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2017.11.23

【芝居】「グランパと赤い塔」青☆組

2017.11.18 19:30 [CoRich]

27日まで吉祥寺シアター。135分。

結婚して家を出た女だったが建てた家を空襲で失い夫婦と二人の娘は女の実家に同居している。実家はボイラー会社を営んでいて、同じ土地に建つ独身寮の工員も何人か母屋にも出入りしている。長女はちょうど小学生ぐらい、グランパと呼ぶ祖父がよく連れ出してくれる。
遠くに見える新しい電波塔が建ちつつある。信州から鳶の若者が工事のためにやってきて、この家に同居する。

空襲で家を失ったなど戦後の名残はまだあるし、終盤にはあれからそれほど時間を隔てていないことを改めて印象づける悲しい話もあるけれど、しかし東京タワーが建設され人工衛星スプートニクのニュースが駆けめぐる頃。会社社長宅というわりと裕福な家で、幸福感に包まれて育つ女の子を主人公に語られます。もちろん作家の世代よりはずいぶん上の景色だと思うけれど、大きな家にたくさんの人が出入りして暮らす、しかもそれは日常の風景(少なくとも私にはそう見える)のリアリティがきっちりと。

科学や技術が人間の将来を明るく照らし、そのために真剣に働くことが絶対的な善と言える、ある意味幸せな時代と、その時代の気分を揺るぎなく信じ体現する「グランパ」の存在がこの幸福にあふれた空間を紡ぐのです。ここにも戦争の陰はもちろんあって、終盤にそれを描くことを忘れないのは作家の周到さ。 正直に言えば、あまり若い夫婦が抱える小さなものを覗けば人物たちの対立軸や何かの成長といった物語を駆動する力は弱く、優しすぎるとも感じます。もっとも、それは少女からみた世界ですから、なるほど親夫婦の小さな諍いは見えるけれど、その向こう側のさまざまなことは彼女には見えてない、という視点ともいえるようにも思います。

若い鳶を演じた竜史のまっすぐ、石田迪子演じる若い女中を口説こうという若者たちの生真面目さが微笑ましいけれど、そこにももうひとひねりの物語。年上の女中を演じた大西玲子は時に厳しく、しかし大きく包み込むように家を守る存在をきっちり。グランマを演じた福寿奈央は凛として美しく存在し、若い夫婦を演じた土屋杏文と細身慎之介、ちょっと肩身が狭かったりしつつ、自分たちの将来をどうしようと前向きに考えるしっかりした存在として造型。ワタシの未来かというぐらいにだめな親戚のオジサンを演じた藤川修二は明るく道化の存在。グランパを演じた佐藤滋が実によくて、ちょっとコミカルでかわいらしいところもありつつ、ちゃんと未来を信じ続け、背筋がぴんと伸びた紳士をきっちりと作り上げています。

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