2018.05.22

【芝居】「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」オフィス上の空プロデュース

2018.5.12 13:00 [CoRich]

13日までエコー劇場。

東京オリンピック直前にある劇団が多発テロを起こした。それから数年、初公判のころ首謀者の一人とされた女優の家族をライターが訪れる。劇団内を扇動したのだという論調一辺倒になっていることに違和感を抱き、取材を始める。
学生劇団の数人で旗揚げをした劇団、作演の力が強く根強いファンがいるものの動員は伸び悩み、公演のたびの赤字を劇団員のアルバイトで補填しているが、自分たちはおもしろいものを作っていると信じており、自分たちの作品に観客たちがついてきていないのだと考えている。
もっと作品を研ぎ澄ますために、一ヶ月にわたり人里離れた別荘で合宿稽古をすることを決める。

小劇場の劇団がなぜテロを決行するに至ったか、その醸成される過程を背景に。「女優の〜」はその中でも地味で口数も少ない女を指していて、彼女の視点でその家族やアルバイト先でのそれぞれの立場を交えてフリーライターの聞き取りという形で描きます。

売れてないが故にアルバイト先では応援はされても、女を切り売りすることを求められたり、あるいは純粋な応援とはいえストーカーもどきがついてまわったり。家族もまた、内定を蹴ってまでアルバイトで芝居を続けていることへの風当たり。全面的に支える恋人は自分から切り離してしまうこと。 いくつかあったはずの帰る場所、それぞれの居心地が悪くなっていくことでその範囲がどんどん狭まっていって、それが合宿稽古という閉鎖された空間で集団が暴走していくこと、程度の差こそあれそこかしこにありそうな、団体のありかたの一つ。

売れない小劇場劇団がそれでも続けていくモチベーションは自分たちはいいものを作っているというある種の盲信。作り出すために信じることは必要なことだけれど、度を超したときに起こる悲劇。近くはオウム真理教から少し昔のあさま山荘まで、暴走した集団の中で起きていること、その中で地味だったはずの女がなぜそこから抜け出せなかったかということ強烈に印象づけられるのは、これが過去の話でも単なるフィクションでもなく、現在進行形でも上からの指示で何でもやってしまう、ということがほんとうに頻発している私たちから地続きに感じられるからなんじゃないかと思うのです。

正直にいえば、物語に対して少々登場人物が多いような気がしないでもありませんが、まあそう大きな問題ではありません。

「女優の卵」を演じた福永マリカ、ちょっとおどおどした口数の少ない女性の役はちょっとめずらしい気がします。その居場所を失いたくないからほとんどニコニコしているという造型、美しいけれど哀しい。看板女優を演じた佑木つぐみの造型がちょっと凄くて、盲信と何かを手に入れたいという強烈な気持ちのちょっと怖い感じすら。

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【芝居】「いたこといたろう」渡辺源四郎商店

2018.5.4 19:00 [CoRich]

「イタコ演劇祭」と銘打っての二本立て企画公演のもう一本。6日までアゴラ劇場。そのあと青森。90分。

東北にある地方都市の自宅でイタコを営む女。そこへ小学校で働いているという若い女が訪れる。去年亡くなった母親がここを訪ねるようにいったのだという。

すこし乱雑な感じすらする部屋に大きな祭壇。誰かの実家を訪ねるような日常の中。初めて会う二人は探り探り話をするうちに、それぞれの生き様が徐々に明らかになり、そこに物語が浮かび上がるのです。

ネタバレ

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2018.05.15

【芝居】「たとえば私の人生に目口もないようなもの、あれこそ嘘の精なれ」平成商品

2018.5.3 19:00 [CoRich]

ワタシは初見の劇団です。7日まで要町アトリエ第七秘密基地。125分。 北海道から引っ越してきて保育士として働く女。学芸会で先生たちの出し物として桃太郎をすることになり、その書き換えをすることになる。好意を寄せている保育士が居ることがバレてしまいそうになり後悔するときにささやきかけてくる声は、「どこまで巻き戻したい?」だった。

