俗に「怒りっぽい、理屈っぽい、骨っぽい」の「水戸っぽ」といわれる気質(今調べました)、本当にそうなのかはよく知らないけれど。

今作では2つの時間を対比して描くことで、若い頃の理不尽さと歳を取ってからいいところが出てきたり、弱って愚痴っぽかったり、そうなって周りの家族が変化したり変化しなかったりというコントラストが鮮やかに現れるのがいいところで独自の雰囲気を醸し出します。

若いと思っていた役者が、もちろん実年齢とは随分違うけれどきちんと老人をリアルに演じていることに改めて驚くワタシです。 病室の主のような、癌を患っている男を演じた用松亮は、諦観した柔らかさで自分よりはましだと他を気遣うけれど、相手がどう思おうが自分の言いたいことを言ってしまう老人特有のリアルさ。看護士が妻に見える瞬間(舞台奥からの照明でパジャマ姿が透けてやけに女を感じさせる、を作演自身が背負う覚悟)の生きるという気持ちはやけにシンクロしてしまうオヤジなワタシなのです。 今は怒らないことにしているという男を演じた渡辺裕也は畑仕事はまだできるから面倒を見るよ、という優しさだけれど回想シーンの理不尽さはまさに物語の軸に。妻と娘が見舞う言葉と足の麻痺を患った男を演じた澤唯、セリフのテンポが持ち味の役者だけれど、それを封印されたような感じだけれど、きちんと人間が立ち上がる様をあらためて。この中では若い病人を演じた折原アキラはまた、まだ若いゆえに、離婚を考えるむすめにまだアテにされてもという頑張る気持ちの細やかさ。

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2019.10.04

【芝居】「ジョン・シルバー」唐ゼミ

2019.9.23 14:00 [CoRich]

唐組の名作・三部作(未見)を、その意思を受け継ぐ唐ゼミで連続上演という企画。私は一本めのみ。横浜・みなとみらい地区の日本丸メモリアルパーク内の特設テント。

海賊だったジョンシルバーと暮らしていた女は彼の義足を携えて彼の帰りを待っている。双子の女、床屋、紳士、小男たちに出会い、波の音の中で彼の事を思い出す。やがて、三人の軍人がシルバーを名乗って現れるが、それはシルバーではない。

居ない人物への想いは日が経ちさまざまな人に出会う中でより強い物になっていくけれど、同時に遠い日の出来事は夢のなかの出来事のようでもあって、本当の出来事だったのか妄想だったのかがないまぜに語られていきます。いわゆるアングラ芝居なのですが、ワタシは世代はそれより随分後、たまたま触れているのも、つかこうへいぐらいなので、唐十郎の世界にきちんと触れるのは初めての体験。過去に観た芝居を思い出し、ああなるほどあれはこういう系譜の上にあるのだなということが改めて思い出されるのです。

どこか露悪的だったり、人懐っこかったり、あるいは何かを欠損していたりという登場人物の造型はまさに昭和のもので、今っぽいアップデートをしているわけではないけれど、直情的なパワフルな感じと、あるいは記憶の中の大事なものを繰り返し愛でるような内向きな感じが同居する世界の描き方は、なるほど人々を引きつけ、そして今でもそれが受け入れられているのだ、ということが納得できるパワフルさなのです。

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2019.10.02

【芝居】「悪魔を汚せ」鵺的

2019.9.15 19:00 [CoRich]

2016年初演作、ほとんどのキャストはそのままに再演。115分。サンモールスタジオ。

子供三人がこういう造型でこの役者によって演じることができるのは最後だろうという作家の意図で、短い間隔での再演なのだそう。 なるほど、ぎゅっとした空間で時に怒鳴り合い、妙に諦観が混じり合う物語の嫌な雰囲気はそのままにで、初演の駅前劇場に比べて間口が狭く感じるサンモールスタジオのある種の穴蔵感は、この物語の嫌な空気を何倍も濃密に感じさせる装置になっているのです。

この家の家長のような長女はずっとこの家を守り続けるという責任感ゆえか血縁、子孫について常軌を逸した拘泥。ずっと観ているうちになぜかネトウヨが思い浮かぶワタシです。その婿養子は何もしないという定款、次女はずっと苛ついて金切り声を上げ続けるストレスフルな造型、その婿養子はあくまで丁寧にあろうとする序盤から途中でキレて粗暴になるダイナミックレンジの広さ。長男はこの異常な家系を絶やさなければならないという気持ち、妻もまた遠縁でつながる血縁を知る絶望、その「嫁」はあくまで普通の人である、家族の中では観客から地続きの唯一の存在。唯一の外部の人間である会社の総務部長は仕事をきっちりこなすけれど、人として守るべきものがある、一縷の望み。

全員が苛つき怒鳴りあい、あるいは怯えている家族の中で育った子供たちは、それに反発し、あるいは諦め、あるいはそのまま受容してサイコパスに濃縮してしまったように育っているのです。家族達の酷さの中で育った子供たちはそれぞれに心をすり減らして、結果正義に思える行動すら、悲劇、さらには憎悪の連鎖を生むのです。子供たちを演じた祁答院雄貴、福永マリカ、秋月三佳は初演と引き続き、観ていて心配になるほどに(芝居としてはちゃんとケアされていると信じてるけれど)

