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2018.10.09

【芝居】「父が燃えない」箱庭円舞曲

2018.9.27 19:30 [CoRich]

これと対になるように旅行のことを描いた作品があるようですが、そちらは未見、110分。30日まで浅草九劇。

父が亡くなり、火葬場に集う兄弟・親戚たち。いろいろ用意は行き届かないけれど、久々に会う人々も居たりする。父の還暦の時を思い出したりする。張り切って準備した旅行に、失踪している母を連れてきたり、長女が結婚しようと恋人を連れてきたり、あるいは父親の愛人が現れたりしたあの旅行は散々だったけれど、思い出す。

ふすまと畳、大きめのちゃぶ台を中心にした和室のしつらえ。火葬場の控え室と、回想となる還暦旅行の旅館の一室を継ぎ目なく行き来します。 単に場所が変わるだけではなく、回想シーンにだけ存在し火葬場の場面に居ない人々、つまり亡くなった父親や失踪中の母親などの登場人物をほかの登場人物が演じるスムーズに時間と場所を入れ替えて回想を挟みながら進むスタイルは不思議な雰囲気を纏います。

母親が失踪した家族、仲が悪いわけではないけれど家族旅行に象徴されるように成長してそれぞれがバラバラ、決して巧くいっているわけではないし、決して立派というわけでもない父親の葬儀の家族をめぐるちょっと微妙な空気感を描きます。

葬儀なのに酒や料理を用意してないとか、僧侶への心付けを出してないなどいわゆる常識なさげな感じもあるけれど、もう無くなる家、檀家としての立場でもないと云ってみたりして確信犯的にやってる感じもあって、なかなか正体がつかみづらい兄弟たち。長男は離婚・再婚し、妻は子供が欲しいが最近はレス、妻に時折嫁としての立場を求めるようなバランスの悪さもあったり。長女は未婚、わりとダメ男にひっかかりがち。次男はちょっとこじらせた感じでまだバンドの夢を諦めて無くて。もういい歳だけど、それぞれ決して成熟して立派になったということもなく、家族の関係としても未完成感がただよう人々。それは列席する親戚たちも同じで、あけすけで無遠慮な叔父や父の介護に忙殺され酒好きな未婚女性、行方不明の母親の弟、滅多に逢わない北海道の親戚もそれぞれに何かを抱え、なにかがちょっとだけ欠けている人々。 二つの時間軸を細かく行き来しながら描き出すという方法選んだからこその、このスムーズな切替え。なるほど。

回想場面だけに登場する父親かと思っていると終幕、くるりとファンタジーを纏い、送られる父親が子供たちに語りかけます。孫とか結婚とかバンドとかの心配事はあってもそれはどうでもよくてただただ元気で生きていけ、というシンプルなメッセージはここまでに細かく積み重ねてきたそれぞれの人々の背景が一気にフラッシュバックするよう。かさねて係員として登場する作家は舞台中央先端に置かれた骨壺を見つめるラスト、自身の亡父を重ね合わせたポートレイトのようなキマまったシーンなのです。

子供が生まれた作家、今作で育休を宣言。暫く公演期間は空くようですが、再び彼に触れられる日が楽しみなのです。

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