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2019.04.04

【芝居】「Das Orchester」パラドックス定数

2019.3.23 18:00 [CoRich]

作家が学生時代に上演した舞台を長い時を経て再演。シアター風姿花伝。125分。

ドイツのオーケストラ、実力も人気もある指揮者。鍵十字をつけた兵士が舞台袖に入り込んでいる。 首相が気に入った指揮者はこの楽団を国営として手中に収め宣伝に利用しようと考えている。楽団の事務局長は提案を断りたいが、市からの援助を閉ざされ国営とすることを受け入れる。人気のある指揮者は演奏家の三分の一を占める「劣等人種」の排除を目論む政権の提案は受け入れられないとするが、排除はもう変えられない。

ナチス・ドイツとベルリン・フィル指揮者・フルトヴェングラーとバイオリン奏者・シモン・ゴールドベルクをモデルした史実の構図を借りながらも、物語にはほとんどの部分は固有名詞としては現れず、独裁政権がプロパガンダの一つとしてオーケストラを手に入れる史実を背景にしながらも絶妙に作家のフィクションを潜り込ませて物語を編みます。手に入れられる側のオーケストラの人々、とりわけ「劣等民族」とされたユダヤ人を巡る人々の視点で描くのです。

天才的なソリスト、絶対的な権力を持つ指揮者、その秘書、事務局長、 優秀なユダヤ人を演奏者にもスタッフにも抱えている楽団。よりよいものを作り続けるためにこの人々が必要ではあっても、市からの資金が絶たれ国の直轄になり、ユダヤ人を排除するというきな臭い政権の意向がより強く見えてくると、ユダヤ人の同僚たちを政権の手の届かないところに切り離そうと動く人々。残る人々の生活を確保しなければという想いと、連れ去られる人々を何人かでも助けようという想いとが強烈な熱意となってゆく中盤からが圧巻なのです。

芸術なりスポーツを「美しい国」であるための構成要素として取り込もうとする政権の意向は、しかし劣等とされたユダヤ人排除との裏表というのもまた切ない。芸術も実際のところ、優れているとか、美しいというものももしかしたら権力者の胸先三寸なのかもしれないということなのです。

2時間を超えけっして短い上演時間ではありません。誰にでもわかるけどあえて固有名詞を排除して描くことで逆に、より核となる独裁者と芸術、あるいは排除する側と排除される側の物語がより際立つように感じられるのです。

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