« 2017年8月 | トップページ

2017.09.22

【芝居】「アンネの日」風琴工房

2017.9.16 19:00 [CoRich]

135分。18日まで三鷹市芸術文化センター星のホール。

生理用品大手メーカーの商品化チーム。開発中の高機能型に対して、天然素材にこだわり女性の身体に優しい商品の開発を思いつく研究者の女性。大人の自由研究と題された社内コンペに向けてチームを作り、業務の隙間をぬって、その困難に立ち向かう。

女性たちそれぞれの初潮についての語りを冒頭に置き、それがこの開発の現場の女たちのキャラクタを造形していきます。女たちが自分の身体について語るスタイルといえば、「ヴァギナモノローグス」(1)が思い浮かびます。題材が近いのもあって、それを踏襲するようで、同様にスタイリッシュに描くけれど、しかしちょっと違う生々しさと、男であるワタシからは見えづらい女たちの言葉が少しばかり生々しく。

ノンケミカル・オーガニックなナプキンの開発の物語、女たちのバックグランドの物語に並行して、生理やナプキンにまつわるさまざまを。金融にまつわる男たちの話しを描いたhedgeシリーズ (1, 2)と相似したスタイル。 少しコミカルでもあって、リズムを作ります。それはナプキンの登場、アンネフランクのこと、アンネの日という呼称の登場、ナプキンの構造、そもそも生理とはどういう現象なのか、あるいは「男女平等ランキング」 で日本が低いことなど。生理という現象を起点にして、女たちが置かれている立場を描き出すのです。

女たちが置かれている立場、という視点は核となる商品開発の物語のベースとなっています。 初潮を祝われた少女は成長し開発のリーダーとなり人々を牽引し、初潮の時に一緒に居てくれた幼なじみを亡くしたばかりのサブリーダーはこの商品に並々ならぬ思い入れを持ちます。あるいは、祖母が初潮を見守ってくれた女は何事にも真っ直ぐに向き合う研究者に成長しています。 もちろん、初潮が性格のすべてを形作るわけではないけれど、そういう描き方、という視点の面白さはあって、女たちの成長した姿の向こう側に、少女の頃の彼女たちの心細さや晴れやかな気持ち、恐怖だったりが透けて見えて奥行きを作り出しているのです。

商品開発の物語の過程ではシンプルでカラダによさそうと思われるノンケミカル・オーガニックを貫くのがどれだけ困難なのかということ。 薬事法で必要な漂白、薄さや機能を維持するための高分子ポリマーの存在は、もちろん便利さとコストのメリットなのだけれど、引き換えに何が失われたかということ。 それは食の向こう側にも透け見えること。ちょっと強すぎるように感じるワタシだけれど、自分のカラダのことを真っ先に考えよう、それはとりわけ女たちの物語だからこそ大切で、もっと強く主張してもいいことだ、という明確なメッセージなのです。

もう一つ特徴的なのは「生理が来ない」女の存在。身体機能の問題かと思わせる序盤だけれど、作家は少々貪欲とも思えるほどもう一歩。いわゆるLGBTなど性自認の違和感に端を発する性同一性障害で性転換を経験した人物を登場させます。その彼女に完成したナプキンを渡しつけてみることで「女の子として生きていく」自信を得るという力強さ。更に性同一性障害といっても恋愛の対象が異性か同性どちらもあるのだというところまで到達する終幕に舌を巻くのです。

性転換を果たした女を営業から内勤に異動させることも含め、生理用品を扱う会社であっても女たちの存在は軽いのです。半年で作り上げられたナプキンも正式なプロジェクトには昇格しない終幕は、女たちの困難はまだこれからも続くという認識でもあり、しかし彼女たちは明るく前向きに力強く進之です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.09.20

【芝居】「ハッピーママ、現る。」艶∞ポリス

2017.9.10 18:30 [CoRich]

11日まで駅前劇場。100分。

PTAの委員に選ばれた親たち。去年に続いて選ばれた委員長は、食育にからめた飼育やハーブの栽培など、熱意がある。昼に行われる委員会に出席するだけでも神経や体力をすり減らす委員たちもいるが、委員長は取り合わない。 会合に顔を出さない委員も気になるし、もうこんな活動に時間をとられるのがかなわないとも思っている

