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2018.07.06

【芝居】「海越えの花たち」てがみ座

2018.6.23 14:00 [CoRich]

130分。6月26日まで紀伊國屋ホール。

太平洋戦争の終盤から戦後の長い時間、朝鮮と呼ばれていた南北分断前から半島の南側に取り残され、あるいは自分の意志で残った女たちの長い物語。朝鮮の名家に嫁いだ女、終戦とともに支配階級でなくなった日本人への風当たりは強くなっていても不在となった家長に変わり家を守る。あるいは恋人とともに大陸に渡ったが終戦とともに捨てられた女、終戦後に原爆被害に遭った夫とともに大陸に来たり、夫について大陸に渡ったが朝鮮戦争の混乱の中、夫や子供を離れていた女たちは、この家に偶然集うようになり、暮らしている。 朝鮮戦争は朝鮮の男たちを生活の場から奪うが、ナザレ園として教会の機能と女たちの生活の場であり続けたこの場所で女たちは暮らしている。

日本の敗戦、半島の独立の時代を通して、困難な状況の中でも力強く「暮らす」女たち。それは直接の戦闘ではないけれど、マッコリ作りや駅の物売りで稼ぎ、守り、生活を成り立たせていくこと。 現実にあるナザレ園をモチーフにしながら、生まれ育った国とは断絶された国交の中で生きていく人々、女性の立場を主眼に描くのです。

4人の女たちはみな同じ国の国民として朝鮮人と結婚し大陸に渡ります。あるものは自分の意志で残り、あるものは帰りたかったがその手段がなく、あるものは日本の敗戦後にそれぞれの考えて大陸に渡り、と、この場所にいる立場はそれぞれ。それまでは支配する側だった日本人の立場はくるりと変わり、マイノリティで見下される側に変化するなかで凛として生き抜く人々の美しさ。描き方として少々理想に過ぎる感はあるものの、大きな問題ではありません。 さらには被爆した外国人の立場を交えながら、朝鮮戦争、ベトナム戦争を経て朝鮮という半島のありかたも大きく変わってくるけれど、それでもなお彼らは共生しているのです。

時代を経て国交が回復しても、かならずしも一筋縄とはいかない終盤。結果は望ましいとはいえないけれど、役人を含めた現場の誠意はあり、記録ゆえに祖国には戻れないけれど、残された記録で戻れる人もいて。当時の時代のすべてではないだろうけれど、時代のありかたの矜持のようなものは、地続きであるはずの私たちの時代では望めなくなってしまったかもしれない、と絶望な気持ちにもなるのです。

終幕、あのにぎやかな時代を駆け抜けた女の死、周りの学生運動の大きな音にかき消されながら孤独に亡くなっていくことのどうにもやりきれなさはワタシの気持ちを大きくかき乱すのです。

この家を守り続ける妻を演じた石村みかの凛とした美しさ。戻れずマッコリ作りで力強く生きる女を演じた桑原裕子のがらっぱちな雰囲気、しかし恋心もあったりする可愛らしさ。夫や子供と別れた女を演じた西山水木、原爆に遭った男に寄り添う女を演じた内田慈もまた、きちんと造型。使用人で笑いを取りながら、この場所を守り続けた男を演じた半海一晃は本当に格好良く印象に残るのです。

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