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2015.09.16

【芝居】「他人と一緒に住むという事」俺は見た

2015.9.13 13:00 [CoRich]

あたしは初見の劇団です。信頼する友人のよさげな評価を見て当日券で、客席はちゃんと埋まり、しかももう一人の信頼する友人も客席にみかけて、見応えある110分。13日まで雑遊。

メーカーを辞めてソーラー発電の機器販売を始めた男は最近若い女と結婚したが、女は同居を拒んで通い婚になっている。同僚の営業職だった男も会社を辞めて飲食店をやっていたが店をつぶして無職となり、別の同僚で映画を撮っている男の家に転がり込んでいるが、恋人ができたばかりの家主からは疎まれている。そればかりか家主を訪ねて転がり込んできた元カノのSM嬢に手を出すが逆に服従させられてしまう。 家主の恋人は自立したいと別居しているが、絵描きになりたい幼なじみの男と同居しているのが気に食わず、それぞれの家を引き払うことにして強引に同居する。
それぞれの家に居候していた、絵描き・SM嬢は、無職の男の知り合いである機器販売の会社の社長宅にすまわせてもらう代わり、業務拡大を狙う社長の頼みで、男二人は新たに営業になる。数十年にわたる営業の経験から実績を積み重ねて、前から営業のリーダーだった若い男にとってかわり営業部長となる。

手書きのコピー(あるいはリソグラフ)な当日パンフ。そういえば、パラ定は最初のころの販売用の戯曲が手書きだったなぁと思い出したりしつつ。あれはすごく印象的でした。

いまどきの経済状況らしく(あるいは明日は我が身に思える)「住む場所がなくて他人の家にカジュアルに居候する」人々をベースに、それとは逆に結婚なり恋人なりの関係なのに同居を拒む女の存在が生み出す物語。それぞれに癖のある人物のエゴや感情がやけに強いリアリティをもって描き出されていて、どうしてそういう行動になるのか、ということが納得できる厚みをもっているのです。作家は当日パンフで40代未婚といっていて、だからか、アタシもギリギリ40代未婚だからか、タイトルの「他人と一緒に住むという事」が身近に感じられて、それはその夢のような出来事(の想像)だったり、あるいはその面倒くささ(の想像)だったり。

前半で、危ういながらも均衡を保っていたそれぞれの関係は、恋人を独占したいと思う男の思いによって住処を追われた3人の奇妙な「パーティー」によって、がらりと人々の関係が変化していくのですが、まった見た目もパーソナリティーも異なる3人がぞろぞろと歩いて行くシーンは見た目だけでくすりと面白いし、そこで物語も関係も変異していくということのタイミングが見事なのです。

長いサラリーマンの職を失いながらギャンブルは辞められず(谷保、府中といった南武線沿線なローカルさがまた強烈なリアリティ)、知り合いに金を無心しながら居候生活を続ける初老の男、若いSM嬢に、その歳で働けば上司は自分より若いと論破されて 服従させられる姿は滑稽です。が、再び得た営業職で結果を出して営業部長という地位を手に入れると、その「遊び」にはつき合わなくなる、というのは自己評価の変動で関係が変化していくということを見事に描きます。
あるいは、その女王様を元カレが「打たれ弱い」と云うことが、この初老の男との関係でもじわじわ効いていて、服従させる側に見えても実は互いの依存で成り立つ脆い関係で それゆえに嫌われればあっさりと物語から姿を消すのにも説得力があるのです。
初老の男を演じた橋本利明の落ちぶれた感じも、仕事で自身を取り戻す感じも説得力があります。SM嬢を演じた八木麻衣子は登場でリアライズの色っぽさと強気のプレイ、あるいは傷ついたことを訴えるガラスのようなハートのあいまった雰囲気が印象的。

この物語の世界の人々ががらがらと壊れていくきっかけを明確に作るのは、25歳の女の存在です。特異点のような位置付けで少々無理があるとはワタシも思います。 社長と結婚しながら同居を拒み、別の恋人とは同居するもののその束縛に嫌気がさし、幼なじみの食えるかどうかわからない絵描きの男には近い気持ち。 いっぽうで勉強も海外の留学も何もかもまだやりたいことが山のようにあってとは云う。 それを理解できない夫かつ社長も恋人もアタシの年齢に近くてよくわかる。が、一方で若い彼女が若いときにこそ価値があって年齢を重ねれば何もできなくなる、という強迫観念 を持つというのも、どこかわかるな、とも思うのです。

正直に云えば、暗転中含め舞台裏で何か物音がわりと大きく聞こえたり、客の入れ方だったり、荒削りに過ぎるところは散見されますが、それよりも、オジサンにちょっと凄いと思わせるリアリティを丁寧に積み重ねる力はまた観たいと思わせる馬力を感じるのです。

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