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2018.10.25

【芝居】「蛇と天秤」パラドックス定数

2018.10.12 19:30 [CoRich]

2010年初演作を、常連メンバーではなくオーディションによる新たな役者たちと作り上げる90分。15日までシアター風姿花伝。

大学病院で現代の結核と題したセミナー前日、会場で機材のチェックなどをしようとする准教授の医師。その医師に会いたいと製薬会社の営業や研究者が日参するがなかなか会えない。取り次いでいる講師の医師が会わせないようにせき止めているのだ。
新薬の投与で続けざまに8人の子供の患者が亡くなっているが、病院はそれを隠しているばかりか、論文で効能への疑問を呈している。小さな製薬会社が発売した会社はこの薬に命運をかけていて、そんなはずはないとデータの提供を求めてきているが医師たちは取り合わないのだ。

新薬をめぐる死亡事故を隠蔽するしないだけの話かと思えばさにあらず、物語はいくつもの底を抜けながら製薬会社と大学病院の持ちつ持たれつなドロドロとした関係を描きます。製薬会社の一人から見れば、大成功となり多くの患者たちを救う新薬に対して付けられたいちゃもんと向き合うこと、製薬会社のもう一人から見れば、芽が出ないままいい歳になってしまった自分が一発逆転を狙って新たな結核治療薬を開発したいという名誉と達成感のためのあがき。医者から見れば、研究や名声に役立つものは手にしたいしそれを阻害するものは全て闇に葬り、教授、准教授、学生という一連の連なりを維持することが生き残り階段を昇るために必要なこと、など、それぞれの思惑は複雑に絡み合っていることが示されます。そこに描かれるのは、研究への情熱と名誉への固執、そこで置き去りにされる倫理の観点、という恐ろしさ。それは戦時中の人体実験とかあるいはもしかしたら使命感を帯びたテロといたものもこういうったバランスの欠如から起こることなのだということが見えてきてぞっとするのです。

物語の深刻さに比べて、この語り口の軽さや人物たちの温度感の低さもまたパラ定っぽさ。観ている最中にわらってしまうことも多くて、チェーホフのような味わい、と感じるワタシです。

劇団常連のメンバーを一人も入れずすべてオーディションでの役者陣。きっちりパラ定節の物語ではあっても、風合いというか肌触りに役者の色が出てきて、これはこれで魅力的なのです。准教授を演じた横道毅の老害と云ってもいい大人のいやらしさ。講師を演じたアフリカン寺越のはっきり自分の感情を捨てて上意下達の歯車に徹する姿の造形。年上の研究員を演じた宮崎吐夢の好々爺風に見えてなかなか汚らしく足掻く人間臭さの迫力も凄いのです。

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