働く女性たちの現場での様々な人間模様を少しばかり意地の悪い目線で描くのが得意な作家ですが、今作は「子育てする母親たちへの賛歌」と銘打ち、しかし人々をコミカルに描くのです。

働く母親も多くなってる時代、昼の開催を続けたり、豚の飼育を新たに始めようという思いつきの提案をする委員長。物語の端々でそれは主婦であり、議員の妻でそれなりに裕福だという背景が語られますが、委員全体に対して高圧的で、気にくわなければ子供の交友関係にも影響するなど、ヒールとして描かれます。新参者の若い母親はフルタイムで働くこと自体を詰られる理不尽さ。他の親たちもそれぞれに子供のこと経済的な弱みなども描かれて。 メンバーの一人の母親は精神を病み姿を現すことがなく、それを強く責める委員長の前に現れたのは父親の方で、それは明確に子供へのいじめをなんとかしようという意志を持って現れ、委員長と火花を散らして対峙します。豚を飼うことを請け負ってしまうというのは喧嘩の末とはいえ、ちょっといい落としところ。

こう書くと社会派な感じも受けますが、全体の作りはコメディで、イベリコ豚を飼育しようとか、運動会の費用の紛失など、なかなかに無茶な展開があったり、応援にもりあがったりと明るい要素も存分に、実は軽いタッチだったりもするのです。

理不尽な委員長や時々いいことは云うけど調子のいい会長、あるいはそれぞれの一癖二癖ある人々の描写が目指すのは、もしかしたらPTA経験者あるある、という感じの共感という気がします。特定の誰かをヒーローのように頑張り屋に仕立てることもなく、どことなく予定調和な感じで流されてるんじゃないかというのも含めてそれは、母親たちの感じている理不尽さをデフォルメして描くことによって、「よくあること」の一つに落とし込むことで、現役の母親に寄り添うような雰囲気を感じたりもするのです。そういう意味では底意地の悪さという意味の切れ味はやや後退している印象もありますが、それはそれ、物語の特性ということかと思うのです。

母親たちへの寄り添いという点では、たとえば とりわけ、望まない妊娠に戸惑う女性教師とスナックで働く母親の二人のシーン。何人も子育てしてきて大変だけれどそれは、いいことが勝っていた、とまっすぐに言い切るのはこの作家の感じとしてはめずらしいけれど、なるほど、寄り添うということなのだなと思うのです。

ほぼ一人でヒールを背負う委員長を演じた関絵里子は、ラスボス感すら漂うけれど、端々にちょっと抜けた感じの茶目っ気の見え隠れ。理不尽に責められる若い母親を演じた藤村聖子はまさにベビーフェイス、しかしキャリアバリバリな感じもまたカッコイイ。すかりと母親という世代が似合うようになってきた異儀田夏葉は真実を語る人、というまっすぐな人物を好演。子供へのイジメを許さない父親を演じた鶴町憲は、子供を護る気持ちを強く訴える長い台詞が凄いのに、実に人懐っこいコミカルな一面の落差がいいのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【芝居】「学園恋愛バトル×3!」だるめしあん

2017.9.10 14:00 [CoRich]

過去に上演した学園の恋愛模様をめぐる短編三作 (1, 2, 3)を古川貴義の演出で上演する企画。11日まで王子小劇場。

月に三人の女を抱くノルマの男と月に三人の男をヤラせないで告白されるというノルマの女が出会ってしまう。互いはそのノルマ達成に向かって対峙する「ムラサメ」
小学三年生、そんな恋も成就させるメール代筆を請け負う親指姫、そこに競合する代筆・小指侍が対決する。気がつけば代筆屋同士で言葉を紡いでいることにみんなが気づき、本人たちもそれに気がつく。「親指姫」
モテとハイソで人気となった学園でひっそりと活動していたアニメ研究会が全国大会で優勝した。オタクの学校だと噂になることを問題視した生徒会はアニメ研究会を迫害する「絶対恋愛王政」

