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2016.12.05

【芝居】「夕闇、山を越える」JACROW

2016.11.23 14:00 [CoRich]

田中角栄が議員として頭角を現し最年少の郵政大臣になるまでの数年を描く115分。26日まで雑遊。

家柄も官僚経験もないまま、裏日本と呼ばれていた新潟の暮らしを良くすると訴えて衆議院で当選した角栄は、徐々に勢いをつける。経済復興を重視し国民の暮らしを作ることを優先する池田勇人・大平正芳らの宏池会、憲法を改正し再軍備して国の形を作ることを優先する岸信介・福田赴夫らの十日会、両方のバランスをとる佐藤栄作の木曜研究会という三つの派閥が国民の人気と勢いのある角栄を取り込もうと画策する。

今年はなぜか出版では角栄ブームだけれど、作家自身はそれを知らずに書き始めたのだといいます。とはいえ、世間ではブームなのに、芝居で正面切って彼を描いたものは他に観たことがないので、そう流行に乗ったという感じでもありませんが。

冒頭は街頭での演説。「ここの」人々の暮らしを良くしていきたいと訴えながら、「そこに」居る人々に声をかける、という人垂らしの原点が強烈な印象を残します。現実の田中角栄は、小学生の頃のあたしにとっては好きとか嫌い以前の「そこに居た政治家」であり、芸人のモノマネ含め圧倒的な印象なのです。その人物が目の前に立体的に現れ、人なつっこい口調と表情でアタシに演説をしている、というだけで理屈とかイデオロギーとかとは全く別に感情が刺激されて泣きそうにすら。自分に話しかけてくれて、今の私の生活を良くしてくれると期待させるというのは良くも悪くも、ここまである偏りの政治家が力を持つに至った理由で、それはきっといつの時代でも変わらないのだろうなぁと思ったりもするのです。

中盤のほとんどは神楽坂の料亭での他の政治家たちとの会話で物語を進めます。どこの波に乗れば自分が上に上がっていけるのか、関係する人々を幸せにしていけるのか。欲望というよりは力を持つことに対してどん欲で正直に邁進する姿。名だたる政治家たちが、時にバカにしながらも国民の人気があるという力を無視できずに自分の派閥に取り込もうとする腹のさぐり合いだったり、引っ張りだこの角栄は、改憲と経済成長のパワーバランス自分の立ち位置を慎重に見定めていくことのはある種の波乗りで慎重なのです。

反対にある種の寂しさも描かれるのです。最終的には信頼をつなぎ止めるのは金だということに何の疑いもないこと。それは手切れ金だったり、あるいは忠誠の証だったりするけれど、舞台での描かれ方は、小馬鹿にしていた政治家はそれでも金は受け取るし、あるいは少し戸惑ったりもすること。現実がどうだったかは知るよしもないけれど、なるほど、私腹というよりは自分が存在し前に進むために金が本当に必要だったのだ、ということがよく見えてくるのです。

終幕近く、若くしてから郵政大臣になって地元で凱旋のように街頭演説。序盤の初当選と同じ人なつっこさだけれど、権力を持つ最初の一歩。その中で新聞・キー局・ネット局という放送局の系列化を進めて、メディアを手中に収めていたということはワタシのしらなかったもう一つの顔でした。なるほど、イマドキの政治家だってやりたくなるわけだ。

角栄を演じた狩野和馬の圧倒的な出落ち感から、人垂らしの人物造形に圧倒されます。これだけで半分は成功したも同然。凄い。

正直に云えば、 自民党に対してだったりを訊ねるある種の思想調査のような記名のアンケートはまあ、お楽しみと言えばそうで思想の自由を犯そうなどという気が微塵もないのは重々承知ではあるけれど、ちょっとやりすぎな感もあって、ちょっと意図を測りかねるような感じもします。

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