序盤はそれぞれの役名にあわせた保育園の職員たちのシャツの色という工夫でわかりやすく。しばらくは引っ越してここに来た女が観察者という立場でこの場所がどういうパワーバランスで成立しているかを描きます。 ふわっとしていそうな職場、ほかの土地からやってきた若い女の視点で描かれるのは、ほのかな好意から不倫関係と修羅場、果ては暴力を伴ったストーカー行為いたる男女のありかたのグラデーション。 職員たちの出し物として上演される桃太郎の登場人物に重ねつつ、桃太郎の稽古が繰り返されすこしずつ変化しながら、現実とその女からのファンタジーめいた見え方の世界を自在に行き来するのです。

さらに、その女が家を出るきっかけとなった、叔父の人生を自分がいることで狂わせてしまったという贖罪の気持ちであったり、戦争に突き進むかもしれない現実と保育・教育という仕事がそれと地続きになっていることを軍服姿の人々で描いたりと、保育園の桃太郎の出し物をするという会話の中に少々唐突に、こまかな断片が入り込むのです。終盤語られる未来は戦争や地震災害という少々絶望的な言葉、そこに向かって暮らしている彼らの日常がそこへの地続きということの絶望。

客席端にいる謎めいた男、クレジットは「いつの間にか主であるように振る舞う」は結局説明されないけれど、彼女の心のなかにずっと居座り続ける、叔父か、と感じるワタシです。

正直にいえば、インスタレーションのように要素を多く詰め込みすぎている感じはあって少々飲み込むのに戸惑います。作家の中ではすべての要素がつながって世界として見えているからこそこの一本にまとめてあげているのだろうけれど、恋愛感情とMetoo、親戚の男の人生への想い、軍服姿などが少々バラバラに点描する感じがします。それが一人の若い女性から見えている世界なのだといえばそうかもしれないけれど、何かもう一つ全体を貫くものがあるとより強固にこの世界が補強されるように思うのです。

5年振りに拝見した野口雄介(1)の切れ味が変わらないことが嬉しく。中心となる女を演じた中井あすみはちょいとストレスフルな役だけれどきっちり物語を背負い見応え。ちゃらい男を演じた大島宏太は人懐っこそうにみえてヒール、桃太郎パートの鬼のコミカルさもちょっとよいのです。

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2018.05.11

【芝居】「731」パラドックス定数

2018.4.30 15:00 [CoRich]

2日まで、シアター風姿花伝。再演ですがワタシは初見。120分。

戦後数年、謎めいた手紙が送られ送り元と書かれた元陸軍医学校跡に集まった人々。大陸で秘密裏の研究を行っていた研究者たちが行っていた残虐な研究が発覚するのを恐れ口をつぐんでいた。医者や研究者それぞれの新しい道を歩み始めていた。 世間では閉店直後の銀行で役人を装い流行病患者が来たとして予防薬を飲ませ行員たちを毒殺した事件が世間を騒がせている。

劇場近く椎名町で起きた帝銀での毒殺事件。戦後間もない時期の謎だらけの迷宮入り事件を起点にしてタイトルの秘密研究の研究者たちが関わっていたかもしれない、という史実の隙間を想像力で埋めるパラ定らしい一本。二液での毒殺など専門的な知識を持ったと思われる手口に731と帝銀事件をつなぎ合わせるのは必ずしも独自の視点というわけではない(参考文献としてクレジットされています)けれど、陸軍医学校跡地の廃屋という誰もいないはずの場所を設定することで、作家らしい自由な空想の会話がみっしりと濃密に。