対面の客席の真ん中を貫くランウエイ、赤青のコーナーよろしくロープが張られてたりしてなるほど、バトル。

「ムラサメ」はヤる、ヤられるの関係の攻防を描く生々しい話。作家にとっては一番若い頃に書いたのがこの生々しさだというのが興味深いところ。 血をすって強くなるという妖刀になぞられ、斬り合い高めあうというのはまさに業。そこまで高めあうのにあっさり女が勝つというラストも、あさりとしていてよいのです。

「親指姫」は世を忍ぶ代筆稼業の話。言葉を操る代筆屋を頼んでいる人々だけれど、その実、人々は翻弄されているのに操っている二人は孤独に走り続けるようで、さながら孤独なランナー。そのふたりが惹かれあい、出会うというストリー。 「絶対恋愛王政」は記憶にも新しいポップに描かれる物語。スクールカースト上位下位の間での戦いは、時にスクールカースト上位の生徒会長がラムちゃんコスプレという眼福をコミカルに交えつつ、互いへの敬意を持ちあうのです。

そうなのです、この三本じつはわりとシンプルに同じような話しで、敵味方となった男女が互いに刀を交え戦いを繰り返すうち、互いに敬意を持ち、やがて轢かれ合う話しなのです。それは妖刀になぞられ男女のヤるヤラせないの話しだったり、小学生女子に盛り上がるラブレターだったり、あるいはスクールカーストの中での敬意だったり。作家が書いた順番に上演されているようなのですが、最初の一本があからさまにセックスの話なのに、二本目は小学生女子の恋心、三本目は愛ではなく敬意という流れになっているようで、徐々に解脱してるような流れになっているのがちょっと興味深いのです。当日パンフにあるように、ポケベル、携帯、SNSという通信手段の変遷になっているのも「げんだい」を描く作家のアーカイブゆえの楽しさなのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.09.15

【芝居】「お祭りやってるらしいよ」あひるなんちゃら

2017.9.3 18:00 [CoRich]

4日まで駅前劇場。75分。いつものようにライブ音源販売(fringe)もうれしい。

おまつりやってるらしいよ、とわくわくする気持ちを抑えられない女。 その恋人は喧嘩したばかりでもあってあまり気乗りしていない。
ずっと人の家に居座る男のゲームはなかなか進まない。ゲームが巧い知らない友達まで呼んでくる。 家主は迷惑だと思ってる。
引きこもりの妹がつくったお祭りの偽チラシを印刷してポスティングした姉。兄は叱りたいし、ポスティングした各部屋に謝りに行かなきゃと焦る。
おみこしを作りたくて参考に写真を撮りたいが祭りには行きたくない女とその友人の女。お祭りに行きたい浴衣の女が一緒に行くだれかを探しに訪れる。

シンプルに上質に作り込まれた部屋を思わせる舞台。共同住宅の各部屋をめぐる物語なので、それぞれの部屋の家具を入れ替えながらすすみます。思いの外入れ替えるものは多いけれど意外なほどスムーズで。

偽チラシ故に本当は開催されていないお祭りを、やってるらしいよと大喜びする浴衣の女と、その修復に奔走する男。それぞれの部屋の点描でありながら、この二人が圧倒的な熱量で全体を縫い合わせます。

恋人の二人の喧嘩した微妙な空気感と楽しそうなことの空回り感であったり、かえってほしい他人が長い間居座る居心地の悪さ、あるいは作ってしまった偽チラシを良かれと思って配り罪悪感を持たない姉と巻き込まれる兄。そして御輿をつくりたい女と友達のちぐはぐな会話。それぞれのスケッチはそれぞれおかしいところがあるあひる節だけれど、それが「お祭りやってる【らしい】」という雰囲気で貫かれていて、小さなしかしそれぞれの生活が見え隠れして微笑ましく、しかも濃密なのです。

偽チラシの姉妹と兄のシーンがとても好きなアタシです世の中に対してどう向き合うかが違いすぎる違和感、だからといって離れられない肉親の関係というのが濃密な会話を生み出すのです。あるいは恋人の二人のラストシーン。実は無いらしいお祭りだけれど、男は他のどこかでやっているお祭りを探して、今度行こうと提案するすてきな空間。いい話で終わらせず、モンスターを発現するラストもしんみりさせずに巧い。

