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2018.05.15

【芝居】「たとえば私の人生に目口もないようなもの、あれこそ嘘の精なれ」平成商品

2018.5.3 19:00 [CoRich]

ワタシは初見の劇団です。7日まで要町アトリエ第七秘密基地。125分。 北海道から引っ越してきて保育士として働く女。学芸会で先生たちの出し物として桃太郎をすることになり、その書き換えをすることになる。好意を寄せている保育士が居ることがバレてしまいそうになり後悔するときにささやきかけてくる声は、「どこまで巻き戻したい?」だった。

序盤はそれぞれの役名にあわせた保育園の職員たちのシャツの色という工夫でわかりやすく。しばらくは引っ越してここに来た女が観察者という立場でこの場所がどういうパワーバランスで成立しているかを描きます。 ふわっとしていそうな職場、ほかの土地からやってきた若い女の視点で描かれるのは、ほのかな好意から不倫関係と修羅場、果ては暴力を伴ったストーカー行為いたる男女のありかたのグラデーション。 職員たちの出し物として上演される桃太郎の登場人物に重ねつつ、桃太郎の稽古が繰り返されすこしずつ変化しながら、現実とその女からのファンタジーめいた見え方の世界を自在に行き来するのです。

さらに、その女が家を出るきっかけとなった、叔父の人生を自分がいることで狂わせてしまったという贖罪の気持ちであったり、戦争に突き進むかもしれない現実と保育・教育という仕事がそれと地続きになっていることを軍服姿の人々で描いたりと、保育園の桃太郎の出し物をするという会話の中に少々唐突に、こまかな断片が入り込むのです。終盤語られる未来は戦争や地震災害という少々絶望的な言葉、そこに向かって暮らしている彼らの日常がそこへの地続きということの絶望。

客席端にいる謎めいた男、クレジットは「いつの間にか主であるように振る舞う」は結局説明されないけれど、彼女の心のなかにずっと居座り続ける、叔父か、と感じるワタシです。

正直にいえば、インスタレーションのように要素を多く詰め込みすぎている感じはあって少々飲み込むのに戸惑います。作家の中ではすべての要素がつながって世界として見えているからこそこの一本にまとめてあげているのだろうけれど、恋愛感情とMetoo、親戚の男の人生への想い、軍服姿などが少々バラバラに点描する感じがします。それが一人の若い女性から見えている世界なのだといえばそうかもしれないけれど、何かもう一つ全体を貫くものがあるとより強固にこの世界が補強されるように思うのです。

5年振りに拝見した野口雄介(1)の切れ味が変わらないことが嬉しく。中心となる女を演じた中井あすみはちょいとストレスフルな役だけれどきっちり物語を背負い見応え。ちゃらい男を演じた大島宏太は人懐っこそうにみえてヒール、桃太郎パートの鬼のコミカルさもちょっとよいのです。

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