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2017.03.27

【芝居】「ラクエンノミチ」日本のラジオ

2017.3.19 14:00 [CoRich]

2013年初演作の再演80分。ワタシは初見です。関連するもう一作と交互上演で20日まで阿佐ヶ谷・シャイン。

風俗店の待合室。店長と受付の男は幼なじみ。ナンバーワンはベテラン風俗嬢を慕っている。ミカジメを取り立てるチンピラだが、その兄貴分はしばらく姿を見せていない。新人が体験入店に訪れたある日、腰の低い男が訪れて、姿を見せていないヤクザを探しているのだという。

風俗店の中で行われた違法かつヤクザの仁義すらすり抜けたクスリの売買を背景に姿を消した男をめぐる人々の物語。中心となる男は登場せず、その現場となった風俗店のベテラン嬢、ナンバーワン、新人、店長と幼なじみの店員、常連客、姿を消した男の子分と追う男。全員がきちんと役割をもち物語を担っていて、まさに捨てるところがないのです。もっとも、それゆえにあまりに狭い範囲でいろいろな関係がありすぎる、ということはあるのだけれど、今作ではむしろ物語の濃密さが箱庭のよう。

クスリの横流しという一つの思いつきが本人のみならず、さまざまな人を巻き込み追い込まれ殺されていきます。それは時に自分の恋人を殺された復讐、ときにある種の正義感で助けようとしたことの結果としてなど、単に暴力の結果ではなく、それぞれが殺そうという衝動を、そうするざるをえない状況に追い込んでいくのは見事。

いくつかの愛が物語を支えます。昔から好きだった同性の幼なじみへの想いは年齢を重ねもうそれは叶えられないと思っていても同じ道を歩いていくだけでも幸せをかんじる、あまりに純粋な愛する気持ち。もう一つ、ナンバーワン嬢がベテラン嬢に対する想いは、スーツケースをもって逃げる最後のシーンひとつで濃密に描き出され、舌足らずで作られたお人形さんが、生きた女になる鮮やかなシーン。 さらにはヤクザの彼氏と新人風俗嬢が恋人であるというのももう一つの愛情の形。どこまでも無邪気に彼女のテクニックがすごくなってることを喜ぶ彼氏の幼さと、やっとつかんだかに見えた幸せを壊されてしまった女の静かな怒り。人々が殺し合う陰惨な物語だけれど、それを貫くのは確かに人が人を愛する美しさであり哀しさなのです。

前説は役者の一人、店員が客席側から説明を始め、電話を切れに続いて指入れなどいわゆる風俗店のNG行為を交えて舞台上、つまり物語に入り込んでいきます。ちょっと洒落た感じ。それに呼応するかのように終幕は一人舞台上に残った「観察者」とでもいうべき女が再び舞台から降りて客席後方に去っていく、私たちの地続きから始まり地続きに戻っていく感じか。

交互上演のもう一本の戯曲とセットになった戯曲は、それぞれの人物の裏設定も書いてあったりしてちょっと楽しく、なんかレイアウトもちょっと手作り感の味。いままでは無料で配られる印刷物の凄さに唸ったけれど、つい有償でも手を出してしまったアタシです。

店長への想いを持ち続ける店員を演じた堀靖明は、時折つっこみを見せながらも、純粋に曖昧な笑顔で笑い続け、物語の核となる恋心を担います。好きな役者ですが、こういう役は珍しくて新しい魅力。男を追うヤクザを演じた村山新は腰が低く笑顔のままで殴りつけるアウトレイジっぽい迫力。その落差で客席が凍り付くのです。ベテラン嬢を演じた豊田可奈子は漂うようにその場に居続けブレない観察者で、何事も達観したような感じだけれど、ナンバーワンからのキスに心がさざめくシーンが丁寧でぐっときます。ナンバーワンを演じた田中渚は、終演後に劇団への加入が発表されましたが、なるほど作演に信用された役者、手慣れたといえばそうだけれど、ごく短いシーンできちんと人物を造形する確かな力。

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