浴衣の女を演じた宮本奈津美は、くるくると変わる表情、ころころとしたかわいらしい声なのだけれど、喜びが最大に達するとまさに「モンスター」のように豹変するのが楽しい。謝って回る男を演じた堀靖明、おなじみキレキャラだけれど、巻き込まれる側ゆえの悲哀が時々にじむのもいい。なにより、説明のために生み出した架空のOLさんの話をどんどん肉付けしていくうちに、それが現実かのように考えてしまうのが実に巧く楽しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.09.09

【芝居】「ミロ」ミロ

2017.9.3 16:00 [CoRich]

マダムゴールドデュオに発祥し、Zokky( 1, 2, 3, 4, 5, 6, 6, 7, 8, 9, 10, 11) によって何度か公演が行われた「のぞき穴演劇」スタイルの久々の公演。5分弱で300円のスタイル。そうだ、原宿物語を観たのはここだった、な、 デザインフェスタギャラリー WEST。3日まで。

一人芝居または三人による即興芝居を選択し、キャストや芝居のテイストなどを選んだカルテを書き込んだ紙をスリットに入れて300円投入するとスタート。私は「三人の即興」「ラブストーリー」「コンビニが舞台」というスタイルで。つけられたタイトルは「あっちむいてホイ」 コンビニのアルバイト面接。店長が待ち、アルバイト申込者が来るがダブルブッキング。後からきた武井咲を名乗る背の高い女をひとめで気に入った店長は露骨にそちらを採用しようとするが、もう一人の女は店長に抱いた恋心をずっと秘めて勇気を出して申し込んでいた。

ごく短いスケッチ。即興芝居なのでおそらくはそれほど作り込まれていないため、のぞき穴からの視角を十分に生かし切ったとは云えないけれど、それでもワタシだけのために三人の役者が演じる風景を眺める数分間は普通の演劇とも、もちろん映像とも違う特別な楽しみなのです。そういう体験こそがのぞき穴観劇の醍醐味で、いつもなら何コマもガシガシ予約して制覇をねらってたアタシですが、歳をとりました。ひとコマで終了。

こいけけいこを観るのは久々だけど、クールビューティっぷりで恋心をかっさらう感じには磨きがかかり、のぞき穴からぐっと近くでどきどきして。金沢涼恵はちょっと木訥な雰囲気で一途さが見えて嬉しい。店長を演じた須田浩章はクールビューティーに流れたかと思えば自分への想いがある方に流れてみたりとどっちつかず感が楽しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【芝居】「小竹物語」ホエイ

2017.9.2 15:00 [CoRich]

ホエイの新作は、実際の怪談ネット中継を交えて、そのイベントの舞台裏込み。4日まで春風舎。

定期的に行っている怪談イベント。今回は客を入れずにネット配信を行う初めての試みをしている。主催者の他、常連の怪談アイドル、男装の麗人風の他、一般参加の女、青森からたまたまやってきた主催者の知り合いが怪談をそれぞれはなす。

私にはなじみがないけれど、怪談イベントというのは一定の需要があるようで、ネット界隈では目にします。実際のそれに沿っているかはわからないけれど、ネット中継の現場というミニマムな現場で起きていそうな、ちょっとドロドロだったり突飛だったり、理不尽な暴力を織り交ぜたりした物語。いろんな人が居て、そのすれ違いとか唐突の怖さのようなもの。

小さな地下アイドル的イベント、地下アイドル上がりの怪談アイドル、そのファンから始まって恋人同士らしい主催の男との痴話喧嘩、あるいは初めてとはいいながらちょっと押しが強すぎる感じのトランス系の語り手、木訥とした津軽弁の使い手、あるいは男装の麗人という風体の人気の語り手とか。それぞれの「立っている」キャラクタではあるけれど、それは怪談イベントという枠の中でのこと。何かを表現したいという気持ちだったり、何者かになりたいという気持ちだったが渦巻きつつも、それがメジャーになるなんてことはおそらくない上昇志向とは明確に違う場所。ネット中継では数人、公開でイベントでもそんなに多くは集まらないのだろうけれど、それは明らかに彼らにとっては「場」であって。そこに拘る気持ちもわかる気がするのです。