今となっては非道な研究に関わった人々。その場ではみながそれが正義と考え、あるいは考えないようにしていたけれど、戦後になってそれを深い後悔で良心の呵責に苛まれるもの、あるいはそうなってもなお、あの研究は間違いなく人類を進歩させるために必要な医学の一歩で正しかったと考えるもの。戦時中だから突き進めたということはあるにせよ、研究と倫理の間の考え方がグラデーションのようにさまざまに描かれます。あの時に幹部は早々に逃げ出して、後に残された兵卒たちという対比も見事。

口外厳禁とされそれぞれがそれぞれの道を歩んでいるけれど、高度な毒殺事件とそのころ送られたなぞめいた封筒をきっかけに互いの裏切りを防ぐよう監視のために定期的に集まる人々は、時に互いを揶揄したり生きるために必死だったりの小さな会話を繰り返し。 大陸のあの場所で起きていたこと、それをどう考えていたかということ、 それが非道だとしても、真理を探究するということに対して絶対的な価値を置くことの、ある種のストイックな研究者の真摯な姿勢。とはいえ、それはコントロールを失った研究者の姿でもあって、その人々と倫理的に相容れないと感じて距離を置いてみたりしつつ、食い扶持のためにそれが変わっていく、という後の時代の血液製剤にまつわる薬害被害の広がりの端緒を見るようなシーンもあって、戦後何十年もの間の日本の医療の在り方のある種の暗部を凝縮して地層のように切り口で俯瞰してみせるような鮮やかさが実に見事なのです。

作家の発想はさらにもう一歩、731の研究を進めた結果の二液型の毒薬を更に実験しよう、という力が働いて、平和なはずのこの時代に人体実験を行ったのでは、と踏み込むのです。

もっともリーダ格を演じた関村俊介は観たことのない雰囲気を纏います。表面的な軽口とは裏腹に、優秀な洞察力と冷徹さという厚み。序盤罪の意識に苛まれる男を演じた西原誠吾の這いつくばる感じから終盤に向けて自身を取り戻しさらに行きすぎるダイナミックレンジの広さ。

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2018.05.09

【芝居】「溶けない世界と」mizhen

2018.4.28 19:30 [CoRich]

29日まで、d-倉庫。115分。

知り合いの小さなホテルに籠もり初めて書いた一人芝居を書いた女。俳優志望の知り合いの男に試演させ、その上演を俳優の叔父、その知り合いの小説作家の女に見せる。戯曲を書いた女には聴覚障害があり、ペンションホテルのシェフと不倫の関係にある。ここには長生きしている蜘蛛がいる。
芝居は途中で止められてしまうが、小説家はそれを絶賛すると同時に若い俳優の卵を誘惑する。小説家と俳優は関係があるが互いに恋人も居て距離感を楽しんでいる。

聾者を題材にした芝居で、客席後方にはタブレットを備えた席がいくつかあって、手元に字幕がでる仕掛けも。ワタシは前方席で。

チェーホフの「かもめ」から着想し、男女を入れ替えて紡がれた物語だといいますが、恥ずかしながらその「かもめ」未見なワタシです。物語を作る人、演じる野心家、都会の洗練された人、地元の気のいい人。そのコントラストで人々を群として描く物語に、ふたりの聾者というもうひとつの軸を交えて、分かり合えない溝を描いてるのだと読んでみたけれどどうだろう。

聾者ふたりの間の不倫関係、子供をほしいこと、都会からの二人の愛情とは違う距離感の男女の仲とか、さまざまな距離感である種のインモラルを交えて男女のありかたを提示してみせるのは、まるでたくさんの線を重ねたデッサンのよう。明確にこれを描くということはいわないけれど、浮かび上がってくるものが、どれかはヒットしそうに思うのです。蜘蛛は女の側からの何かの欲望といったものを象徴的に。

若い作家を演じた小角まやは圧倒的にすっくと自立する格好良さ。気のいいおばちゃんキャラはちょいと珍しい気もする百花亜希の伸び伸びとした役の嬉しさ。役者をしている叔父を演じた安東信助は重厚さと軽薄さを併せて描いて失礼ながら存外に良くて、実は一番の収穫だったりします。