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2019.10.01

【芝居】「あつい胸さわぎ」iaku

2019.9.14 19:00 [CoRich]

iakuの新作。110分、9月23日までアゴラ。そのあと大阪。

芸大に進んだ娘と母親の二人暮らし。高校は別だった幼なじみの男と同じ大学に通い始め、顔を合わせることも多くなる。母親が勤める縫製工場の若い女は母娘と親しくしていて、姉代わりに相談に乗ったり、小説など娘が芸大に進む影響も与えている。
縫製工場に関東から係長として男が赴任してくる。独り身の男に、社長は取引先からのサーカスのチケットを渡して一緒に行くように薦め、母娘、同僚の女、係長、そして幼なじみの男も一緒に行くことになる。

高さの違う段をいくつか組み合わせた舞台、細い柱で上方に絡んだような赤い糸が人のつながりのようでもあり、血管のようで、生々しい生を表しているようでもあります。

恋心を抱いていた幼なじみの男に中学生の頃に胸をからかわれ、大学に通い始めた歳まで恋人がいたことがなく、しかし大学の課題で小説を書くことになって恋愛経験がないことを改めて悩むようになった娘。再会した幼なじみの男に恋心を抱いているけれど、その男は母親の同僚である年上の妙齢の女に向いていて、一夜をともにして。一方で母親も赴任してきた上司に淡く恋心を抱きと、たった5人しか居ないのに、ひとびとの関係は濃密につながりあうのです。

前半の会話は 母娘のある種の家族ゆえのうっとうしさも、あるいは姉代わりの若い女を含めた三人の信頼も感じさせる軽口が混じり合い軽快に進みます。職場で新たに迎えた上司に対する警戒感からなじむ感じもとてもいいのです。 後半に進むにつれ、母娘の恋心は儚く叶わないうえに、娘に早期の乳がんが見つかる不幸が襲い、内容は重苦しく。しかし、支える関係であったり、娘も「文章を書く」ことでしっかりと自立していこうという成長を感じさせるのです。手術などどうしていくかという結論が明確に語られるわけではない結末だけれど、この母娘は大丈夫、と思わせる力強さがとても頼もしい。

一部では婦人科系の、と呼ばれる作家ですが、今作もその例に漏れず、三人の女性がとても細やかに描かれ、スパイラルを描くように変化し成長していく物語はミニマムなのに幾重にも重なる物語をつくりだしているのです。 娘を演じた辻凪子は幼さすら感じさせる序盤から、苦難を経てきちんと成長する人物をきっちり。妙齢の女性を演じた橋爪未萠里は若い男を惑わす色気を纏い、なかなかにヒールな役回りだけれど筋はきちんと通すさっぱりとした造形もとてもよく。幼馴染を演じた田中亨は若いゆえに欲しく、しかも手に入るだけの美形という説得力。上司を演じた瓜生和成は心機一転ゆえに更に敬意を持って人に接する人の良さと、それなのに好意に気づかないラフな感じが同居する奥行き。今作でとりわけ目をひくのは母親を演じた枝元萌で、少々雑なおばちゃんから恋する女の臆病さまで広いダイナミックレンジを繊細に。

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2019.09.27

【芝居】「シュカシュカ」あひるなんちゃら

2019.9.14 15:00 [CoRich]

90分。駅前劇場。16日まで。いつものように音声データ販売(500円)が嬉しい帰り道。

会社の同僚と「おばさんバンド」を組んでいる女、会社をやめるがバンドは続けるといっていたのに、練習に来なくなってしまう。バンドのメンバーはちょっと心配してるような、そうでもないような。

会社の若者のとんちんかんさとか、バンドメンバーの空回りする熱さとか、泥水の話しばかりするアルバイトとか、返事だけは立派なコンビニバイトなど、いわゆる困った人々に少々悩まされながら、声を荒げるでもなく、時に受け流し時に是正を試みたりというバンドメンバー、ライブハウス、コンビニそれぞれの場所の「大人の人々」。そうなれたのは自称おばさん・おじさんになったからなのか、と思ったり。

バンドをしていても「熱い気持ち」とかそういう要らないからとはっきり言えるようになったのも年齢を重ねたからラクになったこと。バンドのメンバーの連絡が取れなくなってもいつか戻ってくるだろうと構えていられるというのもそう。人生ある程度先が見えて、バンドをもっとやろうと思って会社を辞めたのに、ちょっと夏休みにな気持ちでなんとなくバンドに行けないとか。熱い青春ではなく、もうちょっと熟した朱夏という年代、戻ってくるときにコンビニ袋をシュカシュカ音させて、というエンディング、できすぎで登場人物が「そういう熱さ要らないから」というのも、洒落ています。 おばさんバンドの三人を演じた、篠本美帆、石澤美和、松木美路子のほどよい脱力感はさすがにあひる常連のバランス。泥水の話しをしつづける女を演じた田代尚子が、ほんとうに苛つくある種のリアリティ。

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【芝居】「アリはフリスクを食べない」青年団リンク やしゃご