この場にでるための金を払うとか、この場に対する認識が食い違っているとか、などのいろいろの齟齬。あるいはこの場の「馴れ合い」のルールの外からそれを脅かすような暴力的で理不尽な男が登場したり。作家・山田百次自身が演じる理不尽な男がフラットで怖いのです。怪談アイドルを演じた菊池佳南は化粧の過程もオンエアな最中のアイドルっぽさもそれらしく楽しい。男装の麗人を演じた和田華子の決めポーズがいちいち楽しく、トランス状態のOLを演じたある種のキチガイ感の迫力も凄いのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.09.06

【芝居】「なじみたいっ!~気球に乗ってどこまでも篇~」かきあげ団

2017.9.2 15:00 [CoRich]

3日まで空洞。90分。

劇場の電話受付をしている女。客にキャンセルさせないことを徹底させる上司、バレエ公演を別のフェティティッシュにこだわる客、耳が遠い客、小学生団体でR18指定の舞台を見せようとする教師、予約はするのにいけたら行くといってみたり。

電話受付の派遣社員の女を中心に、理不尽だったり変態めいていたり、カジュアルにキャンセルしようする客だったりのさまざまな人々を点描。劇場の上司がひたすらにキャンセルを出させないように強くいってきたり、そんな仕事場の様子を聞いて芝居にしようとする劇団員だったり。

物語としての一つの流れというよりは、劇場に電話してくる様々な人々を点描。バレエの踊り子の足が見えるかどうか、なんだったら触りたいとすら考えている明確な足フェチの変態だったり、迷惑だったりおもしろかったりする人々を多少の悪意を交えつつ描きます。それは作家にとってのリアルだろうし、少なくとも作家には世界がこう見えている、と切り取って見せるのです。 ヘタウマな雰囲気を纏う脱力感の持ち味。出入り自由とまで言い放ちます。 労働者割とか無職割、果ては劇団員が好きだという島崎和歌子を可愛いだといえば割り引かれるなど併用することでわずか500円という心意気は嬉しいけれど、ちょっと申し訳ないぐらい。ぼんやり乗っかって楽しむのが吉なのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.09.04

【芝居】「万!万!歳!」studio salt

2017.8.26 18:00 [CoRich]

スタジオソルトによる4ヶ月に渡る、若者向けの芝居塾を経ての公演。 27日まで神奈川県立青少年センター・ホール。80分。

老人たちの介護施設の集会室。昼の作業や歌、おやつの時間。新人でやってきた若い男は介護士の学校に通うが望んだものではなくこの仕事も不満だ。静かだったり突然大声をあげたりする老人たち。 ふと気がつくと車いすや昏睡状態だった老人たちは立ち上がり、踊ったり歌ったりしている。

大きなテーブルが二つ、車いすなどに座り作業をしたり話をしたりする人々。ことさらにメイクをするわけではないけれど、若い役者たちが介護を必要とするほどの高齢者を演じます。序盤では介護施設の日常の風景。ゆったりと穏やかに流れているようでいて突然激高したり、認知症ゆえに太平洋戦争で日本が負けたことを忘れて負けるはずがないといったり、あるいはちり紙と呼ティッシュに執着してみたりと、小さな混乱というか嵐はそこかしこで起きていて、でもそれは彼らにとっては日常で大きな騒ぎにはならなくて。

そこにやってきた介護士の学校で学ぶ新人のヘルパー。志があるわけではなく、他に仕事がなく不本意で選んだ仕事という内面を吐露する最初のナンバー。彼の気持ちがどうであれ、介護施設の日々は変わらないのです。 中盤ではその新人が居眠りした中で広がる世界。夢と明確に語られるわけではなくて。高齢者たちのみならず昏睡状態の人々まで車いすから立ち上がるばかりではなく元気よくしゃべり、跳ね回るのです。そこで語られるのは、普段は喋れないものが要求してたことだったりもするけれど、それはやがて彼らの記憶が飛び出すように広がるのです。それは 兵士の出征、戦時に作られた童謡「汽車ぽっぽ」の歌が戦後には改変されていること、あるいは空襲に逃げまどうことなどが描かれる中盤。作家自身の戦争に対するバイアスを感じないわけではないけれど、高齢者のまだらな記憶の中では強く印象を残した高いコントラストばかりが残る、というヘルパーの経験を耳にしたりすると、 実はそれがリアルなのかも知れないなとも思い直すのです。 足踏みならしたたみ込むように演じられるこの中盤のシーン、王者館や維新派のような、めくるめく、夢のようなどこかサイケデリックすら感じてしまうアタシです。