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2018.05.07

【芝居】「わたくしごと2本立て[はくちょうたちの、/ closets]」waqu:iraz(ワクイラズ)

2018.4.26 19:30 [CoRich]

昨年、せんがわ劇場演劇コンクールで上演された「closets」(未見)のリクリエーションに、その1シーンを独立させた新作「はくちょうたちの、」を組み合わせた二本立て上演。 30日まで神奈川県立青少年センター。110分。

坂の上の女子校、五人の二年生たち。三階建て、螺旋階段からは男子校が見える。美術教師に恋している、幼なじみに恋している、クッキング部、男子校に恋人が居るバトン部、授業には時給払ってほしい。大学に行くかどこにいくか、働くか、女子校は嫌だし。「はくちょうたちの、」
6人の女たち。何でも揃うイオンが好き、言い寄ってきた男は結婚しているけれどそれで幸せで。兄に負けたくなくて勉強してばりばり働いて結婚したけど仕事と子供どちらかしか選べないの。努力によって手にするキャリアという結果が全て、7cmヒールで颯爽と。ジャージがラクだけどそれじゃもてない友達が合コンに誘ってくれて結婚したらそこがゴールか。美大卒で独立独歩、でも皆から置いていかれているように感じて焦る。男受けよく自分を磨いて選び、勝ち取る。「closets」

いろいろ検索してわかったけれど、アンソロジー形式とはいえ、一本の芝居から派生したとは思えない二本立て。確かにいろんな女たちの点描。ダンスに強みを持つ主宰・小林真梨恵だけれど、今作では彼女だけではなく出演者によるディバイジング(集団創作)によってつくられているといいます。

「はくちょうたちの、」は、女子校の生徒たち、自意識と恋心と、将来に対する不安ととはいえ、まだ何ものでもないから何にでもなれるようなある種の万能感と世間をちょいと嘗めた感じとかがない交ぜになって。全体に白と青、グレーで統一された全体の雰囲気はまあ、年代らしい清廉な雰囲気といえばそうだけど、目がつぶれるんじゃないかと思うほどにアタシにはあまりに眩しい。ちょいと人見知りっぽい雰囲気の中野志保実、イケイケキラキラな雰囲気の佐藤あかりのコントラストがちょいとよいのです。

だいぶ大人、アラサー女たちの「Closets」は対照的に溢れる色。こちらは生着替え的なものもあったりして、眼福でもあるし、ジャージから7cmヒール、ジーンズカジュアルからゆるふわまで様々な衣装も楽しく。

ここまで生きてきた自負心だったり、ある種の諦めだったり、引き返せなくなってる微妙な心持ち。かといって枯れる歳でもなく、まだまだ先はあって、その選択肢は高校生の時のそれよりはずいぶんと狭く、しかし現実的に明確に輪郭が見えているけれど、それでいいのか、ほんとうに手に入るのかという不安はつきない感じもまた、年齢らしい感じがします。

後半のそれぞれのマッチメイク、まるでボクシングのように戦い合うし、勝ち負け決めてるけれどそれは決して一つの生き方じゃなくて、ぐるりと一回り、どの生き方だってちゃんと肯定し、しかしその道のりの厳しさもちゃんと折り込む作家の優しい視線なのです。仕事と子供を選べない女を演じた菊池ゆみこのこつこつ努力な感じ、バリキャリ女を演じた武井希未の胸張って歩く凜々しさ、ゆるふわ女を演じた竹内真里の芯の強さ、イオン好き女を演じた宮﨑優里の堅実な生活感。美大卒を演じた小林真梨恵のボーイッシュで孤独に耐える格好良さだけれど、ちょっと騒ぐようなシーンで彼女に対して女たちが突っ込むようなところも楽しく。とりわけ、ジャージ女を演じた関森絵美が結婚したい一心での一連のシーケンスの爆笑編はちょいと凄く、印象的。

