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2018.03.05

【芝居】「ひかりのおもさ」ユニークポイント

2018.2.24 19:00 [CoRich]

ユニークポイントが静岡県・藤枝市に移住し、開設した白子ノ劇場のこけら落とし公演。2月24日まで。70分。

クリスマスイブのリビング、仕事ばかりで家庭を省みなかった夫と、子供ができてから専業主婦だった妻。娘は成長し家を出ている。新幹線で恋人を連れて挨拶にくるというのを待っている。 警察に勤め、日々の犯罪に向き合う中で外国人が急激に増えることに懸念を持つ夫は、娘の恋人が在日韓国人と聞き動揺する。ずっと働きすぎを心配していた妻だが、定年を前に仕事を辞めのんびり暮らしたいと言い出す夫に妻は戸惑う。仕事を始めたばかりで休んで長期の旅行にはあまり乗り気ではない。
雨は激しくなってくる。夫は酒を飲んでしまった。妻は車で娘を迎えにいくことにする。

娘が上京し夫婦二人で暮らしている家。仕事ばかりで家庭を顧みることがなかった夫と、子供ができてからは専業主婦だった妻。夫の定年が近づいたこと、妻が仕事を始めたことが重なり、子供が居なくなったことが確定した二人のこれからの生活が大きく変化する兆しを見せる夜。長く暮らしていた夫婦で互いが考えていることが見え隠れする風景。

一つは恋人を連れてくる娘。在日で帰化しないこと、あるいは生活保護の受給割合が高いことなど(警察官らしいといえばそれらしい)、ちょいと右よりなイデオロギーとの戸惑い吐露する夫。ヘイトや排斥こそしないけれど、その戸惑いをそのままフラットに描くのはいわゆる小劇場の領域ではちょっとめずらしい気もして戸惑いますが、一人の人間が生きてきたそのままを描くということかもしれません。

妻の提案で、ろうそくの火を挟んで互いに秘密を打ち明けるということをするけれど、なにか大きな盛り上がりをするでもなく、しかし夫は仕事を辞め旅行でも行きたいと打ち明け、妻は始めたばかりの仕事でそれにはあまり乗り気でないことが明確になります。定年近くなって見えてくる、時々悩み相談みたいなものが見え隠れする風景。 熱中していた仕事から離れていざ何をしたらいいか判らない男と、そんな夫だけに期待することはとっくにあきらめて、自分なりの世界をつくりはじめている妻とのズレ。ワタシの年齢のせいか、ごく自然に、しかしずんと重みをもって描かれるのです。

【ネタバレ】===========

酒を呑んで運転ができない夫、雨の中、妻が慣れない運転で迎えに行くことになって、普段だったら夫が助手席に同乗するのにそれをしなかったこと。終幕近くになり、ここまでの夫婦の会話は、娘の恋人が初めて訪れる晩の回想であることが明かされます。どうやら娘が孫を連れてきたと思われる台詞があって、孫が生まれてはいるけれど、妻は亡くなっていて、男が一人で暮らし続けていることがわかるのです。

定年が近づきこれから夫婦の時間を、と半ば勝手に夢想していた男、ズレが生じそれをすり合わせるという過程を経ることもなく亡くなった妻。声高に嘆いたりはしないけれど、数年経ってもなお、その晩のことをきっと繰り返し、一人思い出していることの男の受けた傷の深さを感じるのです。

ラストシーン、一人舞台に残る男。その娘や孫は声だけで、すのこのように隙間の空いた壁の向こう側。強く照らされた照明の方からの声。それはもうちょっと自分には眩しすぎて見える娘や孫の未来だけれど、そこから取り残されたような男の心のコントラストが見えるようなのです。 定年というわけではないけれど、もしかしたらこの劇団の移住にともなって主宰の作家が妻との間でもしかしたら交わしたかも知れない、何かのズレのようなものが色濃く抽出されているのかなと思ったり、思わなかったりなのです。

劇場の場所は静岡駅や藤枝駅からは少々遠く、最寄りの藤枝駅からでも徒歩では40分弱、むしろクルマでの移動に便利なバイパスの方が近く、しかしこの場所自体は商店街の一角。夜の訪問だったけど、こんどはもう少し早い時間にちょっと立ち寄ってみたい感じでもあるのです。

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