若い役者が高齢者を演じメイクや声をことさらに年寄りっぽくしなかったことで若者と高齢者が地続きで高齢者にも当たり前だけれど若い頃があることが強いコントラストを持って印象づけられます。とりわけ、中盤のシーンは足を踏みならし手をたたいてアップテンポなリズムが続き、さらに若い役者がまぶしく輝くのです。

続きを読む "【芝居】「万!万!歳!」studio salt"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【芝居】「NAGISA 巨乳ハンター/あたらしい「Lady」サムゴーギャットモンテイプ

2017.8.26 14:00 [CoRich]

27日までRAFT。90分。

お笑いを目指していたがいまは会社員として働く男。毎日オフィスにやってくるヤクルトレディに恋をして、ベトナム人ハーフの新人のことを気にかけている。新人は日本の歌を覚えようとしている。ある日バーベキューに誘うがその新人は来なかった。ベトナムも日本も嫌いだという「新しいLady」
戦後すぐの呉の町。男でも乳房ができる男が発生し、男も女も巨乳であるものが勝ち、貧乳は虐げられるようになっている。その街に潜入捜査で消えた恋人を探すため、貧乳の女がやってきた。 (巨乳の姉妹、吉成の兄貴は幼なじみの貧乳をかばう。街のすべてをヌキありにして乗っ取ろうとする兄弟。片腹の兄貴は美乳の時代だと思うが思うようにいかない。巨乳の女のことが気になっているがさわることすらできない) 「NAGISA 巨乳ハンター」

中学生程度の英語でシンプルでイノセントな恋愛の感情とか、人を想う気持ちを描くというねらいかと思われる「〜Lady」。ヤクルトレディとベトナム人ハーフの青年、中年の冴えない男中年男が青年をバーベキューに誘い、青年はヤクルトレディと歌の稽古をし、中年男はヤクルトレディに好意があるけど言い出せず。三角関係のような言い出せないもやもやした気持ちというか。英語にすることでシンプルな想いをしんぷるなまま描き出しています。

「〜ハンター」は当日パンフによれば胸の小さな女優をネタにしたワンアイディアで。けれどヤクザの抗争に、男も胸が大きくなりその大きさでヤクザの序列がきまるという一工夫が見事で、その理不尽な序列が男女問わず成立するようにつくられています。それは胸の大小自体を性的に消費するという意味を薄めているのです。もっとも性的消費自体は物語の中では目一杯盛り込まれていて、身体を売るとか、すべてをヌキアリ(さびあり、さびぬきみたいにカジュアルで)とか。ヒロインを演じた田中渚はキメッキメのクールビューティが凛々しくカッコイイけれど、それを徹底するほどにコミカルに。とりわけ日替わりゲストの部分はわりと緩い設定のアドリブ芝居になっているようで、ゲストが陵辱してく趣向なのだそうで、まあ楽しく。巨乳の女を演じた塚田詩織はそのグラマーさが強烈な印象ばかりではなくて、きっちりと芝居も。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【芝居】「15 Minutes Made Anniversary」Mrs.fictions

2017.8.26 11:00 [CoRich]

10周年を迎えたMrs.fictionsの人気ショーケース公演はなかなか豪華なラインナップ。8月27日まで吉祥寺シアター。120分。週末午前中の追加公演になんとか潜り込みました。開演にまにあわず、最初の一本はロビー映像にて。(もうすこし解像度ほしかった)

