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2015.08.21

【芝居】「ごはんと宇宙」ごはん部

2015.8.15 14:00 [CoRich]

保坂萌と印宮伸二による、食事とか宴会とかするユニットの演劇公演。さまざまな作家の物語を弁当のように詰め込んだ140分。16日まで駅前劇場。

食べ放題ビュッフェの店。夫の実家への帰省をいやがる妻は食べ物が違うし、わいわいしてるし、ちゃんとしてないことを思い知らされるからだという、しりとりをする。店員に恋をしてい店に通いつめている女とその女友達。告白しようか思いあぐね拗らせて気合いの入った弁当を作ってきてしまう「ごはんと宇宙」(作・保坂萌)
俳優志望の男は養成所の門をたたくが、所長はやたらに日焼けして濃いし、俳優たちは使い物にならなそうな落ちた雰囲気。階下の事務所の社長がこの所長のファンでここを借りているが、ヤクザまがいのその事務所の息子が毎日遊びにきて、大便の大きさ自慢をしていている。公演を打つことになるが、ジュリエット役のハーフのニューハーフが姿を消してしまう「幕間1・2・3・4」 (作・西山聡)
格安宇宙旅行ツアーに参加した友人たち。夫婦二組と無職で一人ものの男。何かの事故が起こるが、コールドスリープで助けられるのは4人で助からない一人を選ぶことにするが、どうにもその一人はやっぱ独り者になりがちで。「究極の選択」(作・ブラジリィー・アン・山田)
料理をしたことのない妻が突然夫に何が食べたいか訪ねてくる。それも一生に一度最後に食べたいぐらい究極の一品頼めといってくる。夫は考えあぐね、浮かんだのはかつての恋人とデートのあとに必ず食べていたファミレスの料理を云うが妻は納得しない。「なれずし」(作・櫻井智也)
姉が妹のところに泊まりにくる。料理に頓着のない姉だが、妹はだしを引き、鰯の梅肉揚げ★を作るために、その梅干しを最新の注意を払ってつくるほどなのだが、それは特別なことでもなく、こだわりというわけでもない、普通のことなのだ。若い女の家で夕食を供にする男。インスタントの味噌汁にセブンのポテトサラダだ。コストコにでもいくか、でも冷蔵庫小さい、冷蔵庫も買おうか、とさらりという男に結婚を意識し喜ぶ女。かつての女のことを思い出す。「さかなへんによわい」(作・詩森ろば)

「ごはんと宇宙」は、若い恋心のまっすぐと、夫の実家が苦手な気持ちという二点を女性からの視点で対比して描きます。前者は話もろくにしてないのに気を引こうとお弁当つくってみたり、後者はそのあわない気持ちは味付けの差(とはいえ、若い彼女の方が醤油ドバドバなのが微笑ましい)だったりと、確かに「ごはん」をめぐる物語。バイキング形式で食事までばりばりしてるのは見てる方は気持ちいいけれど、役者には負荷かなと思ったりもします。恋心な女の子と友達に挟まれたオジサンを演じた友松栄がクレジットされてないけれど、台詞のないまま表情で笑わせます。

「幕間〜」は、セットの転換をしながらのコネタ集の趣を持つ一本。飛び道具のようにキャラの立った役者陣に、養成所やらヤクザ、あるいはウンコにこだわる子供といった具合にキャッチーな要素をこれでもかと詰め込んで。食事というよりはその末路としてウンコというのはまあ少々無理筋ではありますが。日焼けしたVシネ俳優を演じた武藤心平の怪しさ満点さ、ヤクザの息子を演じた加藤美左江のはっちゃける子供っぷりは相変わらずの破壊力ですが、確かに強い印象を残します。

「究極の選択」は無職で独り者の男と二組の夫婦で犠牲になるのは誰かをめぐる話。終始その男をどう説得するかという流れで進む物語、アタシがどちらかというとその説得される側に近いからか、そこに逆転・反論の余地がないし、このワンアイディアに対しては少々長く、救いにしようとしたのかどうか、それはその男のための壮大な茶番なのだというのも、なんぼなんでもドッキリというのでは、後味もよくないし物語としても少々筋が悪く感じます。

「なれずし」は夫婦に限らず男女のすれ違う話なのだけれど、その裏側で感情を動かしている別の異性との会話を挟んでいくことで、表にでている台詞と内面で考えていることのずれだったり、表をみてるだけでは唐突にあちこちに飛ぶ話が、実は内面ではちゃんとつながっているというのが見事。なれずしの「発酵」という印象とは少し違うけれど、大人の話だよなぁと思ったりして好きな一本です。妻を演じた丸山夏未の無茶ぶりもたのしい。バイト先の男を演じた神山慎太郎は声が良くて印象的。かつての恋人を演じた黒沢佳奈は涼やかで美しく。

「さかなへんによわい」は今回の中でアタシがもっとも好きな一本。料理を丁寧に作ることがあたりまえの日常だというのは、一歩間違えば鼻持ちならないこだわりなのだけれど、作家・詩森ろばのtwitterやblogからかいま見える日常がその向こうに透け見えて、「そうしないではいられない」という彼女自身の実感なのだろうなとも思うのです。インスタント味噌汁が当たり前で、婚姻も妊娠も手に入れたから料理に向き合う気持ち変わるかもしれない若い女と、それまでもずっと丁寧に出汁を引き、かつら剥きをしという料理をしてきた女はそれゆえに男に去られるという 対比があまりにほろ苦い。後者を演じる堤千穂は気高く美しい。前者を演じる佐山花織は若さ故あふれる色気、懸命に考えるまっすぐさはむしろまぶしい。男の造型がまたかっこいい。料理の記憶もかっこいいし、さらりと冷蔵庫を買うし、それが求婚ととられてもいいというのもいい。でも、マクドナルド「に」浮気するという人間くささもいいのです。演じる森尾繁弘がまたいい味わい。

全体で2時間越え、しかもほとんどの芝居で役者が重ならないことで相当な大所帯。お弁当っぽくてもりだくさんで楽しいけれど、もっとライトな感じでもいいよな、という感じではあります。

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