2019.9.8 18:00 [CoRich]

2014年上演の伊藤毅による初戯曲を5年振り再演。120分。10日までアゴラ劇場。

いわゆる知恵遅れの兄と同居し法律家の道を諦めた弟。婚約者の両親が反対し選ぶ道が兄の施設への同居。幼なじみの女や家族のように親しい職場の同僚たちなどを交えて。

それぞれの正義、悪意で行動している人は誰もいないし互いに敬意を持って接する優しい世界。婚約者の両親が反対するという物語の(外側の)要ですら、娘を想う両親の気持ちを考えれば悪意とは云えないのに、みんながままならない物語を丁寧に描きます。いわゆる知恵遅れの人物を健常者が演じることの難しさはあるのですが、繊細に描く今作は絶妙のバランスを保っているのです。

多くの役者は初演から変わっていますが、初演に続き近所の女を演じた舘そらみは気さくな幼なじみだけれど、時々見せる実に色っぽい表情があって魅力的。社長を演じた工藤さやは酔っ払いなど雑に見えてところどころの細やかな気配りが奥行きのある人物をつくりだします。

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2019.09.24

【芝居】「おへその不在」マチルダアパルトマン

2019.9.8 15:00 [CoRich]

元・ぬいぐるみハンターの池亀三太が立ち上げた劇団の二回目公演。16日までOFFOFFシアター。95分。

一緒に暮らす三人姉妹。葬儀屋で働き不穏な死が多発していることを知る少女、夫を亡くしたことになっているが、実は夫は公園のゴミ箱に隠れ住んでいる。おはぎ屋で働く次女は味を追求したいが師匠に目立たず美味しすぎないおはぎが大切なのだという。師匠は妻を亡くして娘と二人暮らし。おはぎ屋の娘と同級生の三女は合唱コンクールに執念を持つせんべい屋の息子に好意を持たれている。

おへそがなくなった、みたいなエピソードはありますがじっさいのところ実際のところ物語にはあまり関係はありません。表面上は平和に暮らす小さな町だし、物語の語り口も基本的には軽くてコミカル、どちらかというとポップで、大金持ちの煎餅屋の息子と三人姉妹の三女、おはぎ屋の娘をめぐって、不器用な中学生の片想いなどが描かれます。それなのに、夫は隠れ住んでいたり、不穏な死が多発していたり、裏社会とつながっている老舗など不穏な断片が徐々に姿を表すのです。

核となるのは前述の恋物語と相似になるように描かれる大金持ちの煎餅屋と、妻を亡くしたおはぎ屋の店主と娘の隠れた確執。悪代官と復讐に燃える隠密のような大きな物語になっていくのです。これだけの物語をもってきても、全体の体温が低いというか不思議な味わいで描くのです。

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2019.09.19

【芝居】「さなぎの教室」オフィスコットーネ

2019.9.7 14:00 [CoRich]

実際に起きた4人の女性看護師による保険金連続殺人事件をモチーフにした大竹野正典作「夜、ナク、鳥」(未見)と同様のモチーフで宮崎を舞台に描く120分。9日まで駅前劇場。

看護学校で同期だった四人の女。浮気していた夫の殺人や、夫の浮気を指摘されもみ消す依頼などを通じて再会している。首謀者となる一人がさまざまに命じ、違和感を感じながらも、支配されている。

元々は久留米で起きた事件をもとに、作家の郷里・宮崎に舞台と言葉を移して描きます。殺された夫、あるいは病死した夫、あるいは支配的な首謀者の夫に加え四人の学生時代の喫茶店のマスターを加えた8人を濃密に描きます。小説「黒い看護婦」もあるいは同じモチーフの「夜、ナク、鳥」も未見なので、それらとの違いはわからないけれど、事件そのものの概要(噂のようなものも含めて)はネットで見聞きするものにほぼ忠実なようです。

今作、公演数週間前に役者の降板があり、急遽出演となった作演・松本哲也が首謀者となる一人の女を女装で演じています。登場時の違和感はすっと薄れ、ずっと恐怖によって人々をコントロールし続ける絶対的なヒールの存在として描きます。ときおり軽口を叩いたとしても、何か舞台全体を覆う圧力のようなものが行き渡る息苦しさ。

今作では看護学校時代の四人の姿も挟まります。忙しくはあっても、希望に満ちあふれた若く眩しいころ、この瞬間の空気は緩むのだけど、それでも首謀である一人の存在は高圧的。年齢や経験を重ねた故の変貌ではなく、根っからの怪物という救いようのない描き方は、現実の物語をモチーフとするものでは珍しく感じます。一人と同性愛の関係にあるというのも、ネットの噂話ではみられますが、センセーショナルなわりに物語への関与は薄く感じます。

久々の佐藤みゆきが演じる殺人を依頼する女、おどおどした中で濃縮される耐えられ無さが切ない。吉本菜穂子が演じる独身の女、人生をどこか諦めたゆえの思い切りの良さという造型の奥深さ。夫が病死した女を演じた今藤洋子はでちあげられた夫の浮気をまだ反芻し続けるふわふわした感じがちょっと珍しい。

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