ドイツ帝国、第一次世界大戦の頃の優秀な将校だが、うだつの上がらない男の面倒をみることになる。赴くことになった戦地にも連れて行くことになる。勝ち目のない作戦は失敗し敗退するが隠蔽を謀る上層部はその理由を押しつける兵士を選ぶ。 「フランダースの負け犬」(柿食う客, 作演出・中屋敷法仁)
中学から高校に進級した生徒たち。同じ学校だけれど、昼間の普通部に加えて同じ教室では夜の定時制の授業が行われている。家庭の事情で働いていたり、普通の学校に通えない、役者を目指し昼はレッスンに通っていたりする。「ハルマチスミレ」(吉祥寺シアター演劇部, 作演出・中屋敷法仁)
恋をした女はケーキ屋の男に恋をして告白しようとするが、同じ職場の女に言い寄られている事を知り言い出せない。痩せなくっちゃ。 「BBW」(梅棒, 作演出・伊藤今人/遠山晶司)
子供を預けて初めての夫婦での旅行。3歳の娘に動画メッセージを送る。残り時間は15分。 「ラスト・フィフティーン・ミニッツ」(キャラメルボックス, 作演出/成井豊)
ジャージ姿で不慣れな原宿にやってきた体育大の女三人、お洒落な男三人組やスナップを撮る男女に声をかけられる。地元に住む老人は騒がしい原宿が不満でならない。おっぱいの上にジェンガを載せそれが崩れると一体が焼け野原になるのだという。みんなの想いを合わせればそれは解決するんじゃないか。 「想いをひとつに」(地蔵中毒, 作演出・大谷 皿屋敷)
Q太郎が亡くなった。両親と恋人のU子がそれを看取る。何年か経ち弟夫婦に子供ができていろいろなことが上書きされていても、恋人はずっと家を訪れる。両親も年老いて介護が見え隠れするようになってもなお。 「私があなたを好きなのは、生きてることが理由じゃないし」(Mrs.fictions, 作演出・中嶋康太

「フランダースの負け犬」、 去年までのフルサイズでの上演は未見。たった4人の座組にぎゅっと圧縮して女優のみで上演。独特のスピード感ある節回しなどちょっと懐かしい気すらする柿喰う節。男二人の間の濃い友情、決して優秀とは言い難い友人にどうにも惹かれる気持ちと、無理筋だとわかっていることでも突き進みそれが失敗だとしてもそれをどう隠し責任をとらずにするか。つい最近NHKで「インパール作戦」の番組を観たばかりだからか、不思議な相似を感じるアタシです。優秀な将校を演じた深谷由梨香の節回しが久々で懐かしく感じて楽しい。

「ハルマチスミレ」は、 大縄跳びのリズムで跳ね回りながらの日常の風景。同じ高校だけれど定時制という別の時間で生きている同い年の生徒たち。ゆるやかにつながっているけれど、プラスもマイナスも何かの理由があって定時制を選んだ人々がいるということ。高校生にリズムとなると、どこか「わが星」風な感じはどうしてもしちゃうけれど、リズムや音楽が絶妙にポップでかっこいいし縄跳びのアイディアも何かのコミュニティを体現しているようで巧い。

「BBW」は、 ぽっちゃりを表すBig Beautiful Womanとか、なるほど。やけに風俗ばっかり検索にかかっちゃうのは痛し痒しだけれど。J-POPかけまくりでスピーディでキレキレのダンス。ごくシンプルな等恋物語をコミカルに、しかしこれだけのクオリティで作り込まれると、パフォーマンスでで引き込まれ思わず応援して感動してしまうような魅力にあふれているのはなかなか希有。15分でもこの熱量。見逃し続けている本公演を観たくなるような、ショーケースにふさわしい仕上がりなのです。そのヒロインを演じた原田康正が実に魅力的に可愛らしいし、応援団長を演じた伊藤今人が男気溢れる感じでちょっとダサくてカッコイイ。

「ラスト〜」は 王道SF風味。15分の中では人が人を想う気持ちを語るために絶望的な市の直前の時間で走馬燈のようにかけめぐる想い、動画というのが今っぽい。正直に云えば、その破滅に向かって一直線で想いの昇華はあっても救われないわけでキャラメルっぽくない気もするけれど、SF映画のワンシーンという感じにはなっているのです。