ワクイラズは、星とか宇宙とかというちょっと壮大な感じを詩的に描くシリーズ( 1, 2, 3) と、女たちを描くシリーズ( 1) とがあって、今作は後者の雰囲気。このユニットに限らずまあワタシは女たちの自分語りが大好きだってのはまあ好みの問題なのですが。

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2018.05.05

【芝居】「ツアー」ままごと

2018.4.25 21:00 [CoRich]

30日までSTスポット。50分。

女はガレージからナビを使って車を走らせる。サービスエリアで出会ったのは外国人の女で、近くの湖で開かれる音楽フェスに出演するが置き去りにされたという女。送り届けることを決めるが道を間違えたのか、森に迷い込んでしまう。

たった三人で語られる「ツアー」の物語。女が子供を亡くしたことは後半で語られて、そのもやもやした気持ちを抱えたまま車であてどなく走り、出会った人とまた旅を続けるということが物語の根幹。 なぞの巨大生物に追いかけられたり、空腹がどうしようもなく命の危険が思い浮かんだりというのも含めてのごく短い旅。 序盤はその相手はAI的な会話をするナビであり、中盤からは出会った外国人であり、終盤ではキャンプしながらの旅人であり。

舞台装置はなくて、キャリーカートを自在に使い車にしてみたりという芝居の見立てのシンプルな楽しさ。AIナビが持つさまざまな機能を時計とか双眼鏡とか地図とかバックミラーといった物体で見せるのもちょいと楽しい。どこにでも持って行ける50分というのは実にいいフォーマットなのです。

外国人のとのぎこちない会話、単語だけをつなげて、という基本フォーマットだけれど母国語で独り言をつぶやくときは早口で流ちょうにするということで、その違いをちゃんと見せるのは巧い。

女が旅を通じて何かをふっきり、次の一歩を踏み出すという気持ちに至ったことが軽快に描かれる一本、さまざまに上演が繰り返される予感なのです。

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【芝居】「ネジ工場」タカハ劇団

2018.4.15 17:00 [CoRich]

2012年初演作を再演。

実は初演と変わらない感想なのです。それは三兄弟となぞめいた宅配便の男が初演と同じキャストということが大きな理由な気がします。初演時の自分の感想の熱量がすごくて、付け足すことがなくて、あれ、自分はどうしちゃったんだと戸惑ったりするのです。

突然死が増えているのに、高度で使い道のわからないネジの注文は増え続けているという怖さ。それは戦争かもしれないし、何かの事故の対処かもしれないと思わせます。工場の中は下町ののんびりした雰囲気だけれど、宅配便の男のホラーっぽさ、妹を名乗る女とその恋人のヤンキー感。だけれど、家という場所でまっとうに働き、日々を暮らすということが決して当たり前ではないかもしれない、という感覚は初演よりも強くなったのはあたしが歳を取ったからか。

ちょっと気持ちを病む長男、なんとかしようと頑張る次男、楽しく暮らすことこそ一番と考える三男が物語の核で三兄弟を演じた有川マコト、夏目慎也、山口森広のそれぞれのキャラクタをしっかり鮮明に。板倉チヒロもまた、初演と同じキャスト。脱力系に見えてなんでもやる、ちょっと闇な雰囲気を纏うのも物語のスパイスなのです。あかりを演じた下垣真香は新しいキャスト、鼻持ちならなさだけれど見惚れてしまう美しさという説得力。

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2018.05.04

【芝居】「Farewell(フェアウェル)」松本紀保P

2018.4.14 14:00 [CoRich]

松本紀保のユニット、ワタシは初見です。4月15日までサンモールスタジオ。110分。

40歳になって結婚したのにほどなくして離婚し地元に戻った女。中学の頃の同級生の男が営む喫茶店とその妻が営むスナックでアルバイトをするが、言い寄る喫茶店主にはなびかないし、堕ちた暮らしは受け入れられない。元夫がよりを戻そうと訪ねてくるがその気はない。
まじめそうな男と知り合いになり、雰囲気もいいのでつきあおうと考える。

