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2016.08.15

【芝居】「麦とクシャミ」青年団リンク・ホエイ

2016.8.11 11:00 [CoRich]

14日までこまばアゴラ劇場。120分。

麦畑だった地域が突然隆起し始め、火口ができ噴火とともに灰が降り始めた。地域には鉄道が走っていて、軍はそれを守るために線路を掘り下げて物流を維持しようとするが、ここで起きているすべてのことは軍事機密だとして村外に漏れないように統制をしく。郵便局長の男は火山に興味を持ち細かく火山の状況や地震、住民からの聞き取りを記録している。

実在した市井の研究者・三松正夫(Eテレの動画, 地質ニュース597号)をモチーフにした北海道・昭和新山(戦後、個人で買い取ったというのが凄い)をめぐるフカバ集落と呼ばれた地域の物語を描きます。軍事機密への指定や隆起のたびに大地を削り線路を付け替えながら鉄鉱石の輸送を確保した胆振縦貫鉄道(胆振線)のという史実が興味深く、あとで検索してさまざま読みふけるのが楽しいアタシです。

その史実を背景に置きながら、そこで暮らしている人々の属性や会話はおそらく作家の創作で作られているように思います。北海道の開拓の一面、それは食い詰めたり一攫千金をねらった人々が全国から集まる場所という特性で、さまざまな地域と方言を存分に盛り込んで その場で暮らす人々がもう畑はできないけれどなかなか離れられずにその場所で暮らし続けること、土地への愛着もあるけれど、流れてここに来たということだったり、あるいは兵士として送り出され女が家を守っていたということだったりを描くのです

物語の中では京都の女郎、東北の農家や金魚の養殖の失敗など様々な背景をもった女たちの暮らしを描きます。生活の風景としての食糧難の中配給の米さえもなかば強制的に供出させられることだったりとか、あるいはその中での疑心暗鬼。あるいは戦後の預金封鎖、大量に発行し戦後紙切れ同然となる戦時国債やそれを買い取って財産税の代納に当てたい資産家に売りつけるといった混乱といった混乱。この場所で起きたことというわけではないけれど、この時代にそこかしこで起きていたであろうこと。あるいは軍人を軸にして広島の原爆を遠景に、ノモンハンでの戦闘にからめて「どれだけの死体の上にのほほんと暮らしているのだ」という強い怒り。更にはどこから来たかわからない男が実は脱走して朝鮮人で、それがどこかに消えてしまうことであったり。この時代の不穏さとこれからのアタシたちの暮らしへの不安をぎゅっと詰め込んだ強い懸念はわかるけれど、正直にいえば、少々詰め込みすぎた感もあります。

時折落ちてくる噴石がお手玉風だったり、 噴火で焼け死んだ兎を七輪で焼くと煙がもうもうと立ち上り、黒ビニルで作られた山が現れるといった感じはある種のチープさがなんか芝居の「見立て」をシンプルな形でやっていて、これだけ詰め込んだ陰鬱な時代なのにどこかコミカルな会話だったりと合わせて、これは作家の持ち味でアタシは嫌いじゃないところ。

郵便局の若い局員を演じた伊藤毅は時に人々に巻き込まれながらもフラットな役を好演。思い背景を背負うけれど、それをあっさりといなすのもいい。岩手出身の女を演じた中村真生の圧倒的でスピードのある東北弁に圧倒されるけれど、実に心地いい。この作家の津軽弁に慣れたとおもっていたけれど、(広義の)南部弁に属するという盛岡弁とあんまり違いが分からないアタシはまだまだ勉強不足。寺の奥さんを演じた宮部純子の関西弁のいけずな感じ、福島だけれどこの座組ではだいぶフラットな標準語に近い緑川史絵など、それぞれの役者につけた方言の対比も楽しい。

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