「想いをひとつに」は、 がっつりシュールなナンセンス系。やけに人が多いかんじがしたりするのも含めて初期の大人計画やナイロン100℃、あるいは猫ニャーを思い浮かべるアタシです。最近見かけないタイプという気がするのはアタシのアンテナが鈍っているからか。理不尽に据えられたジェンガを崩さず原宿を救うための解決策がぼんやり「皆の思いを一つにする」というのもどこかイマドキというセンスを感じさせます。

「私があなたを〜」は、 Mrs.fictionsが得意な長い時間の流れの中での素敵なラブストーリー仕立て。死んだ後の男を思い続ける婚約者。長い時間の中で男の両親も歳を取り弟には子供も生まれてて変わっていく現実と、変わらずそこに居続ける女の想いの対比が見事な小品。15分の中で圧縮してみせるための早送りのために指を鳴らしてシーンを進めたり、第四の壁を軽々越えて客をいじる掟破りがスマートでかっこいい。Q太郎、O次郎、U子という名前の登場人物を説明なく入れているのもセンスがいいのです。まあ、死んでお化けだからかと考えちゃうとアレですが。軽い語り口の岡野康弘がとてもいい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.09.01

【芝居】「きょうのうきよは」ムシラセ

2017.8.20 18:00 [CoRich]

ムシラセの保坂萌が女優・青木絵璃をフィーチャーして上演を続けるシリーズ企画の三回目。 60分。22日まで新宿眼科画廊。おまけ演劇20分。

結婚式を控えた女のウエディングドレスに「祝ってやる」という落書きがされる。気味が悪いがその犯人は、亡くなったばかりの祖母と名乗る若い女だった。何度も死なずに生き返って何百年も過ごしているのだという。祖父とは違う男のことがずっと好きだった。相手の男は死んだら生まれ変わるを繰り返している。いっぽう、祖母のことをずっと好きだと追い回していた男もまた生き返りを繰り返して、それによって母が生まれ、孫が生まれたのだった。

不死身というか死んではすぐ若くなって生き返り記憶が積み重なるのは祖母だけで、それ以外の人々は死んだら生まれ変わり記憶がリセットされるけれど、一人だけ思い続け生まれ変わっては祖母に言い寄るということを繰り返してきた男。祖母はそれをつれなくフって他の男にうつつを抜かすけれど、本当に好きなのは、ということを描く短編。不死身とか生まれ変わりとかSF要素はあるけれど、人が人を好きである想いが続くことをシンプルに描きます。

人を思い続けて何百年の男女、好きだといわれ続けているから油断して、だけれど他の女のものになると思うと自分の気持ちに気づいてというかわいらしさ。その何百年もの間転生しつつ言い寄ってきた男があっさりと思いを切り替えた相手である花嫁、が花嫁には浮気相手がいるといういえない秘密があって。 この物語の幹に加えて、父母は今はそっけない二人だけれど実はラブラブな男女だったことであったり、あるいはウエディングプランナーはこんな職業なのに好きな相手に想いを伝えられないままに悶々としたり。そう多くはない人数なのにそこかしこに恋愛が渦巻いていて、ふんわりとした気持ちに包まれるようなのです。

父母を屈託なく好きだといえるのは、両親に愛されてきたからじゃん、という軽くはなされる台詞が実にいいのです。

ラストシーン、転生してきた男が、押しつづけてすっと引くことで祖母の思いを引き寄せたことをぽろりと漏らし、実は祖母への想いの記憶がちゃんとあることが示されます。この夫婦、互いに秘密を抱えたまま生きていくのかなぁと思ったりもしますし、それはもう一度転生すれば生き返って待ってくれているはずの祖母に再会できることを信じて疑わないからか。

祖母を演じた青木絵璃、27歳なのに年寄り、怪優という存在感すら感じさせます。ウエディングプランナーを演じた渡辺実希は大きな眼が印象的。叔母を演じた保坂萌との友達感もいい。 おまけ芝居は、芝居の前日譚となる話。この祖母が恋いこがれた相手を捜すためにバイト先のTSUTAYAの店長と話をするという小さな会話。バイトなのに店長に対していちいち偉そうだったり、あれこれ押しつけてみたりと、相手への好意を持っていることがひねくれて出てくる感じがかわいらしいし、巻き込まれ困り果てときに軽く切れたりする店長を演じた関村俊介の大人な怒りがリアル。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年8月 | トップページ