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2015.01.28

【芝居】「子どもの頃から」London PANDA

2015.1.18 19:00 [CoRich]

東京の仕事を辞め離婚して街からは離れた実家に戻った男。長女とその夫、次女が暮らしている。長女と次女は入院している父親の介護に通っていて、長女の夫の収入で暮らしているためか、夫の顔色をうかがうように暮らしている。
男の友人の男は近くの農家で働いていて仕事を紹介して一緒に働きたいと思っているし、次女に恋心を抱いている。友人の女はバツイチで看護師として働いていて、男が戻ってきたのをきっかけに時々訪れるようになる。
男はどこかの仕事につくでもなく、長女夫妻は世間体が悪いと思っていたりするが、男は唯一作れるアップルパイで何かできないか、と考えている。

奇しくも昼の芝居にやや似ている枠組み。兄弟(姉妹)で戻ってきた人とその土地にずっと居る人と。とはいえ、父親の面倒をみるという意味で地元に縛り付けられている女、あるいは自己評価が低くて実家を出て働いたり地元を出るということすら考えられない女に対して東京から戻ってきたけれど仕事を考えてはいてもちょっと現実味が無さそうな感じでもある長男という枠組みに、 そこにもうひと味、長女の夫という、この場に君臨し支配してる存在が物語を動かすのです。

確かに東京に住んでいると現実味のない感じにみえるけれど、わずかな間とは云え地方に暮らしてみたアタシには腑に落ちる感じがします。たとえば、結婚すれば婦人部だけれど仕事が無ければ青年部にも入れない、というのは「生活の方向」を同じ方角に向かせる圧力。

支配する男はダブルキャストでアタシが拝見した前半公演で演じた立浪伸一は、普段みかける役柄とは違う新しい魅力。抑えた喋りだけれど君臨する強さ。姉を演じた中村美貴も妹を演じた嶋田菜美も耐える女を二つの違う姿で。対して地元でわりと自由に生きている女(看護師という職業とバツイチという設定が巧い)を演じた渡辺詩子とのコントラストが鮮やか。 地元で働いている男を演じた菅野貴夫は実直で裏表がなくて動きがない役ゆえに、この物語の中では他の人物の企みや裏表を鮮やかに反射します。帰ってきた男を演じた浦川拓海はやや脳天気で前向き、 もしかしたら地元に戻る(ロンドン留学もするようですが)作家の気持ちに一番近い立場をくっきり。

ネタバレ

物語ががらりと動くのは、長女の夫と不倫どころか妊娠し堕胎したということを次女が長女に告白する場面から。長女が不倫までは気付いていた感じはあっても、自分がには出来ない子供が出来たということに苛つき激怒するけれど、次女はこの家を出ると云うことを想像できないのです。

次女に恋している近所の男に、次女が告白する場面は彼女にとってもしかしたら救いかもしれないけれど、衆人環視のなか突然、そう好きでもない男に告白させたのが長女ということでしょうから、この家は出たとしても、目の届く範囲にずっとつなぎ止めておくという怖さ。

長女は離婚を決意して自由になるのは幸福なことかもしれないけれど、長男と結婚した女の味付けにいちいち小姑よろしく文句を付けるという終盤近く。崩れたバランスが変化した次の状態は女が女を支配するという自分の夫がそれまでしてきたことの再生産。面と向かって文句はいえない嫁が塩をぶちまける終幕は「恨みは再生産される」ということの予兆で、怖いけれど、田舎に限らずある話だなと思うのです。

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