職場の不倫ばかりでまっとうな恋をしないまま40過ぎで結婚したのにすぐに離婚し、地元に戻ってぱっとしないアルバイトでくすんだ暮らしをしている女を軸に。別れたのに引きずる夫と自己肯定力の低い恋人、喫茶店とスナックを営むげすびた夫婦。少し若い世代のAV嬢の常連客、元夫に恋心を抱いていた後輩、木訥とした新しい恋人らによって描かれる核は、器用に生きられない人々の点描。

終盤で離婚の原因が語られるけれど、それは本当に些細なことで、毎日生けていた花に気づいてくれないことと、変えなくていいなら一足跳びに花瓶を捨てようと思う女とそこまでしなくていいという夫。 大人だからこそ喧嘩らしい喧嘩をしないままに結婚し、穏やかな日々を暮らしていたけれど、この些細な違いがどうしても違和感になって別れを切り出した妻とそれになっとくできない夫。 かといって、次に出会った男は穏やかでやさしくみえるが、一緒になってみれば暴力的で、むしろ冷たい目でみられることが女の魅力なのだといいだしたりもして。

喫茶店とスナックの夫婦はスケベで口は悪いしなにかがさつで喧嘩ばかりしているけれど別れる気配がなかったり、元夫の恋人はどうしても元妻のことが気になってしまったり。中年男女は結婚しても独身でも、あるいは恋人どうしでもそれぞれに積み重なった癖があってなかなか面倒くさいものだということをじつはいろいろな角度で描いていてなかなかにほろ苦いのです。 喧嘩をしている男女はなんだかんだ別れないけれど、喧嘩をしていない男女二組はどうにもうまくいかない感じになっているのはどこか象徴的な感じもありますが、そういうことを啓蒙するような芝居ではありませんから、いろいろな男女や年齢のありかたを点描して描いているというイメージが強いのです。

元夫を演じた伊達暁のカッコイイのにどこか粘着な雰囲気の奥行き。喫茶店とスナックを営む夫婦を演じた久保貫太郎と柿丸美智恵は格好悪い中年という感じだけれど、むしろこちら側のワタシとしては、細やかに描かれた二人が説得力なのです。元夫の恋人を演じた異儀田夏葉、幸せに向かっているはずなのに微妙に幸薄さみたいな雰囲気を纏ってしまう役が多いのはワタシはちょっと哀しいけれど、もちろんきっちりとした造型。AV嬢を演じた斉藤ナツ子は物静かだけど感受性豊かな感じでちょっとふわっとした美しさが似合います。木訥な男を演じた山田百次はそのあとの豹変との振り幅が圧巻で強烈な印象を残します。プロデューサーも兼ね主演となった松本紀保もまた幸薄い造型だけれど強い自己肯定力を持ち続ける力強さ。終盤での長い台詞は圧巻だけれど、これ全部語っちゃうのが芝居というフォーマットでいいことなのか、はちょいと迷うワタシです。

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2018.05.02

【芝居】「誰も寝てはならぬ」feblabo

2018.4.13 20:00 [CoRich]

国道五十八号戦線の10年前の作品( 1, 2)をfeblaboとして上演。 平日20時開演、70分がうれしい。18日までシアターミラクル。

例によってわりと話を覚えていないワタシです。 演劇が滅んだ時代、集められた人々が台本を元に演劇を復活させる試行錯誤、棒読みから、ナリキリ、役者が役との距離を自覚するとか、混じる現実が影響を与えるとか、たどたどしかったり誇張されたキャラな人々が演じる前半。違和感は感じながらも、根幹では演じることの発達史を早送りみたいで楽しい。

【ネタバレ】

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