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2016.10.31

【イベント】「包囲網」(月いちリーディング / 16年10月)劇作家協会

2016.10.22 18:00 [CoRich]

銭湯で上演された初演は未見です。リーディング部分、ディスカッション部分が動画中継されるほか、録画が公開されています。リーディング部分は70分。月いちリーディングとして座・高円寺の稽古場フロアで。

風呂屋、長男の嫁が嫁いできたが、長男は別の女と駆け落ちしてもう何年も戻らない。妻は行くところがなくて残っている。父親も母親も仕事のやる気を無くして引きこもったり激太りしている。この家の長女が結婚して家を出ていたが、見かねて手伝いに来ている。
ある日、その逃げた長男が顔を出す。一緒に逃げた恋人を連れて。

駆け落ちにも舅や姑の圧力にも耐えてここで暮らし続けている女と手伝うようになったこの家の長女でやっと手に入れたかにみえた安定を突然崩す夫とその恋人。わりとベタでわかりやすい物語を枠組みにします。が、作家の真骨頂は三人の女たちそれぞれについて語られる事情だったり考え方であったりなのです。三人の女優とともに作り上げる劇団だからこそそれぞれに見せ場を作るようなフォーマットではあるけれど、短い時間で語られる物語なのに、相反する人物だとしてもそれぞれに納得させられ、愛すべき人物がそこに確かに居る、という説得力が魅力なのです。

人物たちとりわけ女性を描き込むのは作家の強みですが、今作で女の子供ゆえに父母ががっかりすることだったり、子供を亡くすことと子供が産まれることだったり、結婚ということだったりを中心に描きます。 たとえばこの家の長女は、女児ゆえに父母からは認められなかった日々だったのに、今は実家の手伝いで役に立てているという充実感。それは嫁いだ先の夫をないがしろにするということとの引き替えだけれど、そのバランスを崩してでもなしとげたいという切実さ。演じた藤谷みきの元ヤン風の凄みもいいし、コミカルさもうれしい。

たとえば、夫に駆け落ちされてしまった妻。身寄りがなく帰るところがないから、といって針のむしろ状態のこの家で働き続けているけなげさ。水商売しているところに男が転がり込んで情を持つウエットと、夫と一度だけヤってしまうことで女を思いだして、しかしそれゆえにあっさりと別れるというさっぱり加減。絶妙のバランスで支点のよう。演じた長尾純子はそれを悲壮にならない気丈さで造形します。

ヒールになるはずの駆け落ち相手を演じた斉藤ナツ子は、人の恋人を奪うことでしかドキドキが得られない性癖の女。魔性っぽさを醸し出す雰囲気の説得力。

それに比べると男の描き方は愛すべき薄っぺらさだと思うあたしだけれど、ディスカッションの中で出てきたのは、終幕、全体を俯瞰し、走馬燈のような視点なのだ、というのは気づかなかったアタシです。物語全体を束ねるようなことなのかなぁと思ったり思わなかったり。演じた東谷英人が思い切りコミカルに振った演劇で物語をかき回します。

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