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2014.08.14

【芝居】「涙を数える」キャラメルボックス

2014.8.9 18:00 [CoRich]

交互上演となっている「TRUTH」 (1) の前日譚となっています。6日までサンシャイン劇場。

公金横領の罪で公職を追われた父は切腹したが、その後 息子も城に上がることができないまま貧しい暮らしを強いられている母と息子。 豊かだった頃の友人はみな離れてしまったけれど、あの頃と変わらずずっと友人だった男が 江戸から久しぶりに戻ってきた。彼はもう幕府は長く無いと考え、西洋式の軍隊について学ぶため長崎に 出たいと考えるが親の許しは出ていない。
ある日、その友人は父親を斬り殺して行方がわからなくなる。江戸にに逃れたとみた藩は追っ手を差し向けることになり、ずっと苦しい生活をしていた男も加わるように命じる。これに成功すれば、公職への道も開けるといわれて協力することを決める。

劇団の人気作、「TRUTH」からのスピンオフ。どちらか一本でも確かに楽しめるように独立した物語にはなっていますが。TRUTHではあからさまにヒールであり続けた男の過去に肉付けをしてもう一本の物語を作っています。父親を信じては居るけれど、公金横領という罪をかぶせられて自害し、おかげで不遇であり続けたということは元々語られていたけれど、依然と変わらぬ友情を向けてくれているのに羨む気持ちが捨てられなかった親友の存在や、そこから父親のえん罪は陰謀に近いような形だったことが明かされます。自分のせいではないことで暮らし向きも、名誉もこんなに苦しい日々で、もともとはそれなりの暮らしだったのに「いつ元の生活に戻れるのか」という、子供の視点でたたき落とされた理不尽さは、 この物語だけを取り出しで純度を高めると、そうか、「さよならノーチラス号」の上演に際して 当日パンフなどで語られた、 かつて作家・成井豊自身が子供の頃に感じた「生活の理不尽な激変」に源のある人物なのではないかと 思い至るのです。あからさまに徹頭徹尾ヒールである人物が滅多に登場しないキャラメルボックスの芝居中で、TRUTHに登場するこの鏡吾なる役は確かに異質で、それゆえにダークヒーロー的な造型と演じた上川隆也という役者の力で人気のある、奥行きをもった役になっているというのだけれど、それに更に 奥行きを足しているよう。

という背景はべつにしても、キャラメルボックスの芝居としては7人という比較的少人数な座組で語られる物語は、良くも悪くも「賑やかし」な人物はそぎ落とされて、それでもそれぞれの人物にコミカルな要素を割り振って残す、という感じになっていて、結果、それぞれの人物に厚みが出るように思います。 共同脚本・演出のクレジットですので、少人数に向いているのはどちらの作家の特性かを知る由はありませんが、なんとなく、自分の希望を込めて真柴あずきの強みではないか、とも思うのです。

わりとシリアスな物語のシリアスな役に対してコミカルな部分を加える、というのは役者で 魅せていく要素のある劇団(新感線、第三舞台とかもそうだ)の特性で、 賛否がわかれるところですが、ワタシは、見慣れたせいも ありますが、物語に対しての緩急のリズムになっていて賛同する立場です。

その中ではコミカルな部分を多くになっていたのは藩の江戸屋敷世話役を演じた池岡亮介ですが、軽口を叩いたりぼけてみたりとリズムを作ります。殺された父親を演じた西川浩幸は、単にいい人ではない造型の深み。正直、台詞の癖はやはり残るので聞きづらいところがないと云えば嘘になるけれど、台詞そのものではない熱量がそれを補います。鏡吾を演じた多田直人は少しばかりの屈折と内なる強い想いをきっちり、その母屋を演じた坂口理恵が、息子が親友を討つために旅立つシーンの引き裂かれるような 気持ちで泣き崩れるシーンがちょっといい。

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